min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

神坂次郎著『熊野風濤歌』 

2008-10-22 20:12:28 | 「カ行」の作家
神坂次郎著『熊野風濤歌』徳間文庫 1991.11.15第一刷 447円+tax 


神坂次郎という作家は和歌山在住の方で、フィクション、ノンフィクション作家である。
ノンフィクションの方は読んだことがないのだけれども、時代小説で雑賀鉄砲衆や根来鉄砲衆を描いた作品がある。

本編は第一部が「黒鯨記」という時代小説と第二部「熊野灘賛歌」と題して、いくつかのエッセイが盛り込まれている。
「黒鯨記」は紀州における沿岸捕鯨の発祥の地である太地を舞台に、和田一族が銛を使って捕鯨を始めたいきさつに、ひとりの関ヶ原合戦の落人がかかわったという極めて興味深いストーリー展開となっている。
わずか120ページの短編にするには惜しい作品で是非とも長編にして欲しかった感がある。

エッセイの多くは筆者が愛してやまぬ熊野灘賛歌で、熊野、特に黒潮がぶつかる串本付近の歴史と景色には大いに惹かれるものがある。
「熊野とは地の涯の、隈野であり、隠国(こもりく)、隠野(こもりぬ)の意味であり、古来から落人のくにでもあった」と作中にも記されており、「熊野」と聞いただけで何故か強く惹かれる者にとっては必読の書であろう。


ここで参考までに先に述べた雑賀鉄砲衆の物語をご紹介したい。


*以下、過去の読書録より引用

24.『海の伽[イ耶]琴』・雑賀鉄砲衆がゆく(上・下) 神坂次郎著 講談社文庫 2000.1.15 1刷
★★★☆☆

このところ雑賀の鉄砲衆に魅せられたように関連小説を漁ってしまった。本編は孫市の息子孫市郎の物語。時代背景は先に読んだ『雑賀六字の城』と同じであり、一向宗の石山本山をめぐる織田信長との凄まじい攻防戦を描く。さらに雑賀の里を追われ、形の上では天下統一を成した秀吉の人質として生き延びる。
本編の最大の特徴は、かの秀吉が行なった「朝鮮出兵」に雑賀の鉄砲衆を連れ参戦することであり、【ある特別な理由】でこの秀吉の軍勢に叛旗を翻すことである。海を渡った雑賀鉄砲衆の信念と反骨を貫く熱き物語の結末や如何に?