藤原伊織著『ダックスフントのワープ』集英社 1987.2.25一刷 1,262円+tax
オススメ度★★★☆☆
昨年急逝され多くの読者が嘆き悲しんだ作家、藤原伊織氏のこれがデビュー作である。先週偶然にも図書館で発見し読んでみた。
表題となった「ダックスフントのワープ」は1995年第9回すばる文学賞を受賞したのであるが、同氏を世に知らしめた「テロリストのパラソル」は更に10年後の上梓となっている。
ダックスフントがワープするなどとはあり得ぬ話で、これは主人公の家庭教師が極めて自閉症ぎみの教え子の女の子にほぼ即興で創作し語って聞かせた“寓話”である。
この寓話の内容は何を意味するのか僕自身定かではないが、少なくとも女の子には少なからぬ影響を与え、物語の顛末を鮮やかなものに変える。
収録されたもう一篇の作品「ネズミ焼きの贈り物」についても言えるのであるが、登場する主人公は同じように自閉的な青年であり常に世間から、対人関係から距離を置こうとする。
距離を置こうとするのではあるが、相手側から間合いをせまられて決断を余儀なくされてしまうとでも言おうか。作者自身の言葉によると「虫の命を踏まず野原をわたることは可能か」となるようだ。
ある種の哲学的要素が入った奇妙なふたつの物語で、ああ、藤原伊織氏は初期にはこのような作品を書いておられたんだ、と感慨にふけりながら読ませていただいた。
オススメ度★★★☆☆
昨年急逝され多くの読者が嘆き悲しんだ作家、藤原伊織氏のこれがデビュー作である。先週偶然にも図書館で発見し読んでみた。
表題となった「ダックスフントのワープ」は1995年第9回すばる文学賞を受賞したのであるが、同氏を世に知らしめた「テロリストのパラソル」は更に10年後の上梓となっている。
ダックスフントがワープするなどとはあり得ぬ話で、これは主人公の家庭教師が極めて自閉症ぎみの教え子の女の子にほぼ即興で創作し語って聞かせた“寓話”である。
この寓話の内容は何を意味するのか僕自身定かではないが、少なくとも女の子には少なからぬ影響を与え、物語の顛末を鮮やかなものに変える。
収録されたもう一篇の作品「ネズミ焼きの贈り物」についても言えるのであるが、登場する主人公は同じように自閉的な青年であり常に世間から、対人関係から距離を置こうとする。
距離を置こうとするのではあるが、相手側から間合いをせまられて決断を余儀なくされてしまうとでも言おうか。作者自身の言葉によると「虫の命を踏まず野原をわたることは可能か」となるようだ。
ある種の哲学的要素が入った奇妙なふたつの物語で、ああ、藤原伊織氏は初期にはこのような作品を書いておられたんだ、と感慨にふけりながら読ませていただいた。