min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

雨を見たか

2007-03-11 14:52:44 | 時代小説
宇江左真理著『雨を見たか』 文芸春秋社 2006.11.30 1600円

本の題名が『雨を見たか』とくれば僕らの世代はほぼ自動的にCCRの往年の大ヒット作『雨を見たかい』を思い起こす。前回の表題『黒く塗れ』がストーンズの『Paint it black』からつけたように、宇江左真理さんの頭には当然CCRの曲がイメージされたに相違ない。
日本語の使い方としては「雨を見たか」というのはあまり一般的とは思われなく、やはり英語の直訳からきた感じはする。本編の中でも使われているが特に違和感はない。むしろ時代小説にこんな感覚を持ち込んだほうが面白いと僕は思うのだがいかが?
ま、これは余談ではあるが。

さて、本編であるが伊三次とお文の息子伊与太と不破といなみの娘茜はすくすくと成長し、特に茜のやんちゃぶり(かなり破天荒ではあるが)が描かれて時が確実に経過していることが分かる。
子供が成長するということは親がそのぶん年を取るということで、いまだにお座敷に出ているお文には“年増芸者”と客からあからさまに言われて腐ることもある。
そんなお文をからかう伊三次ではあるが彼自身も性格的には円熟味を増してきたようだ。ふたりの関係は互いを思いやる好ましいものになっている。

成長したといえば不破の息子龍之進で、見習い期間も終えていっぱしの同心になろうという気概に燃えている。
例の「本所無頼派」との対決もあり、本編での重きは完全に龍之進におかれている。前作の「君を乗せる船」の感想でも述べたが、これでは「龍之進捕物余話」になりかねないので今後はまだまだ伊三次や不破の活躍を見たいものだ。