百田尚樹著『海賊とよばれた男 上』講談社 2012.7.11 第一刷 1600円+tax
オススメ度 ★★★★★
恐らく百田尚樹氏の記念碑的作品となるであろう本作の感想を書くにあたって、凡庸な感想文を書く気になれない。感想というよりもいくつかの留意点を挙げようと思う。
本作はみなさんも御存じの通り実在の人物、出光興産の創業者である出光佐三氏のドキュメンタリー・ノベルである。
僕自身彼の存在を知らなかったし著者である百田氏も実はよく知らなかったらしい。
それでは何故百田氏が出光佐三氏を題材に取り上げたのか?この点が僕の第一に湧いた興味であった。
その答えがあった。
雑誌Voice 2013年1月号より抜粋
『インタビューア: すでに21万部突破のヒット作『海賊とよばれた男』は、石油などを精製、販売するほかにさまざまな事業を手がける国内企業・出光興産の創業者、出光佐三という実在する人物の生涯を下敷きに書かれています。なぜ、彼を小説に書きたいと思われたのですか?
百田: いま書かなあかんと思ったんです。とにかくいまの日本人に彼の生き方をみてもらいたい。それだけ。
この日本は、バブルが弾けて以降、もう長いこと、国民全体が自信を失っていますから。暗いじゃない? しかも2011年、東日本大震災があって、あそこでもう、壊滅的に「もうダメだ」という思いが国土を覆ったような気がした。だからこそ、出光佐三という男や彼と同じ時期に立ち上がった多くの人たちのことを知ってもらいたかった。戦争で負けて、国民のうち300万人もが命を失い、千数百万人もが失業者になった。その人たちって……会社はない。住む家はない。もちろん、カネもない。コメもない。戦前から築き上げたほとんどの資産を失ってしまったという、そんななかから立ち上がるって、考えられます? 欧米に追いつくなんて絶対に考えられもしない状況でしたよね。しかし、日本はそこからたった20年で追いつき、追い越したわけですからね。
本書で中心に据えたのは昭和28(1953)年に起きた「日章丸事件」です。(以下省略)』
そう、百田氏は今だからこそ出光佐三氏に着目したそうだ。上の引用文の最後に述べているように、直接的なきっかけとなった事実は昭和28年の「日章丸事件」であったわけだが、この事件は下巻で語られる。上巻はそこに到るまでの序章であるのだが、その序章がまた凄い内容で読者を驚愕させる。本当にこのような人物が我が国に存在したのか!?と。
物語の内容は割愛させていただくが、P352で描かれる部分に作者の“遊び心”を発見して思わずニヤリとしてしまった。
それは上海の海軍航空基地でのほんの小さな出来事。
『零式艦上戦闘機(ゼロ戦闘機)の若きパイロットに出会う。二十歳をわずかに過ぎたくらいの背の高い痩せた男だったが、全身から精悍な空気が漲っていた。胸の名札に「宮部」と書いてあるのが見えた。』
と。
分かりますよね?あの「永遠の0」の若き日の宮部少尉との一瞬の出会いであったわけです。
オススメ度 ★★★★★
恐らく百田尚樹氏の記念碑的作品となるであろう本作の感想を書くにあたって、凡庸な感想文を書く気になれない。感想というよりもいくつかの留意点を挙げようと思う。
本作はみなさんも御存じの通り実在の人物、出光興産の創業者である出光佐三氏のドキュメンタリー・ノベルである。
僕自身彼の存在を知らなかったし著者である百田氏も実はよく知らなかったらしい。
それでは何故百田氏が出光佐三氏を題材に取り上げたのか?この点が僕の第一に湧いた興味であった。
その答えがあった。
雑誌Voice 2013年1月号より抜粋
『インタビューア: すでに21万部突破のヒット作『海賊とよばれた男』は、石油などを精製、販売するほかにさまざまな事業を手がける国内企業・出光興産の創業者、出光佐三という実在する人物の生涯を下敷きに書かれています。なぜ、彼を小説に書きたいと思われたのですか?
百田: いま書かなあかんと思ったんです。とにかくいまの日本人に彼の生き方をみてもらいたい。それだけ。
この日本は、バブルが弾けて以降、もう長いこと、国民全体が自信を失っていますから。暗いじゃない? しかも2011年、東日本大震災があって、あそこでもう、壊滅的に「もうダメだ」という思いが国土を覆ったような気がした。だからこそ、出光佐三という男や彼と同じ時期に立ち上がった多くの人たちのことを知ってもらいたかった。戦争で負けて、国民のうち300万人もが命を失い、千数百万人もが失業者になった。その人たちって……会社はない。住む家はない。もちろん、カネもない。コメもない。戦前から築き上げたほとんどの資産を失ってしまったという、そんななかから立ち上がるって、考えられます? 欧米に追いつくなんて絶対に考えられもしない状況でしたよね。しかし、日本はそこからたった20年で追いつき、追い越したわけですからね。
本書で中心に据えたのは昭和28(1953)年に起きた「日章丸事件」です。(以下省略)』
そう、百田氏は今だからこそ出光佐三氏に着目したそうだ。上の引用文の最後に述べているように、直接的なきっかけとなった事実は昭和28年の「日章丸事件」であったわけだが、この事件は下巻で語られる。上巻はそこに到るまでの序章であるのだが、その序章がまた凄い内容で読者を驚愕させる。本当にこのような人物が我が国に存在したのか!?と。
物語の内容は割愛させていただくが、P352で描かれる部分に作者の“遊び心”を発見して思わずニヤリとしてしまった。
それは上海の海軍航空基地でのほんの小さな出来事。
『零式艦上戦闘機(ゼロ戦闘機)の若きパイロットに出会う。二十歳をわずかに過ぎたくらいの背の高い痩せた男だったが、全身から精悍な空気が漲っていた。胸の名札に「宮部」と書いてあるのが見えた。』
と。
分かりますよね?あの「永遠の0」の若き日の宮部少尉との一瞬の出会いであったわけです。