sigh of relief

くたくたな1日を今日も生き延びて
冷たいシャンパンとチーズと生ハム、
届いた本と手紙に気持ちが緩む、
感じ。

映画:ホールドオーバーズ

2024-07-25 | 映画


最初に男子校の寮で、学生たちが複数出てきても誰が主役かわからなくて、
馬鹿ボンのクソ差別主義者(顔はかわいい)の子が成長して変わっていく話かなと思ってたら、
主役は別の子だった。笑
でもこの子がとても良かった。尖ったナイフのようなところもある繊細が素晴らしい。
若い時のジョニー・デップやシャラメ君がやるとぴったりくるような
傷つきやすい孤独な問題児の役を、ばっちり好演してた。
周りの大人達はもちろん文句ない演技。
細かいエピソードもそれぞれよくできてて、
たくさんの小さなちょっと心に残るいいシーンをアルバムに綴って行くような描き方。
強烈な印象で心に残るというより、少しずつ心が温まっていくような優しいタッチです。

1970年冬、ボストン近郊にある全寮制のバートン校。
クリスマス休暇で生徒と教師のほぼ大半が家族と過ごすなか、生真面目で融通が利かず、生徒からも教師仲間からも嫌われている考古学の教師ハナム(ポール・ジアマッティ)は、家に帰れない生徒たちの“子守役”を任命される。
学校に残ったのは、勉強はできるが家族関係が複雑なアンガス・タリー(ドミニク・セッサ)。
食事を用意してくれるのは寮の料理長メアリー・ラム(ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ)。メアリーは一人息子のカーティスをベトナムで亡くしたばかり。息子と最後に過ごした学校で年を越そうとしている。
クリスマスの夜。「ボストンへ行きたい。スケートしたり、本物のツリーが見たい」と言い出すアンガス。はじめは反対していたハナム先生だが、メアリーに説得され「社会科見学」としてボストン行きを承諾する。
ボストン、考古博物館にて。「今の時代や自分を理解したいなら、過去から始めるべきだよ。歴史は過去を学ぶだけでなく、いまを説明すること」
アンガスはハナム先生の言葉を真剣に聞き入る。「とてもわかりやすい。授業でも怒鳴らずそう教えてよ」
古本市、ボーリング場、映画館……ボストンを楽しむふたり。しかし、実はアンガスがボストンに来たのには、ある目的があった。ハナム先生も二度と会うはずのなかった大学時代の同級生と偶然出会う。お互いに誰にも言っていない秘密が明かされていく……。
(公式サイトより)

息子を亡くした料理長の黒人女性が仕事のあとに一人テレビを見る姿に彼女の空虚が感じられるし、
ポール・ジアマッティの名演は、彼の体臭が感じられるほどだけど、
彼の不器用で運が悪い人生の理不尽を受け入れて生きる姿に世の中の不公平を思う。
一方世の中を舐めきったお金持ちの悪ガキもいて、どうにもならない不平等に
やりきれない気持ちにもなるけど、全体としてはものすごく暖かい映画なのです。
貧しさも不運も不平等も奪えないものを持っている人たちを肯定する映画だ。

食堂のクリスマスのシーンや、駐車場のケーキのシーンも良かったけど
クリスマスに招かれた家の子供たちが集められている地下の部屋で
ちょっとかわいい女の子といい感じになって視線を交わすシーンがよかったなぁ。
あの女の子、もっと出してほしかった。
70年代の話だけど、70年代に撮られた古い映画を見ているような気持ちになりました。
いつの時代も変わらないものを誠実に地味に描いているからだと思う。
こういう真っ直ぐで王道な暖かい映画を好きだという人は信頼できると思う。

監督は「アバウト・シュミット」「サイドウェイ」や「ネブラスカ」のアレクサンダー・ペイン。
映画に文句はないけど、配給的に、クリスマスシーズンに見たかったなーとは思う。
クリスマスシーズンに家族や恋人や一人で、見てほしいです。

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