老いの途中で・・・

人生という“旅”は自分でゴールを設定できない旅。
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植物と人間のつながり-Ⅱ “植物と色彩”               その1  ~日本人の色彩感覚~

2017年01月17日 20時22分14秒 | 園芸福祉・植物とのつながり
 前回は、“植物と数学”というテーマでしたが、今回から暫くは“色彩”です。

 植物に関わっている皆さんは、植物の持つ多彩な色に惹かれておられると思いますが、私も花壇製作に際して植物の配置場所を決める時や、植物を利用して色々なクラフトを創る時には、植物の色彩には絶えず気を使っています。

 しかし、私たち日本人の色彩感覚は欧米の人たちとは少し異なるようなので、その原因なども調べてみました。

 日本色彩研究所編/福田邦夫著『日本の伝統色』には465種類の色が挙げられていますが、この内、植物に由来していると思われるものが約半数に達します。
植物そのものの色彩に由来するものもありますが、様々な植物を材料として染色された色に拠るものも非常に多くて、日本人と植物の繋がりの深さを改めて感じます。
 
 これらの日本人の色彩感覚のデリケートさについては諸説ありますが、民族の色彩感覚は気候風土(自然)、宗教、生活環境などによって、複合的に生まれるものだとすれば、日本人の色彩感覚に影響を与えた要因としては、下記のようなことがピックアップされるのではないでしょうか。
 ◆季節の移り変わり     ⇒  多彩な色彩とのふれあい
 ◆降雨が多く、湿度が高い  ⇒  植物の多様性と、(遠景の)にじみ
 ◆自然を敬い、山や川や樹木にさえ魂を感じる世界観  ⇒  観察力と敬意
 ◆変化するもの、消えてゆくものに美を感じる民族性  ⇒  多様な色彩感、侘び、寂び

 乾燥しているので遠景まではっきり見える土地で、石文化の中で生活をし、主に原色をベースとした色彩感覚を持っている西欧民族とは明らかに異なる色彩感覚を身につけてきたのでしょう。

 中でも、特異的なのは、中間色に多くの色の違いを感じていることではないでしょうか。これには上記の自然的な要因の他にも、社会的な要因として7世紀初頭の「冠位十二階」や、江戸時代に出された「奢侈禁止令」などが大きな影響を与えているようです。

 これらの法令により庶民が使用できる色彩は、茶色、鼠色、藍色などに制限されるのですが、ここからが日本人の真骨頂です。
許された範囲の中でのお洒落を楽しむために人々は地味な色を“粋”としてとらえることにし、“派手な色が禁じられたのなら、派手な色をダサいと思い、地味な色をおしゃれと考えればいい”。そんな感じだったのではないでしょうか。

 例えば、日本を代表するサクラの花の色。現代人は“淡いピンク”という表現が多いと思いますが、江戸時代の表現では「わずかに赤みを帯びた明るい灰色」ということになり、鼠色に分類されるようです。
このように、微妙にニュアンスを変えて増えていく茶色や鼠色は、侘び・寂び文化の影響もあり,「四十八茶百鼠」といわれるくらいの多様性を見せたようです。(まさ)