素浪人旅日記

2009年3月31日に35年の教師生活を終え、無職の身となって歩む毎日の中で、心に浮かぶさまざまなことを綴っていきたい。

「道徳教室」(高橋秀実著・ポプラ社)一気に読み進む

2022年07月09日 | 日記
 笑えない内容なのだが、笑いながら読み進めた。笑いのツボを押さえられたのは久しぶりのことで、突然笑い出す私に、近くいた妻は「何に?」と怪訝な顔をするが、「大丈夫、大丈夫、本が笑えるからだけやから」と答えるのみ。何故かを解説するのは不可能。

 一番面白かったのは5限目「カチカチなファンタジー」。精神科医の春日武彦さんの「僕はね、『道徳』はあってもいい、と思うんですよ」という言葉から始まった。高橋さんは、これまでの春日さんの言動から「道徳」の教科化には反対だろうと思っていたので意外だったみたいだ。
その後に続く春日さんの言葉。
 「だって学校って、もはやファンタジーの世界じゃないですか」  *ファンタジー→空想、幻想
 「生徒たちの中には、いろいろなタイプの子がいます。それを一括して教育できるはずないわけで、それをやっているのは途方もない理想論。
  ファンタジーですよ」
 「『道徳』はたぶん日本全体の心のアリバイでしょう。こういうものもちゃんとやっています、ということで」

 そのアリバイづくりに付き合わせられる子どもは気の毒かというと「そうではない」と春日さんは「道徳教育」の持つ意義を次のように話す。
 「道徳の教科の時間では、道徳を身につけるのではなく、道徳的なことに対する免疫を獲得する。道徳教育とは免疫をつけて丈夫な子に育てると
  いうことです」

 精神科医医療の現場ではこのような免疫のない人が多いと言う。ここで「ダブルスタンダード」という言葉が鍵となる。日常生活では局面に応じてマルチな基準が必要になるので「ダブルスタンダード」はマイナスの言葉ではない。

 春日さんが接する患者さんには、シングルスタンダードで「プライド・こだわり・被害者意識」という共通点を持っているらしい。正しさゆえに「プライド」が高く、正しさに「こだわり」を持ち、そのせいで何事もうまくいかないのだが、その原因を周囲の無理解だと解釈して「被害者意識」に苛まれる。被害者意識は正しさの証明になるので悪循環に陥る。

 そこから脱けださせるためには、話をよく聞き、肯定したうえで別の選択肢を提示することだという。

 この話から、高橋さんは菅義偉元首相が真っ先に浮かんだと、菅さんの言動について分析をしていくのだが首肯すること大であった。   
コメント
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