素浪人旅日記

2009年3月31日に35年の教師生活を終え、無職の身となって歩む毎日の中で、心に浮かぶさまざまなことを綴っていきたい。

米原万里対談集「言葉を育てる」(ちくま文庫)を読みながらマシーンでウォーキング

2012年03月15日 | 日記
 先週、結構体力面では追い込んだので今週は軽めにいこうと思っていたのに昨日は途中からペースアップをしてしまい60分10kmを久しぶりに達成した。今までならかなり気合を入れてのぞまないと無理であったが、だらだらと始めて達成できたことに自分自身驚いた。今日はペースダウンしないとだめなので本を読みながらマシーンを歩くことにした。

 先日、TSUTAYAに行った時についでに買った米原万里対談集「言葉を育てる」が手頃だと感じた。通訳から作家へと転身し6年前に56歳で亡くなった最初で最後の対談集である。対談相手は11人。長さも適当だし、話し言葉は“ながら”読みにはうってつけ。

 小森陽一さんとの対談で、彼女の強烈な個性の原点がわかった気がした。林真理子さんとの対談で人間味が伝わってきた。今日読んだ中で一番おもしろかったのが児玉清さんとのもの。超読書家である二人による本の魅力への語りはここち良いリズムで入ってきた。また“言葉の力”に関しての部分も納得である。

米原:企業とか官庁が不祥事を起こして幹部が頭を下げて謝る時に、全然心に響かないじゃないですか。通訳やっていてよくわかるのは、会議でも字句は一応整っているのに全然響かない言葉があるんです。言葉が相似形だというのが、その時わかるんです。

児玉:言葉が相似形。

米原:言葉を発する前に、思いとか考えがまだ言葉という形を取らない状態がある。

児玉:伝えられる前に。

米原:ええ。もやもやしたものが言葉を得て発した時はすごくうれしい。そうして発せられた言葉は、心と頭にしみていくんですよ。ところがその経過を経ない言葉は、しみ通っていかないの。

児玉:企業や官庁の人たちが、一斉に立って「誠に申し訳ありませんでした」って言うけれども、むしろ謝った瞬間に、こっちは冷めちゃうというか引いちゃう。

米原:気持ちを何とか伝えようと絞り出して生まれた言だけなんです葉ではなく、単にこういう状況で言うべき決まり文句をお手軽に当てはめているだけなんです。でも、心と頭を経ない言葉は心と頭に届かない。


そして、西木さんとの対談での通訳の裏話にニヤニヤしたり感心したりしている間に時間はアッという間に経ち、ほど良い運動となった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする