駅や路上で食べ物を配ることはかなり辛いことがある。
この人にあげて、この人にはあげない、その違いをあげない人に説明するが、それを受け容れてくれない、受け容れることができないほど空腹の人の前に立つときほど、辛いものはない。
それは相手にとっては差別だからである。相手が差別だと思ったら、それは差別だからだ。そして、相手を傷付けることになり、自分をも傷つける。
ほんとうに悩み、痛み、苦しむ。この人は助けて、この人は助けない。そのことを理解してくれる人のまえでは安堵の思いになるが、ときに麻薬中毒者は、それを受け容れられるものは少ない。
彼らもほんとうに厳しい世界に生きている。そして、常に空腹だろう。
マザーはこのボーダーラインをどう思っていたのだろう。助ける人と助けない人、その境目を行き来する人は少なくはない。
貧しい人のなかのもっとも貧しい人のために働くということは、実はほんとうに難しい。そして、厳しく苦しいことでもある。
きっと、マザーもほんとうに胸を痛めながら働いたことだろう。
そのことを思う。そのことを考える。そのことを祈る。
今日は暖かな日差しが差している。駅はとても静かだった。病院では二人亡くなっていた。