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ローカル線の旅の話~その6 高知県 土讃線~

2014-09-18 23:29:08 | 町と旅

 ローカル線の旅の話。第六回。今回は高知県です。

 残暑厳しい季節、高松から高知行きの特急に乗った。香川県と高知県を結ぶ主要路線である土讃線(どさんせん)は電化されていないので特急も鈍行も電車ではなくディーゼルカーで、しかも単線。幹線だけど実態はローカル線である。
 雨が少ないので溜池の多い讃岐平野を抜けて山間に入ってきた土讃線は、高知県に入ると更に山深い風景に車窓を変えた。谷はとても険しく頂は高い。100m以上はあるかという高さ。深いところだと200mほどの高さだという。そんな渓谷を川に沿って線路は左右にカーブしながら続いている。
 私は大歩危(おおぼけ)という駅で降りた。谷が深く急な斜面を形成しているので駅は川面に近い低い所にある。字面の通り、鉄道のない大昔は歩くのがとても難しく危険な所だったのだろう。マイクロバスが回転できるくらいの狭さしかない駅前広場から延びる道路は駅前から急な坂道になっている。基本的に平坦な部分のない駅前風景である。
 ここから更に奥に入っていくと祖谷(いや)という集落があり、そこは平家の落人が流れ着いて住んだという言い伝えがある。かずらを編んで作った吊り橋「かずら橋」というものもあり、嶮しくそびえる谷に架かっている。
 そういう観光地に向かうのも悪くないけれど、暑くて仕方がないので駅前の大衆食堂に入った。古びたサッシの戸を引くと、飾りっ気のない店内は何十年前の内装といった造りだ。食堂の片隅にあった本棚には1980年代の少年漫画の単行本が並んでいる。手書きのメニューから私はアメゴ定食というものを注文した。
 出て来たのは身がプリッとしていて脂の乗り具合がさっぱりした川魚で、美味しかった。店は空いていたが、それは単に時間帯が昼食時から少しずれていたためだろう。昼食も済んだところで、特急で一つ先の大杉駅に行ってみることにした。
 大歩危ではとても深かった谷は大杉のあたりから川幅とともに広がり始め、線路の周りにも少しばかりの平地が広がっていた。それでも、景色はまだ渓谷と呼べる深さを保ち、夏の夕方の日差しが木々を斜めから包み込んで淡く照らしている。大杉の集落は駅のまわりに京成されている平地に広がっている。。集落を一回りしてから川を橋の上から眺めた。せせらぎの音が残暑を忘れさせてくれる。冷えたラムネが飲みたくなるような、そんな緑の風景だ。

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