3.11以後の日本

混迷する日本のゆくえを多面的に考える

介護離職ゼロをめざすのなら

2016-09-04 16:32:25 | 現代社会論
厚労省のサイトでは、介護離職ゼロについて次のように述べている。


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~「介護離職ゼロ」の取組で目指していること~

 現在、我が国の構造的な問題である少子高齢化に真正面から挑み、「希望を生み出す強い経済」、「夢をつむぐ子育て支援」、「安心につながる社会保障」の「新・三本の矢」の実現を目的とする「一億総活躍社会」に向けた取組が進められています。このうち、「安心につながる社会保障」に関連する取組の一環として、2020年代初頭までに家族の介護を理由とした離職の防止等を図るべく「介護離職ゼロ」を推進していくこととしており、必要な介護サービスの確保と、働く環境改善・家族支援を両輪として取り組んでいます。
 介護離職の理由には、「仕事と介護の両立が難しい職場だった」、「自身の心身の健康状態が悪化した」というものがありますが、その中には「介護サービスの存在・内容を十分に知らなかった」という理由もあり、こうした状況を解消していくために介護に関する情報提供体制を整備していく必要があります。こうした背景から、介護と仕事の両立を希望するご家族の不安や悩みに応える相談機能の強化・支援体制を充実させるために、介護が必要になったときに速やかにサービスの利用ができるよう、国及び自治体において、介護保険制度や介護休業制度の内容や手続きについての住民の皆さんへの周知拡大を推進していきます。

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介護離職ゼロに必要なのは、特養の増設、在宅医療福祉の充実などが考えられる。

特養を増設すれば、待機者は減って家族は安心して仕事を続けられるというものである。
特養増設ができればこんなによいことはないだろう。しかしだ。増設するためには土地、建設費用だけでなく、そこで働く人も確保しなければならず、困難が待ち受けている。
建物を作って、入居したい人はいるのに、そこで働いてくれる人がいないとしたら、大問題である。
福祉の現場は慢性的な人手不足に苦しんでいる。低賃金、労働条件の悪さ等で他の業種に比べて著しく離職率が高いうえに、このところの労働市場の非正規化で、介護職の50%ぐらいは非正規の人たちで構成されており、それは、専門性の追求、蓄積という側面でも問題なのである。

望む人がすべて特養に入ったとしても、施設入所を望まない人も大勢いる。高齢者は住みなれた自宅で最後までというのが多くの人の願いである。
だれも、人生の最後にいたって、いくら24時間のケアだといっても見知らぬ土地、見知らぬ人々に囲まれるのはかなり抵抗があるだろう。
たいていの高齢者は、入院→退院→自宅というのが通常の道筋である。
そこで、在宅医療や福祉サービスの充実というのが必要になる。
同居の独身の息子とか、近くに住む共働き夫婦が、介護が必要な親を仕事を継続しながら、どこまでやれるか、ということになる。
親を大切に思う気持ちは皆共通しているだろうが、なにしろ、50歳代ともなれば、職場の責任はますます重く、そう簡単に休むことも許されない。たとえ、介護休業制度があるにしてもだ。多くの労働者は有給を使ったりして、乗り越えようとする。
かつて家庭内の介護力として期待されていた「嫁」も、今は有力な労働力として社会で期待されているので家にもどって姑の介護をやることは不可能である。だいたい、少子化できょうだいがすくないので、親の世話をすることができる子ども自体がいない。夫の親より、自分の親を介護しなければならないようなこともあるだろう。「嫁」=娘は自分の親を、夫は自分の親をと役割分担をせざるを得なくなっている。そんなこんなでつないでみても、毎日毎晩、見守りが必要であれば、1週間ぐらいはできるだろうが、そのうち、お手上げ状態になるのが見えている。
家族の手がなくてもやれる在宅医療と福祉サービスの充実が必要になる。それがなければ、家族はぎりぎりまでやって、最後は介護のために離職ということになってしまうのである。
しかし、今の介護保険や関連のサービスをみると、家族がまず最初の戦力として期待されているように思える。介護保険のサービスが貧弱で、相当重い介護度であれば別だが、軽度だと明らかに介護保険外になってしまう。結局家族が担うことになる。親の介護のために離職することを強いるシステムとなっているとしか思えない。
介護認定は不正確であるし、看取りなどには全く対応していない。それにちょっとでもがんばって自立できそうだとすぐサービスは減らされる。社会保障費用の抑制政策のためだろう。これでは家族はいつでも離職する体制でいなければならず、介護離職ゼロなどというのは机上の空論である。

一人暮らしの高齢者はもちろん、家族がいても、親の介護が必要になる前と同様な働き方ができなければだめなのである。介護離職ゼロはそういう体制がとれるかどうかが問われているのであり、簡単なことではないのである。
安部首相も厚労省の役人も一度、親の介護をしながら仕事を継続するということをやってみたほうが良いのである。今の介護保険がいかに問題があるか、よくわかるというものである。

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