3.11以後の日本

混迷する日本のゆくえを多面的に考える

児童養護施設「若草寮」の施設長が刺されて亡くなった 日本の児童福祉の問題なのか?

2019-02-27 10:35:16 | 現代社会論
2019.2.25
児童養護施設で殺傷事件がおきた。
東京・渋谷区幡ケ谷の児童養護施設「若草寮」で施設長の大森信也(46)さんの顔や胸などを刃物で切り付けたとして殺人未遂の疑いで現行犯逮捕された。大森さんは病院に搬送、まもなく死亡。警視庁によると、この施設には小学生から18歳までの29人が入所している。容疑者(22)は4年前までこの施設で生活していたということ。容疑者は「施設の関係者であれば誰でもよかった」などと話しているという。

若草寮というのは、歴史のある日本を代表するような養護施設である。
創設者は山田わかで、戦前から女子の更正事業に尽力した人として有名である。

児童養護施設は、親が離婚したり、母子世帯で子どもをそだてられないとか、親が病気など、いろいろな事情があって親元を離れる子どもが暮らす施設である。昔は孤児院といっていた。
最近では、もっとも多いのは親からの虐待されている子どもである。
野田市の小学四年生の女子がつい先日親からの暴行で死んでしまったが、彼女のケースなどは、親から引き離して児童養護施設で暮らすほうが死ななくて良かったと思われるが、そういう子どもたちの最後のセイフティーネットとしての施設なのである。

児童相談所の児童福祉司も足りないが、児童養護施設の職員も足りない。
そんななかで「若草寮」は良い施設と言われていたと思われる。
亡くなった大森さんは施設長で、全国の養護施設の職員のなかでもとても熱心な人でリーダー的な存在で、有名だったという。

そういう「若草寮」で、おきてしまったこの事件にみな心が痛んでいる。
私は、この容疑者は逆恨みとしか思えない。

児童養護施設は、児童福祉法の施設なので、18歳、つまり高校卒業までは入居できるが、その後は大学や専門学校、就職することになる。
大学に行くのはほんの一握り、専門学校も多くはなく、ほとんどは就職していくという。
それでも東京の施設は少しはゆとりがあるので、子どもに学習ボランティアがつくとか塾にいくとかして、全国に比べると大学進学率は高いという。

この容疑者は施設を出てから郵便局に就職したらしいが、1ヶ月でやめている。
その後、東村山で一人暮らしをしていて、賃貸アパートにすんでいたらしいが、その部屋を破損して、退去、その後ネットカフェをさまよい、今回の犯行に及んだという。

この4年間で何が彼に起こったか?
それは、統合失調症の発症ではないかと思うのである。
部屋をぼこぼこにしてしまったというのを読んで、容疑者はひどい被害妄想に苦しんでいた。
金もない、行く場もない、元居た施設にいって恨みを晴らすという妄想に取り付かれてしまったのではないか。

これは、精神保健福祉の領域ではないか。
アパートを破損した段階で病気を疑い、警察は保健所や精神病院と連携して入院治療に結びつければ今回の悲惨な事件は避けられたのではないか?

暴力事件の根底には、精神を病んでいる場合が多いが、警察にも福祉関係者にもそういう知識が乏しく、しかも、精神病院も病院の外へのサービスはほとんどないし、人権を守るということで本人の承諾を得られないと入院ができないようなしくみがあり、むやみに拘束されないという人権尊重は重要だが、そのために治療が遅れ、悲惨で重大な事件が起きてしまっているように思うのである。

子どもの事件をみるたびにわが国は児童福祉関係の費用が少なすぎると思う。加えて精神保健福祉関係の費用も少ない。
保育の無償化より保育園の充実、それより、もっと重要なのは児童福祉費用などの社会保障費用の増額である。
心底そう思うのである。

はやぶさにも予算をと思うし、高齢者の心中事件を読むと高齢者福祉にも予算をと思う。

カルロスゴーンのようなところにあんなにたくさんの給料を払う必要はまったくない。
ベルサイユ宮殿で再婚式をする金があるなら、児童相談所建設や児童養護施設の充実、精神保健福祉のサービスの充実、科学技術のための予算などに費やすべきである。
富裕層からがっつり税金を取るべきである。

私は富裕層ではないが、日々の暮らしはなんとかやれるくらいの層である。それでも私は消費税でも所得税でもきちんと払いますと思うのである。
社会保障費用にもっとお金を投入しないと日本は大変なことになるのである。
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