今日の朝日の耕論で和歌山県知事がいわゆる「和歌山モデル」について語っていた。
*************************
そもそも感染症への対応は、感染症法で定められた都道府県知事の権限であり、義務です。知事が指揮するのは当然で、ことさらリーダーシップを発揮しなければという意識はなかったですね。
「和歌山モデル」があるとすれば、早期発見、早期隔離、徹底した行動履歴調査という基本に忠実にやることです。福祉保健部技監の野尻孝子さんが保健所長出身で、現場をよく知っていたのが非常に良かったと思います。
国は「37・5度以上の発熱が4日続くまでは受診を控えて」と言っていましたが、和歌山県はその方針に従わない、とはっきり言いました。風邪気味の人は、どんどん近くのクリニックに行って、X線やCTを撮ってもらう。肺炎の疑いのある人だけを保健所でPCR検査にかける。そうやって絞り込むほうが合理的ですから、国が何と言おうと従いませんでした。
5月初め、大阪府の吉村洋文知事が休業要請の早期解除を打ち出しました。感染が収束していない時点で「出口」を言うのは勇気が要ったでしょう。ただ、休業要請の緩和には、保健所が機能していることが大前提。保健行政の立て直しも一緒にやるべきですと助言させてもらいました。
第2波対策で一番重要なのは、感染症法の原点に戻ることです。保健所の権限で早期隔離ができることが、日本の最大の武器です。政府は接触の制限だけを強調しましたが、営業自粛、行動自粛だけだと、経済と生活が破壊されてしまう。保健医療行政が機能していれば、多少自由に出歩き、飲食しても、感染者が出ればすぐに対応できます。
**************************
和歌山県知事の言うことは至極全うである。感染症の基本をまもること、信頼できる保健所経験の豊富な保健福祉部の技監がいたことも幸運だったのだろうが、とにかく保健行政を守りながら科学的なデータをもとにきちんと判断をし、実行すればよいのだ。国の「指導」などこの際どうでもよい、われわれの判断を優先するという強さ、地方自治体の長というものはかくあるべし、これが和歌山モデルの核心なのではないか、と思う。有田病院関係者も保健福祉部と一緒になって実行したことも功績だ。
中央にこびへつらい、厚労省のいうことを聞いていればたとえ失敗しても地方自治体の責任は逃れる、と思っている知事は多い。県民の生命や生活が第一、成功も失敗も知事の考えでいく、責任は私がとる、という強い意思と判断力が求められる、それが知事というものであろう。
もし、失敗したら、そんなことはそのときにならなければわからない。そのときどきに最高の判断と思える根拠を示して判断すれば、誰もが納得するだろう。自らの判断に責任をもつ、それを含めて知事の仕事なのだ。判断を恐れてはいけない。東京にもほしい知事なのである。