3.11以後の日本

混迷する日本のゆくえを多面的に考える

マクロ経済学者による震災復興政策の提言

2011-05-24 09:42:38 | 東日本大震災
5月23日付の日経(経済教室)で、日本を代表するといってもよいマクロ経済学者たち(現代経済研究グループのメンバー)が、震災復興政策について共同提言している。きわめて的を射るリアリスティックな提言で、震災後の日本の方向性を考える上で参考になる。そもそも復興構想委員会から抜けていたのはマクロ経済の視点であった。作家や宗教家が夢を語るのはよいし、社会学者が、家族や地域という社会集団から復興をイメージするのはよいかもしれないが、しかし、復興は現実の問題である。現在の経済社会システムを踏まえつつ、いかなる財源を基盤とし、福島の補償を確実にし、さらに日本経済を急激に失速させることなく、オールタナティブなエネルギー政策とまちづくりを構想できるか、しかもそれを短期中期長期を視野にいれて構想できるか、が問題である。

1.市場メカニズムを活用せよ
2.持続可能性、つまり短期で痛みのないものがかえって長期には持続可能性を脅かすことを考えろ

ということである。リーマンショック後、市場メカニズムに対してはアレルギーがあるところもあるが、しかし、政府介入を視野にいれつつ市場を活用する方法を探るべきとしている。


①コスト負担について
 復興国債は次世代にツケを回すことになるので、やめたほうがよいということ
 そして、復興連帯税をかけて、国民広く薄く負担してもらう。
 消費税、固定資産税、法人税減税の先送りの提案である。そして課税最低限の引き下げをとのことである。
 
 高所得の夫をもつ小遣い稼ぎパート主婦にも課税せよということであり納得する。

②電力対策
ピーク・ロード・プライシンズでピーク時料金を上げるという。
 長期休暇を制度化する。つまり長期休暇が可能な業種、大学などは最たるものかもしれないが、そういうところに勤める人は長期休暇をとって電力不足に協力するというもの。たとえば大学でも夏休みを長くして、冬休みや春休みをやめればなんとかなりそうだ。学園祭などやめたほうが学生はよく勉強するようになってよい。学問の秋にミスコンだの、模擬店だの、くだらないので学園祭などはまずやめよう。
さらに、電気料金をあげ、需要抑制するだけでなく、自家発電機を持つ企業が、24時間電力を使いたい企業に流れるしくみをつくるというもの。電力料金の引き上げ分を賠償基金に直接入る仕組みを作るという手も提案している。高くなった電気料金、それでもその分が福島の人々の生活支援に直接つながるという道筋が見えれば、国民は納得するかもしれない。少なくとも、私は、高くても払うだろう。それが福島支援につながるなら。

さらに電力利用権(削減回避権)を大口需要者間で売買させるという温暖化ガスの排出量取引の手法を導入するというもの。

③まちづくり
 震災特区を活用してエココンパクトシティを実現する。
 脱炭素社会モデルの実現というのは理解できる。
  
 私も以前このブログで提案したが、環境を軸にした適度な人口密度脱車社会のまちづくりはよいと思う。町の中心にこそ、公共施設(役所、病院、福祉施設、学校等)をすえ、商業施設がその周りを囲み、そのさらに外苑に住宅街をつくる。低層の集合住宅、一人ぐらし高齢者も老夫婦世帯も子どもを育てる世帯も障がいのある人もそこに暮らす。さらにその外縁に農業や工業など地域に根付いた産業を位置付ける。北欧の街かどみたいだ。

ただ、風景としてはどうなのか。歴史ある街並みを排し、コンパクトな街は私たちの東北の風景として受け入れられるのか、それが問題だ。われわれはヨーロッパの街並みをつくろうとしてはいけない。また、東京郊外に立ちならぶ殺風景な分譲住宅、区画整理された街並みなんてなんの魅力もない。いくらエコでもコンパクトでも、もっと土着の風景を、といわれれば身も蓋もない。曲がりくねった道、ごちゃごちゃした小さな住宅、ぜんぜんコンパクトではないし整然とした街並みではないが、生活のにおいのする街並みをと考えると簡単ではない。

市場を活用して、次世代にはツケを回さないしくみをつくること。
被災地の痛みをわがこととし、その痛みは今の私たちでなんとか分かち合いやりくりしよう。30年後、がん患者は確実に増えているだろうから、ますます30年後の人々にツケは回せない。





 


コメント
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