サッカー日誌 / 2007年06月15日


田村修一さんの新しい本 ~ フィリップ・トルシエ『オシムジャパンよ!』


★バランスのとれた評価と意見
 『オシムジャパンよ! 日本サッカーへの提言』(アスキー新書)を読んだ。2006年ワールドカップ後を総括したものの中で、もっとも、しっかりした内容の本である。
 フィリップ・トルシエの著作として出ているが、「取材・構成」となっている田村修一さんの本だと言ってもいいだろう。
 田村さんは、ぼくたちサッカーライターの仲間である。フランス語が得意なので、トルシエが、日本に来たときから、ずっと密着取材し、2002年日韓大会のあとも、トルシエと親しくつき合っている。トルシエに関する本を何冊も書いている。
 今度の本の内容は、主として、ジーコ・ジャパンとオシム・ジャパンについて、トルシエが話した意見と評価である。意見はバランスがとれていて説得力があり、評価は主観的でなく公正である。
 
★ジーコジャパンよ!
 タイトルは『オシムジャパンよ! 日本サッカーへの提言』となっているが、もっとも、おもしろいのは、3章構成の最初の「第1章 ジーコジャパンよ!」だ。
 ジーコは、トルシエが若手のうちから育てた選手を率いてドイツ・ワールドカップを戦った。2人のチーム作りの違いについて「型に嵌めるトルシエから、自主性に任せるジーコへ」と書いている。
 ドイツ大会第1戦、対オーストラリア戦の敗因についても書いているが、自分の後任者を袋叩きにするようなことはしていない。「日本にジーコはまだ早すぎた」というのが、トルシエの結論である。
 第2章が「オシムジャパンよ」だ。オシムの仕事は「これから」だから、評価はしていないが、その方針を理解しながらも、適切な意見を述べている。
 
★違いを生む「個の力」
 最後の第3章は「日本サッカーよ」である。
 この中では、日本と直接関係があるとはいえないが、グローバル化と世界のトップレベルのサッカーの変容についての意見が興味深かった。おおまかに言えば、どのチームも同じようなサッカーになっていくなかで、違いを生むのは「個の力」だという趣旨である。最近、よく目にする「労働量とスピード」を強調する意見とは、だいぶニュアンスが違う。
 トルシエの本だが、編者の田村修一の考え方も、構成に反映されているに違いない。ただしオシムの名を入れた本のタイトルは、おそらく出版社の意向によるものだろう。
 いずれにせよ、もっと、もっと、突っ込んで、田村さん自身の意見も聞きたかったので、ぼくの主宰している「ビバ!サッカー研究会」の月例会(7月1日)で話をしてくれるように、田村さんに頼んだら、快く引き受けてくれた。
 
(サッカー新俳句)梅雨入りやサッカー本の風通し
 
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