サッカー日誌 / 2010年08月05日


「ワールドカップ」の商標権


日本サッカー史研究会
(7月26日 東京・JFAハウス)

◇FIFA が戦前に日本で登録
 「ワールドカップ」と日本語で書いたTシャツを売り出してもいいだろうか? あるいは “World Cup” 印のサッカーボールを作ってもいいだろうか? これは、なかなか、面倒な問題のようだ。
FIFA(国際サッカー連盟)は「ワールドカップ」という名称を、日本文と英文の両方で、日本で「商標登録」している。この登録が有効であれば、この「ワールドカップ」の呼称を使った商品を、勝手に日本で売り出すことはできないはずである。
 FIFAが「ワールドカップ」を日本で商標登録したのは最近ではない。1937年(昭和12年)7月8日に出願している。サッカーがそれほど盛んでなく、ワールドカップの名前も、ほとんど知られていなかった当時の日本で、FIFAは大会の名称が勝手にビジネスに使われないように手を打ったわけだ。
 前の年に日本はベルリン・オリンピックに参加したので、そのときにFIFAから依頼されて日本サッカー協会(当時は大日本蹴球協会)が登録の手続きを代行したのではないか、と想像した。

◇現在も更新されていて有効?
 この話を聞いたのは、毎月1回開いている「日本サッカー史研究会」の7月例会のときだった。南アフリカのワールドカップが終わったすぐあとだったので、「ワールドカップとメディアの歴史」をテーマにして、サッカーの文献資料に詳しい福島寿男さんに「ワールドカップについての日本の本と資料」について報告してもらった。そのなかで福島さんが「ワールドカップ」という言葉が戦前から使われていた一つの例として紹介した。ぼくには初耳だった。
 その後、仲間が調べてくれたところでは、商標登録は10年ごとに更新料を払って手続きすれば、いつまでも使い続けられる.とのことである。FIFAは更新を続けている。
 また登録は、商品の種類によって分類された「類」ごとに行うが、FIFAは「運動用具」を含む第28類など2つの類に登録している。したがって「ワールドカップ印」のサッカーボールを売り出すと問題になりそうである。

◇「ワールドカップ」という言葉
 ところが、話はそう単純ではないらしい。2006年のワールドカップのときに、ドイツでこの問題についての訴訟があった。ドイツの裁判所の判決は「ワールドカップという言葉の商標登録は無効」というものだった。「ワールドカップ」は、一般に広く普及している普通名詞だから、特定の人あるいは団体が独占することはできない、という理由だった。FIFA側の敗訴である。
 ただし、現在、FIFAが使っているのは「FIFAワールドカップ」という名称である。TM(トレードマーク)という文字を小さくつけて独占権を主張している。「牛乳」という普通名詞はダメだが、固有名詞の「明治牛乳」「雪印牛乳」なら商標登録できる、というようなものだろうか?
 ここでは、聞きかじったことを紹介しておくだけにする。詳しく正確なことを知りたい人は専門家に聞いてもらいたい。それにしても「ワールドカップ」という言葉一つだけでも、サッカー史のテーマとして調べなければならないことが、いろいろあるものだと思った。

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