サッカー日誌 / 2016年07月10日


五輪誘致スキャンダル(下)


あえて電通を擁護する

「週刊新潮」5月26日号
「週刊ポスト」6月3日号

★広告エージェント
 2020年のオリンピックの東京招致のために、招致委員会がシンガポールの正体不明の会社に2億円余を支払った。
 結果的に招致できたのだから、政治的、道義的な問題を棚上げして、ビジネスとして考えれば「よかった」と言えるのかもしれない。
 とはいえ、招致委員会は、シンガポールの「ブラック・タイディングス社」をどのようにして選び、大金を振り込んだのだろうか?
 日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和委員長は「電通に問い合わせたところ、充分に実績がある会社だということだった」と語った。
 この発言で広告エージェントの「電通」の名前がマスコミに登場した。
 ぼくは、最初から「この問題の主役は電通だ」と推測していたので「やっぱり」という感想だった。

★週刊誌の特集
 その後、週刊誌が、この問題と電通との問題を取り上げた。
「週刊ポスト」は「なぜ、テレビ・大新聞は電通と報じないのか?」というタイトルの特集を組んだ。テレビや新聞は電通に広告をとってもらっている。だから、電通批判を書けないのだ、という趣旨である。
 「週刊新潮」は「怪しい電通」という見出しで、電通と国際スポーツ・イベントとの関係を特集した。
 週刊誌の記事は、新聞の報道を引用しながら評論家などのコメントを紹介するという形である。独自の取材は、ほとんど含まれていない。
 ぼく(牛木)は、新聞記者だったころに、この問題に直接かかわっている。
 「ペレのサヨナラ・ゲーム・イン・ジャパン」や「トヨタカップ」は、ぼくがアイデアを提供し、電通などに協力してもらってやった仕事だった。

★商業的なスポーツ資金
 というわけで、この問題を客観的に批評できる立ち場ではないのだが、当時の内情の一端を説明しておきたい。
 そのころ、日本のスポーツ界は「アマチュアリズム」に支配されていた。
 日本体育協会(体協)あるいは日本オリンピック委員会(JOC)加盟のスポーツ団体が、直接、商業的イベントに手を出して「お金集め」をすると批判される状況だった。
 しかし、ほかの国では、スポーツ団体が商業的手段で資金集めをするのは、当たり前になっていた。
 そういうなかで、電通は体協やJOCのために商業的手段によるスポーツ資金集めを担当した。
 企業としての電通にとっては、それはビジネスだったが、日本のスポーツの国際化の一端を担った仕事でもあった。
 電通の仕事は、日本のスポーツ発展の「陰の部分」を引き受けたのだと、ぼくは考えている。


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