サッカー日誌 / 2014年04月29日


「FIFAマスター」修了の体験記


宮本恒靖『日本サッカーの未来地図』
(発行KADOKAWA 定価本体1300円)

★歴史と経営と法律を学ぶ
 2度のワールドカップに出場し,日本代表チームのキャプテンを務めた宮本恒靖さんは、2011年のシーズンを終わって選手生活を退き、2012年9月~2013年8月の1年間、「FIFAマスター」に入学してスポーツ経営学を勉強した。
 『日本サッカーの未来地図』はその体験記である。
 「FIFAマスター」は、スポーツ団体を運営する人材を養成するための、いわば「大学院」のようだ。CIES(国際スポーツ研究センター)がFIFA(国際サッカー連盟)と協力して運営している。
 まず、英国レスターの大学で「歴史」を、次にイタリアのミラノで「経営」を、最後にスイスのヌーシャテルで「法律」を学んだ。
 24の国と地域から30人の受講者が選ばれたなかで、トップレベルのプレーヤーの経歴を持っていたのは宮本恒靖さんだけだったらしい。

★卒論を実行に移す行動力
 弁護士の資格を持つような人に混じって専門用語の多い授業を英語で受ける。それをプロ選手出身者がやり遂げた。
 しかも、いろいろな国の人たちがグループを作って課題をこなしていくなかで、リーダーシップを発揮したようすが読み取れる。たいしたものである。
 最後に、卒業論文にあたる「ファイナル・プロジェクト」を5カ国の男女混成グループで作った。
 自分たちで決めたテーマは、ボスニア・ヘルツェゴビナに子どもたちを対象にした「スポーツ・アカデミー」をつくる計画だった。
 ボスニア・ヘルツェゴビナは旧ユーゴスラビアの一部で民族対立による紛争の続いていた国である。その国でスポーツを「民族融和」に役立てようという計画である。
 「卒業論文」として書き上げただけでなく、その後、それを実現しようと動き始めている。その行動力にも感心した。

★スポーツ経営の専門家養成
 「FIFAマスター」が始まった趣旨は何だろうか?
 宮本恒靖さんの本を読んで初めて腑に落ちた。
 かつては、スポーツ団体の運営は、そのスポーツのOBのボランティアによって支えられていた。
 しかし、1980年代から、主としてテレビ放映権料の増大によって、スポーツクラブあるいはスポーツ団体の運営は大きなビジネスになった。そのため経営の専門家を雇って委ねる必要が出てきた。「FIFAマスター」は、その専門家を養成するためのものである。
 経営の専門家になるには経営と法律の勉強は欠かせない。
 だが歴史の勉強は、なぜ必要なのだろうか?
 思うに、スポーツ組織の運営は企業の経営とは違うからである。スポーツ団体は営利が目的ではなく多くの人たちのための公共的な組織として発達してきた。
 そのことを知るためにスポーツの歴史を学ばなければならないのだろうと思った。


『日本サッカーの未来地図』の表紙

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