サッカー日誌 / 2010年04月02日


アカデミズムのなかのサッカー(下)


ドイツと韓国のスポーツ振興政策
日本スポーツ社会学会
3月28日~29日 岩手大学

★陸上競技場はこれ以上不要(ドイツ)
 盛岡で開かれたスポーツ社会学会で、外国から招いたゲストの講演が2つあった。どちらも、その国のスポーツ振興政策の現状報告だった。
 初日には、ケルン・スポーツ大学スポーツ経済研究所のロルフ・マイヤーさんが「ドイツにおける地域のスポーツ政策」について報告した。
 東西ドイツ統合前の1980年代までは、西ドイツではスポーツ施設整備の重点は、主要なスポーツであるサッカーと陸上競技が中心だった。しかし、1990年代からのドイツでは一般のスポーツインフラの整備に重点を移しているという。そのために「スポーツ活動実態調査」をして、市民のニーズに基づいて政策を立てている。
 ドイツ第3の都市ミュンヘンでの調査では、市民の求めている施設は体育館、スポーツフィールド、プールで、これ以上必要のない施設は陸上競技場だったという。

★サッカーが普及度トップ(韓国)
 次の日には、韓国体育科学研究院政策開発研究室長の朴ヨンオクさんが「韓国におけるスポーツ政策の展開と課題」と題して講演した。
 韓国でも、スポーツ振興政策を立案するにあたって、きちんと調査をしている。
 それによると、大衆が行っているスポーツは、男性ではサッカーが1位、女性ではランニングが1位、男女合計では、登山が1位、サッカーが2位だった。
「韓国では野球が盛んになってサッカーは落ち目だ」という話を聞いたことがあるが、そんなことはない。ジョギングやハイキングは健康のための運動だから、競技スポーツとしては、サッカーが普及度トップである。
 サッカーに次ぐ競技スポーツは、バドミントンとバスケットボールで、野球は上位に入っていない。

★日本のスポーツ政策は遅れている
 ドイツにサッカーのフィールドはいたるところにある。それでも、まだ「足りない」というのが市民の声らしい。陸上競技場としての機能を備えているスタジアムも各地にあるが、主としてサッカー競技場として使われている。「陸上競技の施設はいらない」というのは正直な市民の声だろう。ひるがえって日本では、国民体育大会用に各地で陸上競技場が整備されているが、サッカーには不向きなように作られているのが大部分である。
 韓国について興味深かったのは、1993以降、競技スポーツの底辺を広げることに政策を転換したという話だった。1988年のソウル・オリンピックのころには、少数精鋭の英才教育でオリンピック選手を作り出しているということだったが、とっくに方向転換していたのである。日本では逆にトップレベルの選手強化を求める声が強くなっている。
 日本でも、市民の声をしっかり調査して、スポーツ政策を立案して欲しいものである。

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