ぼくの近代建築コレクション
東京の都心と下町を中心に、戦前に建てられた古い建物の写真を投稿していきます。
 




板五米店。板橋区仲宿40。1990(平成2)年1月14日

「板橋宿不動通り商店街」を北へ抜けて「板橋宿」のゲート(アーチ)を出ると「王子新道」との旧中山道仲宿交差点。王子新道は1888(明治21)年の開通。当時、宿場が廃止されて衰退しはじめた当地に比べ、王子の方は大きな工場も建ち始めた。板橋の人々がそちらに働きに行くのに便利なようにと通されたという(『加賀学園通り物語』)。
王子新道を渡ると「仲宿」のゲートで、「仲宿商店街」に入る。少し行ったところにレンガの袖壁の店舗がある。米の販売機に「板五米店」とあるが、写真からはすでに米店は廃業しているような感じがする。

建物は『東京都の近代和風建築』(東京都教育庁編集、2009年)に、「大正6年に建てられた。……当時は「田中米店」と称した……板五米店の名は、米が配給であった時代の「板五食料販売所」の名残り……」「街道に面して土蔵蔵店舗が建ち、その後ろに接して木造2階建の住居部分が付く。さらに、庭を挟んだ奥に、2階建の煉瓦造の蔵が独立して建つ」とある。「板五」とは旧町名の板橋五丁目を指す。「店舗部分は、屋根を寄棟造桟瓦葺とする、黒塗漆喰塗りの土蔵造で、2階の軒を出梁出桁からなる「船枻(せがい)造」とし、全体を塗り込める」とあり、以下、建物の構造について記述している。
全部を引用していると大変なので、2階正面の雨戸についてだけ紹介すると、「2階の雨戸は土戸ではなく、鉄板の引戸である。この引戸は、敷居鴨居を用いず、両妻壁の間に張られた鉄筋をガイドする吊戸となっている。つまり、両妻壁の煉瓦壁が倒れるのを防止するために設けられた引張鉄筋(テンションバー)を、鉄板引戸のガイドとしても利用している」ということで、なんとも珍しい造りのようだ。

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