大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

RE・乃木坂学院高校演劇部物語・94『帰ってきた』

2023-01-24 05:41:27 | 青春高校

RE.乃木坂学院高校演劇部物語    

94『帰ってきた』 

 

 


 横丁を曲がるまで心配だった。

 何かって……決まってるじゃん。

 あれよ、あれ、ジジババのコスプレ。


 顔から火の出る思い。で、尻に帆かけて……って慣用句で合ってたっけ。文才のあるはるかちゃんなら、こんな時でもぴったしの表現が浮かぶんだろうけど、ラノベ程度のものっきゃ読まないもんだから……でも、はるかちゃんに教わってシェ-クスピアの四大悲劇とか、チェーホフの何本かは読んだけど、後が続かない。これも根気がない江戸っ子の習い性。ええい、ままよ三度笠横ちょに被り……これ、おじいちゃんがよくお風呂で唸ってる浪曲じゃんよ! 

 とにかく、めちゃ恥ずかしかった。また、あのコスプレで出迎えられてはかなわない(≧Д≦)!

 横丁を曲がると、そこは雪国だった……なんか間違ってるよね。

 でも、いつもの我が町、我が家がそこにありました。はるかちゃんの「東京の母」秀美さんにも会ったけど、ごく普通。

「あら、まどかちゃん、お帰りなさい」

 で、これは家の中に入ってからだな……と、見当をつけ、深呼吸した。

「ただ今」

「「お帰り」」

 当たり前の返事。おじいちゃんもおばあちゃんも、いつもの成りでいつもの返事。

「タバコ屋のおたけ婆ちゃんに『無粋だね』って言われたのが応えたみたい。なんせジイチャンの寝小便時代も知ってる、元深川の芸者さんだったからな」

 狭い階段ですれ違う時に兄貴が言った。すれ違う時に胸がすれ合った。

「まどかでも、ちゃんと出るとこは出てきてんだな」

「なによ、このメタボ!」

 ハハハ……と笑って行っちゃった。これって言い返したことになってないよね。

 自分の部屋に入ると、思わず横向きになって自分の姿を鏡に映す。

 その夜、スゴイ夢を見た。

 正確には、スゴイ夢を見た余韻が残っているだけで、中味は覚えていない。

 起きあがろうとしたら、まるで体が動かない。金縛りでもない、指先ぐらいは動く。

 でも、寝床から起きあがろうとすると、身もだえするだけで体が言うことをきかない。

 時間になっても起きてこないので、お母さんがやってきた。


「まどか、どうかした?」

「……体が……重くて、動かない……(;▽;)」

 

☆ 主な登場人物

  • 仲 まどか       乃木坂学院高校一年生 演劇部
  • 坂東はるか       真田山学院高校二年生 演劇部 まどかの幼なじみ
  • 芹沢 潤香       乃木坂学院高校三年生 演劇部
  • 芹沢 紀香       潤香の姉
  • 貴崎 マリ       乃木坂学院高校 演劇部顧問
  • 貴崎 サキ       貴崎マリの妹
  • 大久保忠知       青山学園一年生 まどかの男友達
  • 武藤 里沙       乃木坂学院高校一年生 演劇部 まどかと同級生
  • 南  夏鈴       乃木坂学院高校一年生 演劇部 まどかと同級生
  • 山崎先輩        乃木坂学院高校二年生 演劇部部長
  • 峰岸先輩        乃木坂学院高校三年生 演劇部前部長
  • 高橋 誠司       城中地区予選の審査員 貴崎マリの先輩
  • 柚木先生        乃木坂学院高校 演劇部副顧問
  • 乃木坂さん       談話室の幽霊
  • まどかの家族      父 母(恭子) 兄 祖父 祖母

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