goo blog サービス終了のお知らせ 

大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・『はるか 真田山学院高校演劇部物語・75』

2019-07-24 06:02:55 | はるか 真田山学院高校演劇部物語

はるか 真田山学院高校演劇部物語・75
『第七章 ヘビーローテーション 13』 

 再びヘビーローテーションの日々が始まった。

 歌もばっちり、台詞も完ぺき。感情も自然に湧いてくるようになった。
『おわかれだけど、さよならじゃない』も、新大阪での経験が生きて、カタルシスになってきた。
 動きのほとんども、稽古の中で出てきた感情や、表情に合ったものに置き換わっていた。

 でも、大橋先生はこう言うのだ。

「スミレとカオルが似てきてしもたなあ……」
「それって、だめなんですか?」
「人間と幽霊いう差ぁはありますけど。同じ世代同士やから、同じ感じになってきてもしゃあない……いうか、ええことちゃいます?」
「いや、やっぱり違う人格やねんから、違ごてこならあかん。だいいち時代性が出てけえへん。特にカオルなあ」
「わたしですか?」
「うん、ゼイタク言うてんねんけどな。やっぱし戦時中の女学生の匂いが欲しいな」
「匂いですか……」
「うん、ちょっとした仕草、物言い、表情とかにな。ま、もういっぺんやってみよか」
「はい」

 そして、さらにヘビーローテーション。

 わたしは戦時中女学生だった女流作家のエッセーや小説なんか読んでみたりした。
 佐藤愛子さんや田辺聖子さんの本なんか参考になったけど、つい中味の面白さにひっぱられ……。
「アハハ」で終わってしまう。
 もうコンクールの地区予選まで一ヶ月を切っていた。
 わたしたちから希望してテスト中も、時間をきって稽古させてもらった。

 そんな五里霧中の中、こんなことがあった。

 学校で一回通しの稽古を済ませて、明日はテストの最終日、わたしがもっとも苦手とする数学がある。
 ベッドにひっくり返って……以前も言ったけど、家で本を読むときは、時に他人様にお見せできない格好をしております。
 もちろん頭は戦闘態勢。苦戦中ではありますが……。
 上まぶたと下まぶたが講和条約を結びそう……。
 鉄壁の防御を破り、y=sinθどもが足許から匍匐前進で、ベッドの下からはy=sin(θ+π/2)どもが攻め上ってくる。身体は金縛りにあったように動かない。
――ウウウ……ウ……と、わたしは苦悶の形相!
 あわや、本塁を抜かれようとした、その刹那。
 一匹の小さな白い狼のようなものが現れ、寄せ来る敵をバッタバッタと打ち伏せて、敵は無数のyや、θ、π、αなどに粉みじんになって消えていった。
 その白いものは、人のカタチをしていた。

――マサカドクン……?

 東京のホテル以来じゃないよ。大阪に来て、こんなに長いこと姿を見せないことってなかったじゃないよ。
 すると、マサカドクンは少しずつ姿を変えていった。
 四頭身の身体がスリムになっていき七頭身ほどになった。
 そして、少しずつピントが合っていくようにあきらかになってきた……。
 その姿はカオルそのものだった。
 そして、何かを伝えようとしているように胸に手を当てた。
 そして、何かを受け取ったような気がした……。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 高校ライトノベル・連載戯曲... | トップ | 高校ライトノベル・須之内写... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

はるか 真田山学院高校演劇部物語」カテゴリの最新記事