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大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

魔法少女マヂカ・194『霧子の決心』

2021-01-30 10:17:53 | 小説

魔法少女マヂカ・194

『霧子の決心』語り手:マヂカ  

 

 

 食べ過ぎです!

 

 ダイニングに入ってきた春日が目を三角にした。

 キッチンに繋がるドアの所でメイドのクマちゃんがお握りを載せたトレーを捧げ持ったまま笑いをこらえている。

 わたしはノンコと顔を見合わせて、三枚目のトーストに伸ばした手を引っ込めた。

「あなたたちは食べてください。お嬢様のお供をするには体力も精力もいりますからね。クマは、いちいち笑わない。そのお結びは……」

「これでおしまいだから!」

「では、さっさとお食べになってくださいまし。早くしないと学校に間に合いません」

 そう言うと、メイド長の春日はあくびを噛み殺しながらダイニングを出て言った。

 ムシャムシャムシャ

 十秒もかからずにお握りを食べてしまうと、お皿を七枚重なったトーストのお皿の上に載せて立ち上がる。

「さ、今日も一日張り切っていくわよ!」

「「よし!」」

 わたしたちの出で立ちは、ちょっと恥ずかしい……。

 上は制服のセーラー服なのだが、下はブルマーなのだ。

 ブルマーと言ってもハーパンに駆逐される寸前の昭和・平成のころのパンツ同然のそれではない。

 スカート同様にプリーツになっていて、ひざ丈の所で絞り込んである。大正時代のブルマーなのだ。

 まだ体操服という名前も無くて運動服と言う。

「ピエロのズボンみたいだよ((ノェ`*))」

 ノンコは、ダサくて恥ずかしくてたまらん顔をしている。

 しかし、大正時代にあっては、これが女子のスポーツウェアなのだから仕方がない。

 

「お早うございます、お支度はよろしいですか?」

 

 運転手の松本が、パッカードのドアを開けて出迎えてくれる。

「お早う、今朝もよろしくね」

 ブルマのお尻をバサバサ言わせながら後部座席に収まる。助手席にはクマちゃんがわたしたちの着替えやカバンを持って収まっている。

 主人よりも先に車に乗るのは使用人としては僭越なのだが、なんせ荷物が多いので、後から乗っては時間がかかるので、霧子の指示で、そうなっている。

「行ってらっしゃいませ」

 春日の見送りを受けながら、屋敷の門を出る。

 さすがに、使用人全員が見送ることは無い。九月の初旬だと言うのに、ようやく東の空が白んできたところなのだ。

 それでも、門の脇には請願巡査の田中が折り目正しく敬礼してくれている。

 請願巡査と言うのは、華族や財閥が給与などの費用を支払うことを条件に個人的に配置してもらう住み込みの巡査の事だ。震災後の治安悪化のため、請願していたのが認められ、一昨日から配置されることになったのだ。

 デバックがあると言いながら新畑はそれっきりだ。

 礼法室の望楼も閉ざされて様子を見ることもできないと言う。

 情熱を持て余した霧子は、つてを頼ってジョギングを始めたのだ。

 ジョギングなら、ジャージに着替え、タオル一本首に巻けば出発できるというのは、もっとのちの時代だ。

 大正時代は、女子が街中を走ると言うようなハシタナイことはやりにくい、まして華族の娘においておやである。

 学習院が女子の徒走を始めたところ父兄の元大名の華族から『足軽のようなことをさせる』と苦情を言われる時代なのだ。

「今日はアメリカ大使館のゴルフ場を借りております」

 松本がハンドルを切りながら変更を言う。

「岩崎に断られたのか?」

「ご都合が合わなかっただけでございます。少し速度をあげます」

 車は山の手を北西に進んだ。

 山の手を過ぎると地盤がしっかりしているのか、都心ほどには震災の爪痕が無いことが幸いだった。

 

※ 主な登場人物

  • 渡辺真智香(マヂカ)   魔法少女 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 要海友里(ユリ)     魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 藤本清美(キヨミ)    魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員 
  • 野々村典子(ノンコ)   魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 安倍晴美         日暮里高校講師 担任代行 調理研顧問 特務師団隊長
  • 来栖種次         陸上自衛隊特務師団司令
  • 渡辺綾香(ケルベロス)  魔王の秘書 東池袋に真智香の姉として済むようになって綾香を名乗る
  • ブリンダ・マクギャバン  魔法少女(アメリカ) 千駄木女学院2年 特務師団隊員
  • ガーゴイル        ブリンダの使い魔

※ この章の登場人物

  • 高坂霧子       原宿にある高坂侯爵家の娘 
  • 春日         高坂家のメイド長
  • 田中         高坂家の執事長
  • 虎沢クマ       霧子お付きのメイド
  • 松本         高坂家の運転手 
  • 新畑         インバネスの男

 

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誤訳怪訳日本の神話・17『スサノオ追放!』

2021-01-30 06:50:48 | 評論

訳日本の神話・17
『スサノオ追放!』    

 

 天岩戸をお出ましになったアマテラスはスサノオを高天原から追放します。

 

 スサノオの持っていた珍しいお宝を全部召し上げた上、スサノオのシンボルであった髭を剃らせ手足の爪を全部抜かれてしまいます。

 ちょっとエゲツナイですなあ。

 1945年に連合軍によってパリが解放されると、パリ市民はドイツ軍に協力的であった女性をとっ捕まえては丸坊主にして大通りを歩かせ、みんなで罵倒しました。ちょっと似てます。

 スサノオとアマテラスの関係なのですが、どうも血肉を分けた姉弟には見えません。スサノオが高天原に現れた時も、アマテラスは姫騎士のように完全武装し、高天原の軍勢を従えて迎え撃とうとしています。

 アマテラスはご存知の伊勢神宮の主神であり皇祖神であり天津神(あまつかみ)の代表であります。方やスサノオの子孫である大国主は出雲地方の国津神(くにつかみ)の代表で、のちに高天原の勢力に国譲りして出雲大社に祀られます。

 どうも四五世紀、大和朝廷が勢力を広げて行って出雲地方の勢力を従えたことが反映された神話のようであります。

 余談ですが、アイヌ民族を先住民族とする考え方が国会で決議され、中にはアイヌに自治権を与え分離独立まで言い出す人たちがおられます。その是非はともかくとして、盛大に日本の一部を分離独立させるなら出雲地方の方がドラマチックでしょう。あきらかに大和政権とは別物でした。二十一世紀の今日でも出雲大社の神主は『国造(くにのみやつこ)』の肩書があって元日の地元紙の一面に県知事と並んで賀詞を述べられておられます。むろん、伝統ということで、スサノオとアマテラスの争いに火をつけて出雲地方の人たちに独立しようという気運はありません。

 こういうことで分離独立していたら、世界は今の数十倍に分裂してしまうでしょう。

 地上に放逐されたスサノオは腹ペコで仕方ありません。

 これだけの目に遭って腹が減るのですから、やっぱ、神経のぶっ飛んだ神さまなのです。ですが、「どうして、おいらにゃオカンがおれへんのや~!!」と泣き叫んでは駄々をこねていた(体よく親父のイザナギから追っ払われた)ころのことを重ね合わせますと、かなり子どもじみたヤンチャクレのように思えます。

 腹を減らしていると、大宜都比売(オオゲツヒメ)に出会います。名前からケツのデカい女神様という感じで、どうも作物の豊かさを現わした女神様のようです。

 スサノオに同情したオオゲツヒメは、たくさんの食べ物を出してやります。

 ただ、出し方がぶっ飛んでおります。

「さあ、腹減ってんでしょ、どんどん食ってね!」

 彼女は、鼻や口やお尻の穴から出すのであります!

 これに擬音を付けると、このようでしょうか。

 

 ウ ウゲーーーゲロゲロ プープリプリ ブーブリブリー💦

 

 音だけでも ナンダカ……ですねえ(;^_^A

 それもスサノオの目の前でやって見せるのです!

 ウ、ウ、こいつ、きったねええええええええええええええ!

 スサノオはオオゲツヒメをブチ殺してしまいます。やっぱ、スサノオは切れやすいんでしょうなあ……。

 ブチ殺されたオオゲツヒメの体からに色々の物ができます。

 頭に蠶(かいこ)が、二つの目に稻種(いねもみ)が、耳にアワが、鼻にアズキが、股(また)の間にムギができ、尻にはマメができました。カムムスビの命が現れて、これらを種としたので、その後の日本の農業の基本になりました。

 

 

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妹が憎たらしいのには訳がある・46『栄光へのダッシュ・2』 

2021-01-30 06:25:07 | 小説3

たらしいのにはがある・46
『栄光へのダッシュ・2』
         

   


 優奈が倒れた。
 
 明後日が本番という稽古中に!

「ゲホ」っと口を押さえた優奈の手に赤いものが溢れ、そのまま前のめりに倒れて意識を失った。

「顔を横向きにしろ、窒息するぞ!」
 蟹江先生が、すぐステージに駆け上がり、狼狽えるだけの加藤先輩を押しのけた。
「無し無し(無呼吸、無拍動)なんだな!?」
「はい」
「救急車を呼べ!」
 そう叫んで蟹江先生は優奈の胸をはだけ、気道を確保すると人工呼吸を始めた。
 祐介は、顕わになった優奈の胸にたじろいで、一瞬目を背けた。
「アホ! こんな時は声をかけてやらなあかんのよ。みんな寄って、声を掛けて、マッサージしてやる!」
 加藤先輩が怒鳴り、みんなが優奈の側に寄り、手足をさすりながら声をかけた。
「優奈!」
「優奈先輩!」
「山下優奈!」
 蟹江先生と加藤先輩たちの介抱と処置で、優奈は救急隊が到着するころには息を吹き返していた。

「みなさんの素早い処置が適切だったので、脳への障害はありません。声帯と気管を痛めているほかは、全身疲労だけです。とうぶん喉を使わずに安静にしていればいいでしょう」
 病院の先生は、本人を勇気づけるために、あえて、優奈の病室でみんなに告げた。しかし、優奈には逆効果であった。
「ダメです……明後日は本番なんです。なんとしても、明後日までには治してください!」
「無理を言っちゃ……!」
 優奈は、医者のネクタイを締め上げていた……。

「参加辞退ですか……」

「仕方ないでしょう、ボーカルが倒れちゃったんだから」
「加藤先輩一人じゃだめなんですか?」
「ずっとデュオで練習してきたんや、簡単にソロには戻されへん。それに、バンドの編成もデュオのまんまや……」
 ケイオンの全員が集められ、視聴覚教室でミーティングをしたが、結論は参加辞退に傾いていく。あちこちから、すすり泣く声があがった。


 いやな沈黙が続いた。
 

 田原先輩が、謙三を促してステージに上がった。
 そして、ギターとドラムを即興で、めちゃくちゃに鳴らした。
「景子(加藤先輩の名前)、これで勢いついたやろ。蟹江先生に結論言いに行け!」
「分かった、長いことケイオンやってると、こういうこともあるよ。今度のレッスンで学んだことは、来年、あんたらが活かしたらええ」

「待って下さい」

 ドアから出て行こうとした、加藤先輩を幸子が呼び止めた。

「わたしが、代わりにやります」
「……そんな、サッチャンが出たら審査対象外やで」
「対象外でもいいじゃないですか。たとえ審査対象外でも、演奏すればスピリットは通じます。わたしたちが血を吐く思いでつかみ取ったメッセージを、みんなに伝えようじゃないですか!」
「メッセージ……」
「スピリット……」
「ようし、それでええ。賞がなんぼのもんじゃ。予定通り参加や!」
 蟹江先生が、入ってきてガッツポーズを決めた。
「桃畑中佐から、極東戦争当時の戦闘服借りてきた。みんな、これ着て、本番の舞台に立て!」
「ウオー!」
 メンバーから、どよめきが起こった。
「ボーカルは、元祖オモクロのステージ衣装貸してもろた、せいだいがんばれ!」

 この開き直りの出場は、マスコミやネットを通じて、その日の内に世界中に広まった。

 火付け役は、お馴染みナニワテレビのセリナさんだ。急遽、プロで人気上昇中の幸子が出るので、予備の座席200が追加された。

 その日、家に帰ると、チサちゃんが玄関で待ち受けていた。

「すごいわよ、ネットが炎上してる!」
 幸子のブログは、大会参加を祝するコメントであふれかえっていた。むろん中には人の不幸を利用した売名行為であると非難するものもあったが、大半の賛成派と、ネット上で大論争になっていた。
「むかし、キンタローがデビューしたとき以来のブログ炎上ね!」
 お母さんまで興奮していた。幸子も面白がっていたが、プログラムモードである。
「これで、良かったとは思えない」
 あとで、幸子の部屋に行ったとき、幸子はニュートラルモードで、冷ややかにニクソクつぶやいた。

「……幸子は、複雑だな」

 精一杯の皮肉を言ってやると、ドアホンを兼ねているハナちゃんが来客がきたことを告げた。

 ドアをあけると、ねねちゃんが立っていた……。

 

※ 主な登場人物

  • 佐伯 太一      真田山高校二年軽音楽部 幸子の兄
  • 佐伯 幸子      真田山高校一年演劇部 
  • 千草子(ちさこ)   パラレルワールドの幸子
  • 大村 佳子      筋向いの真田山高校一年生
  • 大村 優子      佳子の妹(6歳)
  • 桃畑中佐       桃畑律子の兄
  • 青木 拓磨      ねねを好きな大阪修学院高校の二年生
  • 学校の人たち     加藤先輩(軽音) 倉持祐介(ベース) 優奈(ボーカル) 謙三(ドラム) 真希(軽音)
  • グノーシスたち    ビシリ三姉妹(ミー ミル ミデット) ハンス
  • 甲殻機動隊      里中副長  ねね(里中副長の娘) 里中リサ(ねねの母) 高機動車のハナちゃん
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