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大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・アンドロイド アン・24『アン おとなしくする』

2018-10-08 14:11:59 | ノベル

アンドロイド アン・24

『アン おとなしくする』

 

 

 杞憂であったらしい。

 

 日本史の質問から春画の魅力に囚われて、あれだけキチンとしていた料理をオートでやってしまうほどのめり込んだのがピタリと止んだ。

 うちの近所には町田夫人という、人柄はいいんだけど、おもしろい噂は天下国家に広めなければ止まれないご仁が居る。

 案の定、通りすがりに見えてしまうキッチンを目撃されてしまったけど「あら、新一君もお料理するのね?」と、回覧板のついでに言われてしまった。

 鍋やらフライパンやらのキッチン用品がオートで動いているのは、さすがにまずいだろうと思った俺は、台所に立って、遠目では俺が料理しているように見せかけたんだ(^_^;)

「いや、お恥ずかしいところを見せてしまいました(^_^;)」

 アンも通りで出会った町田夫人にごまかして事なきを得た。

 

 それからは、いつものように町内でも学校でも普通に過ごすアン。

 

 学校は来月に迫った文化祭モード。

 ホームルームは、その取り組みを何にするかで沸き立った。

 数的にも多いので、いきおい女子が主導権を握る。

「いろいろ意見が出たけどさ、屋台とか喫茶店とか焼きそばとかさ、あ、それとステージでダンスとか。ちょっとまとめてみたいと思うの」

 委員長の徳永さんが黒板に整理して書いた。

「それって、飲食店でくくれるかも~」

「あたし調理とかしたい🎵」

「おソロのエプロンとかいいよね~」

「ケーキとかもいいかも~🎵」

 女子を中心にかまびすしくなる。

 

「ひとつ言っとくけど……」

 

 ハッチャケそうな空気を読んで担任が水を注す。

「飲食店は、保健所の指示で調理に関わるものは検便だからな~」

 

 けんべん!?

 

 驚愕と笑いがミルフィーユのように重なって起こる。

「ああ、そうだ。厳密にはクラス全員なんだけど、最低でも調理員は必須だぞ」

「検便って、どういう風なんですかあ?」

「決まってんだろ、出したウ○コをケースとかに入れてえ~」

 こういう話題になると、男子が活気づく。

「「「「「「「「「ヤダーーーーーー」」」」」」」」」

 女子から非難半分、笑い半分の声が上がる。

「先生、どんなのですかあ?」

 収拾させようと赤沢が担任に振る。

「大昔はマッチ箱とかに入れたけどな、今はな……」

 担任は教壇に椅子を上げて実演し始めた。

「便器に前後逆に座ってだな、一ちぎり出した奴に……」

「出しかけたのを途中で止めるんっすか?」

「全部出してもいいけど、大変だろ」

 たしかに。

「で、そのヒトちぎりに検査用のスティック……爪楊枝くらいなんだけど、それをぶっ差して、スティックを付属の密閉容器に入れて提出するんだ……こんな具合だな」

 実演した後、黒板にダンドリのイラストを描いた。

 シ~ンと見つめる俺たち。

「それって、下半身完全に脱がないとできねえ」

「うっかりドア開けられたら人生終わっちまうぜ」

 

 ピンときた。

 担任は飲食店をやらせたくないんだ。万が一食中毒になったら責任ものだし、準備や当日のシフト管理とかのもめ事、飲食店ならではの後始末のあれこれ、おそらく教師としていやな思い出があるんだろうなあ。

「それなら……市販のものを温めたりとかのことで凌げるかもしれません。ほら、コンビニとか、店内で食べさせたりするの、あれは保健所の管轄にはならないはずです」

 さすがは徳永さん!

「でも、それだとイージーな分だけ面白みに欠けるから、どうだろ、メイド喫茶とか執事喫茶とかの触れ込みにしといて、余力で舞台パフォーマンスしてみたら! お店と舞台の両方で、互いに宣伝しまくってさ、うん、いいんじゃないかな!」

 徳永委員長が上手にまとめ上げた。

 さすがだと思ったが、似たアイデアはあるもんで、アンの三組でも店と舞台のコラボに決まった。

 

 そして、特筆すべきは、目立ちたがりのアンが一言も意見を言わなかったことだった……。

 

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高校ライトノベル・妹が憎たらしいのには訳がある・43『優奈 そしてプレコンサートへ』

2018-10-08 06:07:13 | ボクの妹

妹が憎たらしいのには訳がある43
『優奈 そしてプレコンサートへ』
    



 ウチにできるわけありませんよ!

 優奈は、目と口を倍ほどに開き、まるで悪魔払いをするように。見方によっては、ウルトラマンが及び腰でスペシウム光線を発射するときのように、両手で×印を作って抵抗を試みた。

「絶対、絶対、ぜった~い、で・き・ま・せ・ん!!」

 しかし、加藤先輩と幸子を相手にしては、唾の聖水も、スペシウム光線も無力だった。
「あたしとサッチャンの意見が一致したの。これは、その通達であって、優奈に選択権は、あらへんの」
 加藤先輩は、唾の聖水を拭いながら宣告した。
「今の優奈ちゃんの力では、確かにしんどいけど、優奈ちゃんの前向きな姿勢は、きっとわたし以上の仕上がりになるわよ」
 幸子もニヤニヤしながら、しかし、真剣な目で告げた。
「視聴覚教室の修理も終わって、今日から真っ新なステージ。これも、なにかの因縁ね。連れてきて!」
「覚悟しな、優奈……」
 ギターの田原さんが、目配せをすると、ヘビメタ担当のマッチョ六人が優奈を担ぎ上げた。暴れた優奈は、担ぎ上げられた瞬間、スカートがめくれあがり、イチゴパンツが剥きだしになったが、ヘビメタは優奈のスカートごと足を押さえつけ、学校の「下着が見えるようなスカートの穿き方をしてはいけない」という校則をクリアー。
「拉致だ! 誘拐だ!」
 と、優奈は叫んだが、校則には拉致も誘拐も書いてはいない……。

 優奈の代わりには、幸子が戻された。

 自称『幸子ファンクラブ』の会長の祐介は喜んだが、本心では寂しがっている。軽飛行機突入事件で、祐介が優奈のことを体を張って守ったのを知っている。でも、まあ、優奈の大抜擢なので、ケイオン全体としては祝福している。なによりも幸子が全力で応援したことが、この出来事を明るくしていた。

「もっと、口は大きく開けて、目はつぶるんじゃなくて!」
 加藤先輩の指導は厳しい。
「ほら、選抜に決定したときの顔思い出してみ!」
 幸子は、「絶対、絶対、ぜった~い、で・き・ま・せ・ん!!」のシャメを撮っていて、それを本人に見せた。即物教育だ。幸子は、演劇部に行く余裕も無くなってきたので、先輩たちを説得し、演劇部全員をバックダンサーにした。秋のコンクールまではヒマだったので、演劇部も喜んで参加。そのバックダンスの練習がカッコイイというので、演劇部だかケイオンだか分からない新入部員が五人も入った。そうするとプレイヤーが貧弱になるので、ボクたちのグループもバックバンドとして入ることになり、真田山高校としては、過去最大の編成になった。そして、ナニワテレビが幸子の降板から本番までをドキュメンタリーにする企画を持ち込んだことが、みんなを勢いづかせた。

「どう、うちの系列のホール確保するから、一度プレコンサートやってみない!?」

 お馴染みキャスターのセリナさんの発案で、大規模なプレコンサートをやることになった。
「大会事務局からクレームつきませんかね」
 顧問の蟹江先生は心配してくれたが、セリナさんはお気楽だった。
「これに刺激されて、他局でも似た企画やりますよ」
 セリナさんの読みは当たった。他局も有力と思われる学校のオッカケを始め、NHKでさえ、特集番組を組むようになった。

 《出撃 レイブン少女隊!》 

 GO A HED! GO A HED! For The People! For The World! みんなのために

 放課後、校舎の陰 スマホの#ボタン押したらレイブンさ

 世界が見放してしまった 平和と愛とを守るため わたし達はレイブンリクルート

 エンプロイヤー それは世界の平和願う君たちさ 一人一人の愛の力 夢見る力

 手にする武器は 愛する心 籠める弾丸 それは愛と正義と 胸にあふれる勇気と 頬を濡らす涙と汗さ!

 邪悪なデーモン倒すため 巨悪のサタンを倒すため

 わたし達 ここに立ち上がる その名は終末傭兵 レイブン少女隊

 GO A HED! GO A HED! For The People! For The World! For The Love!

 ああ ああ レイブン レイブン レイブン 傭兵少女隊……ただ今参上!


 極東事変以来、国民の意識が変わった。ことなかれの政府の意向とは裏腹に、極東の情勢は緊迫していた。それを知って、国民の多くは冷静に有事に備える気構えを持ち始めた。十数年前の極東戦争では、戦死傷者数万を出している。そういう事態にならないための備えであった。戦わないためには、戦う決意が必要だ。
 そのために、真田山高校軽音楽部は、演奏作品に《出撃 レイブン少女隊!》を選んだ。先の極東戦争のきっかけになった対馬戦争のとき、危険を顧みずアジアツアーのため乗っていた飛行機もろとも撃ち落とされた、オモクロの桃畑律子の持ち歌である。

 プレコンサートは大成功だった。優奈も自信を付けた。スニーカーエイジそのものを盛り上げることにもなった。

 しかし、パラレルワールドを取り巻く事態は、俺たちの知らないところで動き始めていた。そして、俺たちが、それに気づくのには、もう少し時間が必要だった……。


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高校ライトノベル・トモコパラドクス・20『冷房開始の日』

2018-10-08 05:57:07 | トモコパラドクス

トモコパラドクス・20
『冷房開始の日』
        


三十年前、友子が生む娘が極東戦争を起こすという説が有力になった未来。そこから来た特殊部隊によって、女子高生の友子は一度殺された。しかしこれに反対する勢力により義体として一命を取り留める。しかし、未来世界の内紛や、資材不足により、義体化できたのは三十年先の現代。やむなく友子は弟一郎の娘として社会に適応する「え、お姉ちゃんが、オレの娘!?」そう、友子は十六歳。女子高生としてのパラドクスに満ちた生活が再開された!



 今日は冷房開始の日だ!

 学校の規則では、六月から冷房になっている。
 それがなぜ、ほとんど一週間も前倒しで冷房しちゃったかというと、二つ理由がある。
 一つは、校内全部の冷房装置……エアコンなんて華奢なもんじゃなくて、屋上にドデンとある機械は、そう、まさに奇怪なもんで、なんか目隠しで囲んだ怪獣の檻みたい。
 その上から水を垂らして、その水で怪獣のご機嫌とって冷房してんのかっていうようなシロモノ。ガチで説明すると『異容量接続・個別運転マルチ』というもので、原理的には水を使って空気を冷やすって、どこにでもある室外機。これとダクトごと交換するって大工事を、この春休みにやったらしい。
 で、業者さんが真面目な会社。言い換えれば作業効率を上げ、純益を増やしたい会社。だもんだから、予定の工期よりも早く仕上がっちゃった。この手の工事は、試運転して、さらにあちこち手を入れなきゃならない。それを規則通り、六月まで待つと、契約期間が長くなって、工事費が高くつく。そこで、一週間にかかる電気代と計りにかけると、トントン。

「それじゃあ、先生方や生徒諸君の利益になるほうでやりましょう」

 理事長先生のつるの剛士じゃなくて、鶴の一声で決まった。御歳九十五歳になられる理事長先生だけど、頭は光っている(見た目にも)
 わたしは義体なんで、冷暖房なんて関係ないんだけど、生体組織が気温や湿度、日差しの影響を受け、まことに人間らしい反応をする。そこへいくと紀香は型番の古い義体なんで、生体反応はプログラムしなければならない。少し優越感。

 窓側の生徒たちは、冷房が入っても暑いらしく、麻衣なんかは、スカートをパカパカやって、どうかすると、下敷きでスカートの中に風邪を入れて、もう女を捨てたって感じ。
 梨香さんは、華僑の娘さんらしく平然としている。先祖代々、いろんな国を渡り歩き順応してきた一族の強さなのかもしれない。とにかく、このクラスがみんなパニックになっても一人泰然自若としているのだろうなあと思った。
 長峰さんは、吹き出し口の真下で震えている。本人がいうか保健委員の亮介が気づいて、先生に声かけるまで放っておく。互いの成長のためには必要なことだろう。でも、長峰さんは堪えるだけで、とうとう授業中に「トイレに行かせてください」と蚊の鳴くような声で言った。十分たっても帰ってこないので、梨香さんは手を挙げて「様子を見てきます」
 そして五分後、「ちょっと貧血気味なんで、保健室寄ってきました」と梨香さんの解説付きで戻ってきた。
 梨香さんは、本当に気のつく良い子だ。席に戻るとき目が合ったら、目が優しく笑っていた。思わず『分かってるって』と目配せをしてしまった。

 委員長の大佛クンが気を利かせて、休み時間に机に乗って、吹き出し口の向きを変えた。新品なんで少し硬い。
「……だめだ、新品なんで硬いや」
「わたしが、やってみる」
 しゃしゃり出てしまった。吹き出し口は施行ミスで、ダクトと吹き出し口のリングの間に接着剤が少量入ってしまい、それで動かないことがすぐに分かった。計算すると一トンの力で動くことが分かった。吹き出し口は一トンと百グラムまで耐えられる。まあ、このくらいのものなら余裕で……。

 ベコン!

 お腹に響く音がして、吹き出し口は回るようになった。
 でも、ダクトそのものの計算をしていなかったので、ダクトが配管の中で歪んでしまった。非破壊検査をやってみると、ただ捻れただけなので放っておくことにした。ただしばらくは、友子の馬鹿力と言われたが。

 放課後、稽古場になっている同窓会館に行った。

 新しい台本が決まったので、取りあえず、動きながら本を読んでみることにした。
 昼間は閉めっぱなしだったので、人間である妙子には耐えられないだろうと、冷房を入れにいく。教室と違って、ここは美観を損ねるということで、新しいダクトは通っていない。昔の通風口を利用して、風を送り込んでいる。そのため、冷気があまりやってこない。
「なんか詰まってるのかな?」
「妙子が来る前に、なんとかしよう」
 紀香は、そう言ってジャージに着替えると、隣の用具室に行き、そこの通風口から、秒速三十メートルの息を吹き込んだ。
 ブワーって音がして、ホコリと一緒に何かが、落ちてきた。

「ねえ、ちょっと。幽霊さんが落ちてきたわよ……」
「え、なんつった……!?」

 紀香が不審げに戻ってくると、幽霊さんは、ホコリを払って、やっと立ち上がった……。
 

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