大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・小説大阪府立真田山学院高校演劇部公式ブログ・Vol・9『情報というより評判』

2018-10-20 20:21:03 | 小説・2

小説大阪府立真田山学院高校演劇部
公式ブログ・Vol・9

『情報というより評判』  


☆情報というより評判
 
 前回の8号の反響が大きかったので、部員全員で考えました。
「では、臨時部会の出席をとります。九鬼あやめ!」
「はい!」

 これで出欠とるのはお終いです。なんといっても、あたし三好清海を入れてたった二人の部員です。

「先輩の言うてはった『情報なしに公演を観に行くことは出来ません』と某高校さんが言うてはったのを『一見正論のようですが、基本的に間違ってる』と言い切るのは、ちょっと飛躍してませんか?」
 
 一年のくせして言いたいこと言いです。

「情報がなかったら、某高校さんの言わはるとおり、行きようありません」

 先輩に断定で、もの言うか?

「たいていの公演は、その気になって検索したら分かる。それから、逆に聞くけど、公演の情報あって観にいくか?」
「全部はむりですけど」
「そないして、三本も観たら交通費と時間返してくれて言いたなる。去年のコンクールでもそうやった。地区総会で『お互いの芝居も観ましょう』て、どこの地区でも言うてたけど、どこも閑古鳥。どないかすると、観客席より舞台におる人間の方が多い」
「その断定の根拠はなんですか?」
「数えてたもん。某地区の某高校は、観客25人。舞台はスタッフこみで15人」
「え、それて観客の方が多い」
「観客の11人は、某校の関係者と家族。これ引いたら一人少ない」
「……」
「なんや、言いたいことあったら言い」
「そやけど、K高校とかO高校とかM高校とか、けっこう入ってたいう話です」
「アホ、よう覚えとき『特殊をもって典型とするなかれ』民芸の滝沢修さんの名言や」
「だれですか、滝沢修とか民芸とか?」
「知らんのん!? ヘソ噛んで死ね!」
「……おへそまで口届きません」

 と、アホな話は、ここまでとして、真田山の意見として補足します。

 宣伝は必要やけど、元来は連盟に一元化して、連盟のサイト見たら分かるようにするのが正当。その上で、それぞれが情報発信する。連盟のオオヤケのとこに20年以上かかって、アクセスが23万ちょっと言うのは絶対少ない。情報のターミナルとして機能してません。割ってみたら、よう分かります。一年でアクセスざっと10000。一見すごそうやけど、一日で割ったら28あるかないかです。こんなん高校生が個人でブログやったって楽に、これくらいはいきます。けど「高校演劇」で検索したらYAHOOで二位、GOOGLEで三位。いかに日本において高校演劇がショボイかようわかります。
 ちなみに大隈ケイコさんが個人的にやってはるブログはもう200万件のアクセス。どないです?

 で、九鬼あやめと話して結論に達しました。情報量より評判や。

 評判が良かったら、人は探してでも観にきます。逆にスカタンな芝居は、どない宣伝しても観客は集まらへん。
 分かり易い例えで、東京の山手線はJRに代わったとき大々的に宣伝して『E電』て名前つけたけど、今はそない言う人いてません。看護師のことを、いまだに「看護婦さん」言う人は多いです。
 要は、評判なんですね。高校演劇「オタク、暗い、ダサイ、おもんない」の四拍子。
 やっぱり、ストイックに稽古して、力つけて、一般の人が観て面白いいうもんにならなあきません。
 かつて西成に車座いう劇団がありました。日雇いのオッチャンらが会場の小学校の講堂に鈴なりやったそうです。地味な公演重ねながら評判をとってきはったんですね。
 
☆演目決定
『すみれの花さくころ』に決まりました。決まりがわるいんで、3年前某高校がやった、と、書きましたけど、うっとこです。主演は映画やテレビで活躍中の先輩坂東はるかさんです。正直プレッシャーです。AKBやないけど『永遠プレッシャー』です。あたし個人としてはやりたない。やりたいけどやりたない。うちの演劇部には、そういう芝居です。
 もう一人、決まってるんですけど、まだ正式やないんで個人名は伏せます。

☆集団縄跳び(基礎練習)

 縄なしで縄跳びします。最低5人はいります。見えへん縄を、みんなが見てタイミング計ったり、縄引っかけたりしたら、直ぐにみんなに分かります。演技とは自分を騙すことです。ウソや思たらやってみてください。面白いのは請け合います。

☆九鬼あやめの欠点克服

 新入部員の九鬼あやめは滑舌に欠点があるて書きました(前々回)よね。

 泥だらけ⇒どよだやけ    ぱぴぷぺぽ⇒ぱぴっぺぽ     てな感じでした。

 真田山の訓練方法は以下の通りです。

 軽く口をつむって、息を吐き出して、プルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプル……てな具合に唇を振動させます。ま、昭和の時代の電話の音を口でやると思たら間違いありません。

 緩いと、プスーで終わってしまいます。きついとプッと一発吹き出しておしまいです。適度なつむり方で息の続く限りプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプル……です。

 軽く口を開いて、下を上あごに付けます。そして息を吐きだして、ルルルルルルルルルルル……と舌を振動させます。

 力を入れ過ぎても緩めすぎてもできません。感覚はプルプルプルと同じです。

 あやめと同じように悩んでる人はお試しあれ! あ~ら不思議! 一週間ほどで効果が出てきますよ!


  文責 大阪府立真田山学院高校演劇部部長 三好清海(みよしはるみ) 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高校ライトノベル・アンドロイド アン・27『いい雰囲気そう』

2018-10-20 14:34:00 | ノベル

ご注意ください:わたしのブログを装って成人向けサイトに誘導するものがあります。

URLの頭blog.goo.ne.jpを確かめて入ってください。blog.goo.ne.jpではないものはわたしのブログではありません。

 

 

アンドロイド アン・27

『いい雰囲気そう』

 

 手を上げたくせに、自分は出ようとはしないんだよね。

 

 パックジュースを半分飲んだところで玲奈が言う。

 放課後のグラウンドを緩く見下ろす大階段。

 うちのグラウンドは校舎の敷地よりも二メートルほど低く、高低差の繋ぎがコンクリートの大階段になっている。十メートルおきに植え込みがあって、ボンヤリ日向ぼっこをしたり、緩い距離で喋ったりするのにうってつけなんだ。

 掃除当番のゴミ捨てをかって出た。ほんとは徳永さんなんだけど、ダンスの練習が控えているので引き受けたんだ。

 ゴミ捨て場まで来ると、三組の玲奈と一緒になったんで、パックジュースを奢って大階段に腰を下ろしている。

「アンのやつ、部屋に籠って振り付けを考えてるみたいなんだけど、ぜったい見るなって。見るなと言われると気になってな」

「ハハ、ダンスって、時にあられもない格好になるからね。男って、そういうの見たがるんだ」

「ち、ちが……音だけは聞こえるじゃん。曲だけじゃなくて、体動かしてるとドシンバタンとさ。それが、なんか一生懸命っぽくって、その……気になるんだよな従兄としてもさ」

 ほんとうは少し違う。

 アンはアンドロイドだから、見本を見たりすればいっぺんにマスターできる。それが三日もたっているのに、いまだにドシンバタンとやってるんだ。従兄ってのもウソだけど、玲奈に言うわけにはいかないしな。

「アンはさ、だれが踊ってもサマになるように工夫してるよ。大人数だから難しいのはダメだし、かと言ってショ-もないもんじゃダメじゃん。福田君(自分で立候補して縫子やってる仕立て屋の息子)が入ってコスも良くなってきたし、ベストなものにしよって一生懸命なんだよ」

「そっか」

「アンがさ、最前列立ってさ、見本兼て踊ってくれりゃ、もっと楽なんだろうけど、振り付けに徹するって」

「そうなんだ」

「で、だいたいのとこ、どんなフリなんだ?」

 アンが一生懸命なのはいいんだが、あいつの性格っちゅーか、これまでのことを振り返ると、なんか心配になる。

「一昨日のフリだけど見てみる?」

 スマホを出して動画を見せてくれる。

「……なんか、よう分からんなあ」

 最前列から撮ったらしい動画は、部分的にしか見えなくて、一生懸命さや恥ずかしがってる様子しか分からない。使っている音楽は楽し気で、どこかで聞いたことがある感じだ。

「えーとね、こんな感じ」

 玲奈はちょっと踊って見せてくれた。人前で踊ったりする玲奈じゃないんだけど、アンの頑張りを認めてくれていることが分かって微笑ましい。

「んーーーよう分からんが、イカシテはいるようだな」

「アハハ、わたし調理係だしね(^_^;)」

 

 まあ、いい雰囲気そうなんで、アハハと笑ってお仕舞にした。

 本番見ればいいわけだしな。

 

 

☆主な登場人物 

 新一    一人暮らしの高校二年生だったが、アンドロイドのアンがやってきてイレギュラーな生活が始まった

  アン    新一の祖父新之助のところからやってきたアンドロイド、二百年未来からやってきたらしいが詳細は不明

  町田夫人  町内の放送局と異名を持つおばさん

  町田老人  町会長 息子の嫁が町田夫人

  玲奈    アンと同じ三組の女生徒

  小金沢灯里 新一憧れの女生徒

  赤沢    新一の遅刻仲間

  早乙女采女 学校一の美少女

 徳永さん   クラスの委員長

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高校ライトノベル・妹が憎たらしいのには訳がある・55『メタモルフォーゼ』

2018-10-20 06:29:43 | ボクの妹

 

注意:わたしのブログを装って成人向けサイトに誘導するものがあります。URLの頭blog.goo.ne.jpを確かめて入ってください。blog.goo.ne.jpではないものはわたしのブログではありません。 閲覧の皆様へ

 

妹が憎たらしいのには訳がある・55
『メタモルフォーゼ』 
    


 アズマのセダンに変態させたハナちゃんを三ヶ日のインターチェンジに入れた。

 わたし(ねねちゃんと俺の合体)と、サッチャン(幸子=ボクの妹)は、信太山駐屯地にあるシェルターを出発して東京を目指した。三ヶ日を過ぎると検問があるので、このインターチェンジで、これからの行動を考えながら当面の対策を練っている。
「ウナギの焼きお握りたまら~ん」
 サッチャンが優奈の顔で、目をへの字にした。
「義体にしては、よく食べるのね」
 わたしは天蕎麦のエビ天の尻尾をポリポリ囓りながら言った。えびせんのような香りが口の中に広がる。サッチャンは、とっくにそれを食べて、三ヶ日名物のウナギの焼きお握りたまら~ん状態。
「優奈ちゃんに変態したところだから、生体組織に栄養がいるのよ。それに東京での生活の準備あれこれに頭使ったから。ほらこれが、ねねちゃんのID……」
 サッチャンが、スマホにケーブルを繋いで、情報を送ってきた。
「え、わたし渡辺真由!?」
「わたしは大島優子。二人とも親が熱烈なAKBファンだったってことになってる。N女子大のちょいワル女子学生……以下了解?」
「インスト-ル終わり。長期戦覚悟ね」
「そうならないように願ってるけど、いくよ真由」
「へいへい」

 浜松市の外れまで来たときに、検問にかかった。

「この先10キロのところで、ロボットが暴走して、軍と警察車両以外は通行止めです。一般道に降りて迂回願います」
 警官の誘導で一般道に降りた。要所要所に警官は立っており、複数の一般道に誘導していた。五カ所目からは、国防軍に替わった。どうやらロボット兵のようだ。
「この道を、まっすぐ行くと、東名にもどれます」
 ロボット兵は、そう言ったが、後続の車はしばらく停止させられ、見えなくなってから別の道に誘導されていた。
『どうやら、ハメられたようですね♪』
 ハナちゃんが楽しそうに言った。
「そのようね、でもハナちゃんは大人しくしていてね」
『えー、つまんないな』
「ハナちゃんは大事な隠し球なの」
『ええ、そうなんですか。なんだか照れちゃう♪』

 そのとき、目の前にトラックに変態していたと思われるロボットが二体地響きをさせて降下してきた。

「真由(ねね)、こいつら情報とりながら仕掛けてくる。手の内は見せないで、一気に倒す……最初に、通信回路をブレイクして」
「言うには及ばないわ」
 わたしたちは、同時にハナちゃんから飛び出した。ハナちゃんは普通のアズマのセダンのように、オートで退避した。いきなりスキャニングパルスを感じた。
「こいつら、義体を探してるんだ!」
 二人はロボットの股ぐらにしがみついた。衛星の映像で、こちらのスペックを知られないためだ。背中づたいに首筋まで上り、グレネードレーザーで首筋に穴をあけ、手を突っこんで、通信回路を基板ごと引きちぎった。これでこいつから情報を送られることはない。
 ロボットも大人しくはしていなかった。ジャンプすると背中から落ちて、わたしをペシャンコにしようとした。その時偶然に振り落とされたように見せかけ、うつ伏せに倒れた。気を失ったフリをしていると、足で踏みつぶされそうになり、横っ飛びに跳んで優子と入れ違い、戦う相手を替えた。交差するときに手話で情報を伝えた。
 互いのロボットの首筋につかまると、グレネードレーザーで開けた穴にケーブルを突っこみ、バトルセンサーに細工した。エネミー認識をロボットにしたのだ。
 二人が離れると、二体のロボットは互いを敵と認識して戦い始めた。同じスペックのロボットだったので、勝負は、あっと言う間に相打ちに終わった。

 ハナちゃんが戻ってきて他の一般車両に混じった。

 東名の本線に戻ると、検問所で、同じアズマのセダンが次々に止められていた。
「わたしたち、引っかからないわね」
『型番を型オチにして、シリアルを、同型のアズマにシャッフルしておきました♪』
「同型って、どのくらいあるの?」
『国内だけで45万台はありますう。そのユーザーと、その知り合い……ちょっと天文学的数字になりますね♪』
「アハハ、ハナちゃんやるう!」
『それよりも、お二人義体丸出しですから、その対策を』
「拓磨の義体が使ってたバージョンアップのコードがあるわ。これで誤魔化そう」
「そうね、ユースケに見つかるまでの偽装になればいいんだしね」

 そうして、東京につくころには、N女子大の大島優子(幸子と優奈の融合)と渡辺真由(ねねちゃんとボクの融合)になりおおせていた……。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高校ライトノベル・トモコパラドクス・32『え~い、面倒だから奇跡だ!』

2018-10-20 06:19:29 | トモコパラドクス

 

注意:わたしのブログを装って成人向けサイトに誘導するものがあります。URLの頭blog.goo.ne.jpを確かめて入ってください。blog.goo.ne.jpではないものはわたしのブログではありません。 閲覧の皆様へ

 

トモコパラドクス・32 
『え~い、面倒だから奇跡だ!』 
      

 三十年前、友子が生む娘が極東戦争を起こすという説が有力になった未来。そこから来た特殊部隊によって、女子高生の友子は一度殺された。しかしこれに反対する勢力により義体として一命を取り留める。しかし、未来世界の内紛や、資材不足により、義体化できたのは三十年先の現代。やむなく友子は弟一郎の娘として社会に適応する「え、お姉ちゃんが、オレの娘!?」そう、友子は十六歳。女子高生としてのパラドクスに満ちた生活が再開された!


「左半身にマヒが残ります。日常生活も、介助無しでは無理かもしれません」

 まどかの家族を前に、主治医は、明日の天気予報が「せっかくの雨です」という程度の残念顔で言った。
「甚一、おめえが好子さんにかけた苦労の末だと思え。根性据えて看病すんだぞ!」
 お祖父ちゃんが、小さな声で、でもしっかり、腹に収まる言い方で、お父さんを励ました。
「わかってらい。でも、こうなるまで気がついてやれなかった自分が情けなくってよ……」
 お父さんは、俯いたまま、声を絞り出した。
「大将、工場のことなら、任せてくださいよ。なあに、ヒト月やフタ月、オレがなんとかしますよ」
 柳井のオイチャンがいうと、天気予報を付け加えるような気楽さで、医者が言った。
「まあ、最低でも半年は覚悟してください」

 みんな、シーンとしてしまった。

「でもね、おまいさん……」
「なんでい、ババアの出る幕じゃねえや」
「いいえ、出る幕だよ。甚一が付き添うのはあたりまえだけど、身の回りのことは、やっぱり身内の女でなくちゃ」
「じゃ、おめえが、好子さん担いだり、下の世話ができるってのかよ?」
「あたしだって、やれることはやれるけど。ここは、まどかにも一肌脱いでもらわなくっちゃねえ」
「まどかは、無理だよ。スケジュールいっぱいなんだからさ。芸能界って、鉄工所のようなわけにゃいかないんだから」
 兄の健一が、したり顔で注釈した。
「てめえ、鉄工所と芸能界をいっしょにしやがったな!」
「ち、ちがうよ。いっしょには成らないから言ったんじゃないか!」
「あ、そうか……て、なおのこと鉄工所バカにしてんじゃねえか!」
「騒ぐんじゃねえ! ここは病院だ、みなさんのご迷惑も考えろ。なあ看護婦さん」
「あ、今は看護師って言うんですよ、おじいちゃん」
 医者が、天気予報の用語を間違えたように、軽く言い添えた。
「なんだと、いつから、そんな外国語になっちまったんだ!?」
「外国語じゃありませんよ。日本語です。二十一世紀に入って、もう定着してますよ」
 と、医者が鼻で笑うように言った。
「てやんでい、このヒョウロクダマ! カンゴシだなんて、まるで人の身も心もゴシゴシ扱うような言い方は、おいら認めねえからな。なにかい、それは、また進駐軍かなんかのお達しで、大東亜戦争を太平洋戦争に言い返させられたのと同しデンなんだろい!」
「オジイチャンね、婦の字がいけないんですよ。女偏に帚。女性を侮辱してる言葉なんですよ」
 医者は、噛んで含めるようにいったが、ジイチャンには、これが感に障った。
「てやんでい、だったら主婦はどうなんだい。ご婦人て、憧れと尊敬の籠もった言葉は、どうしてくれんだよ。やい、下手な言い訳言いやがったら、ただじゃおかねえからな!」

 じいちゃんが、クリカラモンモンの二の腕をまくった。

「まあ、甚アンチャン。相手は先生なんだからよ、オイラたちの言葉はお分かりにはならねえんだ。同業のよしみ、勘弁してやってくれよ」
「ま。おめえが、そういうなら……でもよ、長生きはしたくねえな。看護師さんだなんて、言葉が冷てえよ。四三が十二どころか死産がいっぺえって印象だぜ。だいたい物書きが困るじゃねえか。看護婦っていや、もう女と分かるけどよ。女性看護師じゃ、情緒もしまりもねえ」
 とんだところに、話がいきそうなので、掛かり付けの薮先生がとりなそうとした。

「わたしが、やるわ」

 ノックもしないで、まどかが入ってきた。
「わたし、学校の火事で死にかけたとき、お母さんが懸命に治してくれたんだもん(『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』参照)その恩返ししなくっちゃ」
「まどか、ずいぶん早いじゃないか」
「うん、新幹線の中で走ってきちゃった」
 とうけながし、薮先生に迫った。
「看病って、平たく言えば手当でしょ。人の痛みを分かって上げよう。押さえてあげようって、思わず手をあててしまうことから生まれた言葉なんでしょ?」
「さすが江戸っ子、甚アンチャン。いい孫もったねえ」
「したっけ、まどか、仕事の方は?」
「大丈夫、わたしが奇跡をおこすから……」

 そして、ほんとうに奇跡がおこった。いや、起こした。生きてる脳細胞を一万倍の速度で活性化して、元通りにした。

「あら、まどか。どうしたのよ? いやだ、ここ病院?」
 きまり悪そうに、お母さんは体を起こした。
「ミラクルおこりました!」
 ナースステーションに繋がる通話機に、まどかは、少し大きな声で言った。

「信じられない、こんなことが……」
 医者は呆然として、カルテのバインダーを落としてしまった。

 そして、みんなが喜んでいるうちに、まどかは、本物のまどかとテレポートで入れ替わった。

 本物のまどかは、さっき新幹線に乗り、ウツラウツラしかけたところであった。で、まどか自身、奇跡が起こったと思った。

――面倒だから、奇跡ってことにしちゃった――

 学校に残した分身に完全にもどって、友子はほくそ笑んだ。
「なにやらかしたのよ?」
 紀香が、ニヤニヤしながら、近づいてきた。
「ううん、梅雨の晴れ間もいいもんだなって」
「しおらしいことを。言ってみそ」
「だから、梅雨がね……」

 やがて、この分身の術でも手に負えないことがおこるとは、予想だにしない友子であった……。
 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする