大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・タキさんの押しつけ映画評・114『マレフィセント』

2016-12-05 06:40:30 | 映画評
タキさんの押しつけ映画評・114
『マレフィセント』


この春(2016年4月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ


 これは悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に身内に流している映画評ですが、もったいないので転載したものです。


ディズニーの1959年のクラシックアニメ“眠れる森の美女”の真実を明かす……と来れば、またまた相対化ですかいな〓〓 物事には裏も表もありまっせ、右から見るのと左からでは全く違う話が見えて来るって訳ですが、本作はそうではありません。

 これが真実なら、59年のアニメは、いわば「古事記」か「日本書紀」つまり、オーロラ姫の子孫が歴史を記す時、人間にとって都合の悪い事実を全面的に書き換えたって形です。
 以下、今回はネタを割りますから、見に行く予定の人は読まないで下さいませ。 さて、本作の原型はシャルル・ペローの「眠れる森の美女(1697)」と、グリムの「いばら姫(1812)」です。いずれもイタリアの説話集「ペンタローネ(1636)」に端を発していますが、今や、これしかないマレフィセントのイメージは全くディズニーのオリジナルです。 そして、ストーリーは、チャイコフスキーの書いたバレーにインスパイアされている。

 バレー版に登場する妖精は7人で、マレフィセント(バレー版ではカラボス)も含まれる姉妹です(ちなみに民話には12人)。カラボスが呪いをかけると、リラの精が「愛する人のくちづけで目を覚ます」と魔法をかける。本作のマレフィセントは、このカラボスとリラが合体している。彼女自身が呪いをかけた後、「真実の愛のくちづけだけが、この呪いを解く」と続ける。
 この世に“真実の愛”など存在しないと確信しているからであるが、彼女は元々は心優しい妖精で、妖精の国の守護者であった。 それが何故、悪魔のような妖女に成ってしまったのかというのが本作の肝。
 洗礼式の祝宴に招待されなかったのを怒ったというのがこれまでの設定だが、もっと以前に因縁があったことになっています。オーロラの父・ステファン王とマレフィセントの間にロマンスがあって、ステファンの心変わりで手ひどい裏切りに会った。そこから彼女は歪んで
行ったとしてある。
 本作品、アメリカでは5週目、2億$を超えるヒットに成っています。設定も面白く、映像デザインも美しい……のですが、私には入り込みにくい映画でした。
 なんかストーリー運びが中途半端で感情移入出来ない。森に隠れたオーロラを陰ながらマレフィセントが見守っているのだが、その愛憎半ばの視線が表現できていない、ここが最重要ポイントなのに……なんで? オーロラを預かった3人の妖精が全く役立たずで、放っておいたら16歳の誕生日までに死んでいる。 オーロラを育てたのは、マレフィセントだということなのだが、これに3人が全く気づかない。というより3人の妖精が殆ど描かれていない。この中途半端、原因が脚本なのか編集なのか、はたまたアンジェリーナ・ジョリーの演技力不足なのか? 見た感じでは全部に等分の罪がありそうです。姿形は、リック・ベイカーの見事なメイクもあって、アンジー以外に考えられない位、まさしくマレフィセントなのですが、なんせ複雑な性格、ちょっと難しかったのかな?

 アンジーに難が在ったとしたら、そこはサイドが埋めなくてはならないが、どうもアンジーの存在感に任せ過ぎている。マレフィセントの手先のカラスが、魔力で様々に姿を変え、彼女に語りかける。この役をもう少しうまく使えば相当変わった筈。 ストーリーにリアルが欠けるから、見事なセットも衣装も楽しめない。逆に盛り込み過ぎでゴタゴタ感じる。上映97分(実質90分位)、時間的にはまだ余裕がある筈、最終編集がどんな考えで行われたのやら。監督のロバート・ストロンバーグは長年 美術監督として名を馳せた人で、本作が監督デビュー。さすがに美術に対する目配りは行き届いているが、ストーリーテリングに難有りです。オーロラは森でフィリップ王子に出会いますが、果たしてこの程度で“真実の愛”が生まれるのか? というのは、極当たり前な現代的視点、ならオーロラは誰のキスで目覚めるのか…これはもう、書くまでもありませんが、この見え見えの結論を感動的に見せるためには、そこに至るまでの積み上げが肝心なのですが……う~~ん、残念!

 エンディングにしても、ハッピーエンドではありますが、ホンマにこれでええんかい?と思います。登場人物は、現代的な事象をカリカライズされた存在ですが、これを欲張り過ぎているのも混乱の一因であります。さて、これをお薦めするか否か……う~~ん、難しいなぁ。アンジーのマレフィセントぶり(姿)だけでも見る価値はありますが、ちょっと演技がねぇ~。ゴージャスな画面ですが、盛り込み過ぎ?
 総体、デラックスな作品ですから、見て損とか馬鹿にしとんかい!ってな事もありませんし、まぁ……お薦めとしときます。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする