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大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

やくもあやかし物語2・024『福の湯開業』

2024-01-09 10:45:11 | カントリーロード
くもやかし物語 2
024『福の湯開業』 




 パン パパン パパパパン パパパパン パパパパン パパパパン


 一面の雪景色とは対照的に晴れ渡った青空に綿毛のような煙がいくつも上がる。

 せっかくの花火なので、夜にやろうという意見もあったんだけど、そういうのは、ついこないだのクリスマスでもやったし、やっぱり風呂屋の開湯式は昼間がいい!

 ということで、日本で言えば七草の今日、松の湯の開湯式が行われる!

 開湯式(かいとうしき)って変な言い方なんだけど、開湯は解凍にも通じて、凍えるような冬の寒さから解放されるって感じがいい。

 考えたのはメイソン・ヒル。

 メイソンはイギリスの子爵の息子。ラノベやアニメのイメージだと子爵とかいうと、ノブレスオブリージュとか言って気位が高くて鼻持ちならないタカビーって感じだけど、ちょっと違う。

「アヘン戦争からこっち、うちの先祖はとんでもない奴ばっかりだった」

 てなことを言う。

 イギリスには『英国病』という厄介な病気があるんだって。

 イギリスは大英帝国とか云って(今もグレートブリテンだから、訳したら今でも大英帝国なんだけどね)世界の半分を植民地とかにして支配したり迷惑かけたことを戦後反省しまくってアジアやアフリカのことを持ち上げる。

 それで、ネットで調べて開湯式というのを発見して命名した。

『なんか役所言葉みたいで変よ』とポケットの中の御息所は言う。

 御息所は平安時代のヤンゴトナキ人だから馴染まないんだよね。平安時代のヤンゴトナキ人たちは、大和言葉っていうか訓読みだったからカイトウシキなんてカクカクした言い方は『武者か叡山の法師めいて品が悪い』らしい。交換手さんは『いいんじゃないですか、樺太で温泉を開くときは、そう言ってました』と大らか。

 花火は流行り病でお祭りとかを自粛していた時のが余ってて使い放題。

 パパパパン パパパパン パパパパン パパパパン

 花火の煙の下にはコンクリートの煙突。

 煙突には、由緒正しい逆さクラゲの下に『福の湯』とペンキで書かれている。

「みなさん、待ちに待った銭湯が完成しましたよぅ(^▽^)/」

 学校の総裁であるヨリコ王女がお立ちになって挨拶される。

「挨拶というか説明です。ええ、入って右が男風呂左が女風呂。どちらも壁の所に下駄箱があります。履物は脱いで下駄箱に入れます。木製の鍵があるからガチャっと押して鍵をかけ、鍵は持って入ります。鍵はこれね」

 ヘエエ

 カマボコの板を半分にして切り込みを入れたような鍵を示す。

「入ったところに番台があるけど、これは日本で営業中だったころの名残なんでパス。脱衣用の木製ロッカーが左右にあるから、そこに脱いだものを入れる。あ、下駄箱の鍵も忘れずに入れてね。脱衣箱にはアルミの鍵が付いてるから、その鍵は……これ。ゴム紐が輪っかになってるから手首に付けとくの、こんな風ね」

「殿下、モニターにイラストが出ます」

 ソフィー先生がリモコンを押すと、大型プロジェクターに、そこまでのイラストが現れ、みんなウンウンと頷く。

「浴室に入るのは、基本的にすっ裸!」

 オオ アア ヤッパリの声が上がる。

「湯船に入るのは体を洗ってからね。どうしても先に入りたい人は、ざっとかかり湯をしてから。湯船の中にタオルを漬けてはいけません。湯船の縁に置いておくか畳んで頭の上に載せる」

 あ、アニメで見た! とか声が上がる。

「湯船は大きいけど飛び込んではいけません。そっと静かに入る。お喋りぐらいはしてもいいけど、騒いじゃダメです。歌を唄ったり踊ったりもしないようにね。それから、お風呂が開いている時はノレンって云うのが入り口にかかって……そう、これね」

 ソフィー先生が持ち上げて示してくれる。

「いちおう学校のお風呂だけども、警備の兵隊や職員の者も使います。みんなで仲良く使ってください。むろん、露天風呂の方も引き続きやってるから、気分次第、込み具合を見て使ってください」

 王女さまぁ時間でーす!

 担当のメイドさんが暖簾をかけながら元気に開店を知らせた。

 早くも洗面器にタオルや着替えを載せた生徒や職員が押し寄せ、あっという間に定員いっぱいに。

 残った人たちは、露天風呂の方に行ったり、三十分後の入れ替えを待ったり。

 混雑を予想していたわたしたちはひとまず宿舎の方へ……行こうとしたら気配を感じた。

 やっぱりデラシネ。

――今夜、いっしょにお風呂に入ろ――

 そう思念を送ったけど、反応は無くって、すぐに気配は消えた。

 
☆彡主な登場人物 
  • やくも        斎藤やくも ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生
  • ネル         コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
  • ヨリコ王女      ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
  • ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
  • メグ・キャリバーン  教頭先生
  • カーナボン卿     校長先生
  • 酒井 詩       コトハ 聴講生
  • 同級生たち      アーデルハイド メイソン・ヒル オリビア・トンプソン ロージー・エドワーズ
  • 先生たち       マッコイ(言語学)
  • あやかしたち     デラシネ 六条御息所 ティターニア オーベロン

 

 
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やくもあやかし物語2・023『ゆく年くる年』

2024-01-01 10:37:15 | カントリーロード
くもやかし物語 2
023『ゆく年くる年』 




 ほた~るのひか~りぃ♪ ま~どのゆぅ~き~ぃ♪


 日本語で歌うと、みんなの視線が集まってきた。

 え……あ……(#^_^#)

「日本でもAuld Lang Syne (オールド・ラング・ザイン)歌うのねえ!」

 ハイジと並んでいたコーネリアが上品に手を組んだまま感動している。

「え、あ……英語の歌詞はむつかしくて」

 英語は喋れるんだけど、歌が唄えるほどじゃない。

 それにメロディーは完全に『蛍の光』だったし。

 大晦日の夜はダイニングに集まって年越しをしたんだ。

 それで、メイソン・ヒルが「Auld Lang Syneを歌いながら新年を迎えようじゃないか」と凛々しく提案して、ハイジが「それ、知らねえぞ」って言って、他にも何人か知らない子がいたので、メイソン・ヒルが「練習しよう!」て言って、みんなで歌い出したとこ。

 わたしも感動したよ。

 だってさAuld Lang Syneなんて聞いたことないタイトル言われて、それで前奏が始まったら完ぺきに蛍の光だったから、日本人なら自動的に「ほた~るのひか~りぃ♪ ま~どのゆぅ~き~ぃ♪」って歌ってしまうよ。

「わたしたちも入れてくれるぅ?」

 声がかかったかと思うと、入り口に王女さまが詩(ことは)さんの車いすを押して立っている。

「わたしも、コトハも日本の学校だったから、やっぱり蛍の光になるかなあ」

「じゃあ、三人で一度歌ってもらえませんか!」

 メイソン・ヒルがとびきりの笑顔で提案して三人で歌ったよ。

 そして、一番を歌い終わったら、みんな待ちきれないで、そのままAuld Lang Syneのコーラスになって、途中からは、どこからかバグパイプの演奏も加わって、とってもいい雰囲気で新年を迎えた。


 そして、二時くらいまでは、みんな起きていてお喋りしたりして過ごした。


「ねえ、初日の出見に行こうよ!」

 朝まで起きていたのは10人も居ないんだけど、王女さまが明るく提案すると、半分くらいが目を覚まして付いてきた。

「日の出見ると、なんかいいことあるのかあ~」

 目が覚め切っていないハイジは王女さまがいるのも忘れてプータレる。

「元日の太陽は、一年でいちばん力があるのよぉ」

 王女さまが言うとロージー・エトワーズ(お祖父ちゃんがマフィアの大物だったって噂がある)が、がぜん元気になって、みんなの前に出た。

「知ってる! エジプトだって、そうでさ、元日の太陽で秘密の扉が開くピラミッドがあるんだって!」

 ホホー ヘエー とか笑いの混じった声が上がる。

「ホントだからね」

「こんなのもある」

 声を上げたのは、ちょっと堅物のアイン・シュタインベルグ。

「日露戦争最後の戦いだった奉天の戦いで、総参謀長だったコダマ大将は毎朝日の出に祈って大勝利を得たって」

 ホォ……

 ウクライナじゃロシアとの戦争の真っ最中。静かな反応だけど、ちょっと真剣みがある。

 でも、話を膨らます者はいない。

 雪は降っていないけど、やっぱ寒い。

 なんせ、日の出前なんで、みんな懐中電灯で足元を照らしている。


 わたしたちが向かっているのは湖のほとり。日が昇ると湖面に朝日が照り返して、きっと二倍はきれいだから。


 オオオオオオオオオオオ


 ちょうど山の端を太陽が昇ってくるところで、予想通り、湖面はキラキラと光の妖精たちが踊っているように煌めき始めた。

 それから、みんなは、一様に押し黙って、お日様が完全に姿を現すのを見守った。

 そして、わたしは、そんな私たちを見ている者の気配を感じていた。


 これは、たぶん……デラシネだ。


☆彡主な登場人物 
  • やくも        斎藤やくも ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生
  • ネル         コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
  • ヨリコ王女      ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
  • ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
  • メグ・キャリバーン  教頭先生
  • カーナボン卿     校長先生
  • 酒井 詩       コトハ 聴講生
  • 同級生たち      アーデルハイド メイソン・ヒル オリビア・トンプソン ロージー・エドワーズ
  • 先生たち       マッコイ(言語学)
  • あやかしたち     デラシネ 六条御息所 ティターニア オーベロン
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やくもあやかし物語2・022『戦い済んで・2』

2023-12-25 09:46:15 | カントリーロード
くもやかし物語 2
022『戦い済んで・2』 




 森の女王ティターニアは、ゆっくりと羽をはためかせ、地上50センチくらいのところでホバリングしている。50センチなら、地面に下りて来ればいいと思うんだけど、この50センチは、女王としての威厳を示すものかもしれない。

 それに、森林浴をしてるみたいにリラックスのオーラが、その羽ばたきで出てるような気もする。

「デラシネの件ではお世話になった。お礼を言うわ」

「い、いえ、お役に立ったのなら幸いです(^_^;)」

 50センチの威力に、神社にお参りした時の感覚でお辞儀してしまう。

「フフフ……さすが極東の島国の子ねぇ、奥ゆかしいわ」

「ハイジはちがうぞ」

「そうね、アーデルハイドとコーネリアは、わたしたちに似た感じね」

「あ、申し遅れました。プロイセンの森の住人コーネリア・ナサニエルです(-_-)」

 ネルは、王女に対した時と同じように慇懃にあいさつ。腰をかがめる時に、ハイジの頭を押さえつけ「ムギュ」って言いながら、ハイジもあいさつした。

「ハイジはハイジでいいよ、ちゃんと呼ばれると、教会に行った時みたいに緊張すっから、あ、しますから(;'∀')」

「はい、それでは……」

 25センチくらいに下りてきた。

「デラシネは、元々は森の住人なのだけれど、いろいろあって、森の仲間たちから離れてしまったの。いろいろはデラシネの親の代からあったのだけれどね。デラシネ自身は、ほんとうは人恋しい子なの。それで、魔法学校ができてからは気になって仕方がないの」

「ああ……」

「うん……なにか思い当たったのかしら?」

「日本にいた時も、デラシネみたいなのは居ました」

「そうなのね……それで、学校やあなたたちにチョッカイを出すのね」

「ええと……」

「そうね、ヤクモから言い出したら言霊になってしまうわね」

「コトダマってなんだ?」

「黙ってろ!」

 ポコン

「ムギュ」

 言霊……口にした言葉にエネルギーが籠って力を現したり、災いをもたらすことを言うんだよ。

「もうあれほどの悪さをすることは無いと思うのだけど、また、あなたたちの前に現れると思うの」

「え、また来んのか!?」

「うん、少しずつでいいから……」

「相手にしろってか!? ムギュ!」

 ネルが口を押えたけど「相手にしろ」って言葉が漏れた。

「年が明けたら、お風呂屋さんの方も使えるみたいね……」

 シャラララ~~ン……☆ シャラララ~~ン……☆

 ロッドを振るティターニア。

「森の祝福……きっといいお風呂になるわ」

「お礼とかくれるんじゃ……ムグ!」

「しておいたわよ、ちゃんと振ったでしょ、ロッドを二回(^▽^)。それじゃあねぇ~~」

 ピュゥ~~~

 風が吹いたかと思うと、来た時とはぜんぜん違うスピードで森の方へ飛んで行ってしまった。あとには、しばらく木の葉が舞い散ったままになった。

「オーベロンのやつが隠れていたな」

「よく分からない夫婦ねぇ(^_^;)」

「で、御褒美は!?」


 そして、宿舎に帰ると雪が降り出して、夜中には、もう積もっていた。

 今年は暖冬で雪は降らないと言われていたけど、予想はずれの大雪で、クリスマスイブも、今日のクリスマスもとてもいい雰囲気だった。

「ええ、御褒美って、この雪のことだったのかあ!?」

 ハイジ一人だけ不機嫌で今年も押し詰まってきたよ。

 
☆彡主な登場人物 
  • やくも        斎藤やくも ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生
  • ネル         コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
  • ヨリコ王女      ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
  • ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
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  • 酒井 詩       コトハ 聴講生
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やくもあやかし物語2・021『戦い済んで・1』

2023-12-19 10:49:41 | カントリーロード
くもやかし物語 2
021『戦い済んで・1』 




 ね、やって見せて!


 ソフィー先生が席を外すと、子どものような目をして王女さまが言う。

「え、ここでですか!?」

 ネルが目を丸くする。

 わたしとネルとハイジは、デラシネをやっつけたので、その報告に王女殿下の部屋に呼ばれている。

 時々ソフィー先生が「跳んだ高さは?」とか「敵との距離は?」とか「命中率は?」とか専門的なことを聞いてタブレットに入力して、一通りまとまったんで司令室へ戻って行った。

 それで、それまで真面目に聞いていた王女さまは、自習時間に監督の先生が出て行った生徒みたいに精神年齢の下がった表情になってネルに言ったんだよ。

 耳をクルンチョと曲げて、手を使わずに耳の穴を塞ぐのを見せて欲しいって。

 ほら、デラシネとの戦いでやってたでしょ(019『デラシネの攻撃!』)、耳をクルっと巻いて耳の穴を塞いだ、あれよ。

「え、そんなのやってたのかぁ! 気が付かなかった、ハイジも見たいぞ!」

 ハイジも懸命だったので気が付いていなかったんだ。

「え、あ……では、ちょっとだけ」

 しゅんかん息をつめたような顔になると、ネルの耳はクルンと巻いて見事に耳を塞いだ。

 パチパチパチ

 お行儀のいい王女さまは、キチンと感動の拍手をされる。

「は、拍手されるときまりわるいです(^_^;)」

「おお、それでハナクソとかもほじれるのかぁ?」

 ハイジがバカを言う。

「んなことするかあ!」

「でも、見事です。見事にデラシネをやっつけて、しばらくは森も平和になると、ティターニアもお礼を言ってましたよ」

「ええ、ハイジたちにはお礼来ないぞぉ」

「森の者たちも舞い上がってしまって、気が付いたらあなたたちも帰ってしまっていたそうよ」

「アハ、でしょうね」

 たしかに、あの後の森のざわめきは止む気配が無くて、それでわたしたちも帰ってきたんだし。

「たぶん、このあとお礼を言いにくると思うわよ」

「あ、そうなんですか(^_^;)」

「はい、森の者たちは、そういうところキチンとしているから。あなたたちも、キチンと受け止めてあげて」

「「「はい」」」

「森の件はひとまず置いておいて、もう一つ伝えておくことがあるの」

 え、なんだろう?

「実は、日本から聖真理愛学院の生徒たちが修学旅行で来ることになっていたんだけど、事情で二月に伸びてしまったの。他の先生たちや生徒たちにも伝えておくけど、なにかおもてなしのアイデアを考えておいて欲しいの」

 あ、そうか。いろいろドタバタして忘れていたけど、たしかにそういう話があったよ。

 忘れたまま突然的に来られたら、アタフタして何もできなかっただろうけど、クリスマスや正月を挟んで二か月あれば、じゅうぶん準備もできるだろう。

 ちょっと楽しみが増えた気持ちになって、王宮を後にして学校に戻る。

 エリアゲートをくぐって、学校への道にさしかかると、森の方から風が吹いて来た。

 ピュゥ~

 そして道の真ん中で渦を巻いたかと思うと、背中に大きな蝶々の羽を付けた銀髪のきれいな女の人が空中に現れた!

 ティターニア女王だ(⊙∀⊙) !



☆彡主な登場人物 
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やくもあやかし物語2・020『デラシネの全力攻撃』

2023-12-14 17:27:39 | カントリーロード
くもやかし物語 2
020『デラシネの全力攻撃』 



 散れ!


 ネルが両手を広げて叫んだ!

 わたしは左! ネルは右!

 ハイジは、いっしゅん迷って後ろに逃げた! 真ん中に居たので、どっちへ行っていいか分からず逃げるしかなかったんだろう。仕方がない(-_-;)。

「フフフ……目くらましのつもりか」

 ドラゴンの背に跨ったデラシネは不敵に笑うと、ドラゴンと共に空に飛んだ。

「森は、わたしの庭のようなもの、チョロチョロ走り回っても居所は知れている……そこだ!」

 ビシ!!

 すぐ後ろ、木々の枝や葉っぱを貫いて電撃みたいなのが地面に突き刺さる。

 一年前のわたしだったら、悲鳴も上げられずにうずくまるか気絶してしまうかだったと思う。

 でも、いろんな妖たちと戦ったり、時には共通の敵から身を守ったりしてきたから、取りあえずは逃げられる。

 ビシ!

 離れたところに衝撃、ネルの方を攻撃したんだ……でも、走る気配はしているから、命中はしていない。

 来る……ビシ!!

 直前にゾワってくるんで、しゅんかんで横っ跳び。左の頬に痛みが走る。

 破片が当たったんだ、拭った拳に血が付いた。

 ビシ!

 今度はネル。でも、気配は同じテンポで走ってる。まずは大丈夫。

「ちょこまかと三月うさぎのように……まあいい、いつまでももつはずもない、ゆっくり退治してやるからね……そこだ!」

 ビビッシ!!

 さっきの倍ほどのが落ちてきた! 直前に速度を上げて無事だったけど、髪の焦げる臭いがする。

 ちょっとヤバイ、続けられたらもたないかもしれない。

 ビシビシ!

 二連発……それもネルじゃなくてわたしに!?

 そうか、わたしの方がチョロいと踏んだんだ! くそ、集中攻撃されたらもたないかもしれない(;'∀')!

 ビ ビシビシ!

 次のは遅れたし、微妙にためらいが……?

『ネルよ、ネルが直前に後ろを走ってドラゴンを惑わせたのよ』

 御息所が首だけ出して後ろを指さしている。

 そうか、フェイントをカマシてくれたんだ。

 ビビ ビシビシ!

 次もズレた。今度はいっしゅんだけネルの後すがたが見えた。

 今度はわたしが助けなきゃ!

 走りながらネルの居所を探る。

 ん?

 ネル以外にもチラホラと気配がする。木の上……岩の陰……窪地のヘリ……倒木の洞……そうか、森の妖精や精霊たちが、あちこちで様子を伺ってるんだ。

 面白がってるのや迷惑がってるのや怯えているのや、なかには感情の読めないのも居る。

 ビビ ビシビシ!!

 ネルの気配が近づいたので、こちらからネルの後ろに走る。案の定、狙いは大きく外れて、離れたところで火のついた葉っぱや枝が舞い上がった。

――あたしはいい、体力的にはヤクモの方が弱い、庇っていてはもたないぞ!――

 あ、それもそうだ。

 鬼の手のお蔭で瞬発力は鬼強いけど、これを何時間もやられたら、ちょっと自信ないかも。

「そうか、ヤクモうさぎの方がねらい目か……」

 グゥゥゥーーーン

 くそ、高度を落として真後ろに貼り付かれた(;゚Д゚)!

 ビシビシビシ!!!

 っく!

 かろうじて避けたけど、右足と左手に痛みが走る。

 トリャーーー!!

 ネルが飛び蹴りを食らわせて、当たらぬまでもドラゴンの進路を狂わせる。

 でも、次はダメかもしれない(;'∀')。

 ビシビシビシ!!! ビシビシビシ!!!

 あ、もうダメだ……

『ヤクモ、あの岩壁をめざして』

 御息所が小さな声で言う。

「右、左、どっち?」

 それまでも、二度ほど岩壁の前まで走って曲がっている。

 岩壁は単なる障害物、飛び越えるには高すぎる。曲がるしかないんだ。

『直前でストップ、ぶつかる覚悟で』

「え、あ、うん」

 理解したわけじゃないけど、このままじゃもたないからね。

 ズザザザザ……ドシン!

 なんとか急ブレーキ! やっぱり岩にぶつかって、死にはしなかったけど、そのまま仰向けに倒れてしまう。

 倒れながら見えた。

 ドラゴンは岩にぶつかって粉みじん……じゃなくて、岩に吸い込まれるようにして消えてしまい、デラシネ一人、岩に顔をこすり付けながら急上昇し、悔しそうにブンブン手を振って飛んで行ってしまった。

 プギャァァァァ……ドシン!

 そして、なぜかハイジが遅れて岩にぶつかって落ちてきた。

 
☆彡主な登場人物 
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やくもあやかし物語2・019『デラシネの攻撃!』

2023-12-07 12:40:08 | カントリーロード
くもやかし物語 2
019『デラシネの攻撃!』 




 うまくいけば、このままデラシネに出会えて話が出来るかも……と思った。


 三叉路の道は素直な一本道になったよ。

 相変わらず草ぼうぼうの獣道で、蔦や根っこが邪魔だけど、注意して歩けば平気だと思う。

 日本でもいろんな妖に出会ったけど、なんとかなってきたしね。

 思い返してみると、完全にぶちのめして滅ぼした妖は、そんなに多くない。

 半分以上は少しだけでも気持ちが通じたところで折り合いがついたような気がする。

 うん、きっと大丈夫……思ったところで異変が起こった。


 ガチャ ガチャガチャガチャ ガチャガチャガチャ ガチャガチャガチャ


 食器をまとめて洗うような音がした。

「囲まれる!」

 ネルが耳を立てて腰を落とした。

 わたしは鬼の手を構えて周囲を警戒、ハイジはカンフーの構えみたいなポーズをとって、わたしたちの間に隠れた。

「ま、護ってんだじょ(;'∀')」

「数が多い、わたしは前を警戒するから、ヤクモは後ろを見てくれ!」

「うん、了解!」

「ハイジは敵の動きを見ていろ、敵は上下からもくるかもしれんからな」

「じょ、上下!?」

『上はわたしが見とく、ハイジは地面を警戒!』

「お、おう!」

 御息所が締めくくって防御態勢が出来あがった。


 シャキン!


 敵が姿を現した。みんな骨だよ……こ、これは(;'∀')?

「森の中で死んだ者たちだ……ほとんど動物たちだけど、人や精霊のも混じっているぞ」

「ちょっと多すぎるよ」

 耳をピクピクさせながらネルが分析する。

「古いのもだいぶ混じってるし」

「かなり無理をしている、時を超えて死霊を集めるのは針の上に立つのと同じくらい神経を集中させるんだ」

「いっぺんにかかってこられたら、おしっこチビルかも(;'∀')」

「そこまでの力はないと思うけど……そうか( ゚Д゚)……耳を塞げ!」

 言うが早いか、ネルは耳をクルっと巻いて耳の穴を塞いだ。わたしも両手で耳を塞ぎ、御息所はポケットの奥に引っ込んだ。

 キィーキキキキ! キィーキキキキ! キキキキキキキキキキキーー!!

 何千何万という骨たちが、体中の骨を軋ませて嫌な音を轟かせる。

 ハイジは対応が遅れたのか耳を塞ぎながらも白目をむいて泡を吹いている。

 そうか、これなら、飛びかからせ戦わせるよりも少ない力で済ませられる。

――ヤクモ、耳をふさいだまま戦えるか?――

 ネルは思念で聞いてきた。

――ちょっと、防いでみる――

 耳を塞いだまま鬼の手をクルリと回す。

 ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ……

 小さくしか回せなかったので完ぺきではないけど、かなり小さくなって音の角がとれた感じになった。

 ザクザクザク

 骨たちが輪を縮めてきた。

――このままでは押しつぶされる、イチかバチか打って出よう!――

――了解!――

 トワァァァァァァ!! ウリャァァァァァ!!

 バキボキボキバキバキボキバキバキバキバキ! ベシッ! ドゲシ! グチャ! バキボキバキバキバキバキ! ドグチャ!! ボキボキバキバキボキバキバキバキバキ! ドゲシ! グチャ!

 ネルは魔法の杖を、わたしは鬼の手を振るい、それだけでは足りないので足でけったり頭突きを食らわせたりして、粗方を片付けてしまった。

「し、下から来るじょぉ……(≧◇≦) 」

 苦しい息の下からハイジが地面を指した。

 ズッボボボォォォォン!!

 枯れ葉枯れ枝、根っこや土やら折れた骨を巻き上げながら骸骨ドラゴンに跨ったデラシネが飛び上がってきた!

 
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やくもあやかし物語2・018『森の中の三叉路』

2023-12-01 10:34:01 | カントリーロード
くもやかし物語 2
018『森の中の三叉路』 




「「「え?」」」

 三人同時に声が出た。

 オーベロンがつけてくれたのは獣道。

 獣というのは四つ足だから、通る道は、道なのか、ちょっとだけ草がまばらなところなのか区別がつかない。むろん獣は四つ足で歩いているから人の目の高さあたりは薮や茂みと変わりがない。気を付けて歩かないと、見失ってしまう。

 それが、いきなりホワっと広がった。

 中一の時に街の森林公園でオリエンテーリングをやった時を思い出す。
 所どころに先生が立っていて、カードにスタンプを押してくれる。
 そういうところは交差点になっていて、地図をよく見ないと間違ったルートに入ってしまって遠回りをさせられる。

 そういう所に出てしまった。

 ホワっと広がって、ある程度は見通せるんだけど、そこは三叉路で、上りの道と下りの道がある。こういうところって、次元の狭間って感じがする……上りを選ぶか下りを選ぶかで、ぜんぜん別の世界に踏み込んでしまいそうな、そんな怖さがあるんだ。

 崖道のお屋敷の庭、草ぼうぼうのお厨子の前でスマホを拾ったら、伏見稲荷みたく前後に鳥居が続いていたときの恐怖だよ(やくもあやかし物語03『フフフフ』)。間違えた鳥居を選んだら永久に二度と元の世界に戻ってこれないような。

 ここは上の道と下の道の二拓だけど、きっとその先でも枝分かれしていて、怖くなって振り返ったら、もう、どこから来たか分からなくなってるみたいな。


「「「どっちだ?」」」


 声が揃ってしまったので、お互いに聞くわけにもいかない。
 
「ヤクモのサキュバスは分からねえのか?」

『サキュバス言うなあ!』

 ハイジに腹を立てる御息所だけど、ポケットの中には引っ込まないで、目をキョロキョロさせて真剣にあたりの様子を探っている。

『悪意を感じる……道に迷わせて泣きべそかかせてやろうって』

「な、泣きべそなんかかかないぞ(৹˃ᗝ˂৹) 」

 ハイジが泣きそうな声で強がりを言う。

「よし、姿が見えるところまで行って、大丈夫そうだったら手を振るから、続いてきてくれ」

 ネルが指と耳を立てて決意表明。

 さすがはエルフ、森の中の行動には責任を持たなきゃと思ってるんだ。

『やめた方がいい、それくらいのことは見通してると思うわよデラシネのやつ』

「でも、このままじゃ身動き取れなくなってしまうぞ、サキュ……」

『ん?』

「ミヤスドコロ」

『この際だから言っとくけど、わたしの正式な名前は六条の御息所よ』

「ちょっと長いなあ」

『エルフの耳ほどじゃないわよ。でも、読み方はロクジョウノミヤスンドコロだからね、憶えておいてちょうだいな。ほら、みんなで言ってみ』

「「「ロクジョウノミヤスンドコロ」」」

「言いにくい、意識を集中しないと間違えそうだ(;'∀')」

「じゃあ、同じ程度に意識を集中して、コーネリア・ナサニエル、耳を貸して」

 ネルをフルネームで呼んでヒソヒソ命じる御息所。

「じゃあ、あたしが先に行って様子を探るから、OKだったら〇、ダメだったらペケで知らせるから」

 明るく言って、ネルは右の道を100mほど進んだ。

「あ、〇のサインだぞ!」

『ちょっと待って!』

 足を浮かしたハイジを呼び止める御息所。わたしも体が前に出ちゃったんだけどね(^_^;)。

 フワ

 音もなく、瞬間でネルが目の前に戻ってきた。

『やっぱりな』

「え?」「どういうことだ!?」

「意識だけ向こうに飛ばしたんだ、ミヤスドコロが意識を集中させてくれてな」

「あ」

「そのために、舌噛みそうな名前呼ばせたんだな」

「それだけじゃない、サインは♡マークにしろと決めてあった」

「え、だって〇だったぞ」

『つまり、幻を見せて迷わせようって魂胆だったのよ。そういうケチなやつなのよ、デラシネって』

 ここは連係プレーだって気がして、わたしはみんなに言った。

「フン、つきあってらんないわ。もう帰ろ」

「お、おい」「ヤクモ」

 ビックリしながらも、ネルもハイジも回れ右した。

 ホワン!

 音がして、振り返ったら道は素直な一本道になっていた。


 
☆彡主な登場人物 
  • やくも        斎藤やくも ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生
  • ネル         コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
  • ヨリコ王女      ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
  • ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
  • メグ・キャリバーン  教頭先生
  • カーナボン卿     校長先生
  • 酒井 詩       コトハ 聴講生
  • 同級生たち      アーデルハイド メイソン・ヒル オリビア・トンプソン ロージー・エドワーズ
  • 先生たち       マッコイ(言語学)
  • あやかしたち     デラシネ 六条御息所 ティターニア オーベロン
 
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やくもあやかし物語2・017『木葉隠れのオーベロン』

2023-11-25 14:54:21 | カントリーロード

くもやかし物語 2

017『木葉隠れのオーベロン』 

 

 

「少しだけ後ろめたさはあるみたいだ……」

 

 森の中の獣道を進んで行くと、ネルが呟いた。

「後ろめたい? 誰が?」

「あ、遠くから結界張って見送りに来たやつらか!?」

「そんなこと言うもんじゃないよ、ハイジ」

「ティターニアだよ」

「あ」

「ああん、森の女親分か?」

「獣道とはいえ、ゲームじゃないんだから、こんなに歩きやすい道があるはずがない」

「え、そうなの?」

「かすかに妖力も感じる、ティターニアか、その仲間が作っておいたんだ……そうだろ、オーベロン?」

 ヒッ

 小さくしゃっくりしたような声がしたかと思うと、薮の向こう、木の根元あたりがホワっと光った。

「隠れても無駄だ! 見えてるぞ、オーベロン!」

 シュバ

「「うわ」」

 気が付かなかったのでハイジと二人で驚いてしまった。

 木の葉が舞いあがって……それから何かが現れるのかと思ったら、木の葉は小柄な人の形にわだかまった。

「……やっぱり見えていたかベロン」

 なんか、一昔前の人工音声みたいな声だ。それに「ベロン」てなんだ?

「国は違うがエルフも森の民だからな」

「そうだな、コーネリア・ナサニエルも森の民だったな……ウフフベロン」

「姿を見せたということは、やっぱり後ろめたいか」

「ちがう、めずらしいから見に来たベロン」

「まあ、いいだろ。見に来たのなら、こっちも自己紹介しておこうか」

「あ、それはベロン(;'∀')」

「ヤクモ、おまえから」

「う、うん」

「あ、木の葉の塊に見えているけど、上から5センチくらいのところが目だ、見つめて話してやれ」

「くそ(;'▲')」

 ザワザワザワ

 木の葉が騒いだ。

「下から5センチ、逆立ちしたってダメだからな」

「わ、わかった(;'▢')ベロン」

「元に戻った、上から5センチ」

「あ、えと、小泉やくもです。この度は、森のみなさんにご迷惑をかけて、デラシネのことは責任……どこまで持てるかわかりませんけど、できるだけのことは……」

「よしよしベロン」

「下手に出ることないからね、出てきたっていうことは後ろめたい証拠だから」

「よ、よろしくお願いします(^_^;)」

「お、おう、こちらこそなベロン」

「アルプスのハイジだぞ……で、ネル、あの葉っぱの吹き溜まりみたいなやつはなんだ(ΦωΦ) ?」

「ティターニアの夫のオーベロンだ」

「え、ということは森の王さまなのか!?」

「そうなのだ、エライのだベロン<(`^´)>」

 葉っぱをギュっと寄せ集めて偉そうにすろオーベロン。

「アハハ、なんか蓑虫みたいだぞ」

「み、蓑虫言うな、ベロン!」

「それで、ティターニアじゃなくてオーベロンが出てきたのは、なぜ?」

「お、おう、見届けるためベロン……おっと、もう一人いるだろベロン」

 オーベロンの目(のあたり)が、わたしのポケットのあたりを見ている。

 あ、御息所だ!

『チ……見えてたのぉ、蓑虫ぃ』

 めちゃくちゃ嫌そうに舌打ちしをてポケットから顔を出す御息所。

「ミヤスドコロって言うのか、ベロン」

『六条の御息所よ、憶えといて』

「おまえ、サキュバス ベロン?」

『サキュバスじゃないし』

「……でも、人に夢を観させる系のアヤカシ……ベロン?」

『なによ』

「…………う、ま、まあいい、ベロン。正体もバレたし、少しは助けてやらないこともないベロン。そのかわり、後で一つだけ頼まれて欲しいベロン」

『なんでもってわけじゃ……チ、行ってしまった』

 

 ガサガサガサ……

 

 獣道がいっそう森の奥まで広がっていった……。 

 

☆彡主な登場人物 

  • やくも        斎藤やくも ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生
  • ネル         コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
  • ヨリコ王女      ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
  • ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
  • メグ・キャリバーン  教頭先生
  • カーナボン卿     校長先生
  • 酒井 詩       コトハ 聴講生
  • 同級生たち      アーデルハイド メイソン・ヒル オリビア・トンプソン ロージー・エドワーズ
  • 先生たち       マッコイ(言語学)
  • あやかしたち     デラシネ 六条御息所 ティターニア オーベロン

 

 

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やくもあやかし物語2・016『森へ!』

2023-11-17 14:06:18 | カントリーロード

くもやかし物語 2

016『森へ!』 

 

 

 お…………大きい。

 

 道が曲がって森が見えてくると、すこしビビってしまう。

 

 いつもより森が大きく見える。

 

 分かってる。これまでは外から見るだけだったけど、これから中に入るんだ。

 それも、デラシネをやっつけるため……少なくともワルサをさせないくらいに話をつけなくちゃいけない。

 露天風呂で出くわしたデラシネは生徒と間違えるくらいに普通の女の子なんだけど、キレると猿だ。

 白目が無くなって黒目だけになって、尻尾が出てきて、牙も爪も伸びてくる。

 シャーーって牙向いて跳びかかられた時は怖くて目をつぶってしまった。

 あの瞬間、鬼の手が現れて振り払ったから無事だったけど、次もうまくいくとは限らない。

 少しばかりは有った自信がしぼんでいく…………大きな森がさらに大きくなって、とてつもなく巨大な怪物のよう。ポッカリ開けた入り口は――これから吸い込んでやるぞぉ!――とすぼめた怪物の口みたいだ。

「……ハイジ、まだ来てない」

「いや、来てる」

 サササササ……

 ひとこと言うと、風の妖精みたいに突き進んで、草むらを蹴り上げるネル。

 ポン!

 軽い音がしたかと思うと、スナイパーみたいに全身草の迷彩をまとったハイジが飛び上がった。

 

「イッテー! なにすんだ(>д<)!」

 

「そんなことをしても、妖精たちには丸見えだぞ」

「で、でも、ここまで来るのに、なにもなかったぞ」

「面白いから、みんな見てただけだ」

 サワ

 ザワザワザワザワザワ……

 ネルが拭うように手を振ると森のあちこちに目玉が現れては消えていった。

「ヒエエエエ(;'∀')」

「もう飽きたってさ。あいつらは飽きっぽいからな。それより、うしろ……」

「「え?」」

 ネルに言われて振り返ると、来た道の曲がったところにクラスのみんなが心配そうな目で見送ってくれている。

 ちょっと離れたところには王女さまとソフィー先生。

「おお~、みんな見送りにきてくれてたのかぁ(^▽^)/」

 ハイジが飛び上がって喜ぶ。

「単純に喜ぶな。真剣に心配してくれるくらいに大変なんだよ、この任務は」

「そ、そうなのか(;'∀')」

「ああ、だから、あんな後ろに居るんだ……」

 もう一度ネルが手を振ると、みんなの周囲に薄い靄のようなものがかかっているのが見えた。

「念のため結界が張られている」

「ええ、結界張るほどなのか!?」

「念のためなんだろうけどね。立場が違ったら、わたしもやってるかもしれない」

「さ、いこっか」

「ヤクモ、おまえ、なんか落ち着いてんじゃん」

「あはは……もう、なんでもかかって来なさいよ!」

 

 見え透いているけど強がりを言ってしまう。

 あはは……のあとは「✖〇△◇#!””✖▢!」と、わけの分からない叫び声になりそうだったんだけどね。

 わたしの取り柄は、妖や精霊とかに敏感なことだ。

 それが、森の入り口まで来て、ネルに言われるまで気づかなかった、精霊にも見送りに来てくれていた仲間たちにも。

 やっぱりガチガチに緊張してるんだ。

 スーーーハーーー

 期せずして、三人揃って深呼吸。

 ゆっくりと森の中に踏み込んでいった。

 

 バシャ!

 

 背後でなにかが閉じるような音がしたけど、もう振り返ることはしなかった。

 

☆彡主な登場人物 

  • やくも        斎藤やくも ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生
  • ネル         コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
  • ヨリコ王女      ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
  • ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
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  • あやかしたち     デラシネ 六条御息所

 

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やくもあやかし物語2・015『六条御息所とネル』

2023-11-11 11:24:25 | カントリーロード

くもやかし物語 2

015『六条御息所とネル』 

 

 

 日本に居る時、いちばん付き合いが長かった妖はチカコだった。

 

 でも、チカコは皇女和宮さんの分身で、漢字で書くと親子。

 最後は、ずっと親子のことを心配していた家茂さんが百何十年かぶりで迎えに来て幸せになって海の向こうに行ってしまった。

 だからね、やっと幸せになったチカコに期待しちゃいけない。

 交換手さんは『鬼の手が送れましたから、ひとり味方がそちらに行きます』て言っていた。

 だからね、王女さまのところから戻って、机の上の後姿を見た時は、不覚にも声に出てしまった。

 

 チカコ!?

 

「だれがチカコだってぇ?」

 振り向いた顔を見て思わず叫んでしまった。

「ギョエ!」

「ギョエはないだろ、ギョエはぁ!?」

 同じ1/12サイズのロン毛だから見誤ってしまった。

 

 六条御息所ぉ……(^_^;)

 

「えと……神保城とかはぁ?」

 御息所は、神保城では総理大臣をやっていたはずだ。

「ああ、岸田ナントカほど未練たらしくないから、滝夜叉姫に譲ってきた」

「ええ、滝夜叉さんは神田明神のお仕事があるでしょ?」

「ああ、将門さんの病気も治っちまったし、なんか『やくもの役にたってやれ』って、洒落みたいなこと言って、んでさ……まあ、いいじゃない。この六畳御息所がやってきたんだから、百人力だとありがたく思いなさいよ」

「あ、うん、ありがと(^_^;)」

 

「え、なにそれ!?」

 

 ネルが帰ってきて目を丸くしている。

「な、なによ、このとんがり耳はぁ!?」

 御息所も腰を抜かして驚いている。

「え、えとですねぇ……(^△^;)」

 

 ネルには御息所のことを、御息所にはネルのことを説明してやる。

 

「ああ、やくもの使い魔か」

「使い魔? なんか印象悪いんだけどぉ。そっちこそ、角を耳に変えただけの鬼なんじゃないのぉ(´¬_¬)?」

「デーモンなんかじゃないよ、エルフは森の神族なんだよ、平和と調和を重んずる賢い種族なんだからね」

「なんか、無駄に大きいし」

「人の夢の中に出てくるってことは……見た感じかわいいし……」

「ホホ、長耳も分かってるわねえ」

「サキュバスの一族?」

「サキュバ……?」

「あ、男の夢の中に出てきてねセックスする妖精」

「セ、セックス(;゚Д゚#)!?」

「うん、悪い奴じゃないわよ」

「わたしは、女の夢にしか出ないから(>∀<)」

「え、インキュバス!?」

 

「ああ、もう、そこまでそこまで! とにかく、仲間同士なんだから仲良くやって! ね、仲間なんだから!」

 

 とりあえず納得……させたわけじゃないけど、準備でき次第森の入り口で待ち合わせなので、テキパキと準備した。

 

 

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やくもあやかし物語2・014『交換手さんの電話と王女さまの呼び出し』

2023-11-04 12:39:50 | カントリーロード

くもやかし物語 2

014『交換手さんの電話と王女さまの呼び出し』 

 

 

 明日は日曜でお休み。

 前の晩はハイジたち気の合う仲間同士で遅くまでお喋りしてグッスリ。

 だったのに、夜中にふと目が覚めた。

 

 うっすら開けた目の端がほのかに明るい。

 チロリと目を動かすと、机の上の黒電話がうっすらと光ってる。

 ほら、RPGのゲームやってると、キーアイテムとかが光ってる、あんな感じ。

 よく見ると、光り方には強弱があってホタルみたい。

 ホワワ……ホワワ……ホワワ……

 ん…………このテンポは……電話が鳴る時の間隔。

 マナーモード?

 相棒のネルは口を半開きにして寝息を立てている。

 ひっそり起きると、膝立ちして受話器をとった。

――あ、やっと通じたぁ!――

 それは、懐かしい交換手さんの声だった。

 

 あくる朝、ダイニングでトレーを持ってカウンターに並ぶ。

 わたしの前が食いしん坊のハイジ、後がまだ目の覚めきらないネル。

 ハイジがパンを三つも取って、サラダもスクランブルエッグも山盛りにして、わたしの番がきたところで、食堂のおばちゃんがこっそりと言った。

「王女さまがお呼び、食べたら三人で王宮に行って」

 !?

「え」「あ」「はい」

 いそいで食べなきゃ!

 ガツガツガツ  ムシャムシャ  モソモソモソ

 ゆっくり食べるネルとお代わりをとりに行きたがるハイジを急き立ててダイニングを出る。

 

「ウンコ!」

 

「ええ?」「なに?」

「間に合わせっから……(;゚Д゚)!」

 ピューー

 返事も聞かずにトイレにダッシュのハイジ、ネルは、ようやく血圧が平常値になり、とっとと先に行く。

「あ、待ってぇ(;'∀')」

 マイペースなエルフを追いかけて、王宮のエリアゲートに着くと、ハイジが砂煙を上げて駆けてきた。

「スッキリしたぜ(^▽^)」

「手は洗ったのかぁ?」

「おお、ケツも洗ったぜ!」

 そういうと、制服の裾で手を拭いた。

 

「実は、お願いがあるのよ」

 

 王女さまはサバゲーにでも行くような姿でお待ちになっていた。

「え、どっか戦争にでもいくのか?」

「ちょっと黙ってろ」

 さすがにハイジをたしなめて、王女さまに正対するネル。

「露天風呂にデラシネが現れた、知ってるわよね?」

 知っているも何も、出くわしたのはわたしだよぉ。

「デラシネは露天風呂に惹かれて現れたの、露天風呂はデラシネに活力を与えるようで、この先、危険な存在になるってティターニアから申し入れがあったの」

 ティターニア?

「森の女王よ、女王は『露天風呂を作ったのは人間だから、人間たちでケリをつけて欲しい』と申し出てきたの。ケリをつける人間は、向こうから指名してきたわ」

「ギョエ!」

「それが、あたしたち三人というわけですか?」

 ハイジが目を剥きネルがピンと耳を立てた。

「それに、露天風呂を作ったのはわたし。わたしも行きます」

「「「ええ!」」」

 そうか、それで、このサバゲーなんだ。

「それはなりません!」

 いつの間にか来たのか魔法学のソフィー先生がやってきた。

「ソフィー」

「殿下を危険にさらすわけにはいきません。ティターニアの指名も、この三人です」

「でも、事の始まりはわたしよ。大丈夫、ソフィーに付き添ってもらってだったけど、無名の島から魔法石を取ってくることもできたし(せやさかい408『ヨリコ王女、無名の島で初めての国事行為に臨まれる』)大丈夫よ」

「殿下! ティターニアから指名があったのは、あくまでも、この三人。違えてはなりません」

 う……こんなに厳しい目のソフィー先生は初めてだよ(;'∀')。

 ネルもハイジも息を呑んでしまった。

 

「だ、だいじょうぶです! 三人で行きます!」

 

 口走ってしまった。

 

 夕べ、交換手さんの電話が無かったら、この決心は言えなかったと思う。

 

☆彡主な登場人物 

  • やくも        斎藤やくも ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生
  • ネル         コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
  • ヨリコ王女      ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
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  • 同級生たち      アーデルハイド メイソン・ヒル オリビア・トンプソン ロージー・エドワーズ
  • 先生たち       マッコイ(言語学)

 

 

 

 

 

 

 

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やくもあやかし物語・2・013『魔法の杖が配られて防御魔法を習う』

2023-10-29 10:38:37 | カントリーロード

くもやかし物語・2

013『魔法の杖が配られて防御魔法を習う』 

 

 

 いつも閻魔帳しか持って来ないソフィー先生がカステラの三本詰めくらいの木箱を持ってやってきた。

 

「他の先生たちとも話し合ったんだが、諸君にも魔法の杖を持ってもらうことにした」

 二種類の「え?」が湧き上がる。

 一つは、思っても見なかった「え?」、もう一つは嬉しい「え?」だよ。

 ここ(ヤマセンブルグ王立民俗学学校)が魔法学校だったことは入学式でも説明されて、みんな知っている。

 いずれは、魔法の「魔」の字くらいはやるもんだとも思っている。

 現に、教壇に立っているソフィー先生は先祖代々王室に仕える魔法使いの家系だし。

「ついては、各自、魔法の杖をもってもらう。すでに、自分の杖を持っている者は見せてくれ、呪力・魔力を計測して適当であれば使用を認める。持っていない者は学校の杖を貸与する。持っている者は見せに来い。持っている者は手を挙げろ」

 他人の様子を伺いながら、1/3ほどの子たちが手を挙げる。

「ヤクモ、おまえも持っているんだろう」

「え、あ……」

 あれって魔法の杖なんだろうか?

「え、じゃあ、とりに戻っていいですか?」

 日本に居た時と同じく、あれは机の一番下の引き出しにしまい込んである。

「念じて見ろ、魔法の杖なら、五秒もかからずに手の中に現れる」

「え、そうなんですか!?」

 それまで湯せんしなければ食べられないと思っていたレトルトカレーがレンチンでもいけると分かったときみたいに驚いた。

「やってみろ」

「はい」

 …………ボン!

 ガスが突然点いたみたいな音がして、握った手の中に鬼の手が現れた。

 

 おお( ゚Д゚)!

 

 教室のみんなが驚いた。持ち主のわたしはもっと驚いた。

 他の魔法の杖は菜箸くらいの大きさなのに、鬼の手は孫の手ほどの大きさがあるし、先っぽはまさに手の形してるし。

「見せろ」

 ちょっと厳しい声で先生が言うので、教壇までの5メートルほどを走ってしまった。

「…………これは……一級呪物だな」

 一級呪物?

「並みの杖が自転車だとしたら、これはレオパルドⅡかM1エイブラムスほどの力があるぞ」

 ええ!?

 わたしも、みんなも驚いた。

 戦車なんかにはウトイんだけど、ウクライナ戦争のおかげで憶えてしまった。両方とも世界最高の戦車だよ!

「しゅっげ~(´ºº♡)

 ハイジなんか、なにを間違えたかよだれを垂らしてるしぃ。

「ヤクモ、おまえ、これを三輪車程度にしか使ってないな」

 三輪車ぁ(^_^;)

 アハハハハ(>▽<*)

 わたしは驚いて、教室のみんなは笑った。

「本来なら学校で預からねばならないほどのものだが、よく馴れている。注意して使え」

「は、はひ」

 それから、先生は五人の杖を鑑定して、ルームメイトのネルに目を向けた。

「コーネリア、おまえも魔法を使うんだろ、見せろ」

「あ、あたしは魔法の杖は使いません。インスピレーションですから」

「ほう……では、魔法を使う時は無詠唱なのか?」

「は、はい」

「……そういえば、コーネリアとヤクモは同室だったなあ」

「「はい」」

 (* ´艸`)クスクス

 なぜか、みんながクスクス笑う。

 残りのみんなに杖を配り終えて、先生は居住まいを正した。

 

「実は、学校の周囲で不穏な動きがある」

 

 不穏な動き……

 

「森が騒めき、湖はさざ波だっている。まだまだ精霊のレベルだが用心にこしたことはない。王宮と学校には結界が張られたが、お前たちも用心してもらいたい」

 なるほど、そのために魔法の杖なんだ。

「では、初歩的な防御魔法を教える。見本を見せるから、あとに続け」

 そう言うと、先生は、年季の入った杖を出すと頭上に構えて詠唱したよ。

「ディフェンシブ!」

 先生の頭上にアニメに出てくるような亀甲模様が数十個連結したシールドが現れた。

「やってみろ」

 ディフェンシブ!

 無詠唱のわたしとネルは即座に、みんなは一二秒遅れてシールドが現れる。

「そのままで居ろ」

 先生は机間巡視しながら、みんなのシールドをトンカチで叩いて周る。

 トントン  タンタン  ボコボコ  ベシャベシャ  カンカン  コンコン

 いろんな音がする。

 カチンカチン

 ネルのは鋼鉄を叩いたような音がした。

 キィーーーーーン

 わたしのは、もっと高い音がした。

 先生は、手がしびれて手をフルフルと振ったよ(^_^;)。

「頭上に作った時は前も左右もがら空きだが、慣れれば、同時に前方にもシールドが張れる。もっと慣れれば全身を覆うシールドも可能だ。しかし、結界もシールドも過信は禁物、危ないと思ったら、一目散に逃げろ」

 

 うんうん

 

 ネルとわたしは実感を込めて頷いたよ(^_^;)。

 

 

☆彡主な登場人物 

  • やくも        斎藤やくも ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生
  • ネル         コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
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やくもあやかし物語・2・012『お風呂掃除の点検とデラシネ』

2023-10-23 15:53:06 | カントリーロード

くもやかし物語・2

012『お風呂掃除の点検とデラシネ』 

 

 今日はイース棟の子たちがお風呂掃除の当番だった。

 

 えと、寄宿舎は二つある。

 寄宿舎は校舎である本館と、本館とは渡り廊下で繋がってる寄宿舎棟があるんだ。

 寄宿舎は西と東に分かれていて、東をイース棟、西をウェス棟っていう。

 魔法学校だったころは別の名前だったんだけど、民俗学学校になった時に改められた。

 真上から見ると、横倒しになったFの形。二つ出っ張ってるところが寄宿舎棟。

 この形から分かると思うんだけど、イース棟とウェス棟は、どことなく疎遠。

 だから、お風呂掃除の要領を教えても――分かってんのかなあ?――というところがあって、ちょっと心配だから見に行くんですよ。

 

 お風呂は、前回で言ったけど露天風呂。

 

 脱衣のある所だけ屋根があって、表の札は『準備中』になっている。

 ちゃんと掃除が済んでいるというシルシでもある。

 さてと……

 まだ温もりの残っている脱衣場は床の水滴も拭かれ、マットも立てかけて乾かしてある。

 脱衣棚もチェック、パンツの忘れ物も濡れタオルも残っていない。

 

 続いて露天風呂に出る。

 普通は「浴室に入る」が正しいんだろうけど、天井の無い露天風呂だから「出る」になってしまうよ。

 

 モワ~~っと湯気が立ち込めていて、半分くらいしか見えない。

 まずは洗い場から。

 シャンプーもボディーソープも所定の位置、オーケー。

 湯桶もお風呂椅子も、端っこにまとめて重ねられてる、オーケー。

 さて、次は浴槽だ。

 

 え?

 

 浴槽の奥に人の気配。

 よく見ると、見覚えのあるウェス棟の女生徒がお湯に浸かっている。

「あ、ごめんなさい(;゚Д゚)!」

 ひとこと言って、脱衣場に逃げる。人が裸で入ってるお風呂に服を着たまま入るのは、とっさには恥ずかしいよ。

 でも、考えたら、もうお風呂の時間は終わってるわけだし、あたしは点検に来たわけだし、謝る理由はない。

 それに……脱衣場には、その子の脱いだものや着替えとかが無い。

 入り口のところに靴も無かった……

 

 ちょっと変だ。

 

 もう一度出てみる。

 

 ザザァ

 ちょっと意表を突かれた感じで水音。

――気づかれた――

 ちょっと棘のある思念が飛び込んできて身構えてしまう。

 

 シャーー!

 

 その子はマッパのまま、空中を飛んできた!

 しゅんかん見えた足の間からはしっぽが見えている、爪も伸びてるし牙も剥いてるしぃ!

 

 バシ!

 

 思わず腕を回したら手応え。

 その子は、左のホッペを押え、ちょっとビックリした顔でこっちを睨んでいて、睨んだ目には白目が無い。

 もう一つビックリした。

 自分の右手が鬼の手を握っている。

 ほら、前のシリーズで、俊徳丸を手伝って酒呑童子をやっつけた時にもらった鬼の手。

 

「あ、あ、ごめん、そんなつもりじゃ(;'∀')」

 

 そう謝って鬼の手を背中に隠したんだけど、その子には完全に敵認定されたみたいで、いっそう牙を剝いてくる!

 

「させるかぁ!」

 

 空から声が降ってきたと思ったら、目の前にパジャマ姿のネルが耳をピンと立ててガードしてくれている。

 

 シャッ

 

 旋風が吹き抜けたような音をさせて、そいつは消えてしまった。

「だいじょうぶだった!?」

「う、うん」

「目が覚めたらベッドにいないし、露天風呂の方から凶暴な気配がしたし、飛んできたんだ」

「あ、ありがとう」

 ルームメイトのネルは尖がった耳を70度くらいにピンと立ててあたりを警戒して、安全だと分かるとやっと耳も目尻もニュートラルにした。

「それで、こんな時間に風呂に来てなにしてんの、ブラでも忘れたかぁ?」

「ち、違うよヽ(`Д´)ノ! お風呂掃除ちゃんとできてるかなあって気になって、今日はイースの当番だったし」

「責任感つよすぎ、で……その孫の手みたいなのは?」

「え、あ、これは!」

 ビックリして、いっしゅんで鬼の手を消してしまう。

「え、ヤクモ、魔法が使えんの!?」

「あ、これはちがくてぇ……(;'∀')」

 口下手なあたしは、鬼の手の説明をするのに日本に居たころの物語を朝までかかって説明することになった。

 それから、さっきお風呂に居たのはデラシネと言って、ちょっと厄介な妖精なんだとも教えてくれたよ。

 

☆彡主な登場人物 

  • やくも        斎藤やくも ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生
  • ネル         コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
  • ヨリコ王女      ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
  • ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
  • メグ・キャリバーン  教頭先生
  • カーナボン卿     校長先生
  • 酒井 詩       コトハ 聴講生
  • 同級生たち      アーデルハイド メイソン・ヒル オリビア・トンプソン ロージー・エドワーズ
  • 先生たち       マッコイ(言語学)
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やくもあやかし物語・2・011『みんなで温泉』

2023-10-16 10:50:14 | カントリーロード

くもやかし物語・2

011『みんなで温泉』 

 

 

 ヨロレイヒーーーーー!

 

 高らかにヨーデルを吠えると(ヨーデルって、動詞でどう表現するんだろ、歌う? 奏でる? つま弾く? どれも合わない。でも、ハイジのヨーデルは、まさに『吠える』だよ(^_^;))勢いよく露天風呂の浴槽に飛び込んできた。

 ドップーーーン!

オリビア:「キャ!」

ネル:「ハイジも女なんだからさぁ、マッパで飛び込んだりするなよ!」

ハイジ:「だって、温泉てば日本だろ、日本てば風呂はマッパだろ、アニメでやってたぞ(^▽^)」

ヤクモ:「日本でも前ぐらいは隠すよぉ(#^_^#)」

ハイジ:「え? アニメだったら湯気とか水しぶきで隠れてんじゃん、そうなってっだろ?」

ヤクモ:「あれはアニメだから」

ハイジ:「ええ、じゃあ、丸見えだったのかぁ(ºº; ; )!?」

ロージー:「かわいいお皿だったな」

ハイジ:「お皿いうなあ(;>∀<)」

オリビア:「オサラってなんですの?」

ハイジ:「あーもー、なしなし!」

 アハハハハハ((´∀`*))

 

 開校してからも、学校のあちこち、内側も外側も工事が続いてる。

 

 なんせ、八十年前に閉鎖した建物に手を入れただけの校舎や寄宿舎。じっさいに人が入って活動が始まると、あちこち不具合や手直しするところが出てくる。

 その一つがお風呂。

 古いお風呂は各部屋に付いているんだけど、五部屋以上が同時に使うと水圧が下がるし、お湯の温度は上がらないし。

 とうぜん修理に入ったんだけど、王女さまの発案で日本風の大浴場を作る工事に入っていたんだよ。

 一から大浴場を作るのは大変なので、廃業した日本の銭湯をまるまる移築している。

 移築と言っても大きな銭湯なので完成は、もうちょっとあと。

 その移築工事の横に塀で囲ってあるところがあって、てっきり資材置き場だと思っていた。

 なんと、塀の内側では、ずっとボーリングをやっていたんだよ。

 ボーリングと言っても、玉を転がすスポーツじゃなくて、穴を掘って地質とか調査するやつね(^_^;)。

 その甲斐あって、温泉が湧いてきて、でも、みんなをビックリさせてやろうという王女さまの指示で完成までは秘密にされていた。

 そして、お昼休みに発表されたんで、お仲間で入り初めをさせてもらっているというわけなのよ。

 

 入り初めには条件がある。

 

 水着とかは着用してはいけない。浴槽に浸かる前に体を洗うこと。タオルを浴槽につけてはいけない。浴槽で泳いだり遊んだりしてはいけない。

 つまり、日本のルールなんだよ。

 なにも日本趣味を押し付けようというんじゃない。お風呂を清潔に保ち、みんなで楽しむのは、このルールがいちばんいいんだよ。

ヤクモ:「だから、飛び込むのは禁止だよ」

ハイジ:「うん、わかった(#*´ω`*#)!」

ロ-ジー:「ネル、耳にお湯が入ったりしないのかぁ?」

ネル:「え、あたし?」

 たしかに、エルフの耳は水とか入りやすそう。

ネル:「こうやるんだよ」

 プルプルプル

 なんと、耳だけが別の生き物みたく、プルプルして水滴を弾き飛ばした。

ネル:「真剣に潜る時は、こうだ……えい!」

みんな:「「「「おお!」」」」

 なんと、耳たぶを器用に丸めて耳の穴を塞いだよ!

ネル:「でも、こんなに気持ちいいと、森の妖精たちが面白がって入って来るかもな」

みんな:「「「「ああ……」」」」

 学校が始まって三カ月、みんな、不思議なことの一つや二つに出くわしている。

 先生たちも注意してるんで、害を及ぼされるようなことはないんだけど、ちょっとマジにはなるよ。

 

 ガラ

 

 脱衣所の戸が開く音がして、みんなビックリ!

「ごいっしょしますねぇ……」

 振り向いて、ビックリした。

 なんと、王女さまがタオルで前を隠しただけのお姿でお立ちになっておられるのですよ!

王女:「一番乗りを狙ったんですけど、先を越されましたね」

ハイジ:「ウキ!」

みんな:「「「「し、失礼しましたぁ!」」」」

王女:「かしこまらないでください(^_^;)」

みんな:「「「「イエス、マム!」」」」

王女:「さっさと洗っちゃいますから、入るまで居てくださいね」

みんな:「「「「はい」」」」

 王女さまは五分もかからずに、髪と体を洗うと、わたしたちの真ん中に入ってきた。

オリビア:「殿下、慣れていらっしゃいますわねえ」

王女:「中学や高校では合宿とかで、みんなでお風呂入ってましたし、子どもの頃、家のお風呂が工事中の時は銭湯にも行ってましたよ」

ハイジ:「王女さま、えらい!」

王女:「そうそう、えらいんです。それで、お風呂も学校施設の一つなんで、教室同様に、みなさんで掃除していただきたいんですけど、みなさん、こういう大きいお風呂って掃除の経験ないでしょ」

ハイジ:「お湯を抜いて乾かしときゃいいんじゃね?」

王女:「だめですよ、汚れとか水垢とか取らなきゃダメなんですよ」

ハイジ:「そ、そうなのか?」

ネル:「エルフは泉の沐浴ですましてたしぃ」

オリビア:「うちはメイドたちがやってましたし」

ロージー:「うちは手下……従業員がやってたしぃ」

王女:「そうですか……」

ヤクモ:「あの……お風呂掃除なら毎日やってたんで、あ、大きくても要領は変わらないと思うんで……」

王女:「まあ! じゃあ、小泉さん、みんなに指導してあげてくれます!?」

ヤクモ:「あ、はい」

 

 パチパチパチパチパチパチ(^▽^)

 

 みんなが拍手して、風呂掃除委員長になってしまった(^_^;)

 

☆彡主な登場人物 

  • やくも        斎藤やくも ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生
  • ネル         コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
  • ヨリコ王女      ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
  • ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
  • メグ・キャリバーン  教頭先生
  • カーナボン卿     校長先生
  • 酒井 詩       コトハ 聴講生
  • 同級生たち      アーデルハイド メイソン・ヒル オリビア・トンプソン ロージー・エドワーズ

 

 

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やくもあやかし物語・2・010『チャイムとセンパイ』

2023-10-06 16:57:20 | カントリーロード

くもやかし物語・2

010『チャイムとセンパイ』 

 

 

「スイスじゃヨーデルだぞ!」

 

 いたずらっ子みたいに目をクルクルさせ、ちぎったパンを振り回しながら言うのはハイジ。

「だめですわよ、食べ物を振り回しながらしゃべっては」

「ああ、ごめん。ここはチャイムだからビビっちまったぜ! 授業の始まりと終わりは、ヨロレイヒーって決まってたからよ」

 ルームメイトのオリビアに注意されながらも、ちっとも聞かないでハイジは喋りまくる。

 近ごろは、うち(ヤクモとネル)とオリビア(オリビアとハイジ)のところといっしょにお昼を食べてる。

 四人掛けに四人だからピッタリ。で、学校のチャイムが話題になった。

オリビア:「チャイムを鳴らすのは、ヤマセンブルグがイギリスと縁が深いからではないでしょうか?」

ハイジ:「ええ!? イギリスと縁が深いと、なんでチャイムになるんだあ?」

オリビア:「だって、チャイムのメロディーってイギリスのビッグベンと同じでございましょう?」

ヤクモ:「へえ、そうなの?」

 日本人のわたしは、小学校以来聞き慣れたチャイムなので、全然違和感なし。ごく当たり前で気にも留めなかったよ。

ロージー:「アメリカはさ、先生が時計見ていて『じゃあ、終わり!』って叫ぶんだよ」

 隣りの四人掛けからロージー・エドワーズが割り込んできた。

ロージー:「あ、割り込んじゃったけど、よかった?」

「うん」「どうぞ」「おお」「いいわよ」

ハイジ:「でもよぉ、授業の始めとかどうすんだ? 昼休みなんかグラウンドで遊んでたら分かんねえだろ?」

 自分の横を空けてやりながらハイジが聞く。

ロージー:「先生がホイッスル吹くんだ、指笛ですます先生もいたよ、こんな風に」

 ピューーーー!

オリビア:「ああ、かっこいいかもですぅ」

ハイジ:「牧場じゃ、犬呼ぶとき指笛だったぞ」

ロージー:「じゃあ、羊を集める時はどうするの?」

オリビア:「ああ、犬に命令すっと、犬が駆けまわって集めるのさ」

ネル:「でも、チャイムが鳴るって、アニメみたいでいいよね(^▽^)」

みんな:「「「「うんうん」」」」

ロージー:「そういや、ヤクモは日本人だよね?」

ヤクモ:「あ、うん?」

ロージー:「日本じゃ上級生のこと、センパイって呼ぶんでしょ?」

ヤクモ:「うん、そうだよ」

ハイジ:「ヤクモもセンパイって呼ばれてたのか!?」

ヤクモ:「あ、わたしは部活とかしてなかったから、先輩ってよばれたことは……あ、一人だけいたかも……」

みんな:「やっぱり!」「ほんと!?」「どんなんだ!?」「わあ、すてきですわ!」

 

 思い出した……三年の一学期、図書当番でいっしょになった一年生。

 ほんの数回、当番がいっしょになっただけだったけど、なにをするにも「先輩先輩」って、枕詞みたいに付けて呼んでくれた一年坊主。

 顔もおぼろで、名前は……思い出せないけど、わたしより、少し大きいだけの可愛い男子だった。

 

 いろんなあやかしに振り回されて大変な時期だったけど、ちょっとだけ先輩面ができたのは、その子に対してだけだった。

 

 先輩

 

 しゅんかん、その子の声が聞こえたような気がして、ネルが変な顔をしたけど「ううん、なんでも(^_^;)」と返して、午後の授業に行ったよ。

 

☆彡主な登場人物 

  • やくも        斎藤やくも ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生
  • ネル         コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
  • ヨリコ王女      ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
  • ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
  • メグ・キャリバーン  教頭先生
  • カーナボン卿     校長先生
  • 酒井 詩       コトハ 聴講生
  • 同級生たち      アーデルハイド メイソン・ヒル オリビア・トンプソン ロージー・エドワーズ

 

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