- やくも 斎藤やくも ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生
- ネル コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
- ヨリコ王女 ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
- ソフィー ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
- メグ・キャリバーン 教頭先生
- カーナボン卿 校長先生
- 酒井 詩 コトハ 聴講生
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- 先生たち マッコイ(言語学)
- あやかしたち デラシネ 六条御息所 ティターニア オーベロン
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やくもあやかし物語 2
「少しだけ後ろめたさはあるみたいだ……」
森の中の獣道を進んで行くと、ネルが呟いた。
「後ろめたい? 誰が?」
「あ、遠くから結界張って見送りに来たやつらか!?」
「そんなこと言うもんじゃないよ、ハイジ」
「ティターニアだよ」
「あ」
「ああん、森の女親分か?」
「獣道とはいえ、ゲームじゃないんだから、こんなに歩きやすい道があるはずがない」
「え、そうなの?」
「かすかに妖力も感じる、ティターニアか、その仲間が作っておいたんだ……そうだろ、オーベロン?」
ヒッ
小さくしゃっくりしたような声がしたかと思うと、薮の向こう、木の根元あたりがホワっと光った。
「隠れても無駄だ! 見えてるぞ、オーベロン!」
シュバ
「「うわ」」
気が付かなかったのでハイジと二人で驚いてしまった。
木の葉が舞いあがって……それから何かが現れるのかと思ったら、木の葉は小柄な人の形にわだかまった。
「……やっぱり見えていたかベロン」
なんか、一昔前の人工音声みたいな声だ。それに「ベロン」てなんだ?
「国は違うがエルフも森の民だからな」
「そうだな、コーネリア・ナサニエルも森の民だったな……ウフフベロン」
「姿を見せたということは、やっぱり後ろめたいか」
「ちがう、めずらしいから見に来たベロン」
「まあ、いいだろ。見に来たのなら、こっちも自己紹介しておこうか」
「あ、それはベロン(;'∀')」
「ヤクモ、おまえから」
「う、うん」
「あ、木の葉の塊に見えているけど、上から5センチくらいのところが目だ、見つめて話してやれ」
「くそ(;'▲')」
ザワザワザワ
木の葉が騒いだ。
「下から5センチ、逆立ちしたってダメだからな」
「わ、わかった(;'▢')ベロン」
「元に戻った、上から5センチ」
「あ、えと、小泉やくもです。この度は、森のみなさんにご迷惑をかけて、デラシネのことは責任……どこまで持てるかわかりませんけど、できるだけのことは……」
「よしよしベロン」
「下手に出ることないからね、出てきたっていうことは後ろめたい証拠だから」
「よ、よろしくお願いします(^_^;)」
「お、おう、こちらこそなベロン」
「アルプスのハイジだぞ……で、ネル、あの葉っぱの吹き溜まりみたいなやつはなんだ(ΦωΦ) ?」
「ティターニアの夫のオーベロンだ」
「え、ということは森の王さまなのか!?」
「そうなのだ、エライのだベロン<(`^´)>」
葉っぱをギュっと寄せ集めて偉そうにすろオーベロン。
「アハハ、なんか蓑虫みたいだぞ」
「み、蓑虫言うな、ベロン!」
「それで、ティターニアじゃなくてオーベロンが出てきたのは、なぜ?」
「お、おう、見届けるためベロン……おっと、もう一人いるだろベロン」
オーベロンの目(のあたり)が、わたしのポケットのあたりを見ている。
あ、御息所だ!
『チ……見えてたのぉ、蓑虫ぃ』
めちゃくちゃ嫌そうに舌打ちしをてポケットから顔を出す御息所。
「ミヤスドコロって言うのか、ベロン」
『六条の御息所よ、憶えといて』
「おまえ、サキュバス ベロン?」
『サキュバスじゃないし』
「……でも、人に夢を観させる系のアヤカシ……ベロン?」
『なによ』
「…………う、ま、まあいい、ベロン。正体もバレたし、少しは助けてやらないこともないベロン。そのかわり、後で一つだけ頼まれて欲しいベロン」
『なんでもってわけじゃ……チ、行ってしまった』
ガサガサガサ……
獣道がいっそう森の奥まで広がっていった……。
☆彡主な登場人物
- やくも 斎藤やくも ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生
- ネル コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
- ヨリコ王女 ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
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- 先生たち マッコイ(言語学)
- あやかしたち デラシネ 六条御息所 ティターニア オーベロン
やくもあやかし物語 2
お…………大きい。
道が曲がって森が見えてくると、すこしビビってしまう。
いつもより森が大きく見える。
分かってる。これまでは外から見るだけだったけど、これから中に入るんだ。
それも、デラシネをやっつけるため……少なくともワルサをさせないくらいに話をつけなくちゃいけない。
露天風呂で出くわしたデラシネは生徒と間違えるくらいに普通の女の子なんだけど、キレると猿だ。
白目が無くなって黒目だけになって、尻尾が出てきて、牙も爪も伸びてくる。
シャーーって牙向いて跳びかかられた時は怖くて目をつぶってしまった。
あの瞬間、鬼の手が現れて振り払ったから無事だったけど、次もうまくいくとは限らない。
少しばかりは有った自信がしぼんでいく…………大きな森がさらに大きくなって、とてつもなく巨大な怪物のよう。ポッカリ開けた入り口は――これから吸い込んでやるぞぉ!――とすぼめた怪物の口みたいだ。
「……ハイジ、まだ来てない」
「いや、来てる」
サササササ……
ひとこと言うと、風の妖精みたいに突き進んで、草むらを蹴り上げるネル。
ポン!
軽い音がしたかと思うと、スナイパーみたいに全身草の迷彩をまとったハイジが飛び上がった。
「イッテー! なにすんだ(>д<)!」
「そんなことをしても、妖精たちには丸見えだぞ」
「で、でも、ここまで来るのに、なにもなかったぞ」
「面白いから、みんな見てただけだ」
サワ
ザワザワザワザワザワ……
ネルが拭うように手を振ると森のあちこちに目玉が現れては消えていった。
「ヒエエエエ(;'∀')」
「もう飽きたってさ。あいつらは飽きっぽいからな。それより、うしろ……」
「「え?」」
ネルに言われて振り返ると、来た道の曲がったところにクラスのみんなが心配そうな目で見送ってくれている。
ちょっと離れたところには王女さまとソフィー先生。
「おお~、みんな見送りにきてくれてたのかぁ(^▽^)/」
ハイジが飛び上がって喜ぶ。
「単純に喜ぶな。真剣に心配してくれるくらいに大変なんだよ、この任務は」
「そ、そうなのか(;'∀')」
「ああ、だから、あんな後ろに居るんだ……」
もう一度ネルが手を振ると、みんなの周囲に薄い靄のようなものがかかっているのが見えた。
「念のため結界が張られている」
「ええ、結界張るほどなのか!?」
「念のためなんだろうけどね。立場が違ったら、わたしもやってるかもしれない」
「さ、いこっか」
「ヤクモ、おまえ、なんか落ち着いてんじゃん」
「あはは……もう、なんでもかかって来なさいよ!」
見え透いているけど強がりを言ってしまう。
あはは……のあとは「✖〇△◇#!””✖▢!」と、わけの分からない叫び声になりそうだったんだけどね。
わたしの取り柄は、妖や精霊とかに敏感なことだ。
それが、森の入り口まで来て、ネルに言われるまで気づかなかった、精霊にも見送りに来てくれていた仲間たちにも。
やっぱりガチガチに緊張してるんだ。
スーーーハーーー
期せずして、三人揃って深呼吸。
ゆっくりと森の中に踏み込んでいった。
バシャ!
背後でなにかが閉じるような音がしたけど、もう振り返ることはしなかった。
☆彡主な登場人物
- やくも 斎藤やくも ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生
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やくもあやかし物語 2
日本に居る時、いちばん付き合いが長かった妖はチカコだった。
でも、チカコは皇女和宮さんの分身で、漢字で書くと親子。
最後は、ずっと親子のことを心配していた家茂さんが百何十年かぶりで迎えに来て幸せになって海の向こうに行ってしまった。
だからね、やっと幸せになったチカコに期待しちゃいけない。
交換手さんは『鬼の手が送れましたから、ひとり味方がそちらに行きます』て言っていた。
だからね、王女さまのところから戻って、机の上の後姿を見た時は、不覚にも声に出てしまった。
チカコ!?
「だれがチカコだってぇ?」
振り向いた顔を見て思わず叫んでしまった。
「ギョエ!」
「ギョエはないだろ、ギョエはぁ!?」
同じ1/12サイズのロン毛だから見誤ってしまった。
六条御息所ぉ……(^_^;)
「えと……神保城とかはぁ?」
御息所は、神保城では総理大臣をやっていたはずだ。
「ああ、岸田ナントカほど未練たらしくないから、滝夜叉姫に譲ってきた」
「ええ、滝夜叉さんは神田明神のお仕事があるでしょ?」
「ああ、将門さんの病気も治っちまったし、なんか『やくもの役にたってやれ』って、洒落みたいなこと言って、んでさ……まあ、いいじゃない。この六畳御息所がやってきたんだから、百人力だとありがたく思いなさいよ」
「あ、うん、ありがと(^_^;)」
「え、なにそれ!?」
ネルが帰ってきて目を丸くしている。
「な、なによ、このとんがり耳はぁ!?」
御息所も腰を抜かして驚いている。
「え、えとですねぇ……(^△^;)」
ネルには御息所のことを、御息所にはネルのことを説明してやる。
「ああ、やくもの使い魔か」
「使い魔? なんか印象悪いんだけどぉ。そっちこそ、角を耳に変えただけの鬼なんじゃないのぉ(´¬_¬)?」
「デーモンなんかじゃないよ、エルフは森の神族なんだよ、平和と調和を重んずる賢い種族なんだからね」
「なんか、無駄に大きいし」
「人の夢の中に出てくるってことは……見た感じかわいいし……」
「ホホ、長耳も分かってるわねえ」
「サキュバスの一族?」
「サキュバ……?」
「あ、男の夢の中に出てきてねセックスする妖精」
「セ、セックス(;゚Д゚#)!?」
「うん、悪い奴じゃないわよ」
「わたしは、女の夢にしか出ないから(>∀<)」
「え、インキュバス!?」
「ああ、もう、そこまでそこまで! とにかく、仲間同士なんだから仲良くやって! ね、仲間なんだから!」
とりあえず納得……させたわけじゃないけど、準備でき次第森の入り口で待ち合わせなので、テキパキと準備した。
☆彡主な登場人物
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やくもあやかし物語 2
明日は日曜でお休み。
前の晩はハイジたち気の合う仲間同士で遅くまでお喋りしてグッスリ。
だったのに、夜中にふと目が覚めた。
うっすら開けた目の端がほのかに明るい。
チロリと目を動かすと、机の上の黒電話がうっすらと光ってる。
ほら、RPGのゲームやってると、キーアイテムとかが光ってる、あんな感じ。
よく見ると、光り方には強弱があってホタルみたい。
ホワワ……ホワワ……ホワワ……
ん…………このテンポは……電話が鳴る時の間隔。
マナーモード?
相棒のネルは口を半開きにして寝息を立てている。
ひっそり起きると、膝立ちして受話器をとった。
――あ、やっと通じたぁ!――
それは、懐かしい交換手さんの声だった。
あくる朝、ダイニングでトレーを持ってカウンターに並ぶ。
わたしの前が食いしん坊のハイジ、後がまだ目の覚めきらないネル。
ハイジがパンを三つも取って、サラダもスクランブルエッグも山盛りにして、わたしの番がきたところで、食堂のおばちゃんがこっそりと言った。
「王女さまがお呼び、食べたら三人で王宮に行って」
!?
「え」「あ」「はい」
いそいで食べなきゃ!
ガツガツガツ ムシャムシャ モソモソモソ
ゆっくり食べるネルとお代わりをとりに行きたがるハイジを急き立ててダイニングを出る。
「ウンコ!」
「ええ?」「なに?」
「間に合わせっから……(;゚Д゚)!」
ピューー
返事も聞かずにトイレにダッシュのハイジ、ネルは、ようやく血圧が平常値になり、とっとと先に行く。
「あ、待ってぇ(;'∀')」
マイペースなエルフを追いかけて、王宮のエリアゲートに着くと、ハイジが砂煙を上げて駆けてきた。
「スッキリしたぜ(^▽^)」
「手は洗ったのかぁ?」
「おお、ケツも洗ったぜ!」
そういうと、制服の裾で手を拭いた。
「実は、お願いがあるのよ」
王女さまはサバゲーにでも行くような姿でお待ちになっていた。
「え、どっか戦争にでもいくのか?」
「ちょっと黙ってろ」
さすがにハイジをたしなめて、王女さまに正対するネル。
「露天風呂にデラシネが現れた、知ってるわよね?」
知っているも何も、出くわしたのはわたしだよぉ。
「デラシネは露天風呂に惹かれて現れたの、露天風呂はデラシネに活力を与えるようで、この先、危険な存在になるってティターニアから申し入れがあったの」
ティターニア?
「森の女王よ、女王は『露天風呂を作ったのは人間だから、人間たちでケリをつけて欲しい』と申し出てきたの。ケリをつける人間は、向こうから指名してきたわ」
「ギョエ!」
「それが、あたしたち三人というわけですか?」
ハイジが目を剥きネルがピンと耳を立てた。
「それに、露天風呂を作ったのはわたし。わたしも行きます」
「「「ええ!」」」
そうか、それで、このサバゲーなんだ。
「それはなりません!」
いつの間にか来たのか魔法学のソフィー先生がやってきた。
「ソフィー」
「殿下を危険にさらすわけにはいきません。ティターニアの指名も、この三人です」
「でも、事の始まりはわたしよ。大丈夫、ソフィーに付き添ってもらってだったけど、無名の島から魔法石を取ってくることもできたし(せやさかい408『ヨリコ王女、無名の島で初めての国事行為に臨まれる』)大丈夫よ」
「殿下! ティターニアから指名があったのは、あくまでも、この三人。違えてはなりません」
う……こんなに厳しい目のソフィー先生は初めてだよ(;'∀')。
ネルもハイジも息を呑んでしまった。
「だ、だいじょうぶです! 三人で行きます!」
口走ってしまった。
夕べ、交換手さんの電話が無かったら、この決心は言えなかったと思う。
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やくもあやかし物語・2
いつも閻魔帳しか持って来ないソフィー先生がカステラの三本詰めくらいの木箱を持ってやってきた。
「他の先生たちとも話し合ったんだが、諸君にも魔法の杖を持ってもらうことにした」
二種類の「え?」が湧き上がる。
一つは、思っても見なかった「え?」、もう一つは嬉しい「え?」だよ。
ここ(ヤマセンブルグ王立民俗学学校)が魔法学校だったことは入学式でも説明されて、みんな知っている。
いずれは、魔法の「魔」の字くらいはやるもんだとも思っている。
現に、教壇に立っているソフィー先生は先祖代々王室に仕える魔法使いの家系だし。
「ついては、各自、魔法の杖をもってもらう。すでに、自分の杖を持っている者は見せてくれ、呪力・魔力を計測して適当であれば使用を認める。持っていない者は学校の杖を貸与する。持っている者は見せに来い。持っている者は手を挙げろ」
他人の様子を伺いながら、1/3ほどの子たちが手を挙げる。
「ヤクモ、おまえも持っているんだろう」
「え、あ……」
あれって魔法の杖なんだろうか?
「え、じゃあ、とりに戻っていいですか?」
日本に居た時と同じく、あれは机の一番下の引き出しにしまい込んである。
「念じて見ろ、魔法の杖なら、五秒もかからずに手の中に現れる」
「え、そうなんですか!?」
それまで湯せんしなければ食べられないと思っていたレトルトカレーがレンチンでもいけると分かったときみたいに驚いた。
「やってみろ」
「はい」
…………ボン!
ガスが突然点いたみたいな音がして、握った手の中に鬼の手が現れた。
おお( ゚Д゚)!
教室のみんなが驚いた。持ち主のわたしはもっと驚いた。
他の魔法の杖は菜箸くらいの大きさなのに、鬼の手は孫の手ほどの大きさがあるし、先っぽはまさに手の形してるし。
「見せろ」
ちょっと厳しい声で先生が言うので、教壇までの5メートルほどを走ってしまった。
「…………これは……一級呪物だな」
一級呪物?
「並みの杖が自転車だとしたら、これはレオパルドⅡかM1エイブラムスほどの力があるぞ」
ええ!?
わたしも、みんなも驚いた。
戦車なんかにはウトイんだけど、ウクライナ戦争のおかげで憶えてしまった。両方とも世界最高の戦車だよ!
「しゅっげ~(´º﹃º♡)」
ハイジなんか、なにを間違えたかよだれを垂らしてるしぃ。
「ヤクモ、おまえ、これを三輪車程度にしか使ってないな」
三輪車ぁ(^_^;)
アハハハハ(>▽<*)
わたしは驚いて、教室のみんなは笑った。
「本来なら学校で預からねばならないほどのものだが、よく馴れている。注意して使え」
「は、はひ」
それから、先生は五人の杖を鑑定して、ルームメイトのネルに目を向けた。
「コーネリア、おまえも魔法を使うんだろ、見せろ」
「あ、あたしは魔法の杖は使いません。インスピレーションですから」
「ほう……では、魔法を使う時は無詠唱なのか?」
「は、はい」
「……そういえば、コーネリアとヤクモは同室だったなあ」
「「はい」」
(* ´艸`)クスクス
なぜか、みんながクスクス笑う。
残りのみんなに杖を配り終えて、先生は居住まいを正した。
「実は、学校の周囲で不穏な動きがある」
不穏な動き……
「森が騒めき、湖はさざ波だっている。まだまだ精霊のレベルだが用心にこしたことはない。王宮と学校には結界が張られたが、お前たちも用心してもらいたい」
なるほど、そのために魔法の杖なんだ。
「では、初歩的な防御魔法を教える。見本を見せるから、あとに続け」
そう言うと、先生は、年季の入った杖を出すと頭上に構えて詠唱したよ。
「ディフェンシブ!」
先生の頭上にアニメに出てくるような亀甲模様が数十個連結したシールドが現れた。
「やってみろ」
ディフェンシブ!
無詠唱のわたしとネルは即座に、みんなは一二秒遅れてシールドが現れる。
「そのままで居ろ」
先生は机間巡視しながら、みんなのシールドをトンカチで叩いて周る。
トントン タンタン ボコボコ ベシャベシャ カンカン コンコン
いろんな音がする。
カチンカチン
ネルのは鋼鉄を叩いたような音がした。
キィーーーーーン
わたしのは、もっと高い音がした。
先生は、手がしびれて手をフルフルと振ったよ(^_^;)。
「頭上に作った時は前も左右もがら空きだが、慣れれば、同時に前方にもシールドが張れる。もっと慣れれば全身を覆うシールドも可能だ。しかし、結界もシールドも過信は禁物、危ないと思ったら、一目散に逃げろ」
うんうん
ネルとわたしは実感を込めて頷いたよ(^_^;)。
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やくもあやかし物語・2
今日はイース棟の子たちがお風呂掃除の当番だった。
えと、寄宿舎は二つある。
寄宿舎は校舎である本館と、本館とは渡り廊下で繋がってる寄宿舎棟があるんだ。
寄宿舎は西と東に分かれていて、東をイース棟、西をウェス棟っていう。
魔法学校だったころは別の名前だったんだけど、民俗学学校になった時に改められた。
真上から見ると、横倒しになったFの形。二つ出っ張ってるところが寄宿舎棟。
この形から分かると思うんだけど、イース棟とウェス棟は、どことなく疎遠。
だから、お風呂掃除の要領を教えても――分かってんのかなあ?――というところがあって、ちょっと心配だから見に行くんですよ。
お風呂は、前回で言ったけど露天風呂。
脱衣のある所だけ屋根があって、表の札は『準備中』になっている。
ちゃんと掃除が済んでいるというシルシでもある。
さてと……
まだ温もりの残っている脱衣場は床の水滴も拭かれ、マットも立てかけて乾かしてある。
脱衣棚もチェック、パンツの忘れ物も濡れタオルも残っていない。
続いて露天風呂に出る。
普通は「浴室に入る」が正しいんだろうけど、天井の無い露天風呂だから「出る」になってしまうよ。
モワ~~っと湯気が立ち込めていて、半分くらいしか見えない。
まずは洗い場から。
シャンプーもボディーソープも所定の位置、オーケー。
湯桶もお風呂椅子も、端っこにまとめて重ねられてる、オーケー。
さて、次は浴槽だ。
え?
浴槽の奥に人の気配。
よく見ると、見覚えのあるウェス棟の女生徒がお湯に浸かっている。
「あ、ごめんなさい(;゚Д゚)!」
ひとこと言って、脱衣場に逃げる。人が裸で入ってるお風呂に服を着たまま入るのは、とっさには恥ずかしいよ。
でも、考えたら、もうお風呂の時間は終わってるわけだし、あたしは点検に来たわけだし、謝る理由はない。
それに……脱衣場には、その子の脱いだものや着替えとかが無い。
入り口のところに靴も無かった……
ちょっと変だ。
もう一度出てみる。
ザザァ
ちょっと意表を突かれた感じで水音。
――気づかれた――
ちょっと棘のある思念が飛び込んできて身構えてしまう。
シャーー!
その子はマッパのまま、空中を飛んできた!
しゅんかん見えた足の間からはしっぽが見えている、爪も伸びてるし牙も剥いてるしぃ!
バシ!
思わず腕を回したら手応え。
その子は、左のホッペを押え、ちょっとビックリした顔でこっちを睨んでいて、睨んだ目には白目が無い。
もう一つビックリした。
自分の右手が鬼の手を握っている。
ほら、前のシリーズで、俊徳丸を手伝って酒呑童子をやっつけた時にもらった鬼の手。
「あ、あ、ごめん、そんなつもりじゃ(;'∀')」
そう謝って鬼の手を背中に隠したんだけど、その子には完全に敵認定されたみたいで、いっそう牙を剝いてくる!
「させるかぁ!」
空から声が降ってきたと思ったら、目の前にパジャマ姿のネルが耳をピンと立ててガードしてくれている。
シャッ
旋風が吹き抜けたような音をさせて、そいつは消えてしまった。
「だいじょうぶだった!?」
「う、うん」
「目が覚めたらベッドにいないし、露天風呂の方から凶暴な気配がしたし、飛んできたんだ」
「あ、ありがとう」
ルームメイトのネルは尖がった耳を70度くらいにピンと立ててあたりを警戒して、安全だと分かるとやっと耳も目尻もニュートラルにした。
「それで、こんな時間に風呂に来てなにしてんの、ブラでも忘れたかぁ?」
「ち、違うよヽ(`Д´)ノ! お風呂掃除ちゃんとできてるかなあって気になって、今日はイースの当番だったし」
「責任感つよすぎ、で……その孫の手みたいなのは?」
「え、あ、これは!」
ビックリして、いっしゅんで鬼の手を消してしまう。
「え、ヤクモ、魔法が使えんの!?」
「あ、これはちがくてぇ……(;'∀')」
口下手なあたしは、鬼の手の説明をするのに日本に居たころの物語を朝までかかって説明することになった。
それから、さっきお風呂に居たのはデラシネと言って、ちょっと厄介な妖精なんだとも教えてくれたよ。
☆彡主な登場人物
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- ネル コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
- ヨリコ王女 ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
- ソフィー ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
- メグ・キャリバーン 教頭先生
- カーナボン卿 校長先生
- 酒井 詩 コトハ 聴講生
- 同級生たち アーデルハイド メイソン・ヒル オリビア・トンプソン ロージー・エドワーズ
- 先生たち マッコイ(言語学)
やくもあやかし物語・2
ヨロレイヒーーーーー!
高らかにヨーデルを吠えると(ヨーデルって、動詞でどう表現するんだろ、歌う? 奏でる? つま弾く? どれも合わない。でも、ハイジのヨーデルは、まさに『吠える』だよ(^_^;))勢いよく露天風呂の浴槽に飛び込んできた。
ドップーーーン!
オリビア:「キャ!」
ネル:「ハイジも女なんだからさぁ、マッパで飛び込んだりするなよ!」
ハイジ:「だって、温泉てば日本だろ、日本てば風呂はマッパだろ、アニメでやってたぞ(^▽^)」
ヤクモ:「日本でも前ぐらいは隠すよぉ(#^_^#)」
ハイジ:「え? アニメだったら湯気とか水しぶきで隠れてんじゃん、そうなってっだろ?」
ヤクモ:「あれはアニメだから」
ハイジ:「ええ、じゃあ、丸見えだったのかぁ(๑º口º๑; ; )!?」
ロージー:「かわいいお皿だったな」
ハイジ:「お皿いうなあ(;>∀<)」
オリビア:「オサラってなんですの?」
ハイジ:「あーもー、なしなし!」
アハハハハハ((´∀`*))
開校してからも、学校のあちこち、内側も外側も工事が続いてる。
なんせ、八十年前に閉鎖した建物に手を入れただけの校舎や寄宿舎。じっさいに人が入って活動が始まると、あちこち不具合や手直しするところが出てくる。
その一つがお風呂。
古いお風呂は各部屋に付いているんだけど、五部屋以上が同時に使うと水圧が下がるし、お湯の温度は上がらないし。
とうぜん修理に入ったんだけど、王女さまの発案で日本風の大浴場を作る工事に入っていたんだよ。
一から大浴場を作るのは大変なので、廃業した日本の銭湯をまるまる移築している。
移築と言っても大きな銭湯なので完成は、もうちょっとあと。
その移築工事の横に塀で囲ってあるところがあって、てっきり資材置き場だと思っていた。
なんと、塀の内側では、ずっとボーリングをやっていたんだよ。
ボーリングと言っても、玉を転がすスポーツじゃなくて、穴を掘って地質とか調査するやつね(^_^;)。
その甲斐あって、温泉が湧いてきて、でも、みんなをビックリさせてやろうという王女さまの指示で完成までは秘密にされていた。
そして、お昼休みに発表されたんで、お仲間で入り初めをさせてもらっているというわけなのよ。
入り初めには条件がある。
水着とかは着用してはいけない。浴槽に浸かる前に体を洗うこと。タオルを浴槽につけてはいけない。浴槽で泳いだり遊んだりしてはいけない。
つまり、日本のルールなんだよ。
なにも日本趣味を押し付けようというんじゃない。お風呂を清潔に保ち、みんなで楽しむのは、このルールがいちばんいいんだよ。
ヤクモ:「だから、飛び込むのは禁止だよ」
ハイジ:「うん、わかった(#*´ω`*#)!」
ロ-ジー:「ネル、耳にお湯が入ったりしないのかぁ?」
ネル:「え、あたし?」
たしかに、エルフの耳は水とか入りやすそう。
ネル:「こうやるんだよ」
プルプルプル
なんと、耳だけが別の生き物みたく、プルプルして水滴を弾き飛ばした。
ネル:「真剣に潜る時は、こうだ……えい!」
みんな:「「「「おお!」」」」
なんと、耳たぶを器用に丸めて耳の穴を塞いだよ!
ネル:「でも、こんなに気持ちいいと、森の妖精たちが面白がって入って来るかもな」
みんな:「「「「ああ……」」」」
学校が始まって三カ月、みんな、不思議なことの一つや二つに出くわしている。
先生たちも注意してるんで、害を及ぼされるようなことはないんだけど、ちょっとマジにはなるよ。
ガラ
脱衣所の戸が開く音がして、みんなビックリ!
「ごいっしょしますねぇ……」
振り向いて、ビックリした。
なんと、王女さまがタオルで前を隠しただけのお姿でお立ちになっておられるのですよ!
王女:「一番乗りを狙ったんですけど、先を越されましたね」
ハイジ:「ウキ!」
みんな:「「「「し、失礼しましたぁ!」」」」
王女:「かしこまらないでください(^_^;)」
みんな:「「「「イエス、マム!」」」」
王女:「さっさと洗っちゃいますから、入るまで居てくださいね」
みんな:「「「「はい」」」」
王女さまは五分もかからずに、髪と体を洗うと、わたしたちの真ん中に入ってきた。
オリビア:「殿下、慣れていらっしゃいますわねえ」
王女:「中学や高校では合宿とかで、みんなでお風呂入ってましたし、子どもの頃、家のお風呂が工事中の時は銭湯にも行ってましたよ」
ハイジ:「王女さま、えらい!」
王女:「そうそう、えらいんです。それで、お風呂も学校施設の一つなんで、教室同様に、みなさんで掃除していただきたいんですけど、みなさん、こういう大きいお風呂って掃除の経験ないでしょ」
ハイジ:「お湯を抜いて乾かしときゃいいんじゃね?」
王女:「だめですよ、汚れとか水垢とか取らなきゃダメなんですよ」
ハイジ:「そ、そうなのか?」
ネル:「エルフは泉の沐浴ですましてたしぃ」
オリビア:「うちはメイドたちがやってましたし」
ロージー:「うちは手下……従業員がやってたしぃ」
王女:「そうですか……」
ヤクモ:「あの……お風呂掃除なら毎日やってたんで、あ、大きくても要領は変わらないと思うんで……」
王女:「まあ! じゃあ、小泉さん、みんなに指導してあげてくれます!?」
ヤクモ:「あ、はい」
パチパチパチパチパチパチ(^▽^)
みんなが拍手して、風呂掃除委員長になってしまった(^_^;)
☆彡主な登場人物
- やくも 斎藤やくも ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生
- ネル コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
- ヨリコ王女 ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
- ソフィー ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
- メグ・キャリバーン 教頭先生
- カーナボン卿 校長先生
- 酒井 詩 コトハ 聴講生
- 同級生たち アーデルハイド メイソン・ヒル オリビア・トンプソン ロージー・エドワーズ
やくもあやかし物語・2
「スイスじゃヨーデルだぞ!」
いたずらっ子みたいに目をクルクルさせ、ちぎったパンを振り回しながら言うのはハイジ。
「だめですわよ、食べ物を振り回しながらしゃべっては」
「ああ、ごめん。ここはチャイムだからビビっちまったぜ! 授業の始まりと終わりは、ヨロレイヒーって決まってたからよ」
ルームメイトのオリビアに注意されながらも、ちっとも聞かないでハイジは喋りまくる。
近ごろは、うち(ヤクモとネル)とオリビア(オリビアとハイジ)のところといっしょにお昼を食べてる。
四人掛けに四人だからピッタリ。で、学校のチャイムが話題になった。
オリビア:「チャイムを鳴らすのは、ヤマセンブルグがイギリスと縁が深いからではないでしょうか?」
ハイジ:「ええ!? イギリスと縁が深いと、なんでチャイムになるんだあ?」
オリビア:「だって、チャイムのメロディーってイギリスのビッグベンと同じでございましょう?」
ヤクモ:「へえ、そうなの?」
日本人のわたしは、小学校以来聞き慣れたチャイムなので、全然違和感なし。ごく当たり前で気にも留めなかったよ。
ロージー:「アメリカはさ、先生が時計見ていて『じゃあ、終わり!』って叫ぶんだよ」
隣りの四人掛けからロージー・エドワーズが割り込んできた。
ロージー:「あ、割り込んじゃったけど、よかった?」
「うん」「どうぞ」「おお」「いいわよ」
ハイジ:「でもよぉ、授業の始めとかどうすんだ? 昼休みなんかグラウンドで遊んでたら分かんねえだろ?」
自分の横を空けてやりながらハイジが聞く。
ロージー:「先生がホイッスル吹くんだ、指笛ですます先生もいたよ、こんな風に」
ピューーーー!
オリビア:「ああ、かっこいいかもですぅ」
ハイジ:「牧場じゃ、犬呼ぶとき指笛だったぞ」
ロージー:「じゃあ、羊を集める時はどうするの?」
オリビア:「ああ、犬に命令すっと、犬が駆けまわって集めるのさ」
ネル:「でも、チャイムが鳴るって、アニメみたいでいいよね(^▽^)」
みんな:「「「「うんうん」」」」
ロージー:「そういや、ヤクモは日本人だよね?」
ヤクモ:「あ、うん?」
ロージー:「日本じゃ上級生のこと、センパイって呼ぶんでしょ?」
ヤクモ:「うん、そうだよ」
ハイジ:「ヤクモもセンパイって呼ばれてたのか!?」
ヤクモ:「あ、わたしは部活とかしてなかったから、先輩ってよばれたことは……あ、一人だけいたかも……」
みんな:「やっぱり!」「ほんと!?」「どんなんだ!?」「わあ、すてきですわ!」
思い出した……三年の一学期、図書当番でいっしょになった一年生。
ほんの数回、当番がいっしょになっただけだったけど、なにをするにも「先輩先輩」って、枕詞みたいに付けて呼んでくれた一年坊主。
顔もおぼろで、名前は……思い出せないけど、わたしより、少し大きいだけの可愛い男子だった。
いろんなあやかしに振り回されて大変な時期だったけど、ちょっとだけ先輩面ができたのは、その子に対してだけだった。
先輩
しゅんかん、その子の声が聞こえたような気がして、ネルが変な顔をしたけど「ううん、なんでも(^_^;)」と返して、午後の授業に行ったよ。
☆彡主な登場人物
- やくも 斎藤やくも ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生
- ネル コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
- ヨリコ王女 ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
- ソフィー ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
- メグ・キャリバーン 教頭先生
- カーナボン卿 校長先生
- 酒井 詩 コトハ 聴講生
- 同級生たち アーデルハイド メイソン・ヒル オリビア・トンプソン ロージー・エドワーズ