goo blog サービス終了のお知らせ 

大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

くノ一その一今のうち・51『魔石の感触』

2023-04-16 17:09:18 | 小説3

くノ一その一今のうち

51『魔石の感触』 

 

 

 事故や病気で手足を失うことがある。

 失ってしばらくは、失くした方の手や足が痒くなって、掻こうと手を伸ばして――ああ、無いんだ――ということがあるらしい。

 

 それに似ている、失くした魔石。

 

 七日ぶりに学校へ行く電車の中、もう二回も感じている。胸の谷間に魔石がぶら下がってる感じ。

 その都度手を当ててみる。

 むろん失くした魔石があるわけもなく、胸をさすって俯いておく。

 アイドルグループの子に、緊張すると胸をさするクセの子がいたっけ。

 胸をさする仕草と、ヘタレ眉が可愛くて、物真似タレントが決め技みたいにやってウケていた。

 わたしがやったって可愛くない。物真似タレントみたいにウケることもない。

 

 よし、もうやらないでおこうと決心する。

 

 今朝は運よく座れた。前にいっぱい人も立ってるし、目立つことは止めておこう。

 仕事中や任務中は、こんなに内省的になることはない。

 まあやの付き人、時どき代役として充実してる。業界の人たちは、可愛いとかブスとかで対応を変えることはない。

 この業界、可愛い子なんて掃いて捨てるほどいるし、ブスでも活躍してる人がいっぱいいる。

 だけど、制服着てJKというリアルに戻ると、元に戻ってしまう。

 たいていの高校のたいていのクラスに一人はいるジミ子。

 わたしの場合は、その上に二つ名まで付いて、ブス ジミ子。

 

 ちょっと自虐すぎ……

 

 スマホを出してまぎらわせる。

 ニュースをスクロールしていて手が停まる。

 

―― 諏訪湖で局地的異常気象 ――

 

 深夜の諏訪湖に突然竜巻が荒れ狂う。竜巻は、諏訪湖の中央部で発生、稲光を伴い、十数分荒れ狂った後に消滅。気象庁は、単純な竜巻であるとしているが、あまりに均整のとれた形と不動のまま消滅したことから、地元では冬場に起こる御神渡り同様に神の意思を示すものと噂されている。

 説明と、あちこちの防犯カメラやスマホで撮られた映像がいっぱい出ている。

 

 神の御意思なんかじゃない。

 

 猿飛佐助が草原の国の幻術とコラボして埋蔵金をテレポさせている証拠の映像。

 でも、十数分で消滅している。消滅前の数秒を繰り返して見る。

 欲目かもしれないけど、何かに邪魔されてたち切れているように見える。

 社長はみんなで阻止した的なことを言っていた。埋蔵金のいくらかは転送を阻止できたって。

 どれくらい阻止できたかは言ってくれなかったけど、あの洞窟での言葉は気休めではない……と信じたい。

 

 あ?

 

 また胸に魔石の感触。

 思わず胸に手をやって……え、魔石ある( ゚Д゚)!?

 抑えた手にピンポン玉を半分に切ったような手応え。制服の上から握ってみる。

 え、ええ!?

 マジックみたいに手応えが消えて、思わずセーラーの胸当てを引っ張って覗いてしまう。

 とたんに前からの視線を感じる。

 見上げると、オッサン二人と大学生風の顔。揃って――え、残念!――と表情が裏返る。

 そんな、ラッキースケベが地獄になったみたいな顔すんな!

 

 これは、学校行ってもろくなことないと俯きながら改札を出ると、同じ制服が横に並ぶ。

 

 ちょうどロータリーを周って目の前にバンが停まって窓ガラスに二人の顔が映る。

 え、ドッペルゲンガー!?

 すると、隣のわたしが口を開く。

「しばらく大阪に行け、学校は儂たちが交代で通っておく」

 わたしの声が社長の言い回し。

 やり過ごしたバンのドアが開いて嫁持ちさんの顔が覗いて、わたしは当たり前のように乗り込んだ。

 

 あとに続いて猫が乗ってきたのは、わたしも社長も嫁持ちさんも気づかなかった。

 

☆彡 主な登場人物

  • 風間 その        高校三年生 世襲名・そのいち
  • 風間 その子       風間そのの祖母(下忍)
  • 百地三太夫        百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
  • 鈴木 まあや       アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
  • 忍冬堂          百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
  • 徳川社長         徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
  • 服部課長代理       服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一
  • 十五代目猿飛佐助     もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者
  • 多田さん         照明技師で猿飛佐助の手下
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

くノ一その一今のうち・50『まだまだ未熟なんだ』

2023-04-10 10:38:56 | 小説3

くノ一その一今のうち

50『まだまだ未熟なんだ』 

 

 

 魔石は無くすわ、埋蔵金は取られるわ、一世一代の大不覚に天を仰ぐ。

 

 仰いだところで空は見えない。

 ここは甲斐善光寺の地下戒壇、それも『心』の形をした、その内側の秘密戒壇の最奥部。

 クソッ

 クソ クソ クソ クソ クソ…………

 吐息が怨嗟の呟きを載せてしまい、長大な地下洞窟に響き渡る。

 まだまだ未熟なんだ。

 地下戒壇に間違いないと閃いて、でも、どこか自信が無くて、課長代理にも言わずに突出したことが悔やまれる。

 まずは確かめて、確証が持てたところで……悠長に過ぎた。

 仰いだところに見えるのは、冷たい岩肌、それがフニャフニャ歪んで、溢れた涙のせいだと知ってしゃがみ込んでしまう。

 だめだ、いまのわたしは忍者はおろかアルバイトとしても失格だ。

 口の中に血の匂いが広がる。

 悔しさと絶望のあまりに唇を噛んでしまった。

 ここに居てもしかたがない……立ち上がろうとすると洞窟の向こうに人の気配。

 目をこすると、はっきり見えた。

 怖い顔で見えてきたのは、わたしだ。同じ忍び装束のわたし。

 ドッペルゲンガーか?

 ひょっとして、今のわたしはゲシュタルト崩壊?

 

「なにをボンヤリしてる」

 

 わたしが社長の声で喋った。

「セイ!」

 跳躍前転して、目の前に立った姿は、いつもの暑苦しい社長。

「しっかりしろ、社長の儂とドッペルゲンガーの区別もつかんようでは使い物にならんぞ」

「でも……どうして?」

「服部からの連絡だ」

「課長代理が?」

「ああ、服部も気づいて、要所要所に忍びを送っている。諏訪湖から草原の国までは6000キロもある。いくら草原の幻術と諏訪明神のコラボと言っても、一気に運べるものじゃない。地脈の要所要所でブーストをかけている。儂らは、そこを襲った」

「そうですか……」

 課長代理は知っていたんだ。知っていて未熟者のわたしを……敵は、未熟者のわたしに対しても多田さん達とか、かなりの勢力を割いた。そうやって注意をそらせて、今ごろは諏訪湖で佐助たちを相手に死力を尽くして戦っているんだ。

 スタ

 かそけき音をさせて、もう一人前に立った。

 わたしの姿をしている……と思ったら、すぐに術を解いて嫁持ちさんに変わった。

「多田は、ブーストを止めて逃げていきました。ご苦労だったねソノッチ」

「嫁持ちさんも来てたんですね」

「うん、百地組も総動員だよ。諏訪湖には金持ちと力持ちが行ってる」

「多田は最後まで気づかなかっただろ?」

「ええ、風魔その一は化け物かって顔をしてましたよ」

「これで、ソノッチのお株も上がったな」

「そんな、ゲタみたいなお株要らないです!」

「ガハハ、まあ、そう言うな。評判も力のうちだぞ」

「アハハ、百地組希望の星なんだしね(^▽^)」

「もう」

 

 笑うだけ笑って二人とも消えた。わたしも、そのままホテルまで走って帰った。

 まあやは、わたしの身代わりに作っておいた毛布を丸めたのに抱き付いて寝息を立てていた。

 

 朝起きてビックリした。

 

「諸般の事情でロケは中止、昼飯食ったら東京に帰るから、準備してください」

 朝ごはんのダイニングで監督が宣言。宣言した後、プロデューサーや幹部の人たちで協議。

 協議しながらも、ちゃんと朝ご飯は食べている。この業界の人は逞しい。

「お墓参り済ませといてよかったわね」

 まあやも、ものごとの良いところを見て行こうという姿勢。

 わたし一人カリカリ、ちょっと反省して、朝食バイキングに並ぶ。

――半分は死守できたが、その半分は大阪に転送されてしまった――

 脚本の三村紘一(課長代理)が闇語りしてくる。

――大阪だったら近いからいいじゃないですか――

 騙されていたから、ちょっとツッケンドンになる。

「いやあ、今朝のソノッチ怖いなあ(^△^;)、まあやフォローしといてね」

「ダメだよ、ソノッチ、三村さん徹夜で本の書き直ししてたんだからね」

 クソ、まあやは完全に騙されてるし。

 

☆彡 主な登場人物

  • 風間 その        高校三年生 世襲名・そのいち
  • 風間 その子       風間そのの祖母(下忍)
  • 百地三太夫        百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
  • 鈴木 まあや       アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
  • 忍冬堂          百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
  • 徳川社長         徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
  • 服部課長代理       服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一
  • 十五代目猿飛佐助     もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者
  • 多田さん         照明技師で猿飛佐助の手下

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

くノ一その一今のうち・49『してやられる!』

2023-04-05 11:34:53 | 小説3

くノ一その一今のうち

49『してやられる!』 

 

 

「450年も昔なら、いっしょに戦えたんだろうけどね」

 

 ちょっと昔の人工音声のように抑揚が無い、いや、特徴が無い。

 多田さんは、顔ばかりではなく声もつかみどころがない。

「そのっちはいいものを持っているよ。素直なくノ一だが、自分を殺しているわけではない。九割九分任務と弁えても一分のところで自分を捨てないでいる。忍びと云うのは非情なものだが、非常の根元にあるのは情けだ。伊賀も甲賀も百地や風魔も、元をただせば山や谷でしか暮らせない弱い里人の群れだ。役小角の昔から、おのれの技を売って里の生活を守ってきた。おのれ一人安穏に暮らすには十分な知恵と才覚、技を持っているのに、おのれ一人の為に生きることはしない。里の妻や子、年老いた親を養うためにワザを生かす。それは、つまりは人への執着。今風に言えば愛情だね。先祖代々木下家に仕えているとね、木下家の方々は、もう理屈を超えて守るべき同じ里人、里人の尊き……なんだろう、僕は照明技師だから監督や作家のように言葉は知らないが、里人の主、神、そういうものなんだよ。そう、そのっちが鈴木まあやに抱いている温もりのある気持ち、そういうものをぼくたちは持っているんだ……だから、木下も鈴木も、一つの豊臣であったころならば……」

 思わず聞いてしまう。

 話の中身じゃない、見てるうち聞いてるうちにも揺らめいてとりとめのない顔と声。

 心理テストで――これは何に見えますか?――という図形がある。それを「え、なんだろう?」と思って見つめてしまって他が見えなくなる感じ。道を歩いていて声や物音が聞こえ、それが犬の声にも猫にも子どもの声にも聞こえ「え、なんだろう?」って思わず耳を澄ます、あの感じ。テレビを見ていて電話の音がして、リアルなのかテレビの音なのか分からなくって「え? え?」と迷う瞬間に似ている。

 つまりは、目くらましに遭っている。

 気づいた時には、目の前に圧が迫っていた。

 シュッ シュシュッ

 サイレンサー付きの拳銃から撃ちだされた弾が三発、頬と胸元を掠めていく!

 セイ!

 横っ飛びに跳んで側壁を蹴って、拳銃を持っていた下忍二人が構え直す寸前に蹴り倒す。

 グキ

 一人には確かな手ごたえ、もう一人は派手に吹飛んだけど、これは衝撃を和らげるための受け身だ。

 シュッ シュシュッ シュシュッ シュッ シュシュッ

 立て続けに8発。

 一発は。マトリックス並みにのけ反った足もとから下腹部胸元に沿って銃弾が走って、自分の前髪が数本吹飛ぶのが見える。僅かに遅れて鼻の奥にきな臭さが満ちる。

 大丈夫、銃弾は鼻先を数ミリ外れて後ろの岩に火花を散らせた。

 シュッ シュシュッ

 一人が一発、もう一人が二発。

 一人を延髄蹴りで仕留め、もう一人には懐から出したクナイを振るうが、わずかに浅手を負わすのみ。

 シュシュッ  ドガ  ドス  シュッ  シュシュッ  ゲシ  ドガビシ  シュシュッ  ドガドガ 

 血の匂いがして視界の中に見えるのは、さっきの倍の距離を取った多田さん一人。

「そのっちには、わたしの目くらましもあまり効き目はないようだ」

 !? !?

「気を張らなくてもいいさ。手下は、怪我人も含めて引き上げさせた」

「いつのまに?」

「その程度には目くらましは効いたわけだね。まあ、そのっちもここまで来たことは褒めてあげよう。御褒美に種明かしをしてあげる」

「種明かし?」

「信玄の埋蔵金さ」

「あ!?」

 いつの間にか、見える範囲の埋蔵金は消えてしまって枕木だけになっている。

「これはね、甲賀流忍法と草原の国の幻術の合わさ技なのさ」

「合わせ技?」

「甲府の北東に諏訪湖がある。そこには百キロ近い地溝帯が走っている、地上からでも宇津谷(うつのや)や中央本線が走っているのでよく分かる。つまりは地脈や霊脈というものが走っていてね、忍法と幻術の技を持って埋蔵金を諏訪湖に運ぶんだ。そう、そのっちが思ったゲームのテレポとかテレキネシスに似ているね。諏訪湖まで転送した埋蔵金は、諏訪湖周辺の神々の力をバネとして、遥か西方の草原の国に運ぶんだよ」

「それで草原の国を!?」

「そう、かの国の王子を応援し、木下家とゆかりの深い政府を築き上げる。いずれは豊臣の本姓に戻った木下が、その上にユーラシアに跨った大帝国を築き上げるというわけさ」

「そんな馬鹿気……」

 言い切れなかった。

 先月、その草原の国に行って、社長や嫁持ちさんといっしょに戦ったばかりだ。

 

 しまった( ゚Д゚)!

 

「話に付き合ってくれてありがとう、どうやら大方の埋蔵金は運び出せたようだ。ここに少し残っているが、これは鈴木家への餞別だ。まあやさんにも豊臣の分家として相応しい暮らしをさせてあげてくれ……これは猿飛佐助の言伝だ。それじゃ……また!」

 ボン!

 いっしゅん煙が舞ったかと思うと、多田さんの姿は消えてしまった。

 

 し、しまったあああ(# ゚Д゚#)!!

 

 けっきょくは多田さんの語りに惑わされて後れを取ってしまった……それどころか、胸に下げていた魔石が無い!

 そうだ、さっき、マトリックスで弾を避けた時に、チェ-ンが切れて!

 風魔その一、一世一代の不覚をとった(#⊙ꇴ⊙#)!!

 

 

☆彡 主な登場人物

  • 風間 その        高校三年生 世襲名・そのいち
  • 風間 その子       風間そのの祖母(下忍)
  • 百地三太夫        百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
  • 鈴木 まあや       アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
  • 忍冬堂          百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
  • 徳川社長         徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
  • 服部課長代理       服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一
  • 十五代目猿飛佐助     もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者
  • 多田さん         照明技師で猿飛佐助の手下
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

くノ一その一今のうち・48『胸の魔石と隧道の金塊』

2023-03-31 15:55:32 | 小説3

くノ一その一今のうち

48『胸の魔石と隧道の金塊』 

 

 

 トックン……トックン……

 

 心(地下戒壇)の闇の中で自分の心臓の音だけが際立つ。

 闇の向こう、たった今まで老忍の多田さんが身をもって隠していた風穴が露わになった。

 その向こうは、さらに奥行きを感じさせる。目を凝らせば先の方では微かに灯りの灯る隧道になっているような気配。

 心臓の音は忍びの臆病虫の声だ。

 単なる怖れではない。この先に踏み込めば命にかかわる。それを告げる忍者の本能的なアラームなんだ。

 ここへ来るにあたっては、まあやはもちろんのこと、課長代理にさえ告げていない。

 上忍の課長代理なら夜明けまでには気付くだろうが、今ではないだろう。

 でも、頭の別のところでは、これが埋蔵金の正体や、その行方、背景を見届ける最後のチャンスだと呟く者がいる。

 

 ク…………足が動かない。

 

 目覚めたとはいえ、ついこないだまでは冴えない女子高生だった。半端ではない怖れが忍者の思考を鈍らせる。

 

 ん?

 

 胸の谷間が熱くなる、反射的に手を当てる…………魔石だ。

 ペンダントにしている魔石が熱を持っている。

 忍の素養に目覚め、風魔一族の棟梁『その一』の名と共に引き継いだ風魔の魔石。

 それがわなないて熱を発している。

 これは、魔石の警告? いや、そうじゃない。魔石は――進め――と言っている。

 ほんとうにそうか? 臆病虫が逡巡させる。

 だけど…………これって、なにかに似てる。

 そうだ、ゲーム機を買って内蔵ストレージが足りなくなることを予想して、外付けのハードディスクを付けた。

 ゲームがいっぱいになって、いよいよ外付けがフル回転した時の、あの熱の持ち方に似ている!

 ブーンと唸りを上げ、手をかざせば「お前はドライヤーか!?」と思うくらいの熱を発して、でも、格段に面白いゲームの世界を広げてくれた、あの外付けHD!

 

 魔石とは、風魔忍者の秘密や能力が刻まれていて、必要に応じて忍者本人にインストールさせる外付けHDだったんだ。

 そして、たった今、この先の変異に対応するだけの力が付いたんだ。

 そう思い定めると、恐れも迷いも吹き飛んで、前に進んだ!

 

 ほとんど闇の隧道。しかし、先の方では灯りの灯った空間があるようで、そこから反射や照り返しを繰り返したささやかな薄明かりが滲み出て、訓練された忍者にはさほどの苦にはならない。

 二キロも走っただろうか、気の流れが変わった。

 文字通り空気の流れと、いつの間にか魔石を通じて自分が放っている気。

 その気が、前方向だけではなく、数十メートル先では下に流れ落ちている。

 !!?

 前方向だけに気を取られていたら見落としていただろう、幅五メートルはあるだろう谷が口を開けている。

 セイ!

 一息で飛び越える。

 チラ見した谷に特別の仕掛けは無かったが、隧道とは違って人の手が入っておらず、岩がむき出しで、転落すれば忍者でも命はない。

 そういう谷や横穴が随所にあって、いちいち立ち止まっていてはキリが無く、おおよその見当で突き進んでいく。

 やがて、甲府城のそれよりも数倍大きな石室に出た。

 構造も甲府城のものと同様で、多数の枕木が並んでいて、直前まで相当の重量物が置かれていた形跡がある。

 

 …………まだ運び出されて間がない。

 

 ということは、先の方では、まだ運び出しの最中!?

 よし、現場を押えよう!

 数倍と思った石室は、まだまだ先があって、進むにしたがって明らかになっていく。

 信玄の埋蔵金とは、どれほどのものなんだ?

 それに、これほどの金塊を運び出しているというのに、まるで音がしない。

 おそらくは小分けにしてあるのだろうけど、相当の数と重量だ。機械の音、あるいは、運び出す人間の声や物音がするはずだ。

 四つ目のブロックを過ぎたところで見えた。

 まだ運び出されていない金塊の箱。

 

 え? ええ!?

 

 我が目を疑った!

 なんと、金塊の箱が床から背の高さほどのところに浮遊したかと思うと、数秒のうちに形がおぼろになって。次々に消えていく。

 いや、違う。

 それは、ゲームの中で人や物が転送される様子に似ている。消える寸前にゆるくスパークするように光るのだ。

 停めなきゃ!

 しかし、どうやって!?

 

「やはり、決着を付けなきゃならないようだね」

 

 金塊の山から再び多田さんが現れた……それも、五人の仲間を連れて!

 

 

☆彡 主な登場人物

  • 風間 その        高校三年生 世襲名・そのいち
  • 風間 その子       風間そのの祖母(下忍)
  • 百地三太夫        百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
  • 鈴木 まあや       アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
  • 忍冬堂          百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
  • 徳川社長         徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
  • 服部課長代理       服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一
  • 十五代目猿飛佐助     もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

くノ一その一今のうち・47『心の奥』

2023-03-26 13:58:28 | 小説3

くノ一その一今のうち

47『心の奥』 

 

 

 心(甲斐善光寺の地下戒壇)の中は陰圧が掛かっていて、外の戒壇に空気が漏れないようになっている。

 だから、ニオイも気配も外に漏れることが無く発見が遅れた。

 

 しかし、陰圧が掛かっているということは、吸い込まれた空気がどこかに抜けているということだ。

 抜けていく方向に何かがある、恐らくは信玄の埋蔵金の大半を収めた洞窟が。

 甲府城の地下にあったのは、埋蔵金のパートワンというか見せ金だ。本命の埋蔵金に寄せ付けないためのダミーに過ぎない。

 

 立ったままの姿勢でじっと動かない。感度をよくするために両手をパーにして伸ばしている。

 

 動いてしまえば、空気をかき回してしまい、この微かな空気の流れを見失ってしまう。

 両手を広げて立っているなんて、忍者にあるまじき無防備さだ。

 腕のいい忍びが吹き矢でも吹けば逃げようがない。至近距離なら手裏剣でさえ避けきれないだろう。

 

 …………分からない。

 

 入り口は狭い分、空気の流れが早くて陰圧として空気の流れを感じられた。だが、ここは教室ほどの広さがあって両手を広げたぐらいでは空気の流れを掴めない。視覚的には右前方に窪みがあって、そこから先が続いているように見えなくもない。しかし、わたしも忍者。五感のうちで視覚が最も騙されやすいのを知っている。

 こういう場合、風魔忍者は裸になる。裸になれば全身の皮膚で空気の流れを感じられる。

 特にくノ一の胸の先は感度がいいとされる。

 服を脱いで胸を晒せば……いや、それは最後の手段だ。

 取りあえず袖をまくり、ジャージの裾をあげる……手首、肘の裏、ふくらはぎ、膝の裏側がひんやりして空気を感じる。しかし、流れを感じとるところまではいかない。

 ジャージの上をまくり上げ、腹と背中もセンサーにする。

 これで分からなければ……いよいよ胸を晒すしかない(#'∀'#)。

 

 え…………ちょっと混乱した。

 

 微かに空気の流れを感じるようになったんだけど、それは視覚情報とは真逆。

 左側の隙間も穴も見えない岩肌から風が流れてくるように感じる。

 

 とっさに前転すると同時に掴んだ石を岩肌に向かって投げた!

 

 スサ!

 

 小さく、でも鋭い音がしたかと思うと、岩肌がハラリと崩れ、そこから黒い影が飛び出した。

 崩れたのは岩肌に見せた布切れだ。

 

 セイ!

 

 手裏剣を投げると『ドス』っという音と手応えがし、影が立ち止まって、こちらを向いた。

 影の太ももに手裏剣が刺さっている。

「やはり、現役を相手にするには歳を取り過ぎたか……」

 そう言って太ももの手裏剣を抜いて、こちらを向いたのは意外な顔だった。

「………多田さん!?」

 それは、年老いたお母さんが危篤ということでスタッフから抜けた照明係りの多田さん。

 やっぱり、佐助の手下だったんだ。印象の薄い人で顔も思い出せなかったけど、今は、しっかり分かる。多田さん本人も隠そうとしていない。

「そのッチはいいものを持ってるよ、くノ一としても年頃の女の子としても」

「なっ(#・▲・#)」

 思わずお腹を隠してしまう。

「ふふ、岩陰に隠れて思わず体が熱くなって、それで見つかってしまうとは忍者としては失格だがね……」

 

 ピカ!

 

 その瞬間、心の中は無音の雷が落ちたように光に満ちてホワイトアウト!

 

 数秒たって目を開けると、心の入り口が開いていて、それまで影が潜んでいたところは岩肌に重なりがあって奥が見えないようになっている、覗いてみると、さらに岩の重なりがあって奥に広がっていることが分かった。

 

☆彡 主な登場人物

  • 風間 その        高校三年生 世襲名・そのいち
  • 風間 その子       風間そのの祖母(下忍)
  • 百地三太夫        百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
  • 鈴木 まあや       アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
  • 忍冬堂          百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
  • 徳川社長         徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
  • 服部課長代理       服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一
  • 十五代目猿飛佐助     もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

くノ一その一今のうち・46『心の中』

2023-03-21 11:59:31 | 小説3

くノ一その一今のうち

46『心の中』 

 

 

 その二日後の夜、甲斐善光寺に忍んだ。誰にも言っていない。

 

 まあやに言えば心配をかけるし適当な嘘もつかなきゃならない。課長代理に言えば大事になる。

 金堂には破風から入った。

 ホタ

 音がするような着地はしないが、表現すると、こんな感じ。

 草原の国に忍んだことを思い出す。あの時も寺院の破風から侵入した。まだ何カ月もたっていないけど何年も前の事だったような気がする。次は破風からの侵入は避けよう。忍者のワンパターンは身を亡ぼす。

 いっそ真っ暗ならいいんだけど、うっすらと常夜灯が点いている。

 誰かに見られているような錯覚。

 分かっている、天井に描かれた八方睨みの竜だ。

 戒壇巡りと並ぶ善光寺の名物。最初に来た時に三村紘一に化けていた課長代理が教えてくれた。

 真下で手を叩けば「天人の警蹕のように響く」と課長代理は難しく例えるけど、観光客のおじさんが手を叩いて、リアル女子高生でもあるわたしは、渋谷の交差点あたりで黄色信号で飛び出して「フライングはいけません!」と警察官のマイクで注意されたぐらいにビックリした。

 昔の人は、AIも監視カメラも無いのに天井に龍の絵を描くだけでセキュリティーにしたんだ。忍びなら、手を叩かなくても増幅された気配で侵入者に気が付く。

 須弥壇の隙間を縫うようにして戒壇巡りに侵入。

 これで三度目になるので手探りをしなくても歩けるんだけど、右側の壁に手をついて時計回りに歩く。

 パンフレットの説明には出入り口のある左側に手をついてと書いてある。右側には出入り口がないので、いつまでも出口にたどり着けない。

 戒壇巡りの通路は草書で書いた『心』の字の形をしている。「そうだよ、大事なのは気持ち、心だよ……」とまあやに言った言葉で閃いたんだ。

 大事なものは心の内にある、信玄の心の内に。

 つまり、信玄が尊崇してやまなかった善光寺戒壇巡りの心の内に。

 手の高さを変えて六周した。

 闇の中で混乱して、稀に右側に手をつく者がいるんだ。検索すると、右側に手をついて三周した人も居た。

 だから、普通に手をつく高さに有るはずはない。

 六周目、通路と壁の境目をなぞっていて違和感。微妙に隙間があるような気がした。

 気がしたがスイッチや鍵めいたものは見当たらない。

 

 クンカクンカ……ニオイを嗅いでみる。

 

 もし正解なら、開いた時に中の空気が流れ出し、僅かでも残っているはずだ……が、その残滓はなかった。

 勘違いか?

 数分悩む……夜明けまでにはホテルに戻らなければならない。

 ひょっとして…………二割の閃き、八割はダメもとの精神。壁のその部分に指で『心』となぞってみる。

 コト

 石がため息ついたらこんな感じという音がして、一尺四方ほどに壁が後退して出入り口が現れた!

 微かに空気が流れ込んでいく……そうか、微妙に陰圧が掛かっていて、中の空気を吐き出さないようにできているんだ。

 前後に気を飛ばす。後にも先にも人の気配はない。

 覚悟を決めて中に踏み込んだ。

 

☆彡 主な登場人物

  • 風間 その        高校三年生 世襲名・そのいち
  • 風間 その子       風間そのの祖母(下忍)
  • 百地三太夫        百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
  • 鈴木 まあや       アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
  • 忍冬堂          百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
  • 徳川社長         徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
  • 服部課長代理       服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一
  • 十五代目猿飛佐助     もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者

 

 

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

くノ一その一今のうち・45『念願のお墓詣り』

2023-03-15 13:35:00 | 小説3

くノ一その一今のうち

45『念願のお墓詣り』 

 

 

 撮影というのは水ものだ。

 ちょっとしたトラブルが撮影の進行を遅らせる。

 夕べ、あたしと課長代理は甲府城の地下で木下の忍びたちと死闘を繰り広げていたけど、地上の甲府城でも監督たちが、これからの撮影について頭を絞っていた。

『吠えよ剣』はアクション系エンタメドラマで、見る側は茶の間でドキドキしたりアハハと笑ってるだけでいいんだけど、ドキドキアハハにするためにはチャンネルを合わせてもらわなくてはならない。たとえ、仕事の疲れで寝てしまったり、ミカンの皮を剥いていたり、スマホの操作をしながらでも、チャンネルさえ合わせてもらっていれば視聴率が稼げる。業界用語でいう数字が取れる。

 限られた予算と製作時間で成し遂げるのは大変なんだけど、監督やスタッフたちは、その限られた中で全力を尽くす。

 夜間シーンの照明とエフェクトを工夫したいというので、撮影の順序が入れ替わった。夕べ稲荷曲輪で頭を絞った結果なんだそうだ。結果、まあやのシーンは明日になって、あたしとまあやは念願のお墓詣り。

 

 幸いなことに千葉さな子のお墓は宿舎のホテルから徒歩15分。駅前の花屋でお花、仏具屋でお線香を買って墓地を目指した。

 甲府の街はほど良く都会で、お寺まで歩く道筋は先日まあやと行った巣鴨の街と変わらない。でも、絶えず家々の間に山並みが覗いて、見上げた空にはトンビなんかがゆったりと飛んでいたりして、とても雰囲気がいい。

 

 お寺の境内に入ると、赤い立札に白い字の『千葉さな子の墓⇒』が要所要所に立っていて、迷うことなくお墓にたどり着けた。

「やっと来れたぁ……」

 まあやは、お墓が見えたところで立ち止まった。

 瞬間、忍者であるあたしと同じ感覚かと錯覚した。

 忍者は、目的の人や物を発見しても、直ぐには近づかない。周囲に気を配り、待ち伏せは無いか、仕掛けは無いか、フェイクではないかと気を配る。場合によっては、その周囲を周って調べたりする。つまりは用心する、警戒するんだ。

 でも、まあやの立ち姿に警戒の色は無い。目もデフォルトのへの字だし、口もゆるいωの形、つまり嬉しいんだ。

 保育所の保育参観に来てくれた時のお祖母ちゃんの感じ。

 あの時は、忍者の目じゃなくて、ほんとうにお祖母ちゃんの目だった。愛想が無くて目つきの悪い子だったあたしが、みんなに溶け込めているか心配だったんだ。それで、なんの問題も無く粘土工作とかやってるのを見て、みんなに受け入れられてるって安心したんだ。なんか感謝の念さえ感じたよ。孫を受け入れてくれてありがとうって。

 あれは、違うんだけどね。まあ、往年のくノ一も、孫のことになると目が曇ったのかもしれない。

 でも、目の前のまあやは間違っていないと思う。幕末維新の動乱の時代を生きた薄幸の女剣士が、人々の情けや思いやり……いや、鬼小町と呼ばれたさな子に、そんなウェットな言葉は似合わない。応援したい、役に立ちたい……でもない。ボキャ貧のあたしに最適な言葉は浮かばないけど、放っておけない気持ちで引き取ったんだ。自由民権家の小田切某さん。

 たしか、維新の後、千住で鍼灸院を開いたさな子さん。そこに患者としてやってきた小田切さんの奥さんが無縁仏になってはとお骨を引き取って、自分の家の墓地に並べて葬られた。

 その暖かさが―― さな子さん、ここにお座りなさいよ ――という感じ。その佇まいがまあやにも分かるんだ。

 納得がいったのか、墓前に進むと花活けにお花を挿して、お線香を立てて静かに合掌した。

「縁あって、さな子さんの役をやらせていただいてます。もっと早く来るつもりでしたが、段取りが悪くて今日になりました。まだまだ未熟な役者ですが、せいいっぱい頑張ります。えと……よろしくお願いします」

 パンパン

「ププ( ´艸`)」

「あ、お墓だから手叩いちゃいけないよね(#^o^#)」

「いいんじゃない、まあやには神さまみたいなものなんだから」

「そ、そだよね(#^△^#)」

「そうだよ、大事なのは気持ち、心だよ……」

 

 あ…………

 

 まあやに「心だよ」と言って百分の一秒ほど閃くものがあった……心……なんだったんだろ、いま閃いたものは?

 思い出せなくて、まあやの横に並んで手を合わせた。

 

 ピーヒョロロ

 

 トンビがくるりと輪を描いて、撮影と任務が無ければ、とっても雰囲気の女子二人旅になるのにと思った。

 

☆彡 主な登場人物

  • 風間 その        高校三年生 世襲名・そのいち
  • 風間 その子       風間そのの祖母(下忍)
  • 百地三太夫        百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
  • 鈴木 まあや       アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
  • 忍冬堂          百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
  • 徳川社長         徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
  • 服部課長代理       服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一
  • 十五代目猿飛佐助     もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

くノ一その一今のうち・44『まあやと朝ごはん』

2023-03-10 15:59:21 | 小説3

くノ一その一今のうち

44『まあやと朝ごはん』 

 

 

 気が付くと相変わらずの真っ暗。

 

 でも、瞬間で分かった。ここは甲府城の地下ではない…………昨日訪れたばかりの甲斐善光寺の戒壇巡りの中だ。

 忍者の五感は常人の倍は鋭い。特に肌感覚と嗅覚は数倍の鋭さがある。

 例え同じ闇の中に居ても、肌で感じる空気とニオイが違うんだ。

 善光寺の戒壇は人の出入りが多く、その出入りによって、寺院特有の抹香や木の匂いが混ぜられて独特なんだ。たった今まで居た甲府城の地下にはそれが無い。それに、あれだけ押し寄せてきた水のニオイや土砂の埃臭さがまるでしない。

―― 気が付いたか ――

―― どうして、善光寺の戒壇? それに!? ――

 そうだ、意識を失ったのは課長代理に当身をくらわされたからだ。

―― あれは佐助の幻術だ ――

―― あの謝恩碑の、すごい勢いで流れ出した水が? ――

―― ああ、一種の暗示だ。あれの暗示にかかると、実際に水が無くても溺れ死んでしまう ――

―― リアルの水が無くても? ――

―― そのには、まだ佐助の術への耐性がないから眠らせるしかなかった。坑道の一つを抜けるとここまで来てしまった ――

―― すみません、不覚でした ――

 

 朝になって参拝客が入って来るのを待って戒壇を出る。

 

 一晩闇の中に居たので、薄暗い金堂の中でも強烈に眩しく、数分ご本尊を拝むふりをして目を慣らせてからホテルに戻った。

 夕べは遅くまで撮影準備をしていて、この日の撮影は午後からになっていたので助かった。

「照明の多田さん、お父さんが危篤だそうよ」

 朝ごはんのバイキングの列に並んでいると、お手洗いを済ませてきたまあやが報告してくれる。

「多田さんは残って仕事するって言ってたらしいけど、監督が『親孝行してこい』って、叱るようにして帰したって」

「え、そうなんだ!」

 まあやは自分の身内の事のように眉を顰め、わたしは―― あのオッサンか! ――とビックリした。

 ほら、夕べ稲荷曲輪の井戸から下りた時、上の蓋を閉めた奴。課長代理は「ロケチームの中に居る。朝になれば分かる」って!

「でもね、わたし、多田さんの顔思い出せなくて……」

 まあやは、人気俳優なのに気配りの行き届いた子で、キャストやスタッフの全員の顔を憶えている。

 当日限りのアルバイトや仕出しの役者にも、ちゃんと挨拶をして記憶に留めようとする。

 さすがは豊臣秀吉の末裔だと感心した。

 これが戦国の世で、本人に欲があれば天下が取れる。

 そうなれば、参謀の黒田官兵衛は……課長代理。

 わたしは豊臣家筆頭忍者の猿飛佐助……ダメだ、すでに木下家の方にクソ猿飛が居る。

 多田と聞いて、ちょっと自負するところもある。こういう間諜めいた奴は印象を薄くして気取られないようにしている。じっさい、このまあやが顔を憶えられない程度には。

 でも、わたしは多田の顔も印象もしっかり記憶している。

 風魔そのいち、少しは自信を持っていいかもしれないと密かに自負した。

「あ、野菜も食べなきゃダメでしょ!」

「朝から野菜なんて食べられないよ(^△^;)、あ、ちょ……もう」

 まあやのトレーにサラダと野沢菜の漬物を載せてやる。

 まあやの数少ない欠点。たった今もお手洗いに行ったのに、まさに手を洗っただけだ。

「野菜食べないと、しっかりしたウンチ出ないんだからね!」

「え、あ、ちょ(;゚Д゚#)」

 ワハハハハ

 わたしの遠慮のない声とまあやの慌てぶりに笑いの満ちるダイニングだった。

 

☆彡 主な登場人物

  • 風間 その        高校三年生 世襲名・そのいち
  • 風間 その子       風間そのの祖母(下忍)
  • 百地三太夫        百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
  • 鈴木 まあや       アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
  • 忍冬堂          百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
  • 徳川社長         徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
  • 服部課長代理       服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一
  • 十五代目猿飛佐助     もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

くノ一その一今のうち・43『甲府城・4・地下蔵』

2023-03-03 16:04:37 | 小説3

くノ一その一今のうち

43『甲府城・4・地下蔵』 

 

 

 広いと言っても地下のこと、単線のトンネルぐらいの、奥行きは三十メートルほど。

 中央に通路が通っていて、両側は重いものを置いていたのか枕木状に石が並んでいる。

―― レールを撤去した複線トンネル? ――

―― いいや、石は三本ごとに間隔が広くなっている。三本の石を土台にして重いものを置いていたんだ。広い間隔はその重いものを動かすか中身を出し入れするための通路だ ――

 そう言われて、三本を一組で見れば、図書館や大型書店の書架の配置にも見えてくる。本というのは書架にまとめると非常に重たいもので、床はしっかりと補強がしてあると聞いたことがある。

―― 本よりも重たいものだ。三本の石を敷いているのは隙間を作って空気の流れをよくして、湿気やカビから守る必要があった……おそらくは木箱に小分けした金銀の類だろう ――

―― 地下の金蔵? ――

―― 使われていたのは、相当の昔だ。石の上に物を置いた形跡がない ――

 なるほど、触ってみると、石の上も通路の上も同じように埃が積もっている。

 夜目を効かしているが、さすがに、それ以上のことは分からない。

―― 一段落したら灯りを入れて調べてみよう……いや、その時は学者の領分になっているかもしれないがな ――

―― 右奥に通路があります ――

―― 行ってみよう ――

 不定形な岩肌に隠れるようにして通路が穿たれている。

 潜ってみると、数メートルで開けて同じような地下トンネルに出た。

 二人とも足が止まった。

 地下トンネルは、さらに続いている気配なんだけど、直ぐには先が読めない。

―― いくつか枝分かれがあります ――

―― まるで松代大本営のようだ ――

 なんですか?……聞き返す余裕はなかった、トンネルの向こうから、こちらを探る複数の気配がしてきた!

 こういう時の判断は二つ。逃げるか戦うか。

 

―― 逃げる! ――

―― 応! ――

 

 前を向いたまま通路を後ろ向きに飛び退る。

 コンマ5秒で元の石室に戻ると、気配は集約されて覚えのある一人の気配になった。

 

「しばらくぶりだな、その。そして、ずいぶんの久しぶりだな、服部半三」

「猿飛佐助!」

「…………」

「半三、口をきいてくれてもいいじゃないか、古い付き合いだろ」

「…………」

「まあいい。いやはや感服したよ。ひょっとしたら、半三はそのを好きなんじゃないかって勘ぐってしまった」

「な(#;゚Д゚#)!?」

「忍び語りとはいえ、こんなに口数の多い半三は初めて見た。並の弟子になら一年分の量をそのに話しかけていたんじゃないか。なんだか微笑ましかったぞ」

「それは(#'∀'#)」

―― 心を動かすな! ――

―― すみません ――

「まあいい、二人が推測したように、ここは信玄の埋蔵金が収めてあった、一部だがな。ここにあった分はとっくに霧消してしまった。そっちの通路から奥は木下党が発見して活用させてもらった。これ以上の探索は無意味だ」

「フフ、木下の猿がすかしおる」

「やっと声が聴けて嬉しいよ、半三」

「すかすな。無意味なところに姿を現す猿飛ではなかろうが」

「もう一つ教えてやろう、あの本丸の謝恩碑。単なる戒めではないぞ」

「え?」

―― 聞くな! ――

「あれは、武田家の三つ者が大水害の洪水を封じた仕掛けなんだ。封を破れば、ただちに一万トンの水が、この坑道と地下蔵に流れ込む。そして、これが、そのスイッチだ」

「醤油さし!?」

 佐助は懐から取り出したのは、ひょうたん型の醤油さしに似たスイッチだ。

 なにか一講釈あると思ったら、佐助はいきなり、赤いスイッチを捻った!

 

 ドオオオオオン!!

 

 すごい爆発音がしたかと思うと、坑道の向こうからゾゾっと風が吹いてきて、埃と土埃の臭い、そして……

 ドドドドドド!

 かび臭い臭いと共に奔流となって水が迫って来る!

 

 ドガ!

 

 え?

 

 課長代理は、いきなりわたしの鳩尾に突きをくらわして……目の前が真っ暗に…………

 

☆彡 主な登場人物

  • 風間 その        高校三年生 世襲名・そのいち
  • 風間 その子       風間そのの祖母(下忍)
  • 百地三太夫        百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
  • 鈴木 まあや       アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
  • 忍冬堂          百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
  • 徳川社長         徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
  • 服部課長代理       服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一
  • 十五代目猿飛佐助     もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

くノ一その一今のうち・42『甲府城・3・夜の稲荷曲輪』

2023-02-23 14:34:02 | 小説3

くノ一その一今のうち

42『甲府城・3・夜の稲荷曲輪』 

 

 

 その深夜、改めて天守台に潜んでいる。

 

 昼間は中断した。観光客に化けた敵がうろついていたからだ。

 眼下の稲荷曲輪では監督やスタッフたちが来週撮影予定の深夜ロケの下調と準備に余念がない。

「昼間の続きだ」

 声まで違う。

 今は、課長代理の服部半三そのもので、軟弱脚本家三村紘一の片鱗も見せない。

「稲荷櫓が再建されたのは、再建工事にことよせて信玄のお宝を探すためだ」

「木下が工事を請け負ったんですか?」

「いや、甲府の地元にもお宝を狙っている者がいる」

「地元にもですか?」

「見ろ、あの謝恩碑」

 本丸の対角線方向に聳える謝恩碑はライトアップされて発射の時を待っているロケットのようだ。

「あの明治の大水害でも、信玄の埋蔵金には手を付けなかった。まあ、探しても容易に見つかるお宝ではないがな。武田家には三つ者と呼ばれる忍びたちがいたんだが、その裔の者たちがあの謝恩碑に『埋蔵金に手を出すべからず』と暗号を記している」

「え?」

「忍びの仕込文字だ、見た目には分からん。その三つ者たちが甲府市や県まで動かして再建したのが稲荷櫓。床下から地下道が……掘ったのか見つけたのか存在する」

「潜ってみたんですか?」

「何度かな……善光寺の戒壇巡りよりも難しい」

「課長代理でも……」

「あの石垣を見ろ」

 目を凝らすと、稲荷曲輪の石垣にいびつなところが見えた。幅五メートルほどの崩れがあって、崩れた石垣の中には別の石垣が覗いている。前には二重石垣の説明版も見える。

「最初に甲府城を築いたのは太閤殿下だ。その後、家康が天下を取って築き直した」

「大坂城と同じですね」

「太閤殿下は『信玄の埋蔵金などタカが知れておるわ』と申されて、この地にあったとされる手がかりごと埋め立てて城を築かれた」

「そして、家康が、さらにその上に城を築いてしまったというわけですか」

「本来の隠し場所、その上の城、そのまた上の城、工事を重ねるにしたがって、複雑に呪がかけられている」

 呪とは、おまじない。

 安倍晴明のように術として掛けることもあれば、作事や工事、人の想いが重なってかかってしまうこともある。

「その両方がかかっている」

 う……あいかわらず、心を読まれる。

「……気配を感じます」

「ああ、敵も焦っているようだ」

 身を隠すために天守台の石垣ギリギリのところで腹ばいになっているので、微かな地中の気配でも感じてしまうんだ。

「モグラが居る……昼間地上に出ていたモグラのようだな」

 確かに似た気配だ。しかし地中……稲荷櫓の床下から潜るのか?

「あそこから潜るぞ」

 課長代理が示したのは稲荷曲輪の端にある井戸の跡だった。

「承知」

 応えた時には、すでに課長代理はヤモリのように石垣を下りはじめている。

 

 監督たちは、ロケの背景にする稲荷櫓の周辺で、照明やカメラアングルのテストに余念がない。衣装やメイクさんたちもなにやらタブレットと台本片手に真剣だ。おそらく、夜の光や櫓の白壁に合わせる工夫をしているんだ。昼間は大学のサークルみたいなノリでやっているけど、やっぱりプロ。大したものだと思う。

 その分、曲輪の反対側、井戸の周辺は人気(ひとけ)が無い。

「やはりな」

 課長代理の呟きの意味は直ぐに分かった。

 井戸蓋の鉄格子の鍵は外されていた。敵は、ここから侵入したんだ。

―― それだけではない ――

―― え? ――

―― 開けたからには閉める者がいる ――

 そうだ、忍者は忍び込むにあたって複数の侵入口を確保する。入ったところから出ては発見される確率が高くなる。

 ここは城址公園、朝になれば観光客が来る。係員の見回りもある。

―― ロケチームの中に敵がいる? ――

―― 朝になれば分かる、行くぞ ――

―― 応 ――

 忍び語りになっても、課長代理は多弁だ。駆け出し下忍のわたしを教育しようという意味もあるんだろう。

―― 性分だ、気にするな ――

―― 応 ――

 

 昨日の戒壇巡りでは、それとなく夜目の準備を指示されたが、今回は無い。言われなくても天守台を降りる時から片目をつぶって準備していたけどね。

 三十メートルほど行ったところで足が止まった。

 自分で停まっておきながら、瞬間は訳が分からない。

 忍者の五感は常人とは違って、脳みそが判断する前に反応する。一呼吸おいて脳みそも追いついた。

―― この先、広い空間になってます ――

―― 少し探るぞ ――

 わたしも課長代理も呼吸をおさえ、五感全てを動員して様子を探った……

 

 

☆彡 主な登場人物

  • 風間 その        高校三年生 世襲名・そのいち
  • 風間 その子       風間そのの祖母(下忍)
  • 百地三太夫        百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
  • 鈴木 まあや       アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
  • 忍冬堂          百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
  • 徳川社長         徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
  • 服部課長代理       服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一
  • 十五代目猿飛佐助     もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

くノ一その一今のうち・41『甲府城・2』

2023-02-17 16:23:10 | 小説3

くノ一その一今のうち

41『甲府城・2』 

 

 

 え、わたしからですか?

 

 待ち合わせの稲荷櫓の前で落ち合うと「ノッチが想うところを聞かせて」と涼しい顔で言われる。

 三村紘一、いや、課長代理なんだから、なにか見通しがあってのことだとお昼ご飯もロケ弁一つで済ませた。

 もう一つや二つ食べたかったんだけど(忍者は食べられるときに食べておく=風魔流極意)、猿飛佐助たち木下の忍者たちとの戦いも予想される。食べ過ぎては体が重くなる。

「僕なりに見えてきたこともあるんだけど、十分とは言えない。被っても構わないからノッチの感想を聞かせてほしいんだけどね」

 脚本家三村紘一として喋っているから優しいんだけど、課長代理服部半三としての狙いが潜んでいる。

 上忍として下忍を教育すると意味もあるだろう、ゴクンと唾を呑んで答える。

「城はJRによって南北に分断されています。これは、単に鉄路施設の適地を選んだためですが、信玄公以来続いてきた武家勢力の命脈を断ち切るという明治政府の底意が窺えます。城址公園としての整備が行き届いていますが、石垣と城門の復元に重点が置かれ、天守閣の復元などの一点豪華主義に走らず、城としての構えに力が注がれていることが見て取れます。その中にあって、この稲荷櫓のみが独立した櫓として復元されています。これは、下を走る列車からの景色を意識したためだと思います。単に、近隣県民のみならず、通過する旅行客にもアピールする狙いがあるんだと思います……」

 パチパチパチパチパチパチ

「素晴らしい、ノッチは明日からでも甲府市の観光課長が務まりそうだ!」

 ムグ……これは誉め言葉ではない。肝心の事が抜けていることを「観光課長が務まりそうだと」冷やかしているんだ。

「ひとつ伺っていいですか?」

「なんなりと、でも、口を尖らせるのは止しましょう」

 プ

 目にもとまらぬ早業で頬っぺたを挟まれて空気が漏れる。

 アハハハ

 いっしょに笑ってしまう。くそ、なんだか年の離れたカップルみたいじゃないか!

「え、えと……あそこ、本丸に謝恩碑があるじゃないですか、明治の大水害で明治天皇が復興援助されたときの」

「ああ、山梨県民の謝恩の心が現われていて、けっこうな石碑だね」

「忠魂碑や兵隊さんのお墓もそうなんですけど、なんで、オベリスクの形になってるんですか?」

「あれはオベリスクでは無いんだ」

「でも、あの形はエジプトに起源があって、ワシントンDCとかにもあるじゃないですか」

 ちょっと主題からは離れているんだけど、カップル擬装としては適当だろう。

「あれは、方尖塔と云ってね、ちゃんと神道に則った様式で、明治の初年には確立されたものなんだ。だから戦後は国家神道に繋がると忌避されて作られなくなった」

 へえ、そうだったんだ。

「でも、謝恩の気持ちを表すなら天守台の方が良かったんじゃないですか、天守台の方が高いし」

「甲府城に天守閣があったという確証は無いんだ。天守台までは作ったんだが、江戸城の天守も明暦の大火で焼けてしまったからね、遠慮があったのかもしれない……うん?」

「なんですか?」

「今度はノッチの手で僕の頬っぺたを挟んでくれないか?」

「え?」

「いいからいいから(^▽^)」

 言われて周囲に気を飛ばした……微かにだけど、こちらを窺う気配が二人分。

「いや、三人分だ」

 やっぱり課長代理は鋭い。ここは年の離れたカップルでいかなきゃ。

 膨れた三村紘一の頬っぺたを両手で挟んで圧を加える。

 

 プゥゥゥ~~

 抜けた空気は口からではなくお尻から出た(#^_^#)。

「もお!」

 直後、三人分の気配は霧消した。

 

☆彡 主な登場人物

  • 風間 その        高校三年生 世襲名・そのいち
  • 風間 その子       風間そのの祖母(下忍)
  • 百地三太夫        百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
  • 鈴木 まあや       アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
  • 忍冬堂          百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
  • 徳川社長         徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
  • 服部課長代理       服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一
  • 十五代目猿飛佐助     もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

くノ一その一今のうち・40『甲府城・1』

2023-02-10 11:27:32 | 小説3

くノ一その一今のうち

40『甲府城・1』 

 

 

 二日目は甲府城のロケ。

 

 甲府城って甲府駅のすぐ近くで、つまりは街のど真ん中にある。

 城内にはホテルや明治の大水害の後に建てられた謝恩塔(大きなオベリスク)とかがあって時代劇を撮るのには向いていない。

「こんな風にやります」

 監督が木陰でモニターを指し示す。

 モニターには、カメラが撮っている、ちょっと見上げたアングルで石垣と城門が映っている。

 いかにも、初めてお城に来た者が見上げてため息をつきそうな絵柄で、さすがは監督。

 だけど、後ろには高層のホテルやら電線やらが写り込んでいる。それに、石垣の縁の柵も邪魔。

「こうするとね……」

 監督がクリックすると、ホテルも電線も一瞬で消えて、思わず実際の風景を見てしまう。

 当たり前だけど、実際のホテルも電線も、そこにあり続けている。

「そして、こうやるとね……」

 再び監督がクリックすると、石垣の上に白壁が現れ、白壁の向こうには城内の御殿の屋根やら櫓やらが現れた。

「いやあ、CGって凄いんですねぇ!」

 まあやもビックリ。小さく拍手して喜んでいる。

「まあ、見る奴が見たら、日本中のいろんなお城から集めてきたハメこみって分かっちゃうんだけどね。まあ、お城の前に着いたさな子が見た景色は、こんな感じ。まあ、イメージ持って演ってみてください」

「「「はい」」」

 有るはずの物を隠したり、無いはずの物を出したり、ちょっと忍者の騙し合いに似てると思った。

 

「わざわざ江戸からお越しいただいてありがとうございます。この甲府も風雲急を告げてまいりました、うかうかしていては、御公儀にも日本の国にも為にならぬ者の手に渡るおそれもあります。よろしく探索なさってください」

「はい、及ばずながら、師範からも指名を受けて参りました。千葉さな子、微力を尽くす所存でございます」

「ははは、そんなに畏まらないでください。わたしも成ったばかりの城代です。大きな声ではいえませんが、ほんの去年までは旗本が勤番で務めた名誉職。城代と名前は変わりましたが実質はありません。そんな甲府城代には信玄の埋蔵金など荷が重い。さっさと見つけ出して江戸の金蔵に収めたいというのが本音なんです」

「はい、ご城代さまは道場に通われていたころと変わりませんねえ」

「はは、幕府の人材も払底してきましたかなあ」

「いいえ、ようやく見る目が出てきたのでしょう、軍艦奉行の勝様も八面六臂のご活躍です」

「はは、勝様と比べられては入る穴もありません。では、支配地の見回りもありますので、これにて。ああ、入用のものがありましたら、納戸奉行に申し付けてください、話は通してありますから」

 まあやのさな子に合わせて頭を下げる。ゆっくりと顔をあげると櫓の上には青い空が広がって、トンビがくるりと輪を描いた。

 

 カット!

 

 監督がOKを出して、午前中二つ目の『城代との対面』のシーンが終わる。

 録画を確認したらお昼休み。

 みんなでモニターを見ていると、横に三村紘一。

―― 昼休み城内探索 稲荷櫓の前 ――

 忍び語りは、御城代様のようにくだけてはいなかった……

 

☆彡 主な登場人物

  • 風間 その        高校三年生 世襲名・そのいち
  • 風間 その子       風間そのの祖母(下忍)
  • 百地三太夫        百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
  • 鈴木 まあや       アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
  • 忍冬堂          百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
  • 徳川社長         徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
  • 服部課長代理       服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一
  • 十五代目猿飛佐助     もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

くノ一その一今のうち・39『おたまがいけ』

2023-02-04 12:04:46 | 小説3

くノ一その一今のうち

39『おたまがいけ』 

 

 

 甲斐善光寺を出て、三村紘一(課長代理が化けてる)の車で甲府市内のホテルに戻ってロケチームと合流する。

 

「なにか面白いことあったぁ?」

 顔を見るなりまあやが聞いてくる。

 ロケチームで借り切っている喫茶室なので、遠慮も警戒も無い。

「信玄の心を覗いてしまったかも……」

「え、信玄の心!?」

 反射のいいまあやは、鼻がくっ付きそうなところまで顔を寄せて話を聞きたがる。

「実はね……」

 まあやの好奇心に応えるべく、ことさら、秘密っぽく善光寺でのあれこれを話してやる。

 むろん裏稼業のことは秘密にしてね。

「わたしも行ってみたいなあ、心の字の形の地下迷路って、そそられるよね!」

「三村先生は、大いにインスピレーション掻き立てられたみたいだけどね」

「うん、三村先生って、結末で九個謎解きしても一個は謎のままにしてるでしょ。それって視聴者にも人気だけど、やっててもワクワクするのよねぇ。ほら、第二十回の『お玉が池由来』で、千葉道場ができたころの話があるでしょ?」

「ああ、龍馬たちが無茶ばっかりやるんで、師範が昔話して意見するとこだね」

「うん、建築費まけてもらうために神田祭の警備係りやったり、お化け退治やったり」

「うん、立ち回りやったら『その、すごみ過ぎ!』って怒られた(^_^;)」

「いっぱい、仕掛けのある回だったけど、肝心の――なぜ、お玉が池に道場を開いたのか!?――って謎解きは無かった」

「あ、そう言えば」

「でね、撮影が終わって先生が見えた時に聞いてみたの『なんで、お玉が池だったんですか?』って……ふふ、そしたらね(〃艸〃)」

「そしたら?」

「こっそり教えてくれたの」

「なんてなんて!?」

「江戸に来た時に、周作は、宿の飼い猫に『お玉が池がいいよ』って勧められるの」

「猫に?」

「うん、その猫の名前がね『お玉』って云ってね『お玉が行けと申したからだ』ってオチになるんだって! あ、これは最終回まで秘密だから、ノッチも人に言っちゃダメだよ」

「う、うん」

 それって、絶対に咄嗟の言い訳だよ(^_^;)。なんせ三村紘一の本業は徳川物産の課長代理、徳川忍者部隊の元締めだからね。

 寂しがり屋のまあやは、その後も話を聞いたり話したりで喜んでくれたんだけど、肝心の事を忘れていた。

「あ、いっけない!」

「どうしたの?」

 ちょっと待ってと、打合せから戻ってきた監督になにやら相談。

「ノッチが戻ってきたら、さな子さんのお墓に行こうと思ってたんだけどね、もう日が落ちて天気も悪くなってきたから今度にしなさいって」

「あ、ごめん、わたしも話し込んじゃったから!」

「ううん、めっちゃ楽しかったし、また今度。アハハ、『お玉が行け』といっしょ!」

 

 いい子だ、まあやは。

 

 けっきょく、その日は、お天気も崩れてきたので、撮影も無くなって、二人でお風呂入って晩ご飯。

 明日からは、遅れた分を取り返す。

 がんばろう。

 

☆彡 主な登場人物

  • 風間 その        高校三年生 世襲名・そのいち
  • 風間 その子       風間そのの祖母(下忍)
  • 百地三太夫        百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
  • 鈴木 まあや       アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
  • 忍冬堂          百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
  • 徳川社長         徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
  • 服部課長代理       服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一
  • 十五代目猿飛佐助     もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者

 

  

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

くノ一その一今のうち・38『甲斐善光寺・2・戒壇巡り』

2023-01-29 14:39:13 | 小説3

くノ一その一今のうち

38『甲斐善光寺・2・戒壇巡り』 

 

 

 あ、そうか。

 

 年配の人が多い香炉堂で、線香の煙にまみれて気が付いた。

 いつもの通りまあやの付き人のつもりでいたから、夕べはいつも通りシャンプーをしてきた。

 お寺では目立つ匂いだ。

 じっさい、香炉堂には十人近いお年寄りや観光客がお線香の煙を浴びたり刷り込んだりしている。

 自然な流れの中でニオイ消しをさせる課長代理、いや三村紘一はなかなかだ。

「やっぱり、頭にかけたら賢くなるかなあ……ここんとこ、スランプで筆が進まないからねえ」

「えい!」

「ワップ、顔にかけるとは嫌味な奴だ。トワ!」

「ああ、やめてくださいよぉ、髪がクシャクシャになるしぃ!」

 ほどよくじゃれると、香炉堂のお年寄りたちも――若い者はいいのう(^▽^)――と微笑んでいる。

 

「金堂の中に戒壇巡りがある」

「階段巡り?」

「その階段じゃない、戒める壇と書く戒壇だよ。観光客らしくググってごらん」

「あ、はい」

 ベンチに腰掛け、スマホを取り出す。

「便利なもんだねえ、スマホというのは……」

「ハハ、なんか、めちゃくちゃ年寄りみたいですよ(^_^;)」

「だって、たとえ国家機密にアクセスしていても怪しまれないじゃないか」

「あ、そうですね(°_°)」

「そんな真面目な顔になっちゃダメでしょ、高校生がミーハーな気持ちでググってるんだから」

「アハハ、ですよね(^o^;)」

 戒壇巡りとは、金堂の地下に『心』の字を一筆書きにしたような暗黒の通路があって、中ほどに鍵がぶら下げてあって、その鍵に触れるとご本尊の仏さまと結縁(けちえん)できるというお呪いのようなものらしい。

「これに、お宝の秘密が……」

「うん、なにかある」

「でも、ちょっとベタじゃありません?」

「じつは、去年、一人で探ってみた」

「あ、もう実行済みだったんですか?」

「戒壇に入ろうとしたら、火災報知器が鳴って果たせなかった」

「牽制されたんですね」

「本物の火事だ。入って直ぐの戸帳に火をつけた奴がいた」

「トチョウ?」

「現物を見に行こう」

「はい」

 

 拝観料を払って金堂に入る。

 課長代理の言う通り、入って右側に人がたかって、中には手を合わせているお婆ちゃんたちの姿も見える。

 戸帳とは、仏さまに関する絵が描かれたタペストリーのようなもので、去年の四月に焼失して別のものが掛けてあると説明がある。

 パ~~~~~~~ン

「わ!?」

 誰かが手を叩いたんだろいけど、すごいエコーにビックリする。

「鳴き竜だ」

 つられて見上げると天井に大きな竜が描いてある。

「日光東照宮のが有名だけどな、響きでは、ここの方が上だと言われてる。多重反響現象と言われているんだが、構造がな……」

 ハア~~~~

 お年寄りの残念そうな溜息、なんだろうと振り返るとお爺さんがお仲間が慰めている。

「秘仏だとは気いとったけど、お前立て様まで観られんとはなあ……」

「そこが、ありがたいとこじゃねえか」

「さ、御朱印押してもらうぞ」

 おそろいの御朱印帳を開いて仲良く列を作る。

「ラジオ体操のハンコを押してもらうみたい」

「ああいう善男善女ばかりなら、世の中平和なんだろうけどね」

「お前立てってなんですか?」

「元々は、信玄が信濃の善光寺の御本尊を避難させていたんだけどね、それが、元々秘仏だった。それで、ご本尊そっくりに作ったのをお厨子の前に安置した。それを前立て本尊と言うんだ」

「レプリカですか?」

「失礼だぞ、仮にも信仰の対象だぞ」

「あ、そうですね(^_^;)」

「その前立て本尊も七年に一度しか御開帳にならない、直近は去年の春だった」

「あ、その時期に合わせて探りに来たんですね」

「俺にだって尊崇の念はある。元の本尊を信濃善光寺にお戻しになったのは豊太閤殿下だ。なにか、おかしいか?」

「いえいえ、勉強になります」

 ほとんど三村紘一として喋っているせいなんだろうけど、なんだか、とても殊勝な物言いでおかしい。

「さ、戒壇巡りに行くぞ」

「はい」

 右側の奥まったところに入り口がある。

―― 風魔は夜目が利く。しっかり見ておいてくれ ――

―― 承知 ――

 最後は忍び語りを交わして、戒壇への階段を下りる。左手の壁を触りながら進めとあるので、それに倣う。

 

 ウ…………さすがの風魔忍者でも一メートルほどしか見通せないほどの闇だ。並の人間なら目の前にナイフを突きつけられても見えないだろう。

 ただ進む分には問題はないんだろうけど、探索の役目がある。密かに胸元の魔石に触れる。

 とたんに可視範囲が数倍に広がる。風魔の魔石って、ほんとうに効き目があるんだ。

 注意して進むんだけど、見える範囲には何もない。

 途中三カ所ほど、緩いのやら急なのやらの曲がり角。手を付いたところを中心に注意して見るけど、とくに変わった物は目につかない。

 四つ目の角を曲がると鍵が見えてきた。

 念入りに観察するが、当たり前の構造をした錠前だ。

―― 普通の錠前です ――

―― 錠前以外のところだ、しっかり見ろ ――

 開けてみたい衝動に駆られるが、信仰の対象、むやみなことはできない。

 やむなく先に進むと、小さくカチャリと音がした。

―― 開けたんですか!? ――

―― すぐに締め直した ――

―― なにかありました? ――

―― なにもない ――

―― 進みます ――

―― おお ――

 

 そのあと、一分ほどで外に出た。

 何も起こらず、何も発見できずに終わってしまった(-_-;)

 

 

☆彡 主な登場人物

  • 風間 その        高校三年生 世襲名・そのいち
  • 風間 その子       風間そのの祖母(下忍)
  • 百地三太夫        百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
  • 鈴木 まあや       アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
  • 忍冬堂          百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
  • 徳川社長         徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
  • 服部課長代理       服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一
  • 十五代目猿飛佐助     もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

くノ一その一今のうち・37『甲斐善光寺・1・はいかぶせ姫』

2023-01-24 15:57:16 | 小説3

くノ一その一今のうち

37『甲斐善光寺・1・はいかぶせ姫』 

 

 

 変だとは思わないか?

 

 ズサ!

 反射的に飛び退って懐の手裏剣に手を伸ばしてしまった。

「すまん、そう言う意味じゃなくてさ、この善光寺の佇まいを見て、なにか変に思わないか?」

 声の響きで、課長代理は脚本家三村紘一として話しているのだと察して、丹田の力を抜く。

「あ……えと……ちょっと古びてはいますけど美しいですね。銅板屋根の緑青、柱や垂木の朱色、壁の白、大きさの割に柱が華奢で女性的な感じも……」

 いや、物言いは三村紘一だけど、聞いている内容は忍者の頭としてだ。

 頭を切り替える。

「甲斐の国の総鎮守としての貫禄は十分ですが、寺を取り巻く塀がありません。戦乱や星霜の中で部分的に失われることはあるでしょうが、この甲斐善光寺は、山門の両脇にさえ塀がありません。礎石すらありませんから、創建当初から無かったように見えます」

「そうだね、さすがは信玄が建てた寺だ。信玄の性格がよく出ている」

「はい」

「人は城、人は石垣、人は堀……信玄のモットーだね」

「人を育て、人を頼みとしてこそ国が守れるという信玄の戒めですね」

「そう、そのことを軽んじたから息子の勝頼は破れてしまった……」

「そうですね」

 今のは、後ろに跳び退って山門の全景を視界に収めたからこそ気づけたことだ。

 課長代理は、そのことのために、この距離で謎を掛けてきたのか……油断のならない人だ。

「アハハ、たまたまだよたまたま(´∀`)」

「そうですか(^_^;)」

 って……いまの口に出したわけじゃないのに。

「信玄はね、倅の勝頼が長続きしないことを読んでいたんだ。だから、将来武田家の裔の者たちが立ち上がるために膨大な軍資金を隠した。知恵と勇気と運をつかんだ者にしか手に入らないような仕掛けを施してね……」

「仕掛け……」

 怖気が湧いてくる。

 きっと、これまで何人、何十人、何百人という者たちが埋蔵金に挑んできたのに違いない。戦国から、もう四百年あまりの年月が経って、それでも発見されていない。

 歴史が証明している。この四百年武田の裔たちが立ち上がったという話は聞いたことが無い。武田以外の者が探り当てたという話も聞かない。

 お祖母ちゃんから、忍者に関わる歴史については教えられてきたけど、この件については聞いたことが無い。

 しかし、木下豊臣家も本気で動き、うちの課長代理までが真剣に取り組んでいるからにはマジに違いない。

 こんなものに立ち向かって大丈夫なんだろうか。

「気を楽にしてあげよう」

 ウ、また読まれてる。

「埋蔵金を獲得する必要などは無い。ただ、木下の手に渡らないようにできればミッションコンプリートだ」

「はい」

「そのの力を借りるのは、ほんの入り口。埋蔵金のありかさえ分かれば、手立てはいくらでもある。それは、わたしと徳川物産の仕事だからね。そのは、鈴木まあやを守るのが第一の務めだと思っていればいい」

「はい」

「よし、あの香炉堂でお線香をあげよう。あの煙を浴びればいい知恵が湧いてくるかもしれない」

「はい」

「『はい』ばかりだね、これからは『はいかぶせ姫』と呼んでやろうか」

「姫じゃないからいいです!」

「じゃ、はいかぶせ。いくぞ」

「はい」

 って、ああ、もう!

 

☆彡 主な登場人物

  • 風間 その        高校三年生 世襲名・そのいち
  • 風間 その子       風間そのの祖母(下忍)
  • 百地三太夫        百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
  • 鈴木 まあや       アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
  • 忍冬堂          百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
  • 徳川社長         徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
  • 服部課長代理       服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一
  • 十五代目猿飛佐助     もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする