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大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

せやさかい・372『モデル!!』

2022-12-25 18:37:35 | ノベル

・372

『モデル!!』さくら    

 

 

 撮影の続き……

 

 日差しが合わない……と突っ込むのはソニー。

 登校風景を撮るんやけど、授業が終わってからの撮影なんで、お日様は、とっくに上がってます。

「これでは下校時の太陽高度だ、いくらプロパガンダ映像としてもずさん過ぎないか?」

「プ、プロパガンダ(;'∀')」

「もとい、広報映像としても」

「レフ版とか補助照明とかも使うから、ま、いいんじゃない(^_^;)?」

 留美ちゃんがフォロー。

 

「普段通りでいいからね」

 ディレクターのおっちゃん。

「校門入る時と、マリア様の前を通る時は、キチンとお辞儀!」

 長瀬先生は、うちが時々忘れてることを知ってる。

「じゃ、一回テスト。カメラ目線にならないでね。ライトやレフ版も直接見たら、しかめっ面になっちゃうから」

「「はい」」「了解」「Understood」

 で、テストをしてると、いつの間にか野次馬さんたちが集まって来る。

 なんちゅうても放課後すぐやしね。

 でも、たいていの生徒はええ子やから、邪魔をしたりはせえへん…………ねんけど、例外が数名。

 

「わあ! なにやってんの?」「ロケだ!」「リアル撮影!」「生徒会は聞いてないぞ!」「混ぜて欲しい!」

 

 頼子さんたちと、生徒会執行部と執行部のOGの人ら。そう言えば、生徒会の引継ぎが今日やったような(スマホでチェックした行事予定表にあった気がする)。

「長瀬先生、これ学校紹介の撮影ですよね?」

 真鈴会長、いや前会長が目をカマボコ型にして聞く。

「ああ、邪魔せんとってな」

「ねえ、先生、どうせだったら、わたしたちも入っちゃダメですか? 文化祭とかの企画で慣れてますから!」

 そう言えば、真鈴先輩は文化祭では大活躍やった、芝居の脚色・演出・主演、それに駅前パレードの企画も大当たりさせた!

「ああ、動画で観たけど、すごかったですね!」

「カメラワークも良かった!」

「演出ピカイチ!」

 撮影班もノッテきた。

「しかし、日程がなあ……」

 長瀬先生は、ちょっとしぶい。

「ちょっと、コンテ見せてもらえます!?」

 先生がウンという前に、ディレクターのコンテを覗き込むご一統様。

「会長、これなら、チョロいっすよ!」

「前会長だ、現会長は!?」

「このまま帰るのも寂しかったから、いいんじゃないですか」

「よし、では、新旧生徒会とファンクラブで、いっちょう行ってみよう!」

 

 おお!!

 

「乗っとちゃった……」

 留美ちゃん一人呆然として、さすがの長瀬先生も腕を組んで黙ってしまう。長瀬先生も文化祭の大成功は知ってるし、声優百武真鈴とヤマセンブルク王女のネームバリューは使えると思てる。

 それにね、ソフィーが領事館の用事で、この場を外してる。ソフィーも単に頼子さんのガードいう以外に領事館でも重要なポジションに就きつつあるとか。

 リアルにはクリスマスも過ぎてんねんけど、面白いから、もうちょっと続きます(^▽^)

 

☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら     この物語の主人公  聖真理愛女学院高校一年生
  • 酒井 歌       さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
  • 酒井 諦観      さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦念      さくらの伯父 諦一と詩の父
  • 酒井 諦一      さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
  • 酒井 詩(ことは)  さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
  • 酒井 美保      さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
  • 榊原 留美      さくらと同居 中一からの同級生 
  • 夕陽丘頼子      さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 聖真理愛女学院高校三年生
  • ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
  • ソニー        ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
  • 月島さやか      さくらの担任の先生
  • 古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
  • 百武真鈴(田中真央) 高校生声優の生徒会長
  • 女王陛下       頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首  

 

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せやさかい・371『モデル!』

2022-12-23 16:43:48 | ノベル

・371

『モデル!』さくら    

 

 

 一昨日の続き……

 

 掃除が終わって報告に行くと、長瀬先生はIDぶら下げたニイチャンらと振り返った……その目がこわい(; ゚゚)!

 こいつらや!

 という顔で睨んでくるやおまへんか!

 

 えと……なにやらかしたっけ(;'∀')?

 

 十六年の人生経験で、すぐに謝ることを考えてしまう。

 留美ちゃんは怖がって、あたしの袖を掴んで後ろに回るし、メグリンは自衛隊式の気を付けするし。

「なにか不備がありますか?」

 陸軍伍長のソニーは、手を後ろに組んで、上官に―― ことと次第では連隊長(校長)に申告 ――の姿勢。

「あんたたち、今日これからと明日の放課後空いてるか?」

 なんや、いよいよ軍法会議か(;'∀')!?

「空いてたら、頼みたいことあるんや」

 え?

 ちょっとズッコケる。

「実は、来年の学校案内作ってるねんけど、モデルやってくれる子がコ▢ナにかかってしもてな。日程は決まってるし、あんたらがやってくれると学校も、業者の人も助かるんや」

 もうコ▢ナになっても、どうっちゅうことはないねんけども、学校には出てこられへん。

「三人ともですか?」

 軍人らしく、状況確認するソニー。

「うん、二人は濃厚接触者やから、これも出席停止なんや。どうやろ?」

「しょ、承知しました!」

 三人の都合も聞かんと、さっさと承知するのは、やっぱりオッチョコチョイのあたしです。

「それで、どういうところを撮るんでしょうか?」

 これも軍人の娘、メグリンが作戦計画を確認する。

「じゃ、今の掃除してるところやってもらえるかなあ」

 カメラマンのオッチャンが提案。

 

 で、直したばっかりのホウキ持って、もっかい掃除してるとこから撮影。

 

 いまやったばっかりやったから、リアルに自然にやれた。

 ひょっとしたら、ハナから狙ってて、掃除終わるのん待ってたか?

「じゃあ、明日は……こんな感じで」

 オッチャンがタブレットで撮影計画を見せてくれる。

「送ってもらえますか?」

 ソニーが提案し、うちらはスマホにコピーさせてもらう。

 

「後ろからのカットもあるねえ……」

 コンテを見た留美ちゃんは、家に帰ってから、スカートにアイロンをかける。

「ちょっと前髪長いかなあ……」

 鏡を見ると、長いこと髪の手入れをしてないことに気付く。かと言って、美容院行ってる暇ないし。

 よし!

 鋏を出して鏡と睨めっこ。

「あ、止めた方がいいよ!」

 留美ちゃんに止められる。

「ちょっと切るだけやし」

「そう言って、ユイは失敗して恥をかいたんだよ」

「え、ユイて?」

「『けいおん!』の平沢ユイだよ」

 そう言って、留美ちゃんは動画サイトに出てるシーンを見せてくれる。

「さくらって、ちょっと似てるからね……」

 え、うそ!?

『けいおん!』は、うちも好きなアニメで、密やかに、秋山澪に似てると思てた(怖がるとこがメチャかわいい)。

「さくら、今回の22行目でも、自分のことオッチョコチョイって言ってるじゃな」

「え……あ、ほんまや(-_-;)」

 で、まあ、アニメみたいな失敗をすることもなく、二日目の撮影。

 それは、また次ね(^_^;)。

 

☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら     この物語の主人公  聖真理愛女学院高校一年生
  • 酒井 歌       さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
  • 酒井 諦観      さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦念      さくらの伯父 諦一と詩の父
  • 酒井 諦一      さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
  • 酒井 詩(ことは)  さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
  • 酒井 美保      さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
  • 榊原 留美      さくらと同居 中一からの同級生 
  • 夕陽丘頼子      さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 聖真理愛女学院高校三年生
  • ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
  • ソニー        ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
  • 月島さやか      さくらの担任の先生
  • 古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
  • 百武真鈴(田中真央) 高校生声優の生徒会長
  • 女王陛下       頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首  

 

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せやさかい・370『玄関前の大掃除』

2022-12-21 16:53:23 | ノベル

・370

『玄関前の大掃除』さくら    

 

 

 学校のやることに無駄はおまへん。

 

 昨日のクリスマスツリーで―― せや、うちはミッションスクールやったんや! ――と感激して、スマホで学校の行事予定を確認。

 ちなみに、去年まではプリントした年次予定表とかが配られてたんやけど、エコとか資源節約とかで、学校のウェブページで確認してくださいとのこと。

 まあ、余計なプリントが無くなるのはええことです。

 中学の頃は、貰ってそのままカバンに突っ込んで忘れてしまって、学年の終りにカバンの中身全部出して「あ、行事予定表!」と叫んで、全部済んでしもたモミクチャの予定表が出てきたりした。

 そこで分かったということもあった(留美ちゃんがちゃんとやってるんで、ズボラかましてるとこもあるんやけどね(^_^;))んやけど、まあ、どっちにしても、テレビの番組表かっちゅうくらい、ごちゃごちゃしてる行事予定表を見よういう気にはなりません。

 で、スマホで確認したら、23日『クリスマスページェント』と書いてある。

「あれ、クリスマスって、24日やんなあ」

「24日は……」

 留美ちゃんがスクロールすると―― 終業式 クリスマスミサ その他 ――と出てる。

「その他ってなんだろう?」

 メグリンが覗き込む。

 さらにスクロールすると―― ここをクリック ――と出てくる。

 このクリックサインは、半分くらいの日程にあるんやけど、メンドイのでほとんど見ません。

 まあ、差し迫って大事なことは担任のペコちゃんが、HRとかで念押ししてくれるさかいにね。 

 で、開いてみると、やっぱり、年末の学校の事務的な(施設点検とか帳簿の提出とか)ことが書いてあって、いろいろムズイ。

「奨学金……留学希望締め切り……他にもいろいろあるんだねえ」

 

 おい、そこ、さっさといくぞ!

 

 熱中してたら、ソニーの怖い声が飛んできた。

 そう、今日の午後は授業は無いけど、大掃除。

 堺の中学校でノホホンと過ごしてきた感覚では、どうせやるんやったら前日の23日にやったらと思うんやけど。

「外回りの掃除もあるから……ほら、雨天順延と書いてある」

「それに、先生たちの会議もいろいろあるみたいだよ。これは、先生も責任をもって監督しますってことだね……うん、指揮官先頭の心得だね!」

 お父さんが幹部自衛官のメグリンは、こういうところで感心する。

 

 こら! 何をしとるかっ!!

 

 国に帰ったら現役陸軍伍長、気合いの入り方がちゃいます。

 

 うちらの担当は玄関前から正門までの通路というか広場というか……植え込みとか入れたら500坪ぐらいはありそうな、通称玄関前のとこ。

「ああ、あんたらか。そこに道具一式出したあるから、チャッチャとやんなさい。終わったら報告!」

 めちゃ簡単な指示をして、監督の長瀬先生は玄関ホールに行ってしまう。

「先生、忙しいみたいだね」

 留美ちゃんが目を向けた先、事務所の前でIDカードぶら下げた人らとお話しにかかってはる。

 なるほど、うちらへの指示がおざなりやったんは、そういうわけか。

 長瀬先生は体育科の古株で、学年はじめに校内探検に夢中になってて怒られた(297『校内探検・玄関から真理愛館へ』)。怖い先生やけど、きっちりしたとこはさすがやと思てます。

「では、わたしが指揮を執る」

 ソニーが箒を構えてうちらの前に立つ。

「「「はい!」」」

 思わず気を付けしたのは、長瀬先生の余熱か、現役陸軍伍長の迫力か。

 うちらは、シャキンとして玄関前の大掃除にかかったのでありました。

 

☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら     この物語の主人公  聖真理愛女学院高校一年生
  • 酒井 歌       さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
  • 酒井 諦観      さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦念      さくらの伯父 諦一と詩の父
  • 酒井 諦一      さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
  • 酒井 詩(ことは)  さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
  • 酒井 美保      さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
  • 榊原 留美      さくらと同居 中一からの同級生 
  • 夕陽丘頼子      さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 聖真理愛女学院高校三年生
  • ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
  • ソニー        ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
  • 月島さやか      さくらの担任の先生
  • 古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
  • 百武真鈴(田中真央) 高校生声優の生徒会長
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せやさかい・369『留美ちゃんが立ち止まるわけ』

2022-12-20 12:05:09 | ノベル

・369

『留美ちゃんが立ち止まるわけ』さくら    

 

 

 あ

 

 駅前の横断歩道で、留美ちゃんが一瞬立ち止まる。

 品行方正な留美ちゃんが、横断途中に立ち止まるなんて、初めての事。

 でも、時間にしてコンマ5秒ほど。すぐに渡り終えて改札へ向かうエレベーターに飛び乗る。

 なんせ、朝の通学途中やさかいに、足は緩められません。

 せやさかい、事情を聞いたのは電車がホームにやって来るのを待ってる間ぁになる。

「なんやったん?」

「うん、あとでね」

 このご時世、人ごみの中では、むやみには喋られへんのを忘れてた。

 で、もっかい聞いたのは、学校最寄り駅に着いて改札を出たとこ。

「で、なんやったん?」

「え、なに?」

「なにて、横断歩道の真ん中で立ち止まったやんか!」

「あ、ああ……アハハハ」

「ちょ、なにが可笑しいん?」

「いや、さくらの好奇心て、大したものよね」

「え、そう?」

「だって、わたし、忘れてたから」

「え、せやさかいに、なんやったん?」

「あ、うん。いつも信号のとこに立ってる婦警さんいるでしょ」

「あ、ああ……小柄な?」

「うん、あの婦警さんがね、オシャレな私服ですれ違ったの。たぶん非番のお出かけだよ」

「せやったん?」

 うちの感動は、ちょっと薄い。

 せやかて、婦警さんは信号機と同じで、いわば風景の中のオブジェ。制服の中身まで考えたことあれへんので、顔までは憶えてへん。

 留美ちゃんいう子は、相手の興味が薄かったら、それ以上に話題を広げる子やないねんけど、うちには突っ込んでくれる。

「わたしたちより、ちょっとだけ年上の女性が、婦人警官になろうって決心するのはスゴイと思うのよ。それが、通学途中の高校生に顔を憶えられるほど信号のとこに立っていて、非番のお出かけ。ちょっとおしゃれしてね。感動するし、想像しちゃうわよ」

「そ、そうやね! デートやろか!?」

 留美ちゃんの解説で、うちの頭の中で婦警さんは人格を持ち始め、とたんにテンションが上がる。

「違うね」

「ちゃうのん?」

「所轄管内でデートなんかしないよ。それに、デートするには朝すぎる。横断歩道渡ったらロータリー、たぶん友だちの車とかが待ってて、いっしょに出かけるんだと思う。たぶん、ちょっと早めのクリスマスとかだよ。お巡りさんは、年末は歳末特別警戒で忙しいからね。きっと、年内最後の休みなんだ」

「でも、お友だち同士のクリスマスでオシャレする?」

「ちっ、ちっ、ちぃ」

 あたしの鼻先で人差し指を振る留美ちゃん。

「休みの日に衝動買いしたオシャレグッズ、そうそう着ていく時間も場所も無いのよ」

「しょ、衝動買いかあ……」

 うちの衝動買いは、せいぜいコンビニのスナック。

「そうかあ……」

 口では言わへんけど、ここ一年ほどは作家志望的な感じの留美ちゃん。目の付け所がちゃう。

 いっしょに暮して二年以上、同じような生活サイクルやのに、着実に進歩してる感じ(^_^;)。

 うちも、がんばらならあかんなあ。

 

 あ

 

 校門入ったとこで、また留美ちゃんが立ち止まった。

「あ」

 さすがに、うちも気ぃついた。

 正門入って左側の木ぃが、クリスマス仕様になってる!

 綿の雪と電飾が付けられて、天辺には大きなお星さまが付いてる。

 

 せや、うちはミッションスクールやったんや!

 

「この木って、もみの木だったんだ」

「四月には校内探検したのに気ぃつけへんかった」

 

 終業式まで、あと三日。

 もうちょっと、楽しんでみたいと思うさくらと留美でありました。

 

☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら     この物語の主人公  聖真理愛女学院高校一年生
  • 酒井 歌       さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
  • 酒井 諦観      さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦念      さくらの伯父 諦一と詩の父
  • 酒井 諦一      さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
  • 酒井 詩(ことは)  さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
  • 酒井 美保      さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
  • 榊原 留美      さくらと同居 中一からの同級生 
  • 夕陽丘頼子      さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 聖真理愛女学院高校三年生
  • ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
  • ソニー        ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
  • 月島さやか      さくらの担任の先生
  • 古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
  • 百武真鈴(田中真央) 高校生声優の生徒会長
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せやさかい・368『歳末特別警戒本部やぞ!』

2022-12-14 20:08:03 | ノベル

・368

『歳末特別警戒本部やぞ!』さくら    

 

 

 おお…………!

 

 うちの山門を眺めて、四年ぶりに感動した。

 一回目は……感動ちごて、動揺かな。

 ほら、四年前の三月三十一日、お母さんに連れられて、この山門の前に立った。

 あの時は、この門のことを山門て呼ぶことも知らんかった。

 ジッカの門と呼んでた。

 ジッカとは実家で、実家て書くのは四年生まで知らんかった。お母さんがジッカ、ジッカて呼んでた。

 ジッカはお寺で、お寺の門を山門て呼ぶのを、それまでは知らんかった。

 それまで、夏休みとかに来るだけやったから――今日から、ここがさくらの家や――言われて、めっちゃ意識した。

 なんや、いかつうて、テレビで見た『忠臣蔵』の討ち入りいう感じ。

 大石内蔵助が、四十七士を引き連れて吉良上野介の屋敷の門の前に立った、あの感じ。

 いや、うちは扶養家族やさかい、息子の大石力っちゅうとこやなあ。

 忠臣蔵言うと、今日は、播州の赤穂城で三年ぶりの赤穂義士のパレードをやってた。

「ああ、やっぱり中村雅俊の大石内蔵助いいわねえ(^▽^)」

 おばちゃんが感動してた。

「ああ、太陽にほえろやなあ」「われら青春も良かったなあ」

 お祖父ちゃんとおっちゃんも感動。

 うちらは、なんかオジンのコスプレいう感じやねんけど、せっかくの感動に水を差すようなことは言いません(^_^;)

 そこへ、檀家周りから帰ってきたテイ兄ちゃんが、町会長さんから言づかってきよった。

「集会所、雨漏りして使えへんから、歳末特別警戒の詰所にお寺貸してくれへんかて」

「ああ、それは難儀やなあ」

「そら、使てもらい」

「ほな、電話するで」

 テイ兄ちゃんが衣のまま電話して、急きょ、うちは歳末特別警戒の本部(ほんまは詰所やけど、本部の方がかっこええ)になった。

 

 で、すぐに町会長さんが軽トラで本部の道具一式を持ってきはった。

 

 その道具で、いちばんかっこええのが提灯。

 白地の胴に二本の赤線が引いたって、黒々と『歳末特別警戒』の文字が入ってる。

「納戸に、古い提灯立てがあるで」

 お祖父ちゃんが思い出して、時代劇に出てきそうな木製のスタンドが出される。

「これは対にせんとあかんなあ」

 おっちゃんの発案で、例年やったら一個で済ます提灯を二つにした。

 ほんで、セッティングを終わったら、気の早いお日さんが西の空に傾いてきたんで、提灯に灯りを入れる。

 それで「おお…………!」と女子三人で感動したわけ。

 三人いうのは、うちと留美ちゃんと詩(ことは)ちゃん。

「なんか、堺奉行所って感じね!」

「殿馬場のあたりにあったっていいますね!」

 二人の感動はレベルが高い。

「せや、写真に撮って送ったろ!」

 イチビリのうちは、提灯の灯りで雰囲気の写真を撮って、散策部のみんなに送る。

 

 一分で頼子さんから返事が返ってきた。

 

―― 今から観に行く! ――

 

 で、四十分後には、散策部全員で山門の前で記念写真(^_^;)

「おお」

 メグリンは、うちらと同じ反応。

「新選組の屯所って感じ!」

 想像力の翼を広げたんはソニー。

「歳末特別警戒って、夜回りするんだよね!?」

 ソフィーにも火が付いた。

「よし、わたしたちも参加しよう!」

 頼子さんが手を挙げて、急きょ歳末の部活が決まってしもた!

 

☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら     この物語の主人公  聖真理愛女学院高校一年生
  • 酒井 歌       さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
  • 酒井 諦観      さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦念      さくらの伯父 諦一と詩の父
  • 酒井 諦一      さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
  • 酒井 詩(ことは)  さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
  • 酒井 美保      さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
  • 榊原 留美      さくらと同居 中一からの同級生 
  • 夕陽丘頼子      さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 聖真理愛女学院高校三年生
  • ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
  • ソニー        ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
  • 月島さやか      さくらの担任の先生
  • 古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
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せやさかい・367『真鈴の誘いを断る』

2022-12-08 16:53:08 | ノベル

・367

『真鈴の誘いを断る』さくら    

 

 

 十二月の頭という時期に「ごめん、試験が近いから(^_^;)」と断られたら、たいていの場合ウソ。

 

 泊りがけの旅行とかだったら、さすがにNGだろうけど、気の置けない仲間が集まって二三時間、長くても四五時間のパーティー。ノープロブレム、問題なし。

 だのに、その言い訳を、わたしはしてしまった。

『そっか、来春は正式に王女就任だもんね……うん、じゃ、また今度ね(^▽^)』

 百武真鈴は、好意的な深読みをして察してくれた。

 

 日本がドイツのみならず、スペインまで破ったことを日本人の90%くらいは喜んでいると思う。

 残りの10%は――ロッカールームや観客席の掃除をやっていい気になって、ほんとは呆れられてる――掃除を職業にしている人たちの仕事を奪ってる――なんて、根性の曲がってる人。あるいは、凡人には想いも付かない理由で、サッカーを嫌いな人。

 

「殿下、これを見てください」

 そう言ってスマホを見せたのは、ほんの三十秒前「リッチ、遅いぞ!」と眉間にしわを寄せていたソフィー。

 彼女は、学校の中ではご学友モードだから、平気でタメ口をきく。校門を出たら本来のガードにスイッチが切り替わるから、扱いが180度変わって、呼び方も「殿下」ですよ。

 校門を出ると、いつも筋向いに停まっている青色ナンバーの車が見えない。

 ガードモードに切り替わったソフィーは、ただちに運転手のジョン・スミスに連絡をとる。

 すると――渋滞に巻き込まれた、5分程度遅れる模様――と連絡が入ったところ。

 ガードモードのソフィーは無駄口をきかない。

 かと言って、サングラスかけて、あちこちガンをとばすような無粋な真似もしない。こういうエマージェンシ―とも言えないイレギュラーな時は、妹のソニーがカバーに入る…………居た。いつの間にか電柱の向こう、自販機の陰で待機してる。

 で、ソフィーはスマホを見続けている。寸暇を惜しんで情報をとっているんだ。

 学食のメニュー改定の噂から天気予報や国際情勢まで。将来、ヤマセンブルグ情報局を背負って立つソフィーの関心の幅は広い。

 そのソフィーが「殿下、これを見てください」と差し出したスマホには、この二月から世界中が心配しまくっているウクライナの戦場写真が映っている。

「この女性です」

 ウクライナの兵士がなにやら相談をぶっている静止画。

 兵士たちの後ろに外国人と思われる四五人の戦闘服が居て、ズームされた女性はキャップを被っているけど、どうやらアジア人。

「この人が、なにか?」

「さくらのお母さんです」

「え…………」

「警備の必要から、殿下と付き合いの深い人たちは、全員調査してあります。さくらは、お父さんに続いて、お母さんも失踪。ちょっと力を入れてフォローしていました」

「これって……」

「あとは、車の中で」

 ソフィーの目の焦点が変わったと思ったら、通りの向こうから車が来るところだ。

 

「さくらのご両親は、日本の特務機関員です」

「え、日本に、そんなものがあるの?」

「レベル1からレベル5の特務機関員が居て、さくらの父はレベル4、母はレベル3の指導特務員です。3以上は戸籍を捨て、4以上は死亡の扱いになります」

「じゃ、お父さんの失踪宣告って……」

「レベル4になった時です」

「でも、特務機関員が、こんな易々と動画に撮られる?」

「これは、遠まわしのメッセージです」

「メッセージ?」

「はい――さくらのことをよろしく――というメッセージです。この写真はユーチューブでもインスタグラムでもありません。イギリスの情報部がヤマセンブルグの情報部に送ってきたものです」

「そうなんだ……」

「さくらは、素質的には両親の血を引いています」

「……なにが言いたいの?」

「ご両親は、さくらが小さいころから野球やサッカーなどの競技に関心を示さないように気を付けていました」

「それって?」

「はい、ご両親以上に向いているんです、諜報部員に」

「ああ…………でも、さくらって、おっちょこちょいで、お調子者で、世話好きで、涙もろくて……そういうのに向いてないと思うよ」

「日本の特務は、そういった者をリクルートするんです。むろん、任務に就くようになると、そういう心は殺します。だから、常日頃は、他国の諜報部員と変わりがありません」 

 すると、ハンドルを握ったまま、ジョン・スミスが口を挟んできた。

「しかし、最後の最後は、そういう心がモノを言うんです。日本の指導者は三流ですが、特務は超一流です」

「そうなの……」

 それ以上は、ソフィーもジョン・スミスも言わなかった。

 

 そして、百武真鈴に電話した。

 

 ワールドカップ祝勝パーティー開いたら、さくらを呼ばないわけにはいかないからね。

 今日、日本チームが成田空港に帰ってきた。

 動画を見たら、真鈴たちがキャーキャー言いながらお出迎えに参加していた。

 きっと、パーティーやってるうちに「出迎えに行こう!」と話しが大きくなったんだ。

 こういうノリは好きなんだけどね(^_^;)

 

 

☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら     この物語の主人公  聖真理愛女学院高校一年生
  • 酒井 歌       さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
  • 酒井 諦観      さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦念      さくらの伯父 諦一と詩の父
  • 酒井 諦一      さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
  • 酒井 詩(ことは)  さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
  • 酒井 美保      さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
  • 榊原 留美      さくらと同居 中一からの同級生 
  • 夕陽丘頼子      さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 聖真理愛女学院高校三年生
  • ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
  • ソニー        ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
  • 月島さやか      さくらの担任の先生
  • 古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
  • 百武真鈴(田中真央) 高校生声優の生徒会長
  • 女王陛下       頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首  

 

 

 

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せやさかい・366『スペインに勝ったぁ!!』

2022-12-02 18:39:20 | ノベル

・366

『スペインに勝ったぁ!!』さくら    

 

 

 スペインに勝ったぁ!!

 

 ……今度は分かってます。

 キャプテンドレークがスペインの無敵艦隊を打ち破ったんと違って、FIFAで、日本がスペインに勝ったんです。

「スペインに勝ったら、キャプテンドレークを超えられるねえ!」

 頼子さんが言うてました。

 さすがは、ヤマセンブルグの王女さまです。キャプテンドレークやらスペインの無敵艦隊とか、うちはよう知りませんでした。で、分からん顔してたら、アホのうちでも分かるように説明してくれたから、ドイツとの勝負に続いてスペインに勝てるんは、キャプテンドレークが無敵艦隊を打ち破ったのと同じ、それ以上に値打ちのあることを。

 これで、日本は決勝リーグに進出なんやから。

 せやけど、今度は乗り切れへん感じがして、リビングには下りません。

 前から言うてるけど、うちはスポーツは苦手、特に球技はね。

 もともと体動かすのは嫌いやないんです。走ったり鉄棒したりプールで泳いだり。

 せやけど、野球とかサッカーとかはあかんねん。

 まだ、お父さんが居てたころ、たまの休みなんかにはいっしょに遊んでくれました。

 お父さんもお母さんも、実はスポーツは好きで、走ったり鉄棒したりプールで泳いだりしてくれました。

 学校の運動会で一等とった時は、たった一回だけやったけど、知り合いのレストラン連れていってくれて祝勝会までやってくれました。

 せやけど、うちが球技をやるのは、本気では喜んでくれません。

 学校でソフトボール習ったとき、ピッチャーの頭超えて二塁ベースの向こうまで飛ばして、それが嬉しくって家に帰って、お母さんに自慢した。

「へ、へえ、それは凄いなあ!」

 一応は喜んでるみたいなんやけど、なんや、徒競走で一等とった時ほどには喜んでないんです。それどころか、目の奥には戸惑いの光があるみたいで――あ、うち、いらんことしたんかなあ(;'∀')――と、ちょっとビビったんです。

 もう一回は、お父さんが居る時、三塁打打って、ホームベースまで行けるとか思たけど、吉田さんが「さくら、ストップ!」と叫んで、うちは三塁で停まった。うちの前に二塁まで出てた加藤さんは無事にホームイン。ツーアウトやったさかい、無理してホームベースに突っ込んだらタッチされてアウトになるとこやった。

 うちは、三塁打打てただけと違って、ちゃんと全体の中でチームプレーができたことが嬉しかった。

 せやけど、家に帰って喋っても、お父さんもお母さんも急に冷めてしもて「へ、へえ、それは凄いなあ!」と、戸惑うんです。

 ほんで、そのあくる日に仕事に行ったきり、お父さんは帰ってこーへんかった。

 それから、球技は苦手。

 分かってんねん、世間の90%以上は、野球とかサッカーとか好きやねん。

 せやから、阪神が優勝したりFIFAで日本が勝ったりしたら、いっしょ喜ばならあかんのです。

 こないだ、ドイツに勝った時は、なんとか調子を合わせられたけど、今度は無理。

 もう、午前五時近いし……「ごめん、テスト勉強してるうちに寝てしもた(^_^;)」ということにしとこ。

 ほんま、ちょっとだけやけどテスト勉強できたしね。

 ああ……なんや、いらんこと言うてしもた。学校行く時間まで、ちょっと寝ます。

 

☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら     この物語の主人公  聖真理愛女学院高校一年生
  • 酒井 歌       さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
  • 酒井 諦観      さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦念      さくらの伯父 諦一と詩の父
  • 酒井 諦一      さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
  • 酒井 詩(ことは)  さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
  • 酒井 美保      さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
  • 榊原 留美      さくらと同居 中一からの同級生 
  • 夕陽丘頼子      さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 聖真理愛女学院高校三年生
  • ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
  • ソニー        ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
  • 月島さやか      さくらの担任の先生
  • 古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
  • 百武真鈴(田中真央) 高校生声優の生徒会長
  • 女王陛下       頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首  

 

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せやさかい・365『今日から十二月!』

2022-12-01 16:39:56 | ノベル

・365

『今日から十二月!』さくら    

 

 

 ちょっと早いんじゃないかい?

 

 朝ごはんを済ませた留美ちゃんが部屋に入ってくるなり批評する。

「せやかて、今日から十二月やでえ」

「ん……まあ、人それぞれだからね」

 留美ちゃんは、ようできた子ぉなんで、それ以上批評めいたことは言いません。

 昨日の天気予報で『明日の大阪は、最低気温8度、日が上がってからも、それほど気温は上がらず、最高気温は12度程度でしょう。これは大陸性高気圧が……』てなことを言うてた。

 

 せやさかい、夕べは、お風呂あがってからは留美ちゃんと二人で冬の制服をチェックした。

 

 指定のピーコート マフラー タイツ 厚手の靴下 イヤーマフ その他いろいろ

 なんせ、堺東の『ハンゼイ』までは自転車。きっちり防寒対策しとかんと寒い。

 で、うちは、朝ごはんをチャッチャと済ませて、防寒対策していたというわけ。

「じゃ、行こうか」

「え、留美ちゃんはなんにもなし?」

「マフラーは入れてるよ」

 カバンをポンと叩いて階段を降りていく。

 ミヤー

 ブタネコのダミアが布団の中から「いってらっしゃい」とも「ようやるわ」ともとれる挨拶。

「おお、もう十二月やねんなあ」

 ほっこりお茶を飲んでるお祖父ちゃんに「「行ってきまーす」」と声を掛けて、師走初日の街に自転車を走らす。

 

 しもた!

 

 自転車を走らせて三十秒で後悔した。

 ハンドルを握る手ぇがめっちゃ冷たい!

 乗った最初はひんやりして気持ちええくらいやったんやけど、角を曲がって正面から風を受けるようになって、冷たさは痛いくらいになってきた。

「まあ、ハンゼイまでの十分ほどだから(^_^;)」

 片手運転にして、息をハーハーあててるうちを慰めてくれる留美ちゃん。

 見ると、留美ちゃんは普段通りの制服姿で、手ぇだけはきっちり手袋。

 く、くそぉ……

「片方貸そうか?」

 自転車を寄せてきて、親切に言うてくれる留美ちゃん。

「え、ええよ、大丈夫。すぐに温くなってくるしい」

 と、くるしいやせ我慢。

 で、目いっぱい漕ぎまくって、いつもより三十秒は早くハンゼイの駐車場へ。

 

「あ、暑い……」

 

 手は相変わらず、痛いぐらいに冷たいねんけど、ピーコートにマフラーして、耳にはイヤーマフまでしたうちは、もうユデダコみたいになってしまいました。

 けっきょく、マフラーとイヤーマフはカバンの中に、ピーコートは手に抱えて、電車の中では邪魔になりまくり。

「まあ、仕方がないよね。初めての冬なんだもんね(^_^;)」

 留美ちゃんは慰めてくれる。この慰めが嫌味になれへんのは、やっぱり人柄やと思う。

 

 学校で話したら、頼子さんは「アハハハハ」とノドチンコむき出しで笑う。

 SSシスターズ(ソフィーとソニー)は「フ」と鼻で笑うだけ。

「でも、自分の失敗をネタに、これだけ話題と笑いをふりまけるのは才能だと思うよ」

 メグリンは的確なんか残酷なんか分からん感想。

 

 で、帰りしなの下足室。

 

「あ、ピーコートは?」

「あ!?」

 留美ちゃんに指摘されて、教室まで走って取りに戻るうちでした!

 

 スポーツ苦手の話をするはずやったんやけど、また今度ね(^_^;)。

 

 

☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら     この物語の主人公  聖真理愛女学院高校一年生
  • 酒井 歌       さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
  • 酒井 諦観      さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦念      さくらの伯父 諦一と詩の父
  • 酒井 諦一      さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
  • 酒井 詩(ことは)  さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
  • 酒井 美保      さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
  • 榊原 留美      さくらと同居 中一からの同級生 
  • 夕陽丘頼子      さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 聖真理愛女学院高校三年生
  • ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
  • ソニー        ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
  • 月島さやか      さくらの担任の先生
  • 古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
  • 百武真鈴(田中真央) 高校生声優の生徒会長
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せやさかい・364『ドイツに勝ったぁ!!』

2022-11-26 20:39:21 | ノベル

・364

『ドイツに勝ったぁ!!』さくら    

 

 

 ドイツに勝ったぁ!!

 ウワアアア!!

 

 オッサンの叫び声と窓ガラスが震えるほどの歓声で目が覚めた。

「「ふぇ?」」

 横のベッドで寝てた留美ちゃんも半ボケで目を覚ました。

 ウワアアアアアアアア!!

 今度は閉めた窓の外からも歓声。

「ええ、戦争……?」

「か、勝ったんだよ! ドイツに勝ったんだよ!」

 外の歓声で完全に覚醒した留美ちゃんは半纏を羽織って、リビングに下りて行った。

 ちょっと待ってえよ、ウクライナが戦ってるんはロシアで、ドイツやなかったはずやで。

 いや、日本でこれだけ喜んでるんやから、うちの知らん間に知らんとこで戦争やってた?

 ここんとこ文化祭の事で頭いっぱいで、全然気ぃつけへんかった!?

 今日は、家帰って、ご飯もそこそこ、お風呂入って寝てしもたさかい……うちも半纏を羽織ってリビングへ。

 ニャア

 ダミアがリビングの興奮ぶりに恐れをなして、階段の上まで逃げてきてる。

 子ネコの頃やったら「おーよしよし」って抱っこしたんねんけど、10キロ超えのブタネコは放っとく。

 リビングに足を踏み込むと、アホのうちでも分かった。

 なんかの試合に勝ったんや。

 アナウンサーとコメンテーターが興奮組に「奇跡の勝利!」「大金星!」とか言うてて、会場の歓声が怒涛の波音みたいに木霊してる。

「さくら、勝ったよ! 日本勝った!」

 詩ちゃんがパジャマにカーディガンで抱き付いてくる。ついさっきまで、うちといっしょに寝ぼけてた留美ちゃんはソファーでおばちゃんと手ぇとりあってるし、テイ兄ちゃんはおっちゃんとジョッキ片手にできあがってる。お祖父ちゃんまでワンカップの蓋あけながら、もう目つきがおかしい。

「ほら、さくらも、こっちおいで!」

「え、あ、うん……お祖父ちゃん、酒臭い~(^_^;)」

「ほら、感動の瞬間! リプレイやぞぉ」

 浅野おおおおおお スーパーゴーーーーーール!! ウオオオオオオ!!

「うわあ!」「キャー!」「かっこいい!」「惚れるううう!」「ニャアア!」

 みんなすごい興奮で、繰り返されるゴールの瞬間に痺れまくり。

 うちもお祭り騒ぎは好きやから、いっしょに「うわああ!」とかやりたいんやけど、ちょっと乗り損ねる。

 留美ちゃんも文化祭で疲れてるはずやねんけど、もう、お目々ギンギラギン。

 

 文化祭の代休を挟んだ昨日の学校でも、みんなサッカーの話があちこちでやってて、授業に来る先生らも最初にもサッカーの話をしてて、保健の長瀬先生なんか半分サッカーの話で潰してしもた。

 お目出度いのは分かるねんけど、うちは、もう一つ入っていかれへん。

「むう、なんか共産党の議員みたいだぞ」

 頼子先輩にも意地悪を言われる。

「頼子さん、もしさ、ホットドッグ早食い世界大会があって、日本人が優勝しても、そんな風にホットになれます?」

「え、なにそれ?」

「金魚すくい世界大会とか」

「うん?」

「ハナクソ飛ばし世界一とか」

「さくらぁ、ちょっと変」

「あ、いやいや、すんません。で、なんで共産党さんがでてくるんですか?」

「ネットでいいからニュースぐらい見なさいよね」

 そう言いながら、頼子さんはスマホでニュースを見せてくれます。

―― 日本勝っちゃうしで、残念 ――というツイート。

 スクロールすると、日本人ならみんな喜ばなければならないのはおかしい的な話もあってビックリ。

「まあ、あとで謝ったり訂正したりしてるんだけどね」

「あ、うちは、そんなんとはちゃいますから」

「ああ、ごめんごめん。これ見た後だったから、ちょっと重なっちゃった」

「うちて、サッカーだけちごて、スポーツ一般苦手っちゅうか……」

 言葉を濁してると、頼子さんは椅子を回して向き合ってくれる。

「いや、そんな大層なことちゃいますねんけど」

 なんかシビアになりそうと思てると、ソフィーが呼びに来て中断。

 ああ、話が横っちょいきそう。

 続きは、また今度ね(^_^;)

 

☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら     この物語の主人公  聖真理愛女学院高校一年生
  • 酒井 歌       さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
  • 酒井 諦観      さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦念      さくらの伯父 諦一と詩の父
  • 酒井 諦一      さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
  • 酒井 詩(ことは)  さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
  • 酒井 美保      さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
  • 榊原 留美      さくらと同居 中一からの同級生 
  • 夕陽丘頼子      さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 聖真理愛女学院高校三年生
  • ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
  • ソニー        ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
  • 月島さやか      さくらの担任の先生
  • 古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
  • 百武真鈴(田中真央) 高校生声優の生徒会長
  • 女王陛下       頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首  

 

 

 

 

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せやさかい・363『文化祭本番です!』

2022-11-24 16:20:38 | ノベル

・363

『文化祭本番です!』さくら    

 

 

 昼行燈(ひるあんどん)いう言葉があるやんか。

 

 ボンヤリっちゅうか、ボーっとしてるやつを指して言う言葉で、あんまりええ言葉やない。

「まあ、あの人すてきね! まるで昼行燈みたいに優しそう!」「そのセーター、淡い色合いがステキ! まるで昼行燈!」「このお弁当、昼行燈みたいに優しいお味ねえ!」とか言うて褒めたとしたら、アホかと思われる、場合によっては張り倒される。

 例外は、吉良上野介を討ち取るまでの大石内蔵助。色町で遊びまくったりしてて昼行燈みたいやと言われてて、あれでは討ち入りなんて企んでるはずないと世間を欺いた。

 そういう昼行燈みたいなもんやと思て期待はしてなかった。

 なにかっちゅうと、花火です。

 三年ぶりに行われる聖真理愛学院の大文化祭!

 ほとんどの取り組みが三年生中心、一二年生はサポートとかアシスタントにまわります。

 屋台とかの飲食店の大半は中庭のフードコートにまとめてある。入り口のとこに各店共通の食券売り場があって、各店舗で買ったもんは、どこで食べてもええねんけど、中庭のあちこちに特設のベンチとテーブルが設置されてて、半分以上のお客さんは中庭で食べます。

 中庭の花とか植栽は園芸部と総合授業で園芸をとってる子ぉらで、あちこちに油絵やイラストや彫刻の展示、むろん美術部、漫研の作品。

 中庭の中央には十二畳ほどの特設ステージ。ここでは、音楽部、軽音、筝曲なんかがBG的に演奏。あくまでBGなんで、エレキなんかはありません。

 グラウンドには、それよりも大きな野外ステージ。

 軽音、ブラバン、有志参加のバンドなんかの音の大きい出し物をやってます。

 むろん、体育館やら本館の教室では普通にクラスやらクラブの取り組みも。

 そのいちいちを説明したいねんけど、やっぱり『サクラウメ大戦』です。全部で四チームで四回の公演を体育館の出し物として上演したあと、昼の一番にピロティー前の野外公演。

 頼子先輩の園城寺ゆき、百武真鈴の長船さくら。

 なんちゅうても、百武真鈴は高校生声優で『恋するマネキン』で一躍人気声優のベストスリー入りした期待の新人、いや、中学三年でデビューしてるから、もう中堅、いや、ベテランの貫録。

 頼子先輩も『恋するマネキン』の最後四回は声優として参加(285『「恋するマネキン」を観る』)、この夏には正式にヤマセンブルグ公国の王女になったし、話題性も充分。

 わずか十分ちょっとの芝居やけど、半分近くは園城寺ゆきの「やさぐれ白梅隊」と長船さくらの「はみだし八重桜隊」の戦闘シーン! 双方にソフィーとソニーという現役の諜報部員兼シークレットサービスが入ってて迫力満点!

 そして『サクラウメ大戦』が終わったあとは、そのまま、ブラバンを先頭に参加者全員と希望者がハローウィンの仮装衣装を着てパレード!

 むろん事前に警察への届け出も怠りなく、校門前と駅前には地元警察のお巡りさんが出動してくれてます。

 

 ドーーーーン パチパチパチ ドーーーーン パチパチパチ ドーーーーン パチパチパチ

 

「昼行燈って、花火のことだったんだね!」

 メグリンが、空を見上げて感心。うちらも行進しながら空を見上げる。

「少しは前向いた方がいいよ(^_^;)」

 留美ちゃんのチェックが入る。

「せやかて、こんなんやと思わへんかったし……」

「昼間の花火って、煙と音だけになるかと思ってた……」

 その名も真鈴スペシャルという花火は、空中で破裂すると、一発当たり十個ぐらいの落下傘と無数のスパンコールをまき散らす。

 全部で百個ぐらいの落下傘がキラキラ光るスパンコールの中をユラユラと落ちてくるのは、ディズニーランドのパレードかっちゅうくらいのもんで、ほんまにスゴイ!

「キャ!」

 留美ちゃんがけ躓いて、メグリンが受け止める。

「ごめん、わたしも見入っちゃった(^o^;)……でも、あとの掃除大変そう……」

「苦労性だね留美ちゃんは(^_^;)」

「あ、ほら見てみぃ!」

 PTAのお母ちゃんらと先生、それに、学校に残った生徒らで掃除にかかってる。

「あれも、真鈴先輩が手配しておいたんだろうね」

「すごい人だね、頼子先輩も真鈴先輩も」

『こら、さくら隊、遅れてるぞ!』

 骨伝導イヤホンから真鈴先輩の声。

「「「は、はひ!」」」

 グループに一個づつ渡された時は、こんなもんいらんやろと思たんやけど、いやはや……。

「最初で最後の文化祭だから自由にさせてくれって言ってたけど」

「やっぱ、キチンとしてるよね先輩たち」

『ヘックチ!』

 イヤホンを通して、どっちの先輩かわからないクシャミが聞こえてきた。

 

☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら     この物語の主人公  聖真理愛女学院高校一年生
  • 酒井 歌       さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
  • 酒井 諦観      さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦念      さくらの伯父 諦一と詩の父
  • 酒井 諦一      さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
  • 酒井 詩(ことは)  さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
  • 酒井 美保      さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
  • 榊原 留美      さくらと同居 中一からの同級生 
  • 夕陽丘頼子      さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 聖真理愛女学院高校三年生
  • ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
  • ソニー        ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
  • 月島さやか      さくらの担任の先生
  • 古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
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せやさかい・362『文化祭は明日になりました』

2022-11-23 11:22:46 | ノベル

・362

『文化祭は明日になりました』さくら    

 

 

 今日は朝から文化祭!

 

 ……のハズやったんやけど、平常通りの水曜日の授業です。

 なんでかっちゅうと、この雨ですわ。

 週間予報で、今日の勤労感謝の日ぃだけが高確率で雨やいうのは、先週の土曜日には分かってた。

 先週の土曜と言うと、マスコミまで呼んで、華々しく公開リハーサルをやった日。

 陣頭指揮と演出でメッチャ忙しいはずの前生徒会長の百武真鈴(本名の田中真央よりも通りがええ)は、それを見越して秘密裏に学校と交渉してたんやて!

「晴れていなければ企画は失敗です! 23日は90%の確率で雨になります、どうか24日に変更してください!」

 校長、理事長、組合の分会長、PTA会長、同窓会長、生徒会顧問、三年生学年主任、学食のオーナーなんかに働きかけてた。

 なんせ、三年生には最初で最後の文化祭、これがポシャッタら、留年してもっかい三年生をやらならあかん。

 で、20日の月曜日には24日への延長が決まって、予測通りに雨が降ってるというわけです。

 

「ちょっとぉ、いちおう授業なんだよ、みんな!」

 

 ペコちゃんが、バサリと教科書を教卓に叩きつけてキレた。

「午後からは、完全に文化祭準備できるんだから、集中しなさい!」

 ペコちゃんいうのは愛称で、本名は月島さやか。担任で現社の先生。

 愛称の通り、笑うとペコちゃんそっくり。

 明日の本番に向けて、いろいろ細かい作業やらやり残しがあるんですわ。衣装のフリフリつけたり、チラシを用意したり、食券を束にしてホッチキスで止めたり、ダンスのフリを確認したり。

 クラスの半分くらいが、そういうのんを机の下やら教科書で隠したりしながらやってる。

 ガサゴソガサゴソ……

 お嬢様学校やさかい、一応は片づけるんやけど、ぜんぜん授業には身ぃ入らへん。

 ペコちゃんいうのんは、笑顔の神さまみたいなもんやと思う。

 えべっさん(戎さん)、大黒さん、ビリケンさん、ドラえもん……デフォルトが笑顔のキャラはいっぱいあるけど、ペコちゃんは独特やと思う。

 ペコちゃんは、AMAZONのトレードマークみたいな口して、チョロッと舌出した笑顔。

 他のキャラは、もっと派手に笑ってるけど、目ぇはかまぼこ型かXになってる。

 笑顔やけど、目ぇ開いてるのはペコちゃんの特徴。

「月島先生って、元々は神社の巫女さんでしょ。笑顔は、職業的に顔に刻まれたもので、実は違うんだと思う」

 留美ちゃんが言うたことがある。

「よく観るとね、月島先生、目だけは笑ってないことが多い。先生がほんとうに怒ったらどういう顔になるんだろうね」

 そんなことを寝物語に言うたこともある。

「大魔神て古い映画があるじゃない。大映だったと思うんだけど、穏やかな埴輪の顔してるのが、いったんキレると、悪魔みたいな憤怒の顔になるんだよね……あんな感じ」

「そうなん? ちょっとググってみよ……」

 で、初めて大魔神の変身を見てビビってしもた。

「こんなのもあるよ……」

 留美ちゃんは、他にも美女が般若になったりとか、メロスが激怒した時の顔とか、怖い変身をいっぱいググって見せてくれて。

 最後にペコちゃんが激怒した顔……それは留美ちゃんがペンタブで描いたイラストやったけど、メッチャ怖い。

 で、あたしは率先してノートを開いて恭順の姿勢。

 すると、あたしの周囲から、徐々に授業の態勢になって、なんとか事なきを得る。

 

 やっぱりペコちゃん大明神の威力はすごい(^_^;)

 

「ちがうよ」

 四限が終わって、みんなで学食へ。列に並ぼうとしたら留美ちゃんが顔を寄せてくる。

「え、なんで?」

「それだけさくらの影響力も大きいということだよ」

「ええ、ないない(^_^;)」

 ハタハタハタ

 手にしたトレーを団扇みたいに振る。

 うんうん。

 留美ちゃんの後ろでメグリンが、変身前の大魔神みたいな顔で神妙に頷いておりました。

 ソニーは我関せずと、早々とランチをゲットしてテーブルに着いて、明日は、いよいよホンマの本番です。

 

☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら     この物語の主人公  聖真理愛女学院高校一年生
  • 酒井 歌       さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
  • 酒井 諦観      さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦念      さくらの伯父 諦一と詩の父
  • 酒井 諦一      さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
  • 酒井 詩(ことは)  さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
  • 酒井 美保      さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
  • 榊原 留美      さくらと同居 中一からの同級生 
  • 夕陽丘頼子      さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 聖真理愛女学院高校三年生
  • ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
  • ソニー        ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
  • 月島さやか      さくらの担任の先生
  • 古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
  • 百武真鈴(田中真央) 高校生声優の生徒会長
  • 女王陛下       頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首  
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せやさかい・361『盛り上がる公開リハーサル』

2022-11-19 09:44:03 | ノベル

・361

『盛り上がる公開リハーサル』頼子    

 

 

 セイ! トアッ! ハアッ! ハッ! ノアアア!

 ゲシ! ドガ! シュィン! ビシ! バシ! ドゲシ!

 ハアッ! ハッ! ノアアア! セイ! トアッ!

 ドガガガ! ズッゴオオオオオン!

 

 裂ぱくの掛け声とサウンドフェクトがピロティー前の広場に木霊して、満場の生徒や教職員、テレビ局や卒業生やご近所の方々、果ては交通整理の警備員さん、マスコミ関係、一部某国の諜報部員たちが固唾を呑んで『サクラ・ウメ大戦』の練習を見守る。

「オッケーー!」

 メガホンを通しても損なわれないアニメ声が本番を五日後に控えた文化祭の雰囲気を盛り上げる。

「うん、やっぱ、ソフィーとソニーのアクションはピカイチだわ。取り巻きは見とれてりゃいいからね、下手に動くとケガするからね。ただ、ただ、いい? みんな『白梅隊』と『八重桜隊』の敵味方同士なんだから、自分の隊長を応援してね。両方声援したくなる気持ちは隊長二人が和解したあと。いいね!」

 ハーーーーイ!!

「じゃ、五分休憩して、ラストいきまーす! 休憩!」

 緊張がほぐれて、静かなどよめきが起こる。

 なんだか黒澤明の撮影現場みたい(見たことないけど)

 

 ソニーが短期留学で入ってきて『サクラ・ウメ大戦』のボルテージはさらに上がった。

 

 百武真鈴のアイデアで、わたしのチームはピロティー前の広場での公演が二回追加された。

 ソフィーとソニーのアクションは体育館のステージでは収まり切れない。

 ステージ用にアレンジしたらと先生たちは言うけど「それではもったいないです!」ということで急きょ決定。

 今日のリハーサルは大っぴらな宣伝こそはしないけど、SNSで情報は流してあるので、ご近所やファンの人たちにテレビ局までやってきた。

 一時は開催まで危ぶまれた文化祭だけど、ちょっと期待が持てる。

 わたしたち三年生は、最初で最後の文化祭だからね。

「C国、K国、R国のエージェントが入っていた」

「アメリカとイギリスも」

 ソフィーとソニーが囁く。

「あ、あ、そう……まあ、もめ事だけは起こさないでね(^_^;)」

「「相手の出方次第」」

「こ、声揃えなくても……」

 ソニーが派遣されたのは文化祭のためでも、本人が留学を熱望していたためでもない。

 正式にヤマセンブルグの王女になったので、警備のためなんだ。

 近ごろの世界情勢、安倍さん暗殺で露呈した日本の危うさを鑑みると、今までの警備では不安……というお婆ちゃんの気持ちが反映されている。まさに老婆心。『今の日本は頼りない』というヤマセンブルグ、ひいてはEUのメッセージが籠められている。

 

「次の登場なんだけど」「ちょっと変えてみたいんだけど」

 

 一回目のリハを終えたあと、二人は百武真鈴に申し入れた。

「え、また?」

 二人はリハをやる度にアクションに変更を加えている。

「今度はね……」

 意地悪なソフィーは、わたしには言わない。

「だって、リッチ(ご学友モードの時のわたしの呼ばれ方)は表情に出るから」

「さくらたちにもすぐバレるし」

 うう、容赦がない。

「まあ、ひとにケガさせないようにね」

「「もちろん!」」

 

 で、最終リハでは、本館と図書館の屋上から飛び降りて登場した!

 それも、盛大にジャンプして、着地したのは門の外!

 ウワアアア!

 盛大な歓声と拍手をもらってから、軽々と塀を飛び越えて入って来る。

「ちょっと、やり過ぎ」

 やり過ぎを注意したら、シレっと、こう言った。

「日本の公安がダレてたんで……」

「……ちょっとカツを入れてきました」

 

 ああ、やれやれ……

 

☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら     この物語の主人公  聖真理愛女学院高校一年生
  • 酒井 歌       さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
  • 酒井 諦観      さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦念      さくらの伯父 諦一と詩の父
  • 酒井 諦一      さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
  • 酒井 詩(ことは)  さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
  • 酒井 美保      さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
  • 榊原 留美      さくらと同居 中一からの同級生 
  • 夕陽丘頼子      さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 聖真理愛女学院高校三年生
  • ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
  • ソニー        ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
  • 月島さやか      さくらの担任の先生
  • 古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
  • 百武真鈴(田中真央) 高校生声優の生徒会長
  • 女王陛下       頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首 

 

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せやさかい・360『皆既月食と呪文』

2022-11-10 15:35:48 | ノベル

・360

『皆既月食と呪文』さくら    

 

 

 ペコちゃんがすべった。

 

 と言っても、なにかの試験に落ちたわけやないし、バナナの皮を踏んだわけでもない。

 ベテランの芸人さんが、ここ一発のギャグをとばして反応が薄かった。こういうのを「スベった!」って言うでしょ?

 その「スベった!」ですわ。

 

「昨日の皆既月食はすごかったよねえ(^▽^)/」

 

 授業の冒頭でかましたんやけど、「あ、ああ……」いう反応がチラホラ。あとは「え、それなに?」という反応。

「あ、いや、だから昨日は皆既月食だったでしょうが」

 言いながら、黒板に『皆既月食』と大きく書いた。

―― え、みんなで月を食べる? ――

 そういうスカタンもちらほら。

 なんちゅうか、それがどないしたいう感じ。

「ほら、太陽と地球と月が一直線に並んで、月が地球の陰に入って見えなくなることを言うんだよ!」

 教師の性やろね、ペコちゃんは黒板に図を描いて、皆既月食の仕組みを説明。

―― ああ、なるほど ――

 という空気にはなるねんけど、もう一つ感動が薄い。

 たぶん、みんなテレビ見いひんし、新聞も読まへんからやと思う。

 それに日食やったら、夜みたいに暗くなるけど、月食は、わざわざ空見てなら分からへんしね。

「昔はね、月食を見てしまったら死んでしまうとか運が悪くなるとか言って嫌われたんだよ。天皇さんなんか、月食の日は、月が出てくる前から籠ったりして、大変だったんだよ」

 うんうん、なるほど……

 やっぱり反応が薄い。

「えと、英語では……」

「total lunar eclipse(トータル ルナ― エクリプス)です」

 ソニーが答える。

「そうそう、そうだよね。ヤマセンブルグとかじゃ言い伝えとかあるのかなあ」

「はい、ヨーロッパでも月食は不吉なものだとされていましたね。王さまの力が弱まるとされて、月食の日は、一日べつの人間を王さまとして立て、本物の王さまは一般人の格好をして隠れたりしました。月食が終わったら出てくるんですけどね」

「え、影武者?」

 聞いたのはあたし。

「影武者はどうなるの?」

 メグリンが聞く。

 他の子ぉらは――それでそれでぇ?――いう子らと、悪い答え(殺されるとか)を予感して眉を顰めたりしてる。

「居なくなります」

 え?

 ちょっと斜め下の答えやったんで、みんなは俄然興味を持つ。

「居なくなるとは?」

「居なくなるんです」

「せやから、どう居なくなるのん?」

「それは聞いてはいけないんです。災いが起こります……」

 ちょっと、シンとしてきた。

 ソニーは――ちょっとまずかったか――いう顔をして、話を続けた。

「他にも、皆既月食の日に呪いをかけるとよく効くと言われています」

「ええ、呪いって、どんなん!?」

「両手をこんな風にして……ヘックマリオッサ! エイ!」

 ちょっと雰囲気。

「しまった、ほんとにかけてしまった! みんな、ドアと窓を開けて! 呪いを逃がすから!」

 ヒエ!

 あたしが腰を浮かすと、他のみんなにも伝染って、いっせいにドアと窓を開ける。

 ガラガラガラ!

「サッオリマクッヘ! サッオリマクッヘ! サッオリマクッヘ!」

 腕を大きく払うような仕草をしながら呪文を唱えるソニー!

 大きく目を見開いたかと思うと、すぐに目を細めて、低く呪文を唱え続け、教室はシーーンと静まり返ってしまう。

「……と、まあ、こんな感じですね。雰囲気楽しんでいただけたら幸いです(^▽^)/」

 パチパチパチ!

 率先して拍手。みんなもそれにつられて拍手して、やっと平常の授業になった。

 

 ほんまは、ソフィーとソニーがもう一チーム作って文化祭の劇をする話をしたかったんやけど、それは次にね。

 

「いやあ、さっきの魔法は真に迫ってたねぇ!」

 帰りの昇降口でソニーを褒めたたえると、階段を怖い顔してソフィーが下りてきた。

 で、なんやら英語で言い合いしたあと、二人で魔法の杖を持って走って行った。

「取りこぼしの魔法があるみたいよ……」

 頼子先輩が渋い顔をして立っておりました(^_^;)

 

☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら     この物語の主人公  聖真理愛女学院高校一年生
  • 酒井 歌       さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
  • 酒井 諦観      さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦念      さくらの伯父 諦一と詩の父
  • 酒井 諦一      さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
  • 酒井 詩(ことは)  さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
  • 酒井 美保      さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
  • 榊原 留美      さくらと同居 中一からの同級生 
  • 夕陽丘頼子      さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 聖真理愛女学院高校三年生
  • ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
  • ソニー        ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
  • 月島さやか      さくらの担任の先生
  • 古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
  • 百武真鈴(田中真央) 高校生声優の生徒会長
  • 女王陛下       頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首 

 

 

 

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せやさかい・359『短期留学生来たる!』

2022-11-01 15:28:30 | ノベル

・359

短期留学生来たる!さくら    

 

 

 今日から短期留学生が入ります。

 

 お早うの挨拶どころか、中学を合わせても三年間(中学は二年生からやったから)一回も忘れたことのない起立・礼をやらせることも忘れて、教壇につくやいなやペコちゃんは切り出した。

 ええ……?

 ビックリした後に「……?」の間が空いたのは、そういうペコちゃんらしからぬ、まるでコマ落ちしたみたいな様子のせい。

「入ってちょうだい」

 廊下に向かって声をかけ、一礼して入ってきた短期留学生を見て心臓が止まるかと思た。

「「ソニー(°д°)!?」」「……(゜艸゜)!?」

 うちとメグリンはあからさまに、留美ちゃんは口に手を当て息を呑んでビックリした!

「ソニア・ヒギンズさんです。ヤマセンブルグからの短期留学生で、二学期いっぱいいっしょに勉強します。ソニア、ご挨拶を」

「はい。ソニア・ヒギンズと言います、友だちや家族からはソニーと呼ばれていますので、ソニーと呼んでいただければ幸いです。三年生に似たようなのが居ますが、あっちはソフィア・ヒギンズで姉になります。日本は大好きで、以前から留学できたらいいなぁと思っていました。やっと、念願かなって聖真理愛学院に入ることができました。年内いっぱいの短いお付き合いですが、よろしくお願いいたします<(_ _)>」

 完ぺきできれいな日本語に圧倒されて、拍手は、ソニーが顔を上げてから起こった。

 パチパチパチパチパチパチ

 席は、どこやろかと思ったら、いつの間にか廊下側の一番後ろに机が置かれてて、そこに収まった。

 

 みなさんは憶えてます、ソニーのこと?

 

 この夏にエディンバラとヤマセンブルグに行ったでしょ、その時エディンバラの宮殿で、うちらのこと出迎えてくれたソフィーの妹。ソフィーを微妙に小さくした感じ。ちょっと子どもっぽいけど、れっきとしたイギリス軍の伍長さん。

 ヤマセンブルグ人やけど国籍はイギリス。

 現役の伍長さんやから、うちらと同じ16歳いうことはないと思うんやけど、ソフィー同様、そのへんのとこは、よう分かりません。

 

「けど、なんでソニーの席、廊下側の一番後ろやのん?」

 休み時間になったんで聞いてみた。

 

「うん、ほんとうは窓側の後ろを希望したんだけどね……」

「どっちにしろ、いちばん端っこだよね」

 留美ちゃんも不思議に思って、その後ろでメグリンも首をかしげてる。

「うん、緊急事態にいちばん早く対応できる席だからね」

「「「緊急事態?」」」

「実はね……」

 旅行中の時とは違って、まるで昔からの友だちみたいにフランクに話してくれる。

「プリンセスのガードのために、急きょ派遣されてきたのですよ、ソニーは」

 ええ?

 頼子さんのガードやったら、すでにソフィーが居てるし、領事館にはジョン・スミスかて居てる。

 それを、なんで急に?

「ほら、文化祭で盛り上がりそうでしょ、駅前までのパレードとかもやるみたいだし」

 え、それ決まったん、つい昨日のことやんか。

「あんたたちね、百武真鈴のこと甘く見てるわよ」

「え?」

「真鈴先輩が?」

「あの人が、思い付きでやってると思う?」

「え、違うんですか?」

 メグリンが乗り出してきた。

「あ、悪意があっての事じゃないわよ。こんどの文化祭は盛り上げようと前々から企んでいたのよ、あのマルチタレントは」

「そうだったんですか……」

「すごい……」

 たしかにスゴイ。真鈴さんも、その情報を地球の裏側のヤマセンブルグで、掴んでたソニーも。

「ハローウィンじゃ、いろいろと事故もあったでしょ……ソフィー一人じゃ対応しきれない事態が起こるかも……って、お偉い人たちは考えるわけですよ」

「そうなんや……」

「でも、わたし的にはラッキーなのよ。日本に行けるのは早くて来年だと思っていたから。ま、とりあえず、よろしくね」

「でも」

「なに、メグリン?」

「廊下側が緊急事態に対応しやすいのは分かるんだけど、どうして最初の希望が窓際なの?」

「そりゃあ、学校のどこに行くのも窓から飛び降りるのが一番早いでしょ?」

「「「飛び降りる!?」」」

「うん」

 せや、こいつの身体能力は忍者並やった(^_^;)

 アハハハハハ(^O^)

 とりあえず、四人で笑って締めくくった。

 

 

☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら     この物語の主人公  聖真理愛女学院高校一年生
  • 酒井 歌       さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
  • 酒井 諦観      さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦念      さくらの伯父 諦一と詩の父
  • 酒井 諦一      さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
  • 酒井 詩(ことは)  さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
  • 酒井 美保      さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
  • 榊原 留美      さくらと同居 中一からの同級生 
  • 夕陽丘頼子      さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 聖真理愛女学院高校三年生
  • ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
  • ソニー        ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
  • 月島さやか      さくらの担任の先生
  • 古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
  • 百武真鈴(田中真央) 高校生声優の生徒会長
  • 女王陛下       頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首 

 

 

 

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せやさかい・358『百武真鈴 改訂版を書く・3』

2022-10-31 17:03:30 | ノベル

・358

百武真鈴 改訂版を書く・3さくら    

 

 

 

サクラ・ウメ大戦

3『オッケー!』

 

作・大橋むつお  脚色・百武真鈴

時 ある日ある時
所 桜梅公園

人物 

(やさぐれ白梅隊)   (はみだし八重桜隊)

ゆき(園城寺ゆき)    さくら(長船さくら)  (ITVスタッフ)
咲江           百江           リポーター
ルミ           純子           カメラ
春奈           ねね           音声
千恵           やや

その他いっぱいいれば なお良し(^▽^)/ 

 

 カメラ、ゆきとさくらの鍔のアップからひいて、舞台を上手から下手へ、ゆっくりなめる。(平行移動しながら撮る)、舞台が狭い時は、カメラ、音声共に舞台下に降りて撮っても良し。しかし、ここ一番撮ってますっていうカメラマンの気迫は示してほしい。カメラ下手まで周りきったところで、リポーターのOKサイン。

 

リポーター: オッケー!

カメラ: よかった、バッテリーちょうどいっぱいでした(^_^;)。

やや: 残り一分も無かったよ……

カメラ: アップとロングくりかえすと、早くあがっちゃうんですよバッテリー。

やや: そうなんだ。

さくら: みんなありがとう。

ゆき: ギャラは出ないけど(^_^;)

リポーター: 図書カードあげるわ、人数分、カメラさん、くばってあげて、

一同: ワーイ!

 
 図書カードが配られている間、レポーター、爪をかんで考えていたが……アイデアが浮かんで手を叩く。


リポーター: 音声さんはまだバッテリーいけたわよね!?

音声: はい、こっちは大丈夫です。

リポーター: みんなね、絵は撮れないけど、音声が生きてるの。あの婆ちゃん(なるべく古く、でも観客のみんながのりそうな歌、例「青い山脈」「上を向いて歩こう」等々)の歌が好きだから、どうだろ、大先輩のために、アカペラだけど歌ってもらえるかなあ、番組のBGMに使いたいの、お婆ちゃん、きっとよろこぶよ!

 
「わたし知ってる!」「賛成賛成!」「やろうやろう!」「全部は知らない」「知ってるところだけでいいよ」「アアアアアー(発声練習)」などなどあって……

 
レポーター: じゃいきます……オオ!?(カラオケが鳴り出す、文化祭などなら、カラオケという設定でピアノなどの生演奏の方がいい)

音声: スマホ繋いでカラオケ流してます!

リポーター: さすがITV(田舎テレビ)の音声さん! さあ、観客のみなさんもごいっしょに! せえの!……

 
 舞台全員、そして観客席もまきこんだ大合唱になる。

 のり方によっては曲を丸々フルコーラスでやっても良し!

 幕。

 

 

 ラストの、この部分を真鈴さんは十分ほどで書き上げた!

 生徒会の文化委員長がブースに控えていて、ちょうどのタイミングで『恋するマネキン』のテーマを流すと、期せずして視聴覚室に居たみんなで大合唱!

 なんや『サクラ・ウメ大戦』のスピリットがみんなに乗り移ったみたいで、まだ台本ができたばっかりやのに、もうできあがってしまったみたいにノリノリになってきた。

 

「ちょっと、いいですか、真鈴さん」

 

 フルコーラス歌って大拍手になったとこで、留美ちゃんが手を挙げた。

「はい、なんだろ、榊原さん?」

 瞬間で真面目な顔になって応える真鈴さん。

 留美ちゃんの声で真面目な質問やいうことを読み取ってるんや。

「昨日今日で、ザっとコスプレグッズを見たんですけど、女子高の制服めいたのは人数分は揃えられません」

 留美ちゃんもさすが、昨日と今日で山のようなコスプレグッズ(ハローウィンの置き土産)をチェックしたんや。

「あ……ああ、なるほどね」

 そう言うと、パソコンの画面をスクロールして十秒で対策を考えた!

 視聴覚室のみんなが息を呑む。

「よし、ハローウィングッズのままでもやれるだろ! でも、なにか……そう、色とか形とか、ジャンルとかで白梅と八重桜の特徴は出そう。それでいけるよ! あ……そうだ!」

 真鈴さんは、さらに、なにか思いついた!

「お芝居そのものは十分ちょっとで終わっちゃう。三班でやるとしても三十分。ちょっともったいないから、コスのまんまパレードしよう!」

「それいい!」「ブラバンにも入ってもらおう!」「ダンス部も!」「カラーガードとかも!」

 話は、瞬間でグレードアップした!

「よし! これは先生たちや地元とも協議しなきゃだけど、いっそ駅前までパレードしようぜ!」

「「「「「「「「オオ!」」」」」」」」

 

 たった三日で、文化祭のメインイベントができあがってしもた!

 

☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら     この物語の主人公  聖真理愛女学院高校一年生
  • 酒井 歌       さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
  • 酒井 諦観      さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦念      さくらの伯父 諦一と詩の父
  • 酒井 諦一      さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
  • 酒井 詩(ことは)  さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
  • 酒井 美保      さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
  • 榊原 留美      さくらと同居 中一からの同級生 
  • 夕陽丘頼子      さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 聖真理愛女学院高校三年生
  • ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
  • ソニー        ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
  • 月島さやか      さくらの担任の先生
  • 古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
  • 百武真鈴(田中真央) 高校生声優の生徒会長
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