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大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!33『取りあえず目覚めた白雪姫』

2024-10-17 07:53:01 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
33『取りあえず目覚めた白雪姫』 




「見ろ、白雪の寝顔」

「え……どうかした?」

「鬼になりかけてやがる……」

「鬼に……?」

「体は動かねえけど、ある程度のことは分かってやがるんだ」

「白雪さ~ん!」

「やっぱり……」

「なにか、変化があったの?」

「マユの目は、高速度カメラ並なんだ。百万秒の一秒の変化でも分かる。今、白雪は百万分の二秒目を開いた。とても悲しそうな顔でな……なあ、もう日は落ちたか?」

「うん。お日さまはまだ名残惜しげに西の空を染めているけど、東の空は、もうお月さまが、宵の明星を従えて現れてるわ」

 レミが東の空を指差した。

 マユは、念のため二十メートルほどジャンプして、西の山にお日さまが居ないことを確認したぞ。

「すごい。マユ、それだけジャンプできたら、オリンピックで金メダルだわよ!」

「人間だったらな。あいにくの小悪魔。オリンピックには出られねえけど、今から白雪さんに魔法をかけるぞ」

「え、どんな魔法!?」

「黙って。神経を集中させなきゃできねえんだから!」

「あ、ごめん」

「エロイムエッサイム……エロイムエッサイム……」


 白雪姫の胸のあたりに手をかざして、とびきりの呪文を唱えたぜ。

 そして数十秒たった……。


「ああ、もう、やってらんないわ(ꐦ°᷄д°᷅) !!」

 可愛い寝顔を、まるで九回の裏、ゲッツーをとられ敗北した阪神タイガースの試合を観ていたオバハンみてえな顔に変えて、白雪は目覚めやがった!

「し、白雪さん( ゚Д゚)!」

「あのクソ王子! いいかげんにしろよおおおお٩(๑`▢´๑)۶ !!」

「あ……ああ……」

「なぁ、だから言ったろ、鬼になりかけてるって……」

「あ、あんたか、わたしを自由にしてくれたの。とりあえずありがとう……」

 簡単にお礼を言うと、白雪は棺から飛び出やがった。

「待て! その魔法は五分間しか効き目がねえぞ!」

「「え……?」」

 レミと白雪が同時に声をあげた。

「マユは小悪魔だから効き目が薄いんだ。でもよ、白雪は王子にじらされて、このままじゃ鬼になっちまう。だからよ、取りあえず五分間だけでも目覚めさせたんだ」

「え、小悪魔あ? 魔法少女じゃないの?『月に代わってお仕置きよ!』とか決めて、サクサク解決してくれるんじゃないの!?」

「なんだ、文句あんのか!?」

「あ……いえ……ごめんなさい。そしてありがとう……たとえ五分間でも起きることができて。レミもありがとう。毎日心配して見にきてくれてたんだよね。わたし、身動き一つできなかったけど。まわりのことは全て分かっていたのよ」

「毒リンゴを食べてから、ずっと?」

「ええ、継母のお后が、リンゴ売りのお婆さんから元の姿に戻ったときは『このクソババア!』と思ったけど。その直ぐ後の悲しそうな目は忘れられない」

「え、あのお后が、悲しそうな顔!?」

「うん、わたしも意外だったけど、継母は、わたしのことを憎んでなんかいなかった」

「だって、いつも鏡を見ては『世界で一番きれいな女はだーれ?』って、やってたんじゃないの?」

「違うの。本当は『世界で一番、この国を治めるのに相応しいのはだーれ?』ってやってらっしゃった」

「話がちがうぜ……」

「自分の考えも、鏡の答えもいっしょだった。でも、国民の多くは、わたしが女王になるべきだと思っていた。でも、わたしは見かけ倒し。かわいいだけで、とても国の政治なんかできないの」

「でも、毒リンゴで仮死状態にしておくなんて、あんまりだわ」

「継母さまは、それも、お考えになっていた。だから、いつか白馬の王子が現れて、わたしにキスをすれば、目覚めるように……それが、あのくそ王子!」

「アニマ王子のこと嫌いなの?」

「……いいえ、愛しているわ。最初に会ったときから……あの人の苦しみも、分かってる。でも、毎日来ては、わたしのくちびる一センチのところまで顔を寄せて、ため息ついて帰っていくばかり。それが、もう九十九回もつづいて。もう一回、こんな目にあったら、魔法少女……いえ、小悪魔のマユさんの言うとおり、わたしは鬼になっていたわ……」
 
 白雪姫はさめざめと泣き始め、レミは白雪をハグして慰めた。


「申し訳ねえんだけど!」


 マユは二人の間に割り込んだ。

「この魔法、五分しか効き目がねえ。効き目が切れるまでに対策考えろ!」

「「対策って?」」

 かわいいだけの白雪と、心配だけがイッチョマエのレミが、また同時に声をあげやがる。

「白雪。おめえの友だちで、おめえぐらいにかわいくて、勇気のある女の子いねえか!?」

「かわいくて……勇気……ああ、グリムチームに一人いる!」

「だれだ!?」

「ええと〇〇よ」

「え(''◇'')ゞ」

 名前を聞いて心配になった。かわいくて勇気はあるけども、ちょっと若すぎる。しかし、時間がないんで、マユは呪文を唱えて、そのかわいくて勇気のある女の子を呼び出したぜ!

「エロイムエッサイム……エロイムエッサイム……」

 モクモクモク……ポン!


 魔法の煙とともに現れた、その子は、思ったほどには若すぎなかった……。



☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  
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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!32『ライオンを捜す少女』

2024-10-16 06:15:34 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
32『ライオンを捜す少女』 




「キミはライオンを探しているのかい?」

 渡りに船でアニマ王子が聞きやがる。張り倒してやろうかと思ったけど、少女の手前、ちょっとガマンしたぜ。

「ライオンじゃなくてぇライオンさん!」

 言い返しやがる。可愛いけど、ちょっと気ぃつよそうなガキだぜ。

「でも、ライオンなんだろ?」

「ちがうぅ! 二本の足で歩くし言葉だって喋るしぃ、何よりも勇気を誇りにしているわ。で、そういうライオンさんを見かけなかった!?」

「いいえ」「んなの知るか!」と、レミとマユが答える。少女の視線は、王子にもどった。

「ぼくも知らないけど、ライオンさんに会えたら伝えてくれたまえ」

「え、なにを?」

「あ……その……つまりだね……」

「あの、わたし急いでるの。分からなかったら、他をあたらなきゃならないから!」

「もし、ライオンさんに会えたら伝えてくれたまえ……」

「だから、なにをですか!?」


「どうやったら……勇気が持てるか」


「そんなもの、自分でどうにかしなさいよ。まったく今時のオトコときたら!」

 少女は捨てぜりふを残して回れ右をし、一歩踏み出して……立ち止まった。

「いま、わたし『オトコ』って言ったわよね……」

「う、うん」「どうかした?」

「う、ううん。なんでも。じゃあね」

 少女は、ギンガムチェックのスカートとツインテールをひるがえしながら行ってしまった。


「……あいつ、ドロシーだよな。『オズの魔法使い』の?」


「そうよ。今頃は、エメラルドの国に着いてなきゃいけないんだけどね」

「やっぱり、これもゆがみのひとつなのか?」

「たぶんね。でも、ドロシーは所属がMGMで、そこにワーナーやソニーが絡んだり、ややこしくって、よく分かんない」

「でも、そのややこしい中でも、ケナゲにオズの国を目指してやがるんだな」

「そう、だれかさんと違ってね」

 レミは、麦わらをあみだに被り直し腕組みをした。


「じゃ……ボクはこれで失礼するよ」

 アニマ王子は肩を落としたまま立ち上がると、マントを被りなおした。

「明日もちゃんと来るのよ」

「ああ……」

「そして、キスするのよ(>▢<)!」

「……ああ、前向きに考えるよ」

「なに、その政治家みたいな言い方!?」

「母上に教わったんだ。こういう状況で使う言葉……じゃ」

「待て、これ持ってけ」

 マユは、胸ポケットから歯ブラシを出したぞ。

「歯ブラシ?」

「今夜と明日の朝、それで歯を磨け」

 アニマ王子は、手に息を吐きかけて、臭いを嗅ぎやがる。

「臭うかな……?」

「似合うぞ」

「え……?」

「ロゴを見てみ」

「……ライオン歯ブラシ」

「分かった?」

「ありがとう。ギャグで励ましてくれたんだよね……ごめん、上手くリアクションできなくて」

 王子はハイセイコーにも乗らずに行ってしまいやがった。

「ありがとう、ごめんね、めんどくさい王子で。せっかくシャレで締めくくってくれたのに」

「シャレじゃねえよ」

「え……?」

「あの歯ブラシには魔法がかかってんだ」

「どんな魔法?」

「あれで歯を磨くと、好きな女の子にキスしたくなる魔法がよ」

「え……それじゃ!」

「でも、あいつに効くかどうか自信はないわぁ。小悪魔程度の魔力じゃどうしようもねえ」

「ううん、マユはがんばってくれた。ありがとう」

 礼を言われると、ちょっと居心地が悪くて、とっさには返事できねえ。

「それにしても白雪、可愛そうだな……」

 白雪姫に目をやるレミ。マユも自然に目を移した。

「あ……白雪の顔?」


 マユは、白雪姫の寝顔に不吉なものを感じたぞ……。



☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!31『だったらキスしろ!』

2024-10-15 08:30:40 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
31『だったらキスしろ!』 




「この棺の中の……白雪姫だよな?」

 五分経った。

 レミはアニマを、アニマは棺の中の女を見つめるばかりでらちが明かねえんで、聞いてみたぜ。

「白雪姫だよな?」

「…………」

「…………」

「あ、ひょっとして蝋人形か( ゚Д゚)!? 最近のはシリコンとかで出来てっから、スゲェーんだよな。胸とかは特に柔らけえの使ってて、ゼリー胸とか言ってプニプニなんだろぉ(〃∀〃)?」 

「触んなアアア!!」

「おっと、なんにも言わねえから、ちょっとふざけただけじゃねえか! なんか言えよ!」

「ハァ、眠れる森の美女じゃなければね(*´Д`)」

 やっとレミが答える。

「ね、そうでしょ!?」

 レミは、矛先をアニマ王子に向ける。

「あ、ああ……スノーホワイトかもしれないし、シュネービットヒィエンかもしれないけど」

「それ、英語とドイツ語に言い換えただけじゃねえか」

「あ、ああ……そうだよね。でも彼女がスノーホワイトなら、英語じゃなきゃ伝わらないし、シュネービットヒィエンならドイツ語でなきゃ。ボクは日本語だから微妙に違うかも……ハァァァァァ(*´▢`)」

 軟弱王子は、長いため息をついて、うなだれやがった。

「まあ、現実を認めるようになっただけ進歩だけどね。ね、スニージー」

 レミがつぶやいくと、棺の陰に気配がしたぞ。


 ハーックション!


 とたんに大きなクシャミがして、棺の向こうからドワーフが現れやがった。


「やあ、レミ、世話かけるね。そちらさんが?」

「うん、魔法使いのマユ。やっと来てもらえたの」

「そりゃあいい。もう、この世界はこんぐらがっちゃってるからね。よろしくマユ」

「お、おう、おめえ七人の小人のドワーフだろ?」

「ああ、そうだよ」

「他のドワーフは居ねえのか?」

「山に行ってるよ。鉱石掘りが俺たちの仕事だからね。夕暮れになったらみんな戻ってくる。もう少し時間があるから、俺も行っていいかなあ」

「もちろんよ。でも、あの山の向こうで、つま先立ちしてるお星様たちが顔を出すまでには戻ってきてね」

「うん、分かった。それじゃ、ちょっくら行って来る」

 スニージーは、アニマ王子に一瞥をくれると、ハイセイコーの馬面を撫で、サッサと、ツルハシをかついで行っちまった。


「ドワーフたちも、持て余してるのよねえ……」


 スニージーを見送りながらレミがこぼしやがる。

 ヘックション!

 とたんに彼方のスニージーが大きなクシャミ。そのコダマが収まって、マユは聞いたぜ。

「なあ、白雪姫の話ってよぉ、王子のキスで白雪姫が生き返って、メデタシメデタシになるんじゃねえのか?」

「それが、そうならないから、苦労してんのよ」

「ああ、いったいどうすればいいんだ……僕はぁぁぁぁ!?」

 アニマ王子が、頭をかきむしりながら身もだえやがる。

「簡単だ。キスしちゃえばミッションコンプリートじゃねえか!」

「それがね……」

 レミが腕組みをした。

「ひょっとして、アニマって〇〇……なのか?」

「そんな、ボクは〇〇でもなきゃXXでもない! 心から白雪姫のことを愛しているんだ!」

「だったらあ……!」

「ボクが王子でなくて、白雪姫が王女でなきゃ事は簡単なんだけどね」

「ハア……」

 組んだ腕をほどいて、レミはため息をついた。


「僕と白雪姫がいっしょになったら、どうなると思う……」

 アニマ王子は、両手を広げると空をあおいでつぶやいた。

「ハッピーエンドじゃねえのか?」

「考えてもくれよ。一国の王子と王女だよ。それが好きになって結ばれたら、二つの国が合併することになるんだよ。うまく根回ししても、強力な同盟関係になったと思われるし、現にそうなってしまうだろう」

「それがぁ……(‎ ‎¯ࡇ¯ ) 」

 めんどくさいやつだ。

「ここは、北にシンデレラの王国、南に眠れる美女の王国、そのまた南が白雪姫の国だ。うちと白雪姫の国がいっしょになれば、この微妙なファンタジー世界のパワーバランスが崩れ、緊張関係がいっそう増してしまう。王子であるボクは、自分の思い通りには行動できないんだよ」

「でもよ……んなこと、やってみなきゃ分かんねえだろーが。ディズニーアニメだったら、もうとっくにメデタシメデタシでエンドマーク出てんぞ」

「あれはディズニーが、無理矢理話をねじまげたからだよ。ファンタジーの世界はもっとリアルで残酷なんだよ。このグリムの原作を読んでみるといいよ」

 ズイ! パシ!

 岩波文庫のグリム童話なんか出しやがる。そいつをパシっとはたいて襟首を捕まえてやった!

「な、なんだぁ(;'∀')!?」

「グリムの残酷さぐらいは魔法学校で習ったわ! しっかり現実を見てみろよぉぉぉッ!」

「な、なにをする(>○<)!?」

 もう辛抱ブチギレて、アニマを棺の前に引き据えてやったぞ!

「マ、マユ……(;'∀')」

 マユの強引さに、レミは、思わず声をあげやがる。

「好きなんだろーが!?」

「う、うん……」

「愛してんだろーがあ!?」

「だったら、何も考えることは無ぇえ。キスしちまえええ(>▢<)!」

 ありったけの魔力で、王子の顔を白雪姫の顔に近づける……しかし、アニマ王子は渾身の力で抗いやがって、その唇は五ミリの距離を置いて止まってしまう!


「……なんちゅう根性なし!」


「だって、ここで二人が結ばれたら、白雪姫の国で内戦がおこるよ。王妃側と白雪姫側に分かれた血みどろな内戦が!」

「それをなんとかすんのが、王子だろーが!」

 アニマ王子が、顔を真っ赤にして、何か言おうとしたとき。お花畑の横の道に気配がした。


「あのぉ……お取込み中のところ失礼します。このへんでライオンさん見かけませんでした?」

「「「ああん!?」」」

 三人メッチャ不穏な返事をしたのに、 そいつは、白と水色のギンガムチェックに半袖パフスリーブのワンピース。髪はツインテール、バスケットを腕に下げ、赤い靴を履いていて、人の事なんかぜんぜん気にしねえでリフレインしやがった。

「このへんでライオンさん見かけませんでしたぁ?」



☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
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  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!30『情けねえ王子』

2024-10-14 08:42:00 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
30『情けねえ王子』 


 


 薮から棒のような男は、心ここにあらずという顔をしてやがる。


「なんだ、この覗き魔ヤローは!」

「あ、その人だったら大丈夫。わたしなんか目じゃないから」

 麦藁帽を被りながら、レミが言う。

「目じゃねえ?」

 どういう意味だ?

「アニマ……今日もダメだったんだね」

「……あ、レミか。いつもと服装が違うから分からなかった……ああ、似合ってるよ」

 後ろの「似合ってる」は取ってつけたみてえで心が籠ってねえ……と思ったら、弱っちい女みてえに手で顔を覆って泣きやがる。

「な、情けないやつだよボクは!」

 ベルベットのマントにシルクの袖なんかかがゆったりしたドレスシャツ。乗馬ズボンに、金の鎖が付いたサーベルなんか付けていて、見るからに、ハイソな坊ちゃん。顔も、泣いてさえいなかったら、ディズニーアニメの王子さまが務まりそうなイケメンなんだけどな、自分で言ってる通りに情けねえ。

「紹介しとくわ。この人、ゲッチンゲン公国の王子さまで、アニマ・モラトリアム・フォン・ゲッチンゲン。こちら、わたしのお友だちで味方のマユよ」

 現金なもので、レミは、もう十年来のお友だちの感覚でいやがる。

「よ、よろしく、アニマって呼んでくれていいよ」

「ああ、小悪魔のマユだ。覚えとけ」

「え、あ……悪魔(◎△◎)!?」

「そーだ。ウジウジしてっと呪い殺すぞ」

「ヒーー(>□<)!」

「ああ、それくらいにしてやって、マユ(^_^;)」

「フン」

「今日もダメだったのね……」

「う、うん……」

「強い心で踏み出さなきゃ、いざという時に王子としての義務が果たせなくなるわよ。いすれは、国王にならなきゃいけないんだからね」

「ボ、ボクには、そんな資格はないよ。あの愛しい人一人救えないのに」

「じゃあ、その愛しい人のところに連れていってくれるかしら、現物見てもらった方が分かり易いから」

 え、マユに振んなよ(^_^;)!

「ああ、そうだな。見てやってくれたまえ。そして、ボクに知恵と勇気を与えてくれたまえ。このファンタジーの世界の程よいヒーローとしての勇気を」

「もう、ココロザシが低いんだから。ヒーローってば一番に決まってるでしょうが! 程よいなんてありえないわよ!」

 レミは、鼻息荒くアニマを叱りやがる。

「そういう帝国主義的なヒーローは、趣味じゃないんだ」

「そうやって、言葉でごまかして責任逃れするんだから」

「あ、立派な馬……」


 王子の後ろから立派な白馬が現れた。


「やあ、僕ハイセイコー。アニマ王子の専用のお馬さんだよ」

「馬が喋った!」

 驚いた。魔界でもケルベロスとか喋るけどよ。そういうのは見ただけで分かる。この馬はカッコはいいけど普通の馬だ、こいつには『喋ります』ってオーラがねえ。

「ここは、ファンタジーの世界よ。カラスが監視カメラにもなるし、馬だって、喋って当たり前」

「……でも、ハイセイコーって、どこかで聞いたことあるなあ」

「三十年前に、ここに来たんだ。そっちの世界にいたころは競馬場で走ってた(*´ω`*)」

 ちょっとはにかみながら、ハイセイコーが言いやがる。

「あ、伝説の競走馬!」

 マユの頭の悪魔辞典にも答えが出てきた。

――ハイセイコーは日本の世界的競走馬。1970年代の日本において社会現象と呼ばれるほどの人気を集めた国民的アイドルホース。第一次競馬ブームのヒーローとなる。1984年、顕彰馬に選出され、銅像にもなっている!――

「あ……そんなに感動してくれなくっていいから」

 ハイセイコーは、チラッとアニマ王子に目をやった。

「ハイセイコーは、この世界に来てからは、兄のアニムス・ウィリアム・フォン・ゲッチンゲンの乗馬だったんだ。兄が亡くなってからは、役目上ボクを乗せてくれているんだけどね」

「アニマ王子、僕は、キミに乗ってもらって光栄だと思ってるんだよ……そりゃ、お兄さんも偉い王子さまだったけど」

「そうだよ、兄貴は立派だったさ!」

 こいつ、だいぶ病んでやがる。

「ま、とにかく、ここで落ち込んでても、なんにもならんないから、行くとこに行こうよ!」

 レミが、キッパリと言った。


 それは、さらなる森の奥にあったぜ。


 丘を超えて小川を渡ったところが、テニスコートほどに開けた芝地になっていて、そこここに、マユには分からない花がいっぱい咲いてる。お花畑っていうやつだ。

 そのお花畑の真ん中に棺が安置されてやがる。

 近づくと、それはガラスの棺ってやつだ。


 棺の中で眠るように横たわっていたのは……まるで白雪姫だったぜ。
 


☆彡 主な登場人物
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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!29『藪から棒』

2024-10-13 07:25:19 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
29『藪から棒』 




「とりあえず、その服なんとかしねえとなあ(^_^;)」

 エルフの王女レミは、マユの叫び声で着替えたばっかのフンワリワンピを吹き飛ばされて。取りあえず、そこら辺の落ち葉をかき集めて蓑虫みてえになってやがる。

「いいのよ、あの驚きっぷりで、あなたの魔力のスサマジサも分かったから」

「んでも、その格好じゃあんまりだろ。マユが魔法で服を出してやっから」

「アハハ、そうしてくれたら嬉しいんだけどね(^_^;)」

「あんまりファッションのセンスには自信ねえんだけどな……とりあえずファッション雑誌でも見て考えようよ」

 マユは、とりあえずローザンヌにあった最新号を出したぜ。

「このタンク付きトロピカルTシャツに花柄フレアースカート、ストローハット付きなんてどうだ?」

「……あの」

「じゃ、このゴスロリモテカワ系なんかどうだ。知井子ってやつがこんなの着てんだけどよ、あ、こっちのもいいかも……ん、どうかしたか?」

 レミは、じっとうつむいてやがる。

「……やっぱり、あなたを騙すことなんてできないわ」

「騙す……どういうことだ?」

「マユが、魔法で服を出してくれたら……もう契約成立ってことになるの」

「え……マユをハメようとしたのか!?」

「……うん」

 アホー

 鳴き声がしたかと思うと、上を飛んでたカラスが糞を落としやがってレミのホッペに命中させやがった。レミは、一瞬ドキリとしたけど、そんなに驚いてねえ。なんか間が抜けててマユはクスっと笑っちまった。

「…………」

「あぁ、ごめん笑ったりしてよ……」

 マユは、ティッシュを出して拭いてやろうとした。レミは、のけ反りやがる。

「なんだよお(`△`)」

「それもダメ……わたしのために何かしようとしたら、それも契約したことになる」

 アホーとカラスが、また鳴いた。

 シャクに障ったんで、カラスを石にしてやった。

 ポト

 カラスは「アホー」の「ホ」の口をしたまま落ちてきやがった。

「あ……それ、お父さんの監視用のカラス……ヤバイよ」

「ハァ、もういいよ」

「え……」

「とりあえず、レミの味方になってやんよ」

「ほ、ほんと( ゚Д゚)!?」

 思わず立ち上がるレミ。

 その勢いで、身にまとった落ち葉が、いっせいに落ちてスッポンポン。でも、それにも気づかないほどレミの驚きと喜びは大きいみてえだ。

 ちょっとクセのあるやつみてえだけど、悪い奴じゃなさそうだ。

「あぁ……とりあえず、その格好、なんとかしよう」

「……あ(;'∀')」

「えい……あれ?」

 とりあえず、ファッション誌最新号に載ってた服を着せたんだけど、服はタグが付いたままレミの前に置かれた状態だぜ。

「これ、着ちゃったら、もう後戻りできないよ……」

「いいから、早く……着ろって言ったら、さっさと着ろヽ(`Д´)ノ 」

「あ……ありがとう(;'∀')!」

 レミは、大急ぎで服を着やがる。

 そのとき、マユが木の葉を吹き飛ばして出来た半径10メートルほどの森の広場。その向こうの薮で人の気配がした。

「だれだ、そこに居やがるのは!?」
 
 マユは、レミを庇うように立ちふさがったぞ。


 薮から……棒みてえな男が現れやがった。



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  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  

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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!28『そいつはレミってやつで……』

2024-10-12 07:36:18 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
28『そいつはレミってやつで……』 





「あなた、小悪魔のマユさんね」

「う……何者!?」

 こいつ、うちの制服は着てるけどにせもの……いや、人間でさえねえ!

「少し、お話がしたいの。いいかしら」

「こんなとこでかぁ?」

「時間はとらせないわ」

「……中庭にでも行こうぜ」

 廊下へのドアを開け……え、ドアはビクともしねえ!

「……なにをしやがった!?」

「ここからは出られないわ」

「ここ、あんまりお話とかする雰囲気じゃねえと思うんだけど」

「そうね、この時間帯、あまりロックもしておけないし」

「じゃあ、どこで……?」

「こっち」

 そいつが指差したのは、6番目の個室……。

「え……ここって、個室は5つのはず?」

「黙って、付いてきて」

 そいつが6番目のドアを開けると、他の個室と同じ便器があるだけだ。二人で入ると狭い。

「その便器のレバーを反対側に回して」

「マユが?」

「うん、わたしは、女子トイレ全体をロックするのに力を使っているから」

「しょうがねえなあ……ん? 動かねえぞ、反対側には」

「人間の力じゃね。小悪魔であることを思い出して……早く」

「もう……」

 マユが小悪魔の力を籠めると、ガクンと一瞬の抵抗があって、レバーが回った。

 ジャーーーーーゴボゴボゴボ!!

 勢いよく青い水が渦を巻いて流れだした。マユは一瞬トイレの洗浄剤かと思ったけどよ、水はすぐに青い霧状になって、個室を満たしはじめたぞ………個室の壁が消えて、空間が広がっていく。

 その時、廊下とのドアが開いた。

「なんだ、開くんじゃない。美紀ぃ、使えるよ!」

 この声はルリ子だ。

「よかったあ! 二階のトイレじゃ間に合わないとこ……ううう……漏れそう!」

 美紀は一番手前の個室に駆け込み、ルリ子は、洗面台の鏡を見ながら髪をとかした。すると、鏡に写っていた一番向こうの個室が一瞬揺らめいたように見えたぜ。

「え……錯覚?」


 青い霧が薄らいでいくと、鳥の声や木々のそよぐ音で、そこが森の中であることが分かったぜ。


「ああ、やっと落ち着ける……」

 そいつは、いつの間にかミニのフンワリしたワンピになっていて、まるで妖精のように見えた。

「さあ、自己紹介からしてもらおうか。取りあえず人間じゃなさそうなことだけは分かったけどな」

「ああ、ごめんなさい。わたし妖精のレミ」

「あ、ドアーフ?」

「ムウ、こう見えてもエルフの王女よ」

「エルフ……にしては、背が低い」

「そう、これが問題……」

「そういうことなら、お医者さんかエステか親父の王様にでも言うこったな」

「ムウ、これは、問題のほんの一つに過ぎないの。それにエルフはお医者さんにもかからないし、エステも関係なし。お父様には108人の王子と王女がいて、いちいち構ってらんないし」

「108人もか!? おめえは何番目なんだぁ?」

「そ、それは、いまは関係ない(>◇<)!」

「でぇ、小悪魔のマユになんの用?」

「あ、そう、用件言わなくっちゃね……その前に、ちょっと深呼吸させてね……」

「長い間、トイレに籠もってて息が詰まったかぁ?」

 マユの皮肉も無視して、レミは三回深呼吸をした。

「おまたせ。別にトイレのせいじゃないのよ。あそこはあのあたりで唯一のここへの出入り口だからしかたがないの。でもね、おちこぼれ天使がいるじゃない。雅部利恵って」

「ああ、おめえら、キリスト教の世界じゃ否定されてるんだったな」

「そうよ、ハリー・ポッタだって迫害うけるとこもあるんだから」

「唯一神だもんな」

「そこいくと、悪魔はキリストの世界でも認知されてるし、迫害されてるって点じゃ、わたしたちと同じでしょ。そいで、わたしたちは、いろいろ相談ぶったんだけどね。なんとかまとまるかなあと思ったら、決まりかけたとこで、文句いう奴が出てくるし、ティンカーベルなんかね……」

「ああ、グチは、また暇なときに聞いてやっから、用件を言え!」

「ああ、実はね……」

 レミは、マユの耳元で原稿用紙で1000枚分ぐらいの説明を数秒でしやがった。

「……分かったぁ?」

「ちょっと待て……」

 パソコン用語で言うと圧縮された状態でよ、解凍すんのに時間がかかる。

「スペック低いんじゃないのあなたの脳みそ ( ᯣ _ ᯣ )」

「うっせえ、気が散る」

「ムゥ」

 三分ほどしてやっと分かった……で、驚いた!

「……ええ、そんなあ!!!!」

 小の字がついても悪魔だ。本気で驚くと半径50メートルぐらいの木々の葉っぱを吹き飛ばすぐらいの迫力がある。着替えたばかりのレミのフンワリワンピは引きちぎられてふっとんじまったぜ。

 キャーーーーー(”>▭<”)!!

 レミは、大あわてで、そこいらの落ち葉を集めて体にまとい、蓑虫のようになっちまいやがった。

「で、どうかなあ、引き受けてもらえる(^_^;)?」

「ダメだ、マユには、そんな時間の余裕はねえ。なんたって……」

「おちこぼれぇ……」

「修行中だ!」

「はい、修行中」

「それに、マユには拓美って同居してる幽霊もいやがるし」

「あ、その人なら、眠ってもらってる。ほら、気配ないでしょ……?」

「え……ほんとだ」

「それに時間のこともノープロブレム。ここでの一年はそっちじゃ十秒ぐらいにしかならないから。ここは、パソコンのファイルみたいなところ、全てのことが圧縮されてんのよ(^▽^)」

 そう言うと、レミは腕を組んでニンマリと笑いやがった。

 これが、とんでもねえ物語のはじまりだったぜ……。



☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  


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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!27『同居はやりにくいぜ』

2024-10-11 08:11:29 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
27『同居はやりにくいぜ』 




「よく食べるわね……」


 里衣紗の声が降ってきた。

 目を上げると、里衣紗と沙耶が並んで立ってやがる。

「おめえたちだって」

 里衣紗と沙耶は、食堂特製のフライドポテトを持って、ホチクリ食べてやがる。校内で立ち食いは禁止なんだけどよ、昼時の学食とかカフェテラスは例外。その昔はよ、たとえ学食内でも禁止だったらしい。

「あたしたち、Bランチと、これだけだよ」

 沙耶に言われて、マユは自分のテーブルに目を落とした。

 A定食(B定食に、ぶっといトンカツが付いている)に、かき揚げ丼、きつねそば、脇には、沙耶たちより一回り大きなフライドポテトが、ドデンと置かれている。

「アハハハ……」

 ……たしかに多い。

「昨日AKRのレッスンあったからよぉ(^_^;)」

「でも、知井子は、あれだよ……」

 里衣紗の目線の先には、テーブル二つ分向こうに知井子が玉丼の空になったのを置いて、アイスを舐めてやがる。それも、練習曲のスコアを見て、テーブルの下、足だけでステップの練習をしながらな。

 なんと可愛くも熱心なことか。

「同じAKRなんだよね……」

「あ……マユの体って、燃費悪いんだよな。アハ、アハハハ(^〇^;)」

 と、その場はごまかしたぜ。


 マユの体には同居人がいやがる。幽霊の浅野拓美な。


 マユは小悪魔だけど、アバターの体は、まったくの人間だ。使っただけのエネルギーは補給しなくちゃならねえ。

 ゲームのめんどくせえのにあるだろ。飯食わないとHPがどんどん下がる設定になってるやつ。あれのリアル版ってわけだ。それも、今は二人分。当然、飯も食うしトイレにも行く。

 で、今、マユは女子トイレの個室の中にいる。

 と言って、用を足しているわけじゃねえ。いくらラノベだってトイレの個室の状況を描写することまではしねえ。

 しかし、トイレ本来の使い方をしていなければ別だ。

――なあ、拓美。マユの体に同居してるのは……まあ、同意する。暫定的にだけどな――

――ごめんね、レッスンで体力使うもんだから……わたしって、サブリーダーでもあるわけでしょ。スタジオには一番に入って、最後に出るの――

――リーダーのクララとかいるじゃねえか――

――クララはクララよ。トップとサブは自転車の前と後ろ。どっちが力を抜いても自転車は進まないわ――

――でもよ、拓美って幽霊じゃん。空気も吸わねえのに、飯は食うわけ?――

――マユの体に入っていると、お腹が空くの!――

――拓美って、生きてたころ、かなりの大メシ食いだったんじゃねえのか?――

――そういうマユの体こそ、燃費悪いんじゃないの。自分でも言ってたじゃないの――

――ああでも言わなきゃ、ごまかせねえだろが!――


 コンコン

 そのとき、個室がノックされた。


「あ、ごめん、今空けるからよ…」

 ジャーーゴボゴボ

 急いで水を流して個室を出たぜ。

 ん?

 目の前に、知井子ぐらいの背丈のカワイイやつが立ってやがって、目が合っちまう。

 こういう状況だと、気まずくって視線を避けるもんだけどよ。そいつはマユの目を見てニッコリ笑いやがる。

 こっちは拓美の方が恥ずかしがっちまって、心の奥に引っ込んじまいやがる。顔を真っ赤にして心臓をドキドキさせたままでよ。こういう負け的なシュチエーションは嫌ぇだ。だから必要もねえのに悠々と手を洗う。

 え?

 手を洗いながら、鏡越しに他の個室が全て空いていることに気づいた。

 そんで、今のやつが、個室に入らねえで、じっとマユを見てやがる。

 こいつ?

 鏡の中で視線が合っちまってドキリとしたぜ。


「あなた、小悪魔のマユさんね」


 そいつは、ニコリともせずに言いやがった。

 

☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!26『AKR最初のレッスン』

2024-10-10 08:07:22 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
26『AKR最初のレッスン』 




 その週末、AKRの最初のレッスンの日がやってきたぜ!

 約束じゃ、体は拓美に貸して魔界で補修なんだけどな、今日は特別に憑いてる。

 姿勢と歩き方の練習だけで二時間。そのあと発声とボイストレ-ニング。昼食を挟んで、ストレッチをやってダンスレッスン。まるで体操部みてえなことばっかりやらされる。ダンスの基本だと聞いてなかったら五分ももたなかったぜ。

 その合間にスマイルの練習。

 要はニコニコ微笑む練習で、これが案外むつかしい。オーディションのときは、緊張しながらも、みなハイテンションだったんで自然な笑顔になったけどよぉ、なんにもねえのに微笑むってのはむつかしいぜ。

「はい、笑って!」

 と、いきなり言われても、なかなか出来るもんじゃねえ。中には虫歯が痛いのをこらえているような顔になるやつもいやがった。

「あなたたちは、アイドルなんだからね。どんなに疲れていても落ち込んでいても、一瞬で笑顔になれなきゃダメ!」

 前世紀末にアイドルの頂点にいたインストラクターの指導は厳しかった。

「ダメよ、3分やそこらで引きつってしまうようじゃ。いい、笑顔ってのは、ホッペのところに笑筋というのがあって、ここを鍛えるの。日本人が一番苦手な表情筋。今から、またダンスのアップダウンやるけど、その間、笑顔を絶やさないように。前の鏡を見ながら、チェックして、ハイ一時間!」

 で、一時間すると、知井子を始め、大半のやつの笑筋は笑顔のまま引きつるか、ケイレンしてしまったぜ。

 落ちこぼれ天使の雅部利恵はろくでもねえやつだけど、この笑顔の関してだけはエライと思っちまったぜ。あいつ、怒る時も居眠りする時も必殺技くらわせてくるときも笑顔だもんな(^△^;)。

 知井子もケイレン組だけどよ、楽しそうなんでマユは嬉しかった。リーダーの大石クララは、さすがに、ダンスのアップダウンも笑顔もこなしてやがる。

 最年長の服部八重もできてやがって。知井子は「負けた」と感じてやがったけど、ヘタレ眉になりながらも爽快な顔をしてやがる。

 爽快とヘタレってのは相反するんだけど、知井子のはなんか微笑ましくってよ「いちばん個性的よ!」とインストラクターにも褒められて、みんなも拍手なんかしやがってよ、マユも自分のことみてえに嬉しくなったぜ。

 知井子の人生は、負けっ放しでヘコンでばかりだった。

 でも、今はちがう。近いうちに必ず自分もできるんだという気持ちが湧いてきてやがる。それに、だれもできないことを笑ったりバカにしたりしねえ。みんな同じ目標を持ってるからかな。

 沙耶や里衣沙も数少ない友だちだったけど、このAKR47は、知井子が今まで経験したことがないような仲間になってきたぜ。


「じゃ、取りあえずプロモ用の写真撮るからね。一か月限定で流すAKR初のプロモだよ」


 全員の集合写真と個別の写真。ディレクターから多少の注文はつくけど、基本は本人たちの生(き)のままだ。

 ほとんどのやつが、ぎこちなかったけど、黒羽Dは、あえてそのままにした。成長するアイドルの第一歩だとか言ってよ。

 その中に、大石クララと並んで自然なハツラツさで撮れた者がいた。

 マユだ。

 正確にはマユが体を借してやってる幽霊の拓美。拓美のマユは、午前のレッスンから際だっていた。休憩中には、できねえやつに付いてやって、リーダーシップさえ発揮していやがった。

 拓美がマユの魔法で、みんなの記憶から消えてしまった(ただ、大石クララだけは知っている)んで、サブリーダーが居なかったんで、サブリーダーは不在のままだった。

「マユ、サブリーダーやってくれないか」

 レッスンの最後に黒羽ディレクターから頼まれた。


 その明くる日、マユは目覚めてびっくりした。自分の中から拓美が出ていかねえんだ。


――ちょっと、約束が違うじゃねえか。平日はマユだろうが――

――ごめん、レッスンが終わったら、出て行けなくなっちゃって――

――ええ、困るよ。マユ二重人格になっちまうじゃねえか!――

――ほんとうにごめん。平日は大人しくしているから――

――もうヽ(`Д´#)ノ !――

 マユは、初めて、やっかいな幽霊を引き受けてしまったことを後悔したぞ。

 キリキリキリ……

 とたんに戒めのカチューシャが頭を締め付けてきやがる。

「「イテ……!」」

 マユの悲鳴はステレオになっちまった……。




☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
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  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!25『デーモン先生との対話』

2024-10-09 08:41:32 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
25『デーモン先生との対話』 





『マユ、何しに戻ってきた……ガルルル』

『なにって、先生……』 


 そこはサンズの川を挟んだ魔界とこの世の境目だったぜ。

 川の向こうに、ケルベロスがいやがる。

 魔法学校に(落第する前)通っていたころ、よく鼻くそ味のチョコなんかやっていたんで、このケルベロスはマユによくなついてやがる。

 今も目を細め、お座りをしながら、ヨダレを垂らしてやがる。でもよ、その口から聞こえてくるのは、あの、おぞましいデーモン先生の声だ。

 ケルベロスは、地獄の番犬なんだけどよ、子犬や、孫犬がたくさんいて、魔界のいろんなところで番犬をやってるんだ。

 ケルベロスってのは、犬の一族の名前でよ。 一匹一匹は別なんだけどな、悪魔や小悪魔はみんなケルベロスって呼んでる。たとえばよ、スマホのことはスマホとしか呼ばねえだろ。スマホを『ジミー』とか『香里菜』とか『ハインリヒ』とか名前つけて呼ぶ奴はいねえだろ。

 で、かなたの魔法学校から駆けてきてシッポ振ってんのが、学校の移動インタホンになってるケルベロスで、ポチ……と、マユは勝手に名付けてんだけどな。
 
 この「ポチ」って名前にしたことも、マユが人間界にやられた原因の一つだとマユは思ってるぜ。

 で……人なつこい顔をしながら、ニクソいデーモン先生の声でしゃべるのがアンバランスでおかしいんだけどよ。

 笑いそうになったけど、この数か月の人間界での修行で「何食わぬ顔」というのを覚えたからな、見た目には分からねえ。でもよ、そこはデーモン先生で、ケルベロスの二番目の顔が言う。

『だいぶ、とぼけるのが上手くなったな』

「と、とぼけてんじゃねえよ」

 ケルベロスには三つの首があり、当然六つの目がある。四つの目で、マユの姿は3Dで見られてる。そして残り二つで、マユは心の中まで見られてる。悪魔の魔眼てやつだ。

 でもよ、その魔眼をしてもマユの心は読み切れねえぜ。

 なんでか……マユ自身にも、自分の気持ちがよく分かってねえからだ。

『マユ、おまえ……このケルベロスをだいぶ手なずけたな……』

 ポチは、三つの首で、互いの顔を見回した。そして、前足で、三つの頭を器用に叩いた。「ギャフン」という声が三つして、ポチの顔はケルベロスらしく、いくぶん引き締まったぜ。まあ、年寄が調子の悪いテレビとかを叩くようなもんだ。

『どうやら、迷いがあるようだな……』

「あ、まあな……」

 デーモン先生の言葉で、マユは自分の心を探ってみた。

 補習の辛さ、知井子や沙耶たち友だちとの毎日。雅部利恵への敵愾心。任務か憎しみか、友情か打算か分からなくなっちまった自分の心。

 まるで、七つに分解してこんがらがった虹みてえな心……マユは、自分の心を美しく形容してみたぜ。

『ばか、飾ってみても、おまえの心に変わりはない』

「アハハハ、バレちまったか(^_^;)」

『要は、どうしていいか分からなくなって……サボりたい気持ちでここに戻ってきたな……』

「そ、そんなことは……」

『違うというか……』

「分かんねえよ……」

『ならば、別の目でみてやろう……』

 シャキン

 三つ目の首の目が鋭くなってきやがった。他の二つの首が、なにか羨ましそうに、三番目の首を見ているぞ。

「な、なんだよ、その目は!?」

『これは、おまえを裸にして見る目だ……』

「え……?」

『バストが1センチ、ヒップが2センチ大きくなった。ウエストは……』

「ちょ、ちょっと先生!!」

 マユは慌てて、両手で体の上と下を隠したぞ。

『心は体に現れる……良くも悪くも、おまえは人間界に馴染んできたな。今回の知井子や拓美の件で、おまえのやったことは間違ってはおらん。だからカチューシャを締め上げることもしなかったであろう。ただ、お前は自信を無くし疲れておる。だから、今やっていることが、正しいのかサボりたい気持ちなのからなのか分からなくなってきた。その迷いが肌に現れておる……WWWW』

「なんで、今のとこだけWWWWなんだよ?」

『……お前の背中を押してやろう。ただちに人間界に戻るがいい』


 六つの目がいっぺんに怪しい光を放って……気が付いたら、大石クララの横顔が目の前にあった。

 え、なんで横顔?

 クララの目は、目に見えてる方のマユに向けられている。

「マユ……あんたの目は、浅野拓美の目だわ!」

 バレてしまった。デーモン先生のせいだ!

「わ、わたし……」

「そうだよ、今の今まで忘れてたけど、拓美って子がいたんだ!」

 クララは目を丸くしてマユの姿をした拓美はうろたえた。仕方なく、本物のマユは半透明な姿を現してやったぜ。

「マ、マユ……いったい……!?」

 クララは、ハッキリなのと半透明の二人のマユを交互に見て混乱したぜ!

 でもな、クララはたいしたもんで、並の女の子みてえにパニクることも気絶することもなかったぜ。ただ、目の前の不思議を一生懸命理解しようとしやがった。


「なるほどお、そういうことだったの……」


 クララは、二人のマユの話しを理解した。
 
 あの屋上で、マユは拓美の強い想いを理解したんだ。そんで自分の体を貸してやることにしたんだ。

 だからよ、屋上から降りてきて、今に至るまでのマユは拓美なんだ。

 そんでマユは、魂だけの存在になって、魔界に戻ろうとして、さっきのケルベロスとのやりとりになったわけだ。で、デーモン先生の一押しで戻って来た、目には見えねえソウルになってよ。でもよ、元来鋭いクララには真実を見抜かれちまったわけだ。

「あ、マユ、消えかかってるけど!」

――魂だけで姿を見せるって、ずっと片足でつま先立ちしてるみたいにシンドイんだ!――

「ごめんね、マユさん(-_-;)」

 マユの姿の拓美がすまなさそうに言いやがった。

――いや、マユも、少しさぼれるかなあって、ヨコシマなところが無くもねえから……あ……消え……かけ……あと……心で……伝え……――

 そこで、半透明なマユは消えちまった。あとは心で二人に伝えたぜ。

――当面、週末だけ拓美に体を貸す。その間拓美はマユの記憶も預かることになる(ただし魔法は使えねえ)――

 だから、拓美はあくまでマユであり……マユはマユで……言葉がややこしい。悪魔ではなく、あくまでマユであり、そのことを人に言っちゃあならねえ。クララは特異体質で記憶を完全には消せねえ。無理にやると、クララの命に関わるんで、クララも秘密を守ること。

 で、平日は、本物のマユに戻るけど、休日は魔界で特別補講。

 そして、いつかは拓美は、マユの体に入れなくなり、昇天しなければならねえ。

 それが、どんな状況や条件の下でそうなっちまうかは……拓美にも、マユにもわからなかったぜ。デーモン先生もなんにも言わねえしな……。



☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!24『クララに呼び止められる』

2024-10-08 08:50:56 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
24『クララに呼び止められる』 




「それでは、これからの企画と予定を発表します」

 シアターに集められた受験者に黒羽Dが向き合った。

 結果は分かってんだけどよ、読まねえようにしてる。これって、鏡の前に立って自分の顔を見ねえようにするみてえで、ちょっとイラつく。

「ユニットの名前は『AKR47』とします。意味は『明るい未来』のAKARUIからとりました」

 マユの消去魔法が効いて、48が47に変わってやがる。もうみんなの頭から拓美の記憶は完全に消えていたぜ。

「ユニットのキャッチコピーは『週末アイドル』。ここにいる大半の人は中高生です。高校を卒業するまでは、学校との両立をはかってもらいます。別の言い方をすれば、その両立の条件の中で、本当に生き残り、力をつけたメンバーでより進化したユニットに成長させる。いわば『成長するユニット』が、コンセプトです」

 キリ!

 47人の顔が引き締まったぜ。

 その後、ここしばらくのレッスンやらマスコミへの発表などについて説明があって、正式にHIKARIプロとの契約の書類が配られたぜ。

 ちょっと困った。

「早まっちまったかぁ……」

 選考会場からの帰り道、知井子のお父さんとお母さんが車で迎えにきていた。

 すっかり明るく自信を取り戻した知井子に、お父さんも、お母さんも大満足。ユニットの選抜メンバーに選ばれたことよりも、娘が明るく前向きになったことを喜んでる。知井子の問題は一段落した。そんで、食事を勧められたけど、マユは丁重に断ったぜ。

「ねえ、マユ……」

 大石クララに呼び止められた。

 二人は、公園のベンチに並んで腰をかけた。

「わたし、何かしっくりこないのよ」

 揃えた足の先を見るようにしてクララが言う。

 こいつ、なんか気づいてやがんのか?

「何が、しっくりこねえの?」

「…………」

「あ、ごめんな。マユ、敬語とか苦手でよ、ちょっと言葉が乱暴なんだ(^_^;)」

「ああ、いいよ仲間なんだから」

「そうか、じゃぁ、このままでいくぜ」

「バカなこと言うみたいだけど、わたし、もう一人いたような気がするんだ」

「もう一人って……」

「だれだか、分からないけど、わたしより輝いていた子が……」

「さ、錯覚じゃねえかぁ。あれだけがんばったオーディションが終わってよ、ホッとしてよ。がんばってた自分が別人みたく思えて、そう感じるんじゃねえかぁ。うん、受験生みんながんばったんだからよ!」

 足許にたむろしていた、鳩たちが、何かに驚いたみてえに飛び去った。

「……その目、その目よ」

「え、マユの目が……どうかしたのか?」

「その目は、マユの……マユの目って……」

「な、なんだよ(;'▭')」

 こいつ、なんか気づいてやがんのかぁ(;'∀')。

「虹がかかったみたい……ああ、なんだろ。同じ目をしてた子がもう一人居たような気がした」

「そ、そーなのかぁ(^▢^;)」

 うろたえて目線を避けると、気の早いコウモリが木の間がくれに飛んでやがる。

 たぶん、魔界の監視コウモリ……。



☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
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  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  
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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!23『知井子の悩み・13』

2024-10-07 08:32:36 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
23『知井子の悩み・13』 




 人があわてふためくってのは、見ていて気分のいいもんだ。

 16人の合格者を、いきなり48人全員の合格にしちまったんからHIKARIプロのスタッフは慌てやがったぜ。

 とりあえず、合格者全員を控え室で待機ということにしやがった。

「でも、さすが光ミツル。決め方もすごいけど、アイデアもすごいわ!」

 矢頭絵萌ってのが興奮気味に言いやがる。高校二年ぐれえに見えるけど、まだ中二だ。発育がいいんだろーけどよ、自信てのは人を飛躍させるって見本みてえなガキだ。

「ハァァァァ……これから大変な競争が始まるわけよね!」

 服部八重って二十代の最年長が、闘志の混ざったため息をつきやがる。こいつ、最年長ってだけで歳が読めねえ。
 なんかの呪いかと思ったら、自分の意思で実年齢を意識の底に沈めてやがる。最年長ってことも溜息を吐いた心の隙間から覗けただけだぜ。

「そりゃあ、48人だもん、厳しいよね」

 知井子が、かわいく鼻を膨らませながら言う。

 こんなに自信を持って戦闘的になった知井子を見るのは初めてだ。学校でピョンピョン跳ねながら黒板を消して、ルリ子たちに冷やかされてる知井子とは別人のみてえだ。

「知井子、鼻がふくらんでるぞぉ」

 冷やかしてみる。

「や、やだあ、それじゃルリ子といっしょじゃんよ(;'∀')!」

 知井子は、慌てて鼻を隠しやがる。

「ルリ子は人をせせら笑ったときに鼻がふくらむけど、知井子はガンバローって思ったときにそうなるんだ。ぜんぜんちげーよ」

「そ、そう……」

 自分のことを言われる時は、いつも冷やかしだったので、多少褒めても素直にはうけとめねえで口を尖らせやがる。

「ああ、その表情好きだなあ! それっていいわよ。チャーミングファイターって感じ!」

 大石クララが自然にフォロー。こいつなかなかの人物みてえだ……と思ったら、服部八重やら矢藤絵萌にも自然に声をかけて、早くもサブリーダーの片鱗を見せ始めていやがる。


 一方、リーダーの拓美は暗れえ。


 覚悟は決めていやがる。マユに頼んで一回だけ皆の前で唄わせて欲しい。マユの魔法で叶えてやった。

 もう思い残すことはねえ。

 でも、選抜メンバーのリーダーに選ばれちまった。

「マユさん、ちょっと」

 拓美は、マユの腕を掴むと、廊下に出て非常口を開けた。

 拓美と屋上に出たぜ。

「もう耐えられない。今すぐに消して! あの世に送って!」

「拓美……」

 マユには、拓美の気持ちが痛いほどに分かった。だから、とても可愛そうで、なかなか拓美を消すことができねえ。拓美の目から涙が止めどなく流れていくのを見てるばかりだ……。

 ザワワ

 屋上から見下ろせる公園の色づいた木々が、近づいた木枯らしを予感させるように震えた。

 一瞬、風が強く吹き、朽ち葉たちが風に流され、屋上の二人を促すように舞っていった。その朽ち葉の一枚が拓美の目元をかすめやがって、溢れた涙が血に染まって拓美の頬に一筋の赤い線が伝う。

 痛々しくて、マユは黙ってハンカチを差し出すしかなかった。

「いいの、このままで……」

「そうか……」

 マユは唇を噛みしめ、ゆっくりと、両の手を円を描くように回し、右手で天を、左手で地を指した。

「エロイムエッサイム、エロイムエッサイム……」

 マユは、渾身の力で呪文をとなえた……。


 階段を降りて、控え室に戻ってきたのはマユ一人だ。


「どこへ、いってたのよ。今から、また全員集合だよ♪」

 知井子は、楽しげにたしなめやがる。

 知井子の悩みは、どうやら克服されたみてえだ。

 しかし、新しい問題が待ち受けていた。

 たったいま、皆の記憶から完全に消された浅野拓美の問題がよ……。


☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  
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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!22『知井子の悩み・12』

2024-10-06 08:14:52 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
22『知井子の悩み・12』 




「ちょっと待った」


 一番後ろの冴えないジジイが孫の手みてえな手を挙げやがった。受験生はキョロキョロ、なんせジジイは小さくて、挙げた手の先しか見えてねえ。

 マユには分かっていたぜ。朝、会場前の掃除をやっていたジジイだけど、こいつが一番エライやつだってことをな。後ろのバンドや審査員どもが立ち上がったり、机を動かしたりしてジジイの通路を確保してやる。

「か、会長……」

 ダミーの審査委員長は、困ったような顔になりやがった。

「ここにいる全員を合格にする。いいな、黒羽くんも」

 ガチ袋を下げて隣りにいた黒羽をうながした。黒羽のおっさんには一目置いてる感じがするぜ。

「はい、自分もそう考えていました」

 すると、ジジイは、ステージの前まで来て、マイクも使わずにしゃべり出した。意外にいい声だ。

「まず、名乗っておこう。わたしがHIKARIプロの総責任者の光ミツル。本名は田中米造っちゅう、見かけ通りの冴えないジジイだ」

 ああ……( ゚Д゚)!

 受験生のほとんどが声をあげやがる。地獄の一丁目で天使を見つけたのに似てる。

 地獄と天国には相互監視システムってのがあってよ、お互いに天使と悪魔を派遣してんだ。まあ、大昔に決めたのが形骸化して残ってるだけで屁の突っ張りにもならねえんだけどな。形骸化した天使は立派そうだけどよ、さて、こいつはどうだ?

 マユは、頭の中にある悪魔辞書を検索……するまでもなかった。声をあげた受験生の思念が飛び込んできたぞ。

 光ミツル――1960年代の後半にデビューしたポップス界異色の新人。フォークソングのシンガーソングライターとして名を馳せるが、フォークソングが政治的、思想的傾向を持つことに反感『新宿フォークゲリラの主席』と言われ、田中のヨネさんで通っていたが、ある日忽然と姿を消した。数か月後、鳴り物入りで歌謡界にデビュー。芸名も光ミツルと、あえて通俗的にしてポップス界の寵児になりやがった。80年代に入ると、人気の絶頂で現役を引退。以後HIKARIプロを立ち上げて、多くのアイドルを生んだ。そして、黒羽みてえな名プロディユーサーを育ててきやがって。十年前に経営の第一線からは身を引いて、今は、その姿を知る者は、芸能界でも少なくなってきた。

 ほお……

 要は、影のフィクサーってわけだ……こういうやつは、そういう経歴で祭り上げられてるだけか。とんでもねえ性癖とかあって、死んだ後に正体がバレるかだがな。

 その影のフィクサーが、思い切ったことを言いやがった。

「ここにいる48人全員を合格とする」


 ええ……("◎▽◎")!?


 審査員席の奴らが、受験生たちよりも目を丸くしやがった。

「相対評価では、確かに発表された16人が優れている。しかし、残りの32人の子たちも絶対評価では水準を超えている。このまま、帰すのは惜しい」

「しかし、会長……」

 社長とおぼしきおっさんが発言しかけた。

「まあ、年寄りの道楽と思ってくれ。あと、黒羽君たのむよ」

 ジジイは、光の速さで引っ込んじまった。

「じゃ、あとは、わたしが」

 黒羽がガチ袋を外してステージの前に出てきた。

「我々は、新しいポップスのユニットの形を模索して、ほぼ一年かけて構想を練ってきました。我々もプロです。その構想には自信があります」

「そ、そうだ!」

 社長が声をあげやがったが、どこか空元気でお追従めいている。こいつは会長どころか黒羽のおっさんにも頭が上がらねえみてえだ。

「しかし、そのプロ意識と旧来の自信に縛られてはいないだろうか……これが会長とわたしが引っかかった点です。ここにいる48人は、みんなステキな人たちです。全員をチームとしてしごいてステキに磨きをかけます。で、定期的に選抜メンバーを選考します。取りあえずは、先ほど発表した16人の人たちに選抜メンバーになってもらいます」

 えええ(((((((((((((((( ゚Д゚))))))))))))))))!!

 16人分の歓声があがったぜ。

「チームリーダーは浅野拓美さん。サブを大石クララさんとします」

 カチン(〇_〇)

 拓美は固まっちまいやがった!

 パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ!

 一瞬の間があって、みんなの拍手。

 そして拓美の目から涙が雫になって落ちてきやがったぜ。


 その涙をみんなは嬉し涙と思ったけどな、そのワケを知っているのはマユ一人だけだったぜ……。



☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!21『知井子の悩み・11』

2024-10-05 07:31:00 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 悪魔だけどな(≧▢≦)!
21『知井子の悩み・11』 




「浅野さんと桜井(知井子)さんには驚きました! いいものを見せていただきました、ありがとう!」


 大石クララの賛辞は本物だった。その証拠にマユへの誉め言葉は、一つも無かったぜ(^_^;)。

「ありが……」

 拓美の返事が完全に言い終える前に、クララは続けた。

「浅野さんのパフォーマンスは特にすごかった! 全身全霊で唄って踊って……なんだか、もし世の中に天使がいるんだとしたら、こんな風なんだろうなあって思ったわ!」

――天使って、そんなにいいもんじゃねえぞ(おちこぼれ天使の雅部利恵のドヤ顔が浮かんだ)と、思いつつ、マユはクララの素直な感動はよく分かったぞ。

「う~ん……天使じゃ言い足りないわね」

 いい感想だ(雅部利恵のドヤ顔がズッコケた)。

「天使みたいという点じゃ、桜井さんも同じ。浅野さんのは……なんてのかな。命賭けてますってのか、ここまでできたら死んでもいいや! そんなスゴミ感じちゃった!」

――おお、するどい! 本人も、そう思ってやったんだぜ!――

 拓美は、すごく嬉しそう。この世から消える直前、それも数時間後には誰の記憶にも残らねえパフォーマンス。それを、心から感動してくれる大石クララ。いま出会ったばかりなのに、何年も付き合った心の友のように思えて、メアドの交換までやってしやがった。

――やれやれ、これで消去しなければならないものが一つ増えちまったじゃねえか――


 長引いた審査も、昼食後三十分ほどしてようやく終わりやがった。


 審査員の心を読まないように苦労したぜ。読まないようにしていても、審査員の興奮はダイレクトにマユの心に伝わってきやがる。新聞の号外を目の前に広げられて、見出しを読まないぐらいの苦労がいったぜ。

「マユ、なにブツブツ言ってのよ」

 知井子が、面白そうに聞いてきやがった。

 マユは無意識のうちにダンテの「神曲」を暗誦していたんだ。

 ダンテの「神曲」は、小悪魔学校二年の必修で、暗記しなきゃならねえんだ。マユは、この暗記が大嫌いでよ、自分から進んで暗誦したことなどなかった。それを無意識に唱えちまうんだから、マユの緊張もかなりのもんだったんだぜ。

 で、マユは感じたんだ……審査員長の心に迷いがあることを……。

「では、審査結果を発表します。長橋さん、よろしく」

 名目上の審査委員長が、先輩アイドルユニットのリーダーを促した。

「はい、では、発表いたします。HIKARIプロ新ユニット合格者十六名の方々の受験番号とお名前を……」
 
 長橋みなみが全十六名の名前を読み上げると、感激と落胆のオーラが等量に感じられた。それはメチャクチャ強くってよ、頭が痛くなって、マユ思わずしゃがみこんじまった!

「マユ、しっかりしてよ。マユも、わたしも、拓美ちゃんも、さっきのクララちゃんも合格だわよ!」

「え……わたしまで」

 視線を感じた、その視線にはメッセージが籠められていた。


――いま、いまよ! この幸せの絶頂でわたしを送って!――


 向けた視線の方角に拓美の泣き笑いの顔があった。想いは残ったけどよ、これを外したらきっかけを失う! 

 今だ!

 ここにいる全員の記憶を消去するために、両手を後ろに回して悪魔クロスを作り、マユは密かに呪文を唱えた始めたぜ……。



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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!20『知井子の悩み・10』

2024-10-04 09:20:28 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 悪魔だけどな(≧▢≦)!
20『知井子の悩み・10』 




 オーディションは審査に入って、受験者たちは控え室にもどったぞ。


 この審査が長引きやがる。

 オーディション終了直後は静かな興奮だったぜ。

 化粧前に座ってボ-っとしてるやつ。スマホや携帯を出して親や友だちに連絡を入れるやつ。やたらにスポーツドリンクを飲み始めるやつ。
 色々だけど、みんなどこかで、知井子と拓美を意識してやがる。話しかけてくるやつやジッと見たりってことはねえけど、みんな――あの子たちすごかったね――って思ってやがる。

 学年の始まりにルリ子が目立ちやがったのに似てるけど、あいつは性格悪そうで、ビビられたり敬遠されてだった。

 利恵も絶世の美少女だから、こんな感じで注目されてたけど、あいつは天使だ。「天使のままの姿形は反則だろが!」って言ってやったら「神さまは、あるがままであることを尊ばれるのよ」って涼しい顔で返して来やがった。まあ、ブスも美人も三日で慣れるって言葉の通りだったけどよ。

 知井子と拓美はミテクレじゃなくて、スキルとかタレント性だ。そんで、芸能界っちゅうかアイドルの世界は競争だからな、もし受かったら、ずっとこんな視線の中にいることになるんだ。てえへんだろうなと思ったぜ。

 でもよ、当の本人の知井子と拓美は気づいてねえ。全力を出し切って、呆然としてやがる。

 まあ、こういう景色も面白れぇもんだ。

 けどよ、ちょっと気にかかった。

 ここに来てから魔法の使いっぱなし。時間を限ってだけど拓美に命を与えたりしたのは、もう完全にA級魔法だぜ。

 でも、カチューシャが締め付けてくることもねえし、デーモン先生の文句も聞こえてこねえ。

 ちょっとヤバくねえかぁ?

 そのとき、戒めのカチューシャから、マユの頭の中にメッセージが入ってきた。

――黒きことは白きこと、白きことは黒きこと――

 え?

 声はルシファー。悪魔の親分でマユを人間界に落とした張本人。普段はサタンていうんだけど、たまにルシファーの名前で現れやがる。べつに名札とかIDとかが付いてるわけじゃねえ。出てきた瞬間のイメージでそう思っちまう。ちょっと難儀な魔界のボスで悪魔学院の校長でもありやがる。

「ありがとう、気持ちよく唄えたわ。もう思い残すこともない……送ってくれてもいいわよ」

 拓美が、目を潤ませ、しかし、しっかり覚悟のできた声で、横顔のまま言ってきやがる。

「わたしは半日って言ったのよ。まだ時間は十分あるわ、審査結果を聞いてからでいいわよ」

「う、うん……ありがと」

 うつむいた拓美の表情は分からなかったけど、膝に落ちた涙で、気持ちは分かった。

 知井子が、そっとハンカチを差し出しやがった。


 ノックがして、スタッフのオニイサンが入ってきた。


 ( ゚Д゚)!!


 それだけで控え室のみんなの神経は尖って、女の子たちの視線がオニイサンに集中したぜ。

「あ、あのぉ、お弁当なんだけど、ちょっと待ってて……審査発表まで、ちょっと時間かかるんで」

 お弁当は人数分しかねえ。つまり、本来は居ないはずの拓美の分で足りなくなってしまって、オニイサンは微妙にパニック。

 廊下にキャスターに載せられたお弁当の山が感じられた。

 お弁当は段ボールの箱に入ってるけど、パッケージは白のと黒のとがあって――白と黒がありますが、中身は同じです――ってメモが付いている。大量注文だったんで、パッケージが間に合わなかったんだ。

 で、まじめなオニイサンは配る前に数えたら一個足りねえことに気が付いた。それでアタフタしてるわけだ。

「お弁当のパッケージが白と黒があるけど、審査の当落とはぜんぜん関係ありません。お弁当屋さんのパッケージが切れただけで……あ、切れたって、あ、そういう意味じゃなくて(;゚Д゚)、とにかく、もうちょっと待っててください」

 オニイサンの慌てぶりに、みんなから笑いが起こる。

 マユは、急いで魔法をかけた。

 廊下のお弁当に魔法をかけ、足りなくなったお弁当の一つを二つにした。見かけだけを二つにしたので、味は半分になっている。食べたやつは、自分が味覚障害になったかと思うだろう。並の悪魔なら、全部のお弁当のエッセンスから均等に取って一個のお弁当を作る。マユはまだまだおちこぼれ、イタシカタナイ……。

 オニイサンは先輩のスタッフを連れてきて「もう一回数えてみよう」ということになって、二度数え直しても「ちゃんとあるじゃないか」ということになって、無事にお弁当が配られた。

 餌が配られて、控え室のみんなはやっと年頃の女の子らしくなってきたぜ。

 あちこちにグル-プができて、年齢にふさわしい賑やかさになってきた。マユは、知井子と拓美と三人でお弁当を食べたぞ。
 その三人の小グル-プの中でも、知井子はお喋りの中心になった。マユはホッと胸をなでおろし、知井子は、この数か月で伸びた身長以上に大きく頼もしくなったような気がしたぜ。

 お弁当を食べ終えるのを見計らっていたのか、一人の女の子が近寄ってきた。

 胸には受験番号①のプレートが付いていた。

「わたし、大石クララって言います……」

 その子は、見かけの可愛さの裏に、男らしいと言っても良いような清々しい心映えを感じさせたぞ

 大石クララが、ペコリと頭を下げた。

――不味い!  なんだよ、この味のうすさは!――
 
 同時に、味半分のお弁当を口にしたスタッフの思念が飛び込んできて、ちょっと慌てたマユだったぜ。



☆彡 主な登場人物
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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!19『知井子の悩み・9』

2024-10-03 08:27:28 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 悪魔だけどな(≧▢≦)!
19『知井子の悩み・9』 




 グニュゥゥゥ……グニュ……グニュゥゥ……

 空間がマーブル模様にねじれて渦を巻いていやがるぜ!

 その渦の真ん中に向かって浅野拓美はゆっくりと落ちていきやがる。

 渦になっちまってるところはよく分からねえけど、外側はまだ完全に渦には成りきってねえ……よく見ると、それは拓美の十数年の思い出たちだ。

 今まで受けたオーディションの数々……「いいかげんにしろよ」と叱りながら、心の中では応援してくれていたお父さん……「残念だったわね」と、落ちたオーディションを慰めてくれた親友が、心の中ではせせら笑っていたこと……シカトするように何も言わない友だちが、痛々しそうに思って心を痛めていたこと……あるアイドルユニットのデビューに胸ときめかせ、人生の目標にした中学生だったころの拓美……音楽の実技テスト、思いがけず拍手をもらい、いい気になっている拓美……「拓美ちゃんすごい!」……先生もクラスメートも、この時は素直に喜んでくれていた……保育所の生活発表会、拓美は、音程の合わない子を懸命に教えていた。お母さんがお迎えに来ているのに、この子たちみんなと楽しく歌いたいと思っていた純な拓美……よちよち歩きだったころ、公園に連れていってもらい、吹く風に歌を感じ、まわらない舌で、そよぐお花といっしょに歌っていた……「ねえ、この子ったら、お歌、唄ってる!」「ほんとかよ!?」拓美を抱き上げて、心から嬉しそうにしている若いお母さんとお父さん……そこで、マーブル模様は渦のまま止まっちまった。

 渦の中心はほの暗く、台風の目のように揺らいでいる。

 多分あそこまでいけば、あっちの世界に行ってしまうんだろう……拓美は、そう感じて覚悟を決めた……でも、渦は、それ以上には動こうとはしねえ。


 おまえ、本当に唄うことが好きだったんだな。


 う……うん……


 渦に呑み込まれ、先の方しか見えてねえ右手の先が返事をするみてえにピクリとしたぜ。

 すると、急速にマーブル模様は逆回転しはじめ、あっと言う間に、もとの小会議室に戻っちまった。

「拓美……おまえ、歌を唄うために生まれてきたような子だったんだ……」

「うん……そうみたい……」

「でも、死んじまった」

「…………」

「……半日だけ、生きていることにしよう」

「え……」

 手にしたA4の白紙が本当の合格通知に変わった。

 ちょうど、えらそうな(でも、実はペーペーの)スタッフがヤケクソで配電盤に拳をくらわせやがったんで、その拍子で電源が戻ったことにした。

「え、お、オレの根性で電源戻ったってか!?」
 
「では、再開しまーす!」

 ディレクターの声がとんだ。

 ん?

 審査委員長のジジイは、受験者のファイルが微妙に厚くなったような気がしたけど、フロアーになだれ込んできた受験者どもの熱気ですぐに忘れちまった。

「審査は番号順ではなく、ランダムに出てきた番号で行います。いつ自分の番になってもいけるように」

 スタッフがそう言うと。ビンゴゲームのガラガラが出てきて、HIKARIプロの売り出し中のアイドルが、にこやかにガラガラを回しやがった。

「あの子の笑顔、小悪魔に見える……」

 知井子が呟いて、本物の小悪魔は思わず笑いそうになっちまったぜ。

 知井子は、びくびくしながらも「一番になれぇ!」と、思ってやがる。学校では見せたことがない闘争心だぜ。

「受験番号47番!」

 47は知井子の番号だ。

「え!?」

 ビックリはしたけども、知井子はおどおどとはしてねえ。

 知井子、大進歩だぞ!

 思わずこぶしを握るマユだったぜぇ(^_^;)。

 知井子は、オハコの「ギンガミチェック」を元気いっぱいに歌い上げやがった。振りはコピーじゃなくて、自分で考えたオリジナル。ちょっとタコ踊りみてえだけどイケテル……ここまでイケテルとは、マユは予想もしていなかったぜ。

 おあいそじゃねえ拍手を受けて、知井子はステージを降りた。

 次のやつは、知井子に呑まれちまった。といっても、ここまで勝ち進んできたやつだ、萎縮することはなかったけど、どこか力みすぎ、知井子みてえに自然なノリにはなってねえ。

 マユは、お付き合いのつもりで適当にやっておくつもりだった。

 けどよ、知井子が作った空気は、みんなに伝染しちまって、マユもつい本気になっちまったぞ(^〇^;)。


 そして、拓美の番がまわってきた。


 受験番号は現実には存在しねえ48番だ。


 マユは、改めて魔法をかけ直した。審査が終わったら、関係者一同の記憶、ビデオやパソコン、カメラの記録も消さなきゃならねえ……おちこぼれ小悪魔には、少し荷の重い魔法だぜ。

 拓美がステージに上がった。

 おおぉ…………

 審査員、受験者たち、フロアーに居た全員からため息がもれたぞ。

 あ、あれ( ゚Д゚)?

 思わず自分が魅力増進の魔法をかけちまったのかとビビっちまった。それほど拓美は輝いていたぜ……。



☆彡 主な登場人物
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