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大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

かの世界のこの世界:135『ヘルム島のイメージ』

2020-11-17 05:09:01 | 小説5

かの世界この世界:135

『ヘルム島のイメージタングリス     

 

 

 例えばこれなのです。

 

 ヘルムの頭上に郵便ポストほどの大きさの懐中電灯が現れた。

「懐中電灯というのは、機能別に表現すると、こうなります」

 懐中電灯は、三つに分かれた。

 

 ボディー  電球   電池

 

「ほかにスイッチや配線やレンズ等がありますが、それをボディーに含めると、この三つです」

 ボディーと電球と電池は、いったん元の懐中電灯に戻ってから、また三つに分離した。小学生に説明するように分かりやすく、こういう授業めいたことが苦手なわたしでもよく分かる。

「ボディーにあたるものがヘルムの島です」

 ボディーの下にヘルム島のイメージCGが現れた。

「電球がわたしです」

 分かりやすく神という文字が現れた。

「そして、電池が女の子です」

 電池が女の子の姿になった。

 もう一度、三つのものが合体し、懐中電灯が点滅し、やがて、電球の輝きが弱くなって消えてしまった。

「電池が切れました……切れた電池は廃棄されて、新しい電池が入れられます」

 懐中電灯のお尻の蓋が開いて、電池が入れ替えられる。電池は別の女の子の姿をしている。

 

 これって……?

 

「そう、生贄の少女たちは、この電池なのです。だが、誤解しないでください。神は電球のエネルギーを少女の姿でお遣わしになるのです。電池は十七年かかって島の人たちに愛しまれることによってフル充電されます。そして、いま入れ替えようとされている電池が……」

 またも電池が入れ替わって、ユーリアの姿になった。

 しかし、電球は、一度灯ったきりで消えてしまった。

「……お分かりになったでしょうか」

 姫が、感に打たれたように立ち上がると、かすれた声でおっしゃった。

「それって、電球に寿命がきたってことだよね」

「はい、灯りが灯らない懐中電灯に存在理由はありません」

「それって……懐中電灯を辞めてしまうと言うことなんだよね」

「はい、ですので、電池はお返ししますね」

 

 エメラルドの上のヘルム神の姿がダブったかと思うと、一つがハッキリとユーリアの姿になって我々の前に降り立った……。

 

☆ ステータス

 HP:20000 MP:300 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・300 マップ:12 金の針:60 福袋 所持金:450000ギル(リポ払い残高0ギル)

 装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 空蝉の術 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)  思念爆弾

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

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かの世界この世界:134『ヤマタ……ヘルムの神』

2020-11-16 06:18:39 | 小説5

かの世界この世界:134

『ヤマタ……ヘルムの神ブリュンヒルデ        

 

 

 クレーターの中心へポチを含めた四人で飛び込む!

 

 ちょっと前なら、準備も偵察もなしに飛び込むような真似はしなかっただろう。ストマックとその変異体をやっつけて確信めいたものが湧いてきた、テルにもタングリスにも迷いはない、わたし(ブリュンヒルデ)もいつもの意地っ張りではない、ポチも小さな体に自信をみなぎらせている。

 穴には無数の横穴があって四人を惑わせる。惑わせるばかりではない、ほとんどの穴からは出くわしたことのないクリーチャーが攻撃を仕掛けてくる。しかし四人は、戦い慣れたダンジョンのように、あらかじめクリーチャーの出現が分かっているかのように切り抜けていく!

 ……この先に空がある!

 地下に向かって落ちているはずなのに空を予感した。落下しつつバク転をくわえると、予感の通り重力が反転し、急速にブレーキがかかった。

 スポ スポポポ スポポポポ ポン!

 小気味よくビール瓶の栓を開けたような音をさせて、旋回しつつ空中に躍り出た。

 

 そこは、本来のヘルムの奥つ城であった。

 ヘルムは分断されておらず、灌木林の向こうにはヘルムの自然や街が地続きで広がっている。

 四人が旋回する中心は穏やかな野球場ほどの草原があり、草原の真ん中には像ほどの大きさのエメラルドが鎮座している。エメラルドはキラキラ光り、あたかもヘルムの自然にエネルギーを供給しているかのように外に向かってエネルギーを発しているのが分かる。

 眩しくて目をつぶりそうになるが、こいつから目を離すと遠心力で振りとばされて何もかもがお仕舞になるか振り出しに戻されそうな予感がする。

「みんな、あれから目を離してはいけないぞ! 指の隙間からでも目を細めてもいい、あれをしっかり見ておくんだ!」

「わ、分かった」

「ラジャー!」

「承知!」

 四人が旋回するにつれ、エネルギーの中心がエメラルドの頂点に凝縮して人の形をとった。

 それは、ユーリアの形を結んだ。

「クリーチャーではないな……」

 声に出したのはわたし一人だったが、他の三人も同じ気持ちなのだろう、穏やかに着地した。

「「さすがはオーディンの姫君とお仲間、正しく理解していただけているようで心強く思います」」

 不思議だった、喋っているのはユーリアなのだが、声には二人分の響きがある。

「あなたは?」

「「ユーリアであったものであり、ヤマタであったものです」」

「つまり……」

「「この身をなんと呼ぶか、それは、わたしが伝説となっていく間に定まっていくでしょう……とりあえずはヘルムとでも呼んでください」」

「ヘルム」

 一歩前に出たタングリスが続ける。

「戒めを解いて、ユーリアを家族の元に帰してはもらえないだろうか」

「「それについては、少し話を聞いてもらえますか」」

「はい、謹んで」

 きっぱり言うと、タングリスは一歩退いて、わたしの斜め後ろに収まる。

 ここでは神域の序列を守らなければならないと思ったようだ。

「わたしはオーディン以前の神によって遣わされました、神としての有りようが違うのです」

「違うと言われると?」

「長い話になるが、聞いていただけるだろうか……」

「はい、みんなもいいだろうか?」

 三人は、草の上に腰を落ち着けることで賛意を示した。

 ヤマタの……ヘルムの神との対話が始まった……。

 

☆ ステータス

 HP:20000 MP:300 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・300 マップ:12 金の針:60 福袋 所持金:450000ギル(リポ払い残高0ギル)

 装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 空蝉の術 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)  思念爆弾

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

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かの世界この世界:133『スキルアップしたのだ!』

2020-11-15 06:10:08 | 小説5

かの世界この世界:133

『スキルアップしたのだ!ブリュンヒルデ       

 

 

 わたしが本物だから!

 

 そう主張するユーリアは、八メートルほどの間隔を開けて、それぞれにこんぐらがっていた。

「ハーネスを切って下ろして!」の声も前後して五人分聞こえる。

「うかつに下ろせないぞ……」

 タングリスの言う通りだ、クリーチャーというのは擬態する。五人のうち四人のユーリアは擬態したクリーチャーだ、下ろしたとたんに襲い掛かって来るだろう。

「早くして! 頭に血が上る~!」

 ほとんど逆さになったユーリアが顔を赤くしている。

「腕が千切れそう~!」

 右腕を絡み取られたユーリアの指先が痙攣している。

 他の三人ももがいているうちに増々苦しくなっていく。

「ウグッ!」

 一人が蔦を首に絡ませてしまった!

「じっとしてろ!」

「待て、テル!」

 タングリスの制止も間に合わずテルが飛び出した。わたしもタングリスも飛び出す! 万一の時はテルを助けるためだ。

「来るな!」

 叫びながらテルは地面を蹴る! 

 セイ!

 ユーリアのすぐ脇を通る瞬間に剣を抜き放って蔦を切断した!

 自由になったユーリアは地面に落ちる寸前に大きな蜘蛛に変身、糸を吐き出しながら密林の中、テルを追い掛け回す。

 

 シャーーーーーーー!

 

 たった今までユーリアだったそれは、溶けた飴のように糸を引きながらテルを追いかけ回す!

「いま助けるぞ!」

 地面を蹴った! 瞬間でクリーチャーに追いつきツィンテールを振り回して、そいつの背中をたたっ切る! わずかに届かなかったが、引きずった糸を切断した。

 ベチャ!

 糸の切れたそいつは、その瞬間のエネルギーの方向にすっ飛んで木の幹にぶつかってプリンのように四散した。

「姫!」

 タングリスの叫びを最後までは聞かなかった。視界の端に迫りくる三体のクリーチャーを認めたからだ!

「セイ!」

 横っ飛びにジャンプ! 旋回しながらツインテールの一閃をくれてやる! クリーチャーの伸びきった糸を切断! さっきのと同じように地面に激突すると四散した!

 空中で一回転! 次に供えようとしたら、テルとタングリスも一体ずつ倒していた。

 

「……ということは、こちらが本物か」

 

「ありがとう、低空を飛んでいたら、急に触手のようなのが伸びてきて絡み取られたの(^_^;)」

 見えない敵に四の字固めをくらったような姿勢で礼を言うユーリア。

「いま、助けるから。テル、そっちを、姫は頭の方を」

 三人で囲むようにしてユーリアに絡まったハーネスやら蔦を切り取る。

「ありがとう、やっと助……」

 その瞬間、ユーリアは手足を広げたかと思うと八畳敷きのチューインガムのように広がって三人を包み込んだ!

 グシュッ グシュグシュ グシュッ

 数秒で捕らえた三人を圧縮すると、圧縮に反比例して地面が口を開ける!

 ズボッ!

 瞬間の吸引力で吸い込まれると、地面は閉じてしまって静寂が訪れた。

 

「もういいですよ……」

 

 ポチの声がかかって、我々は茂みから顔を出した。

 ちょっと信じられない光景だった。四体のクリーチャーをやっつけて、振り返ると、わたしを含めた三人がユーリアを助けようとしているところだった。「隠れて」という囁きで身を隠していたら、いまの顛末になったのだ。

「ポチ、いまのは空蝉の術だったな」

「なんか、とっさにやっちゃった……」

 どうやら、ポチの新しいスキルが覚醒したようだ。

「少し後退しよう」

「後退?」

「すれば分かります」

 タングリスの言うままに。密林の中を五十メートルほど後退した。

 ズズズズーーーーーン

 くぐもった地響きがしたかと思うと、次の瞬間、それまで居た密林が山のように膨らんでから爆発した!

 

 ズッボーーーーーーーーーン!!

 

「ポチの空蝉に思念爆弾を仕掛けました」

「わたしも、何かを仕掛けた気がする。もう少し下がろう」

 みんな知らないうちにスキルアップ! なんか面白くない!

 

 ドッガーーーーーーーーーーン!

 

 前の数倍の爆発が起こり、我々も吹き飛ばされたが、空中で二回転して着地した。

 密林の中、野球場ほどに木々がなぎ倒され、その中央はクレ-ターとなって口を開けていた。

 目的の場所、ヤマタの居場所は、このクレーターの向こうのようだ……。

 

☆ ステータス

 HP:15000 MP:200 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・280 マップ:11 金の針:60 福袋 所持金:400000ギル(リポ払い残高0ギル)

 装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 空蝉の術 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)  思念爆弾

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

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かの世界この世界:132『発見』

2020-11-14 05:16:40 | 小説5

かの世界この世界:132

『発見語り手:タングリス          

 

 

 ヤマタの根城に近いのか、灌木林は鬱蒼としたジャングルのようになってきた。

 

 灌木の背丈はせいぜい三階建ての高さほどだが、ジャングルのようになった今は木や草の丈はほとんど十メートルはあろうかと思われた。

 かなりの草木が自分で発光していて、それも草木の種類によって色が違う。上空では風が吹いて小梢を揺さぶっているようで、地上に近い枝や葉っぱが蠢動し、それにつれて光が怪しげに重なり、あるいは交差したりするので不気味さはこの上ない。その上、猛獣ともクリーチャーともつかない咆哮や鳴き声が混じり合って耳から侵入し、ただでさえ混乱しそうな意識を切れ切れの混濁の中に封じ込められそうになる。

「何か聞こえる!」

 テルの声でみんなが停まる。たいていは聞き間違いか幻聴なのだが、聞こえるたびに全員が立ち止まることにしている。聞こえた者が勝手に動き出しては密林の中でバラバラになる恐れがあるので、全員が納得というか共通の認識ができるまでは動かないのだ。納得するには確認が必要で、ポチが、その役目をはたしている。

「ポチ、確認してくれ」

「ラジャー!」

 目印のために風船をあげる。音や気配の正体を確認したポチは密林の上まで出された風船を目当てに戻ってくるのだ。

 四五分もあれば、正体がわからなくとも戻って来る。分からない時は、その方向を避けて進むのだ。時間はかかるが安全で確実だ。

「十分過ぎたぞ」

 姫が呟く。たしかに、十分もかかるのは初めてだ。

 もう少し待ちましょうと目配せすると姫を挟んだテルと目が合う。テルも同じことを考えているようだ。

 さらに五分すぎてポチが戻ってきた。

「どうしたんだ、ポチ?」

「……見つけた、ユーリアが居たよ!」

「ほんとうか!?」

「うん、切れ切れの気配で迷ったけど、何度も確認したよ」

「どっちだ?」

「見に行く?」

「もちろんだ」

「じゃ、こっち!」

 ポチの後を付いて密林をかき分けること数分、少し開けたところにユーリアは居た。

 ハングライダーが枝に引っかかり、伸びたハーネスが絡み合って、複雑な姿勢でぶら下がっていた。

 姫が身を乗り出そうとすると、ポチが押しとどめる。

「なぜ、止める?」

「これが一人目だから……次行くよ!」

「「「次?」」」

「こっち!」

 

「「「え!?」」」

 

 ポチに引き回されて、我々は五人のユーリアを発見してしまった……。

 

☆ ステータス

 HP:11000 MP:120 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・180 マップ:10 金の針:50 福袋 所持金:350000ギル(リポ払い残高0ギル)

 装備:剣士の装備レベル45(トールソード) 弓兵の装備レベル45(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

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かの世界この世界:131『ポチに救われる』

2020-11-13 05:18:20 | 小説5

かの世界この世界:131

『ポチに救われる語り手:タングリス        

 

 

 油で揚げる前の天ぷらという感じだ。

 

 ストマックから吐き出された三人は胃粘液やら溶けた自分たちの服やら訳の分からない粘着質でベトベトになり、それが灌木やら下草に絡まって、起き上がることもままならなかった。

「なんだ、おまえたちはあああああ!」

 頭上で声がした。なんとか首をもたげると、灌木の梢でポチが吠えている。

 葉っぱの盾と小枝の剣を構えて威嚇している姿は、健気とも可愛いとも言えるが、我々三人に、そんな余裕は無い。まとわりついているネバネバが急速に固まりはじめて、このままでは身動きどころか呼吸さえできなくなってしまいそうなのだ。

「ポチ、わたしだ、タングリスだ。いまクリーチャーの胃の中から吐き出されてきたところだ」

 首を巡らせてテルと姫を確認。二人は口にまとわりついたネバネバのせいで喋ることもできないようだ。

「ウィンドウを開くから、リペアアイテムの中から洗浄液を探してかけてくれないか」

「ほんとにタングリスなの?」

「タングリスだ、疑うんなら、とりあえず顔だけ洗浄して確かめればいいだろう」

「わ、分かった!」

 盾と剣を放り出すと、ホバリングして、なんとか開いたウィンドウを操作し始める。

 一抹の不安はあった。ポチ自身はウィンドウを持っていないし、ウィンドウを操作してファイルを開いたこともない。ただ、我々がやるのを傍で見ているのでやれるとふんだのだ。不安を口にすればポチは自信を失ってオタオタしてしまうだろう。じっさいポチは我々の危機的状況を感じ取ってワタワタと画面をスクロールしている。

「あった! でも、解凍してインストールしなきゃダメみたい」

「ああ、いつもわたしがやっているように……」

 口に周りの粘液が固まりはじめた。

「解凍して……展開して……Updater……管理者権限で実行、エイ!」

 まとわりついていたネバネバが粘土を失ってサラサラになって蒸発していく。思った以上にうまい操作だ。姫とテルもネバネバから解放されていく。

 解放されると、最後に残った下着も心もとないので、ファイルから着替えを選択して身づくろいする。

「でかしたぞ、ポチ!」

「ふぎゅーー(;゚Д゚)」

 感激した姫が抱きしめるので、ポチは危うく抱き殺されそうになる。

「ポチが窒息するぞ!」

 テルが引き離して、やっと三人も落ち着いた。

「しかし、ポチはなんで呑み込まれなかったのだ?」

「呑み込まれたよ、でも、ノドチンコみたいなのに引っかかってさ。そのあと鼻の方によじ登ったら草叢みたいな鼻毛にひっかっかって、そいでジタバタしてたら、クリーチャーのやつがクシャミをして吹き出されたんだ」

「そうか、お蔭で助かったぞ。なにかご褒美を考えてやらなきゃな」

「ご褒美だなんて、そんなあ……(n*´ω`*n)」

「ご褒美は事が片付いてからでしょう、先を急ぎましょう」

「そうだな、さっきのクリーチャーには気を付けなければな」

「あいつに名前はないのか?」

 テルが真っ当なことを聞く。

「ヘルムの固有種で未発見のものだからなあ」

「それなら、ストマックにしましょう」

「即物的だなあ」

「しかし、注意喚起にはいいと思いますよ」

「そうだ、たった今から、あいつはストマックだ!」

「それで……あいつは、どこに行ったんだ?」

「「「……」」」

 

 そのストマックは我々を吐き出した後の行方がしれない……。

 

☆ ステータス

 HP:11000 MP:120 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

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 装備:剣士の装備レベル45(トールソード) 弓兵の装備レベル45(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 

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☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

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 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

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かの世界この世界:130『イン ザ ストマック』

2020-11-12 12:17:53 | 小説5

かの世界この世界:130

『イン ザ ストマック語り手:テル      

 

 

 蠕動運動を起こした美容院は数秒で巨大な口になった!

 

 二十畳ほどあった床は舌に変わって、我々はロレロレ転がされて口の向こうの食道の方へ呑み込まれてしまった。

 ダスターシュートのような食道を抜けると遊園地のバルーンハウスのような所に墜ちた。

 フワフワしているところはバルーンハウスだが、ネバネバしている。

「せっかくシャンプーしたところなのにい!」

「姫、ここは巨大なクリーチャーの胃の中と思われます」

「胃の中!?」

「きっと、灌木林の中で開けた口を美容院に偽装して誘い込んだのでしょう、うかつでした」

「シャンプーは、シャンプーリペアーと言って、瞬間でシャンプーとトリートメントをするだけのようだぞ」

 フォルダーを確認すると効能書きのテキストが出てきた。我々の不注意か、そういう魔法が掛かっていたのか、さっきまでは認識できなかったのだ。

「このままでは胃酸に溶かされます……溶解防止のアイテムは……」

「あった、消化防止リングだ」

 裁縫に使う指ぬきのようなものだ、各自フォルダーから出して指に装着する。お茶を口に含んだ時のような爽やかさ、お茶のそれと違うのは、その爽やかさを全身をで感じることだ。しかし……護ってくれるのは生身の体だけのようだ。

「服が溶けだしてきたぞ!」

「ということは、裸にされて化け物の体内を巡って…………出されるわけか?」

「消化の早さから見て……おそらく四時間後ぐらいには出られるでしょう」

 我々が収まったことで刺激されたのだろう、巨大な胃袋が消化活動を活発にしてきた。胃壁が収縮してもみくちゃにされる。そのたびに胃壁に擦られ、他の者とぶつかって服がほぐれて溶けていく。

「こんなみっともないことが四時間も続くのか!」

 あまりの気持ち悪さにブリュンヒルデは自慢のツィンテールをお下げほどの長さに縮こまらせた。

「腸の方へ行ったら、こいつが先に食ったものと一緒になるのではないか?」

 先の事を予想して、我ながら不吉な想像をしてしまった。

「先に食ったモノって……?」

「それは、子どもが大好きな仮名文字三字で表現されるものでしょう」

 タングリスが無表情に言う。

「それって、ウ〇コのことか!?」

「死ぬよりはましでしょう」

「死んだ方がましだあ!」

「胃から十二指腸にいくには、まだ間があるだろう、グチってないで考えよう」

「なるべくなら、服が溶け切る前に考えが浮かぶといいがな」

 三人の衣服はあらかた溶かされて、胃液を含んで半透明になった下着を残すのみとなっている。

「ところで、ポチの姿が見えません」

「あいつ小さいから、もう溶かされてしまったのか?」

「痕跡さえありません」

「不憫なやつだ……」

「いや、痕跡もないということは、胃の中には居ないのではないか?」

「そうか……とすると?」

 その時、胃がギュっと収縮して、三人は満員電車の中に居るようになった。

 ムギュ~~

「タングリス、寄るなあ!」

「仕方ありません、こいつの生理現象でしょう……」

 次の瞬間、巨大なダムが決壊したような衝撃に襲われた!

「「「ウワーーー!!」」」

 闇と光と胃液がグルングルンと交錯し、我々は上下の感覚を失った……。

 

☆ ステータス

 HP:11000 MP:120 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・180 マップ:10 金の針:50 福袋 所持金:350000ギル(リポ払い残高0ギル)

 装備:剣士の装備レベル45(トールソード) 弓兵の装備レベル45(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

 

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かの世界この世界:129『灌木林の中に美容院!』

2020-11-11 05:11:56 | 小説5

かの世界この世界:129

『灌木林の中に美容院!語り手:テル        

 

 

 努力の甲斐あって開けたところに出てきた。

「もう、髪がビチョビチョのネチャネチャーーー!」

 

 ブリュンヒルデの髪は獰猛な植物たちの樹液に染まって薄っすらと緑色に染まり、その水分で重くなって、ぶん回すことを止めると大雨に降られたライオンのタテガミのようになった。

「よく頑張られました、すこし休憩しましょう。姫、シャンプーさせていただきます」

「こんなところでシャンプーできるの?」

「回復アイテムの中にシャンプーがあります……」

 タングリスがホルダーにタッチすると、美容院のシャンプー台が出てきた。

「立派なのが出てきた!」

 それだけではなかった、シャンプー台の周囲がムクムクと変化して本格的な美容院になった。

「おお、すごい!」

「ここまでとは!」

「ドライシャンプーくらいのものかと思っていた」

「ああ、これはいい! 一瞬の魔法でやるよりもリラックスできるし!」

「美容師までは付いていないようだな」

「セルフサービスだよ、この方が面白いかも!」

「テル、わたしたちもやろう、気分転換になる」

「あたしもやりたい!」

 ポチも手をあげて交代でシャンプーすることにした。

「わたしは最後でいいぞ」

 ブリュンヒルデが似合わぬ遠慮をする。

「そうですか、それではポチからやってやろう」

 女と言うのは髪をいじるのが大好きだ。人をシャンプーしてやることも十分癒しになる。

 ブリュンヒルデが遠慮したのが意外だったが、最後にやってみて分かった。

「なんで、こんない長いんだあ!」

 リラックスしたブリュンヒルデの髪は五メートルほどの長さになった。まるでラプンツェルだ。

「ふだんは短くしているのだ、フン!」

 気合いを入れると普段の長さに縮む。

「おもしろーい!」

 ポチが面白がって髪を体に巻き付ける。フンッ! ホー フンッ! ホー オッサンがメタボの腹をペコペコさせるように気合いに加減をくわえると、ブリュンヒルデの髪はピュルピュルと伸び縮みを繰り返す。夏祭りや縁日で売っている『ふきもどし』にそっくりだ……ん? なんで見たこともない『ふきもどし』を知っているんだ?

 ときどきおこるデジャブに思考をとられていると、周囲の様子が変わってきた!

 美容院の床や壁がグニャグニャに波打ったかと思うと、美容院は袋状になって急速に縮みながら蠕動運動を始めた。

「しまった、罠だぞ!」

 タングリスが叫んだ時には蠕動運動が起こって、ポッカリ穴の開いた床に飲み込まれていった……。

 

 

☆ ステータス

 HP:11000 MP:120 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・180 マップ:10 金の針:50 福袋 所持金:350000ギル(リポ払い残高0ギル)

 装備:剣士の装備レベル45(トールソード) 弓兵の装備レベル45(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

 

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かの世界この世界:128『灌木林を進む!』

2020-11-10 06:06:22 | 小説5

かの世界この世界:128

『灌木林を進む!語り手:テル       

 

 

 灌木林の獣道を進む。

 

 灌木とは言っても人の背丈の何倍もあって、その灌木たちはノンノンと葉を茂らせているので薄暗い。

 おまけに低木の枝とか蔓とかも手で避けられる量ではないのでアイテムフォルダーから出した鉈を振り回して道を広げなければならない。

 えい!……えい!……せい!……それ!……

 いちいち掛け声をかけて鉈を振りかぶるが、タングリスはほとんど無言で道を切り開いていく。

「力を入れていては直ぐにバテるぞ」

「ああ、分かるんだけど、声をあげないと力が入らない……せい!」

「そうか、なら、わたしがペースを合わせよう。ひとまず汗を拭け」

「あ、そうだな」

 言われて気が付いた、顎の先から汗がしたたり落ちている。ざっくり拭いてから首にタオルを巻く。ほんとうなら腕まくりをしたいところだが、蔦や小枝で手を傷つけるので我慢する。

「人間は図体が大きくてたいへんだね(^^♪」

 ポチのやつが喜んでいる。

 ポチは1/6フィギュア程度の大きさしかない。枝や葉っぱの隙間をスイスイと飛んでいける。

「ポチの基準で道というのは、こういうのも入るんだ」

「獣道だから仕方ないよ」

 言うことはもっともだ。獣道でないところは下草がハンパでは無くて鉈を振り回しても進めるものではない。

 

 ブイーーーーーン!!

 

 突如、斜め後ろで派手な音がした。

「これだとラクチンであろう🎵」

 ブリュンヒルデがチェ-ンソーを使いだした。

「姫、それはいけません」

「どうしてさ」

「音が大きすぎます、ヤマタに気取られてしまいます」

「気取られて、姿を現してくれたら勝負が早くなるのではないか?」

「こちらから仕掛けるのと、相手から奇襲をかけられるのでは勝率が全然違います」

「そんなものなのか?」

「はい、地味ですがコツコツとお願いします」

「ブリュンヒルデのツィンテールをぶん回せばいいじゃないか。いつだったかのプレパラート戦のときなんか大活躍だった」

「か、髪が汚れるだろ! 葉っぱとか湿ってるし、訳の分からない虫とかもいるし、そんなの付いたらあとの手入れが大変だ」

「口ではなく手を動かして!」

 タングリスのこめかみに青筋が浮く。ポチの力では鉈は振り回せないので、これはブリュンヒルデ一人に言ったのと同じである。

「ンモーーー」

 クリーチャーとの戦いでは大人びた口で冷静に戦闘指揮もできるブリュンヒルデだが、お姫様然とした我儘が出てくる。自分より年下のロキやケイトが居ないこととタングリスというおもり役がいるからこそのことなんだろう。

「ほら、しっかりやれー! フレーフレー! ブリュンヒルデーー🎵」

「ポチも手を動かせ! タングリスも言っただろーがあ!」

「動かしてるもん、ブリュンヒルデ応援するのに手を振ってるよ🎵」

「叩き落すぞお!」

「おっかなーーーい🎵」

「姫!」

「うい」

「ポチも、しっかり進路を警戒しろ」

「らじゃー……まだ百メートルも進んでないよ、まだ五キロはあるよ」

「いつまでかかるか分からんなあ」

 みんなの手が止まってしまった。

「ブロンズフラッシュを使ってみる」

 わたしはスキルを使うことにした。スキルはHPとMPを馬鹿みたいに必要とするが、回復系アイテムもふんだんにある。

「試してもらおうか……」

 わたしは「ブロンズフラーーッシュ!」と詠唱しながら勇者の剣を振った。

 ブリュン!

 ザザっと頼もしい音がして、枝やら木の葉やらが盛大に舞い散った。

 半径三メートルほどの灌木がきれいに薙ぎ払われた。しかし、たったの三メートルでしかない。もう少しいけると思ったのだが。

「ダメだ、我々の進路を暴露するだけだ」

 そうだろう、百回使って六百メートルほどは進めるが、同時に幅三メートルの空白を灌木林に着けてしまうことになって我々の存在を暴露してしまう。

「わかった、わたしがやろう……」

 ブリュンヒルデが俄然大人びた口調になって、ツィンテールのリボンを解いた。

「いくぞ……スプラッシュテール!」

 ザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザク!

 解かれたテールが数百の枝切ばさみになり人一人が通れるほどのトンネルを灌木林の中に穿って行ったのだった。

 

 

☆ ステータス

 HP:11000 MP:120 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・180 マップ:10 金の針:50 福袋 所持金:350000ギル(リポ払い残高0ギル)

 装備:剣士の装備レベル45(トールソード) 弓兵の装備レベル45(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

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かの世界この世界:127『ポチのデジカメ』

2020-11-09 05:55:46 | 小説5

かの世界この世界:127

『ポチのデジカメ語り手:テル         

 

 

 なるべく早く帰ってきてくださいよ(~o~)。

 

 お手上げというジェスチャーをして荒れ地の万屋はあきらめた。

「ペギーさん困らせるんじゃないぞ」

「「分かってる!」」

 これ以上ないというふくれっ面でロキとケイトの声が揃った。

 転送販売に来て帰れなくなったペギーは、我々がヤマタの神をやっつけてユーリアを連れ戻すまで子守をしてもらうことになったのだ。

「あんな顔の二人は初めてだね」

 体と精神年齢では二人以上に子どもなのだが、空を飛べるポチは偵察と連絡役のために連れてきている。

「どうだ、上から見て、この道があってるかどうか分かるか?」

 タングリスが聞くと、上空五メートルくらいのところでキョロキョロする。

「分かんないよ、灌木の葉が茂って見当がつかない」

「ち、使えないやつだ」

「あ、いま舌打ちしたね! たとえ王女様だって、舌打ちはゆるさないぞ!」

「だったら、役に立ってみろ!」

「姫、罵倒されて発奮するものではありませんよ。いちど下りてこい、ちょっと考えてから進もう」

「らじゃー」

「打ち合わせなら出発する前にしておくべきではないのか」

「すみません」

 タングリスは謝るが、わたしには分かる。ロキとケイトの前で相談すれば二人の疎外感を強くするばかりだ。

 ここらへんで体制を整えるのが上策だろう。

「なにか使えそうなアイテムはないだろうか……」

「同じことを考えていたな」

 目の高さの空間をクリックしてウィンドウを出す。アイテムをクリックするとペギーから買ったばかりの福袋のフォルダーが目についた。三人共用のフォルダーになっているので献策がしやすい。

「種類も量もハンパじゃないぞ」

 ブリュンヒルデがぼやく。ぼやくのも無理はない、スクロールしてもきりがないほど続いているのだ。

「十キロの純金と交換したんだ、これくらいには……」

「ジャンクじゃないのか……」

「とりあえず、系統別に分けましょう」

「そうだな、回復系、補助系、白魔法、黒魔法……」

 三人で忙しく指を動かす。

「分けても、それぞれ千以上あるし……」

「追尾アイテムはないだろうか……それをポチに持たせれば……」

「『しるべ虫の粉』がある」

「ああ、モンハンの必須アイテム!」

「でも、これってモンスターにしか効かないのでは?」

「ポチはもともとシリンダーの変異体だ。シリンダーならモンスターだろ」

 三人の目線がポチに向く。

「し、失礼な! いまのあたしは妖精だもん!」

「いや、悪かった(;^_^A」「すまんすまん(^_^;)」「もっと探そ」

 ゴソゴソ ガサゴソ

 やがて、本来の目的を忘れて整理することに夢中になってしまい、ヘンテコなアイテムを見つけてはヘーとかホーとか声をあげているだけになった。

 ポチの方が偉かった。

「見つけたよ! 正解のルート!」

 我々が整理に没頭している間に、ポチは地上スレスレに獣道を飛んで調べてきたのである。

「これ、見てよ!」

「おまえ、デジカメなんか持ってたのか!?」

「ブリュンヒルデのフォルダーからこぼれたのを拾った」

「ああ、画素が百万しかない三世代前のジャンク」

 ブリュンヒルデはバカにするが、問題が解決すればノープロブレムだ!

 ポチのデジカメには『ヤマタ神方面』と表示の付いた洞窟が映っていた……。

 

☆ ステータス

 HP:11000 MP:120 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・180 マップ:10 金の針:50 福袋 所持金:350000ギル(リポ払い残高0ギル)

 装備:剣士の装備レベル45(トールソード) 弓兵の装備レベル45(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

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かの世界この世界:126『荒地の万屋』

2020-11-08 05:39:49 | 小説5

かの世界この世界:126

『荒地の万屋語り手:テル            

 

 

 それは荒地の万屋だった!

 

「「「「「ペギー!」」」」」

 みんなの声が揃った。

「いやあ~、あんたたちだったのか!?」

「ペギーさんて、魔法が使えるの!?」

「いやはやいやはや……」

 ペギーは目をまん丸くして慌てたペンギンのように両手をパタパタさせた。

「あんたたちは大得意さんのカテゴリーに入ったみたいだねえ」

「大得意?」

「ああ、大得意さんになるとね、ピンチの時は転送されるんだよ。さあてっと……ここはヘルムの島……神域の入り口に差しかかったところだね……それも、かなり深刻だ。神域が俗域と分断されてしまっているよ」

「分かるんだ」

「伊達に荒地の万屋やってないからね……おやおや、これから大変な戦いになろうって言うのに戦車を金ぴかに塗っちゃダメでしょ」

「金ぴかに塗ったんじゃなくて、金ぴかのピカ抜きにされたんだ」

「ピカ抜きの……って、この戦車、ゴールド!?」

「ああ、主神オーディンの娘にして堕天使の宿命を背負いし漆黒の姫騎士であるわたしでも使えぬ錬金魔法だ」

「……純度99.6」

 さすがは荒野の万屋、一瞥しただけで純度を見抜いた。

「でも、純金の戦車ってダメなんだぞ、重くて柔らかすぎて使い物ならないんだぞ」

 ロキが仕入れたばかりの知識をひけらかす。

「ああ、そうだ。そういう相手だから、子ども二人は連れて行ってもらえないというところかねえ」

「ああ、我々の武器も純金に変えられてしまって、使い物にならない」

「それで、わたしが転送されたというわけなんだなあ」

「そうか、ちょっと品物を見せてもらおうか」

 やっと、我々も思い至ってペギーの品ぞろえを見せてもらうことになった。

 わたしは勇者の剣、タングリスは魔弾のワルサー、ブリュンヒルデは賢者のシュシュ、そして、それぞれのレベルに見合った魔法の福袋。

「支払いはカードでいいか?」

 タングリスがカードを取り出すと、ペギーは困った顔になった。

「悪い、転送販売はカード使えないんだよね……」

 三人とも手持ちのギルはそんなにはない。ギルや経験値を稼げるバトルはシュネーヴィットヘンに乗船している時にパラノキアの巡洋艦と戦って以来やってないのだ。

「そうだ、戦車の装具を一ついただけませんか、小さなのでけっこうです。なんたって純金なんだから」

「そうだ、それがいい」

 グルッと見渡して、予備キャタピラ一枚で手を打つことになった。

 しかし、一枚で十キロを超える重量の純金キャタピラだ。リボ払いまで完済したがおつりが大変だ。

「じゃ、いろいろアイテム付けとくから、残りは、次会ったときということで……」

 回復系やプロテク系のアイテムをしこたまもらった。

「それじゃ、みなさんなのご武運を祈ってるわ。怪我しないようにがんばってね!」

 やっぱり商売人、取引が成立すると嬉しそうに立ち上がった。

「ペギーさん、どうやって帰るの?」

 ケイトが根源的な質問を投げかけた。

「そりゃ、もと来た道を……あれ?」

 そう、ここはヘルム本島から突如切り離された神域の島。

 ペギーが現れた空間のシミのようなものも消え失せて、帰れなくなってしまったのだ。

 

☆ ステータス

 HP:11000 MP:120 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・180 マップ:10 金の針:50 その他いろいろ 所持金:350000ギル(リポ払い残高0ギル)

 装備:剣士の装備レベル45(トールソード) 弓兵の装備レベル45(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

 

 

 

 

 

 

 

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かの世界この世界:125『純金の四号では戦えないぞ』

2020-11-07 05:50:24 | 小説5

かの世界この世界:125

『純金の四号では戦えないぞ』語り手:テル       

 

 

 鋼鉄でできているはずの四号は純金になってしまっていた。

 

 半信半疑で砲塔の端っこを削って分析すると純度99.6%の金に変わってしまったのだ!

「プレパラートの仕業なのかなあ(;'∀')」

「下級クリーチャーのくせに生意気なことをする」

 ロキとケイトはイッチョマエに腕組みしているが事の深刻さは分かっていない。

「すべて純金になってしまったのなら動かせないぞ」

 タングリスは参った様子で四号のあちこちをチェックする。わたしもブリュンヒルデも加わって二分もしないうちに完了した。

 転輪と誘導輪の被覆ゴムとペリスコープの防弾ガラス、照準器のレンズ以外は全て金に変わっていた。

「金だとだめなの?」

 ケイトが素朴な質問をする。

「金は重くて柔らかい、動かしたら荷重のかかるところが折れるか曲がるかしてしまう。装備もチェックしておこう」

 調べてみると剣や拳銃、ナイフにベルトのバックルからボタンに至るまで金に変わっている。

「これでは、まともに戦えない」

「そう? なんだかきれいだけど」

 ケイトが試しに弓を持ち上げるが、子どもの体重ほどになった弓は両手で持ち上げるのがやっとで、とても矢を射られるものではない。わたしの剣も言わずもがなだ。

「これだけの金を売ったら、ヴァイゼンハオスも楽になるだろうなあ……」

 ロキが古巣を思い出してため息をつく。普段は口にしなくなったが戦災孤児院の仲間や先生の事は忘れられないのだろう。ヘルムのことが片付いたら考えてやらねばならないだろう、ブリュンヒルデのブァルハラ行きを優先するか、ロキのユグドラシル行きを先にするかを……。

「ここから先は、各自の戦闘術と魔法を頼りに進むしかないだろう」

「姫、わたしも同意見です。しかし、そのためにはロキとケイトは連れてはいけません」

 ロキとケイトが心外だという顔をしする。

「俺たちも連れてってよ、仲間なんだから」

「おまえたちは、まだ未熟だ」

「いままでいっしょに戦ってきたじゃないか!」

「ああ、しかし、我々も二人を護りながら戦って倒せる相手とは思えない、あのヤマタの神はな」

「そんなの、やってみなきゃ!」

「分かるんだ。このタングリス、伊達にトール元帥の副官をやっているわけではないぞ」

「ロキ、おまえはユグドラシルに戻ってお母さんに会わなきゃならないだろう」

「そ、それは……」

 可愛そうだが、痛いところを突いてやるしかない。

「だったら、わたしは!」

 ケイトが口を尖らせる。

「弓が使えなければ、駆け出しのヒーラーでしかないだろう」

「それでもヒーラーだもん!」

「ヤマタは強敵だ、ケアルしか使えないのでは自分一人の回復もままならないぞ。それに、おまえは……」

 あ…………(;゚Д゚)

 思わず顔を見合わせた。

 わたしとケイトには大事な任務があったはずなのだが、思い出すことができない。

「……なにか現れるぞ!」

 ブリュンヒルデの声にわたしとタングリスが前に出てロキとケイトを護る形になる。この反射的な行動は百の説得よりも有効だ。ここではロキとケイトは庇護される対象なのだ。

 四号の後ろ十メートルのところにシミのように浮き出した影は人の形をとりはじめた……。

 

☆ ステータス

 HP:11000 MP:120 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・80 マップ:9 金の針:5 所持金:1500ギル(リポ払い残高20000ギル)

 装備:剣士の装備レベル45(トールソード) 弓兵の装備レベル45(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

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かの世界この世界:124『プレパラートの攻撃!』

2020-11-06 06:08:02 | 小説5

かの世界この世界:124

『プレパラートの攻撃!』語り手:テル           

 

 

 ヘルムの島を二つに割ってヤマタは勝負に出たようだ。

 

「いったん戻った方がいいような気がする……」

「四号も飛べるようになったみたいだし、出直した方がいいような……」

 ロキとケイトが気弱になる。

「四号が飛んだのは火事場の馬鹿力だ、安定的に出せるものではない」

 ブリュンヒルデは自分のウィンドウを開いて見せた、黒魔法のフライはレベル5に過ぎない。なによりMPの残量が8しかなく、ファイアとかの初級魔法を二度ほどやったら枯渇するレベルだ。

 ブーーーーン

 小さな扇風機のような音をさせてポチが下りてきた。

「ユーリアの残像が山の方に続いていたよ。それと、なんだか分からないけど禍々しい気配が目の前の林からするよ」

 突然の地震にビックリして飛び上がってしまったんだろうが、一応の偵察はやったようだ。

「機会があったらライブラの能力を付けてやるといい。報告の内容が、もっと具体的になる」

「うん、そうするよ。ポチ、中に入って休んでろ」

「分かったあ、ポチ休むの~」

 みんな無事であることに安心したんだろう、通信機のベッドからは直ぐに可愛い寝息が聞こえた。

 

 サワサワサワサワサワ……

 

 灌木林の木々が一斉に葉っぱを揺する音がし始めた。

「これは……」

「車内に戻った方がいい、ハッチを閉めて、あの窪地に向かいます」

「分かった」

 タングリスの勘に従ってわたしもブリュンヒルデも車内に戻る。

「亀が手足をひっこめるみたいだ」

「ほんとだ」

 こども二人が分からんことを言う。

「だれが亀なんだぁ?」

「呼吸が合っているから亀が首や手足を引っ込めるのに似ている」

「四号のことだよ」

 

 ブーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン

 

 ポチの時とは違う羽音が響いた。数が多い……なんてものじゃなかった!

 ペリスコープから見える灌木林が振動しているように見える、いや、灌木林の木々の葉っぱが全て振動しているのだ。

「来るぞ!」

 ブウウウーーーーーーーーーーーン!

 羽音が大きくクレッシェンドしながら向かってくる!

「プレパラートだ!」

 カチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチ!

 無数のプレパラートが四号の車体を叩いていく!

 四号の装甲が削り取られることはないのだろうが、まさに身を削られるような不気味さ。例えて言うなら、数百人の歯医者に取りつかれて歯を削られているような気持ちの悪さだ。

 そんな想像をしてしまったからか、プレパラートの衝突音はシュウィーーーーーーーーンという高速音に変わった。

 プレパラートの衝突音が収まった時には、みんなレモンを丸カブリしたように酸っぱい顔になっていた。

 歯医者のドリルを想像したのは、わたし一人ではなかったようだ。

「わ、スゴイことになってる!」

 開けたハッチから真っ先に飛び出したポチが驚きの声をあげた。

「「「「「オオーーーーーー!!」」」」」

 

 四号の塗装は全て削り取られて金属の地肌が露出していた。

 そして……

 露出した地肌は鈍色の鉄ではなく、眩いまでの金色であったのだ!

 

☆ ステータス

 HP:11000 MP:120 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・80 マップ:9 金の針:5 所持金:1500ギル(リポ払い残高20000ギル)

 装備:剣士の装備レベル45(トールソード) 弓兵の装備レベル45(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

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かの世界この世界:123『対シリンダー戦』

2020-11-05 06:24:25 | 小説5

かの世界この世界:123

『対シリンダー戦』語り手:テル          

 

 

 空を埋め尽くすほどのシリンダーの群れだ。

 

 全てを相手にすることは出来ない、群れの薄いところを集中的に攻めて穴が開いたところから突破するしかない。

 時間をかけていると融合体になってしまって手が付けられなくなる。

――三式弾だ、三時の方向が薄くなっている、撃ったら突撃する――

「三式弾ヨーイ!」

「ラジャー」

 ブリュンヒルデが命じ、ロキが弾を込める。三式弾とは一種のクラスター弾で、目標に最接近したところで炸裂し、打ち上げ花火のように幾百の子弾をまき散らす。シリンダーの群れに穴が開いたところを一気に突き抜けようと言う作戦なのだが簡単ではない。一撃で致命傷を与えられるのは炸裂の中心から半径十メートルほどがせいぜいだ。傷ついたシリンダーは直ぐに融合して、その名も融合体となって難儀なクリーチャーに変異する。これまではなんとかしのいできたが、ヘルムのシリンダーは初めてだ。いや、ヘルムにはこれまでクリーチャーが出現したという記録すら無いのだ。見かけは同じシリンダーでも油断はできない。

 テーーー!!

 号令と変速機が四速に切り替わるのが同時だ。

 飛んでいる状態でシフトチェンジが有効なのかは一瞬疑問……だが杞憂だった。

 ズガーーン!!

 ギュィーン!

 三式弾の炸裂! 四号の増速!

 シリンダーの壁には四メートルほどの穴が開いているが不完全で、境界には胡麻斑のようにブチギレても生きているシリンダーがいる。

 ビチャ ビチャ ビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャ!

 破片になっても生きているシリンダーが粘液をまき散らしながら四号の車体に貼り付いていく!

「くそ、粘っこいやつらだ!」

 貼り付いたシリンダーが四号の行き脚を鈍らせる、タングリスは負けじとアクセルを踏み込むがエンジンは息絶え絶えになり、速度計の針は急速にゼロに近くなる。

 えい! えい! えいえいえい!

 可愛い気合いが聞こえる。

「ポチが一人がんばってるぞ!」

 ペリスコープから覗くと密集したシリンダーの砕けの中でポチが戦っている。

「ケイト、行くぞ!」

「おお!」

 ハッチの隙間から剣と弓を出し、邪魔になるシリンダーをぶちのめしつつ外に出る。

 出た途端に貼り付くシリンダーの砕け、左手で顔に貼り付かれるのを防ぎながら剣を振り回す。ケイトも同じように弓を振り回している。ケイトの弓も進化していてライトセーバーのように光って、振り回す旅にブンブンと頼もしい音がしている。

「げ、限界だ……高度が保てん!」

 ブリュンヒルデが唸る、ハッチの縁を掴む手がブルブルと震えはじめた。

 グィーーーン ズザザザザザザザ! ザーーー!

 四号は墜落と降下の間ぐらいの勢いで着地していった。

 

 見上げる空にはシリンダーの群れがわだかまっているが、降りてくる気配は無く、大きく旋回すると北に向かって方向を変える、変えた先には胡麻粒ほどの大きさになってなお北進していくユーリアが視界没になっていく。

 視線を落とすと、身の丈ほどの灌木林。所々に獣道なのだろうか下草が疎らになっているところがあるきりで、日ごろ人の出入りが無いことが偲ばれる。鳥か獣か、はたまたクリーチャーか分からぬものの気配と鳴き声。砲塔の上に身を乗り出すと灌木林の木の間隠れに鬱蒼としたジャングル、さらに向こうには急峻な山岳が見えて、この先の進撃が困難なことが伺える。

 ん?

 分からぬものたちの鳴き声が止んだ。灌木林からは幾百の鳥たちが一斉に飛び立つ、いや何かを恐れて飛び立っていく。

 なにか来る……。

 

 ゴゴゴゴゴゴゴーーーーーーーー!!

 

 地響きがしたかと思うと、大地が鳴動して、目の前の灌木林がユサユサと揺れる。

 ギシ ギシ ギシ

 四号のサスペンションが軋んで車体が揺れる。

 ゴゴゴゴゴゴゴーードドドーーーーン!!!

 地震だ! 震度7はある!

 25トンある四号の車体がオモチャのように揺れる揺れる!

 さすがに乗り慣れた乗員たちなので、車内のフックや取っ手に掴まって揺れをしのぐ、悲鳴を上げる者もいない。

 十数秒だったろうか、揺れが収まって四方を見渡す。

「みんな、後ろを見ろ」

 ブリュンヒルデの差す四号の後方を見ると、地面が陥没して海の水が流れ込んでくる。

 四号の背後数メートルのところから地面が無くなって、ヘルムの島は二つに分裂してしまっていた!

 

☆ ステータス

 HP:11000 MP:120 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・80 マップ:9 金の針:5 所持金:1500ギル(リポ払い残高20000ギル)

 装備:剣士の装備レベル45(トールソード) 弓兵の装備レベル45(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

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かの世界この世界:122『四号空を飛ぶ!』

2020-11-04 06:18:06 | 小説5

かの世界この世界:122

『四号空を飛ぶ!』語り手:テル          

 

 

 四号が空を飛んだ!

 

「何かににつかまって振り落とされないようにしろ!」

 タングリスが叫んだ。

 砲手席には手すりが無いので、砲尾の薬莢バスケットの枠を右手で、左手でハッチのハンドルを掴んで耐えた。他の乗員も、それぞれ手近の突起物やレバーに掴まっている。

 ブリュンヒルデ一人がコマンダーシートに立ったままで、上半身をキューポラの外に晒している。

 その姿で察した。

 四号を飛ばしているのはブリュンヒルデだ。

「姫の中で何かが覚醒した! しかし不安定だ、どうなるか分からん! しっかり掴まっていろ!」

「「「「ウワーーーーー!!」」」」

 急に降下して一瞬無重力状態になり、すぐに、降下した分を取り返すように急上昇。みんなあちこちぶつけたようで悲鳴が上がる。

「ポチ、外に出て様子を見ろ、ふつうに飛べるのは、お前ひとりだ」

「わ、わかった!」

 無線機の上の定位置から、器用に体をくねらせてコマンダーハッチから外へ飛び出していく。

「完全にいっちゃってるよブリュンヒルデ! 目が座ってトランス状態だよ!」

 砲手席からはコマンダーシートに立ち上がった脚しか見えないが、その力の入りようからも異常なのが分かる。

 普通、ハッチから上半身を晒していても、腰はハッチの縁に預けてリラックスしている。

 いまのブリュンヒルデはシートに接着された等身大のフィギュアのようだ。仁王立ちの姿勢のまま固着している。

 よく見ると、シートとブーツの底の間に微弱な火花が散っている。ブリュンヒルデの体からエネルギーが発せられて四号の車体を牽引しているのだと推察される。

「みんな無事か?」

 タングリスが、やっと落ち着いた声で聞く。アアとかハイとかの返事が返って来るが、オッサン一人分が足りない。

「ヤコブがいない」

 ヤコブはフェンダーの上に居たはずだから、四号が飛び上がった拍子に墜ちてしまったんだろう。

「ポチ、姫の具合はどうだ?」

「こわいよお、目が白目だけになって、髪の毛が逆立ってるよお!」

「姫! 殿下! 聞こえますか!?」

 応えは無い、皆の視線がブリュンヒルデに集まる。

 

――気を付けろ、クリーチャーの群れが現れるぞ――

 

 ブリュンヒルデの声が直接頭の中に響いた。

 ペリスコープで外を確認する。

 前方数百メートルの空間に滲みが現れ、みるみるシミのように大きくなっていく。ハングライダーのユーリアが通るところだけ漂白剤を落としたように開けているのだ。

――シリンダーの群れだ、みな外に出て戦え!――

 簡単に言うな、ここは足場一つないヘルムの空の上なんだぞ。

 

☆ ステータス

 HP:9500 MP:90 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・70 マップ:7 金の針:0 所持金:500ギル(リポ払い残高25000ギル)

 装備:剣士の装備レベル15(トールソード) 弓兵の装備レベル15(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

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かの世界この世界:121『四号戦車試乗会・4・ユーリアのたくらみ』

2020-11-03 05:58:26 | 小説5

かの世界この世界:121

『四号戦車試乗会・4』語り手:ブリュンヒルデ       

 

 

 四号戦車試乗会はヘルム文化フェスティバルになってしまい、プログラムが進むうちにアイデアが出て、ますます賑やかになってきた。

 

 大道芸人友の会のパフォーマンスが終わると『大声コンテスト』になり、二十四人が手を挙げて声を競った。

 ウオーー! ガオーー! 猛獣のような叫び声をあげる者もいれば、バカヤローー!とうっ憤を晴らす者、愛してるーー!と叫んで、誰を愛してるんだーー!? と聴衆に迫られ、とうとうその場でプロポーズをさせられてしまう者まで現れた。子どもたちもなにかやりたい! ということで、ハングライダークラブが紙飛行機コンテストを始めた。丘の上には麓から上昇気流が噴き上がってきているので、どの紙飛行機も大空高く飛び上がり、優勝した紙飛行機は、とうとう姿が見えなくなるまで飛んでしまい「素晴らしい! 五年ぶりの視界没が出ました!」と盛り上がった。

 ……という段取りで。

 わたしがMCをやっている間に乗員たちと出し物グループとの話がついて、ハングライダーグループが子どもたちを連れて体験飛行をやり、それと並行して四号の主砲で花火を打ち上げることになった。

「わたしも参加する!」

 宣言したのはユーリアだ。

 いつの間にかハーネスを付けてヘルメットにゴーグルの飛ぶ気満々の出で立ちになっている。

「ユーリアは先月までうちのクラブにいたんですよ」

 グループのリーダーが準備を手伝いながらニコニコしている。ユーリアはなかなかの腕のようだ。

「花火のタイミングは、わたしが出すからね」

 ユーリアと無線のチェックをする。

「自分も飛ぼうかなあ」

 見ていたヤコブもその気になるが「体重減らしてからに……」とリーダーに言われて諦めた。

 ブラバンが『ペガサスマーチ』を奏でる中、ハングライダーチームは次々と空に舞った。

 子どもたちを抱えている者はゆるゆると安全飛行を心がけたが、単独で飛んでいる者は華麗にターンや宙返りなどのパフォーマンスを繰り広げ、丘の上で見物している者たちから喝さいを浴びた。

 それは、リーダーとユーリアがコンビでパラレルターンを決めた直後だった。

 

―― 花火! ――

 

 ユーリアの無線。テルにキッカケを出して四号は最大仰角に上げた主砲から立て続けに花火が打ち上げられた!

 七発上げたところで、ユーリアの声が木霊した。無線がビッグバンドのスピーカーにリンクしていたのだ。

―― 今から向かいます! ――

 どこへ?

―― これから、ヤマタの神のもとに行きまーーす! だいじょーーぶ! ちゃんと役目は果たしまーす! さよならお兄ちゃん! ありがとう四号のみなさーん! 行ってきまーーす! ヘルムのみなさーーん! ――

 そこまで言い切ると、サッとターンして、ハングライダーとは思えぬスピードで東を目指して飛んでいく。

 やられた、この漆黒の姫騎士までも、まんまとたばかりおった!

「乗員は四号に乗れ!」

「どうすんの、戦車じゃ追えないよ!?」

 ケイトが当然の疑問をぶつける。

「わたしの力を見くびるな、ユーリアは漆黒の姫騎士の心に火をつけおったぞ!……いくぞ! 四号発進!」

 ゴーーーー!!

 我が意を受けた四号は、唸りを上げて浮揚し始めた……

 

☆ ステータス

 HP:9500 MP:90 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・70 マップ:7 金の針:0 所持金:500ギル(リポ払い残高25000ギル)

 装備:剣士の装備レベル15(トールソード) 弓兵の装備レベル15(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

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  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

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