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大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

かの世界この世界:150『進撃NO!巨人!!』

2020-12-02 04:56:11 | 小説5

かの世界この世界:150

『進撃NO!巨人!!』語り手:ブリュンヒルデ     

 
 
 大神官……?
 
 四号のみんなが驚いた。
 どう見ても十二三歳の少年だ。ヴァルハラの神官でも最年少は三十歳のベルクだ。大神官ともなれば六十歳以下では考えられない。
「よく分かったね、ナフタリン」
「ラタトスクは人が発するオーラで区別しているんだ。妖精や聖霊は姿が変わるやつも多くて、見かけで判断していてはメッセンジャーは務まらねえし」
「そうか、オーラでな……オーラであっても神官の属性が残っているのなら嬉しいことだよ」
「いったい、なにが起こったんだよ?」
「ヨトゥンヘイムは国ぐるみ縮んでしまったんだよ」
「縮んだ?」
「巨人の国であるヨトゥンヘイムは図体が大きいので莫大なエネルギーを必要とする。エネルギーの源泉は、我々巨人族に向けられる畏敬の念だ。それが失われてきて、何とかしなければと考えあぐねているうちにこうなってしまった」
「畏敬の念が失われた?」
「十年くらい前から『進撃する巨人』が流行して、ユグドラシル中で大人気になった。ズシンズシンと地響き建てて進撃する姿、踏み出す足の確かさ、振動、風圧、そこに人々は神を見た。我々は神ではないと互いに戒めてはいたが、いつしか、そう見られることに喜びを感じて進撃することを止められなくなってしまった。しかし、あの図体で歩けば意図せずにモノを壊してしまう。通過する街や村の家々にはヒビが入ったり傾いたり、時には倒壊させてしまうこともある。道路には巨大な足跡が穿たれ亀裂が走る。畏敬は畏怖へと変わり、ついには、ただの怖れになってしまった。我々は、それに気づくのが遅すぎた。気づいた時にはヨトゥンヘイムから遠く離れてしまい、帰ることも覚束なくなり、振り返ると、人々は高い塀を巡らし『進撃NO!巨人!』と叫んで拳を振り上げた。畏敬の念どころか怖れと憎しみを向けられ、仲間の多くは巨体を維持することが出来なくなって縮こまって、ついには命を落としていった。そうすると、巨人族揺籃の地、ヨトゥンヘイムそのものも縮み始め、このような有様になった……かいつまんで言うとそういうことだ」
「マシガナさま、神殿の下敷きになっているのは?」
 ロキが気味悪げに指さした。
「それは半神の神官だよ」
「「「半神?」」」
「神と人の属性を持った種族で、我々巨人族の天敵だ。我々の衰退に乗じて、このヨトゥンヘイムに現れ、ついには大神官たるわたしを追い出した、半神三傑の一人ノヤ。君たちが、こいつを押しつぶしたのは啓示なのかもしれない……あなたは姫と呼ばれている。主神オーディンの姫君ブリュンヒルデ殿下ですな」
「いかにも、大神官どの」
「これも何かの縁……というには唐突に過ぎるでしょうが、とりあえず我が家にお運びください」
「しかし、この始末はどうしたらいいだろうか。仮にもヨトゥンヘイムの神殿を壊してしまったのだから」
 タングリスが言うと、乗員みんなの目がマシガナに注がれた。
「おまかせを」
 
 そう言うとマシガナは瓦礫の上に上がって、周囲に呼びかけた。見かけは人の少年に縮んでしまったが、その声は巨人に相応しい大音声だった。
 
「ヨトゥンヘイムの人々! 神殿を占拠していたノヤが打ち取られた! 打ち取ったのは、主神オーディンの姫君、ブリュンヒルデ殿下であるぞ!」
 
 ホォーーーーーーーーー
 
 家々から安堵のため息が立ち上った。
 
 

☆ ステータス

 HP:20000 MP:400 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・300 マップ:14 金の針:60 福袋 所持金:450000ギル(リポ払い残高0ギル)

 装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 空蝉の術 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)  思念爆弾

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

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かの世界この世界:149『ここはどこだ・2』

2020-12-01 05:59:02 | 小説5

かの世界この世界:149

『ここはどこだ・2』語り手:タングリス        

 

 

 四号から降りて驚いた。

 

 四号は石造りの建物一軒を押しつぶしていたのだ!

「しまった! 不可抗力とは言え、まずいことになったな……」

「……ヨトゥンヘイムの神殿……か?」

 ナフタリンもたよりない。

「神殿なのか?」

「ヨトゥンヘイムの真ん中は広場になっていて、真ん中に巨大な神殿があるんだ。ヨトゥンの巨人たちがリカちゃん人形に見えてしまうほど巨大な神殿なんだぞ、下敷きのペシャンコになっているのは番小屋ほどの大きさしかないし……」

「ヨトゥンの街に似せたミニチュアのテーマパークとかではないのか? ヴァルハラには縮尺1/24のワールドパークあるぞ」

「んなの聞いたこともない。周囲と同じように縮んでも、ちょっとした街のカテドラルほどの大きさだぞ」

 二人で不思議がっていると、四号の向こう側がざわついた。他の乗員も目覚めたようだ。

 

 キャーーーー!!

 

「どうした!?」

 急いで反対側に周る。真っ先に飛び出したのだろう、ユーリアが腰を抜かしている。

「ひ、人が押しつぶされてる!」

 瓦礫の下から人の下半身がはみ出して、おびただしい血も流れている。他の者には見せてはいけない!

 が……手遅れだった。

 カチャ カチャ カチャ

 あちこちのハッチが開く音がして、他の乗員たちも顔を覗かせている。

「華奢な脚だけど、これは男の人ね」

 姫が冷静な判断を下す。

「ローブのようなものを着ている、身分のある者のようだ」

「なにか掛けてあげたほうが良くない?」

「なにか、探そう」

 テルの呼びかけで、みんなが周囲を見回した。

「ア! 誰かいる!」

 ロキが指差した。二階建ての家の陰に何者かが身を隠した。

「待て!」

 姫がジャンプして、あっという間に捕まえてしまった。

 

 それは、粗末な法服を着た少年だった。

 

「なんで逃げるのだ!?」

「姫、わたしが聞きます」

「……頼む、このままだと絞め殺しそうだ」

「ムヘンブルグの戦車隊のものだ。わたしは副官のタングリス。指揮官はおまえを掴まえた人だ。ここに着いたばかりで当惑している。ここはヨトゥンヘイムではないのか?」

「……ヨトゥンヘイムだったところだ」

「だったところ?」

 少年は、我々の顔を順繰りに眺めまわすと、深いため息をついて俯いてしまった。

「え……まさか、マシガナさま? マシガナさまなのか!?」

 ナフタリンが驚いた。

 我々も驚いた。

 誰に対してもため口ばかりのナフタリンが『さま』を付けて畏敬のこもった口調で呼びかけたのだ。

 

☆ ステータス

 HP:20000 MP:400 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・300 マップ:14 金の針:60 福袋 所持金:450000ギル(リポ払い残高0ギル)

 装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 空蝉の術 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)  思念爆弾

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

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かの世界この世界:148『ここはどこだ・1』

2020-11-30 05:42:34 | 小説5

かの世界この世界:148

『ここはどこだ・1』語り手:タングリス          

 

 

 ほんの0.1秒見えた気がする。

 

 視界の端から端までグレートウォールのように広がる樹皮、一枚一枚が神殿の絨毯ほどに大きな葉っぱ、それが幾重にも重なって陽の光をさえぎって……これが世界樹ユグドラシルか!?

 思った瞬間に衝撃がきて、気絶してしまった。

 数瞬か数時間かたって意識が戻る。

 おぼろに視界が戻ってくると、四号の車内は傾いでいる……いや、どこか傾いだところに着地したので、意識が四号の傾ぎと認識しているのだ。俊敏な意識と感覚の回復はトール元帥親衛隊の訓練の賜物か、姫をヴァルハラまでお連れしなければならない役目の自覚からなのか。いずれにしろ、他の乗員よりも早く意識が戻ったのは幸いだ。

 目視できる範囲で乗員を見渡す。

 ショックで気絶はしているが、重篤な怪我などはしていないようだ。とりあえず、すぐ横のユーリアを起こそうと手を掛けて、ハッとした。

 頭上ののキューポラハッチが開いているのだ。

 混乱した。車内には本来の乗員五人とヘルムからの仲間であるユーリア……全員そろっている。

 だのにハッチが開きっぱなし……締め忘れはあり得ない。軍に籍を置いてから配置の変わらぬ戦車兵だ。戦車の扱いは自分の体と変わらない。ハッチを閉め忘れるなど呼吸を忘れることに等しい。

 ならば、外敵によってこじ開けられたか!?

 思った瞬間、腰のモーゼルを引き抜いた。

 すぐにハッチから首を出すようなヘマはしない。一秒とかからずにキューポラ全周のペリスコープを確認する。

 一番のペリスコープ(正面)が真っ暗だ。なにかが視界を塞いでいる。

 車載機銃のカートリッジを掴んでハッチの外に放り出す。敵の注意がカートリッジに向いた瞬間、0.3秒でキューポラの外に飛び出しゲペックカステンの後ろに隠れるとともに両手でモーゼルを構える。

 敵は砲塔の上に居るはずなのに動きが無い。

 音を立てずに砲塔の側面にまわって、下方から、そいつに銃を構える!

「なにやってんの~?」

 間延びした声に記憶が戻って来る。

 砲塔の上でぼんやり体育座りしているのは小柄な少女……こいつは、ラタトスクのナフタリン。

「な、なんだナフタリンか」

「アハハハハハ……」

「なにが可笑しい?」

「だって、タングリス、あたしが乗ってたの忘れてただろ」

「そんなことはない(^_^;)」

「でもよ、そんなに怖い顔して銃を構えてるんだもん。ついさっき、やってきたばかりのあたしを忘れたんだ。だろ?」

「そういうナフタリンは何をしているんだ?」

「どうやら、巨人の国のヨトゥンヘイムに着いたような気がするんだけど、どうもおかしいんだ」

「ヨトゥンヘイム?」

 ヨトゥンヘイムと言えば巨人の国だ。ところが、目に入る家々は我々人間にとっての原寸大で、とても巨人族が使うようなものには見えないのだ。

「メッセンジャーで何度も来てるんだけど、街や家々には見覚えたヨトゥンヘイムなんだけど、スケールが小さすぎるんだ」

「これは、普通の人間の町だ。人間界であるミッドガルドではないのか?」

「ミッドガルドはありえない。だって、雲は流れてるし、鳥だって空を飛んでる」

 

 あ……時間が停まっていない!?

 

 人間界はヘルムの女神が力を失ったことで時間が停まっているはずだ……。

 

☆ ステータス

 HP:20000 MP:400 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・300 マップ:13 金の針:60 福袋 所持金:450000ギル(リポ払い残高0ギル)

 装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 空蝉の術 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)  思念爆弾

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

 

 

 

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かの世界この世界:147『ユグドラシルの時霧』

2020-11-29 06:38:48 | 小説5

かの世界この世界:147

『ユグドラシルの時霧』語り手:ケイト        

 
 
 ユグドラシルというのがよく分からない。
 
 その中に八つの世界があって、その中には我々の住む人間界も含まれているらしい。
 だったら、人間界の海に浮かぶユグドラシルってなんだ? ユグドラシルの中にユグドラシルがあるってことにならないか? そのユグドラシルの人間界の海にはまたユグドラシルがあって、その中にまた人間界があって、そのまた中に……ああ、もう分からん!
 
 ため息をつくとベンチで横になったナフタリンと目が合った。
 
「海に浮かんでいるユグドラシルはデバイス」
「デバイス?」
「ごめん、分からない言葉を使っちゃった」
 いや、一瞬パソコンとかスマホとかが頭に浮かんだけど、それが何なのかは分からない。
「たとえば、これ……」
 乗客の忘れ物だろうか、雑誌を手に持った。
「ここにヘルムの海や山のグラビアが載っている。これを見ると、人はヘルムの海や山を思うだろ。潮騒や山を吹き渡る風を感じる人もいるかもしれない。でも、このページにあるものは紙とインクだけなんだ。つまり、雑誌というデバイスを通して感じた世界さ」
「うーーーーーん」
「これなら、どう?」
 ナフタリンはページの端に100×35と書いた。
「3500」
「正解。つまり、そういうことさ。ページに書いた数字と記号で3500という世界に、ケイトは入ったんだ」
「あ、ああ……」
 分かったようで分からない。
 
「見えてきたよーー!」
 
 マストの上の方からポチの声がした。ポチは見張りの役をかってくれていたのだ。
 水平線の向こうだからデッキにいる我々にはなかなか見えない。ロキがスルスルとマストに上ってみるがまだ見えない。ポチはマストのさらに十メートルほどでホバリングしているのだ。
「見えた!」
 ロキが叫んだのは、さらに五分後で、もう十分もすればデッキのわたし達にも見えるだろう……と思っていたら、急に霧が湧いてきて視界を奪った。
「時間が停まっているのに」
「なんで霧……」
 時間が停まった海は、マーメイド号の周囲だけが液体で、その向こうは空の雲と共に3Dの写真のようにフリーズしいる。
「ユグドラシルの時霧(ときぎり)。ユグドラシルが、まだ生きている証拠」
「それで、ユグドラシルのどこの世界に向かっていくんだ?」
 タングリスが目を凝らしながら聞いた。
「それは近づいてみないと分からない、取りあえず引き寄せられたところから入ってみるしかない」
「そうか……」
「それじゃ、四号と装具の点検をして、乗り込んでおかないか? 着いた時にバラバラになったら困るぞ」
「姫のおっしゃる通りだ、今のうちにやってしまおう」
 姫が提案しタングリスが指示して作業に入った。
 
 慣れたもので、二分ほどで点検を済ませて全員四号に乗り込んだ。定員五人のところに七人が乗っているのでギュウギュウだ。
「ナフタリンはテルの背中に掴まって」
「うん」
 ナフタリンが車長のハッチから入って器用に砲手席に周ったところで衝撃が来た。
 
 ドーーーーーーーン
 
「ユグドラシルの重力場に捕まった!」
「みんな、しっかり掴まれ!」
 
 ゴーーっと風吹きすさぶ音がしてギシギシ揺れる。
 
 貼視孔(てんしこう=砲塔のスリット)から覗くと、四号を縛着していたフックやらワイヤーやらが外れてしまっている。
 マーメイド号のデッキが遠のいていき、すぐに船の全景が見えたかと思うと、グルグル回って急速に遠のき時霧に包まれて見えなくなった。
 
 ウワアアアアアアアアアアアアア!
 ギョエエエエエエエエエエエエエ!
 オワアアアアアアアアアアアアア!
 ウヒョオオオオオオオオオオオオ!
 グガガガガガガガガガガガガガガ!
 オオオオオオオオオオオオオオオ!
 アアアアアアアアアアアアアアア!
 
 七つの悲鳴が尾を引いて、四号はいずことも知れず吹き飛ばされていく……。
 
 グワァッシャーーン!!
 
 強い衝撃がやってきて、気が遠くなってしまった……。
 
 

☆ ステータス

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☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

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かの世界この世界:146『ケイトのケアルラ』

2020-11-28 06:29:52 | 小説5

かの世界この世界:146

『ケイトのケアルラ』語り手:ケイト        

 

 

 リスの化身だとは思えなかった。

 

 ロキが抱きとめた体は華奢だったけど、同性のあたしが見てもきれいだ。

 見たことは無いけど、月の女神アルテミスが居たとしたらこんな感じ。

 腕も脚も細いんだけど、駆けたり跳んだりする機能が集約された美しさはカモシカみたい。チュニックに包まれた胴はロキの腕の中でグッタリしているけど、かえってしなやかなで美しいラインを顕わにしてトールボウ(あたしの武器の弓)のしなりを思わせた。

 でも、感動したのは一瞬だ。

 みるみるナフタリンの体は、ロキが握っている手の先を除いて透け始めた。この世界の事には疎いあたしでも、ナフタリンに危機が迫っているのが分かった(;'∀')。

「ケイト、ケアルを!」

 テルが叫ぶのとケアルの呪を唱えるのと同時だった。

「……ブロンズケアル!」

 最弱の回復術しか使えないあたしは、せめて渾身の力を籠めた!

 ホワワワーーーーーーン!

「……ケアルラだ!」

 テルに言われるまでもなく、あたしの手から湧き出したオーラは赤みを帯びたブロンズケアルではなく。白光に近いシルバーケアルラのそれだった!

「すごい、いつの間にレベルアップしたのだ!?」

 姫が自分のスキルが上がったように感動してくれている。いろいろ我儘なお姫さまだけど、こういう時に素直に感嘆の声をあげられるのは、姫の魅力でもあるし、本人も自覚しない品性のようなものだと思う。むろん、ロキもテルも驚いているし、ユーリアは涙を流してさえいる。

 そして、いちばん驚いているにはナフタリンだ。

「回復した……こんな状態で回復するなんて……ありえねえ……やっぱりブリュンヒルデのお仲間……礼を言いうよ」

「それで、ナフタリン、ユグドラシルに行ってはならないと言うのはどういうことなのだ?」

「それは……ユグドラシルの八つの世界はバラバラなんだ。シナプスは大方断ち切れちまって、血管を失った臓器みたいに壊死していくのを待つばかりの状態なんだ」

「そんなに悪いの?」

 あたしが聞くと、タングリスとテルから――よせ――という空気を感じた。

「わたしに遠慮することは無い。心にあるままに言え」

 姫が促す。

「時の流れが滞っていんだ。先のラグナロクで燃えきれなくって……時の女神は新しいユグドラシルを芽吹かせるために地に潜っていやがる。地上の光を持ちこたえさせるためにヴェルサンディだけはヘルムに向かったんだけどな」

「そういう事情だったのか……」

「姫のせいではありません」

「いいんだタングリス。ナフタリン、続けてくれ」

「うん、ユグドラシルの八つの世界は、いまや骸に湧くウジ虫のようなクリーチャーだけが暴れまわる世界になり果てちまった。だから、次のユルドラシルが芽吹くまで待っておくれ」

「そうか、そういうことであるならば、いっそう行かなければな!」

「姫!」

「進路を指示してくれ。ラタトスクなら容易いことだろう。タングリス、操船を任せる」

 

 姫の決意にタングリスもテルも頷くしかなかった……。

 

☆ ステータス

 HP:20000 MP:400 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・300 マップ:13 金の針:60 福袋 所持金:450000ギル(リポ払い残高0ギル)

 装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 空蝉の術 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)  思念爆弾

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

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かの世界この世界:145『ラタトスクのナフタリン』

2020-11-27 06:55:22 | 小説5

かの世界この世界:145

『ラタトスクのナフタリン』語り手:ロキ   

 

 

 舳先の下の隠れて瞬間見えなくなった……次の瞬間、舳先の上に躍り出たのは栗色のチュニックを着た女の子だった。

 

 トリャー!…………オットット(;^_^A

 威勢のいい声で決めポーズ。マーメイド号が帆船だったら、そのまま舳先のフィギュアヘッド(船首の飾り)にしてもいいくらいにカッコイイ。しかし、タタラを踏んでガニ股でふんばる姿はみっともない。

「おまえ、ユグドラシルのラタトスクだな?」

 タングリスさんが遅刻してきた生徒の名前を確認するように聞いた。

「知っていたんだ。見かけよりはかしこいのかもな」

「ユグドラシルのメッセンジャーは足が速いが口が悪い。予断と偏見に満ちたラタトスクに頼るくらいなら、自分で航路を切り開く」

「ラタトスクってなんだ?」

 予備知識のないテルさんが基本的な質問をする。オレもよく分かってないので耳を傾ける。

「ユグドラシルは八つの世界で出来ていて、その世界の連絡役がラタトスクと呼ばれるリスなんだ」

「だからメッセンジャー?」

「口が悪くて、用件の他に一言余計なことを言うので有名なんだ」

「でも、この子……虚勢は張ってるようだけど、なんか余裕のない感じ」

「さすがはオーディーンの姫だ、でも、むかつく……」

 腰に手を当てて胸をそらせたたかと思うと、踏ん張った形のいい足は、またタタラを踏んだ。

「あぶない!」

 おもわず駆け寄って落ちてくるラタトスクを抱きとめてしまった。なんだかやわらかくってドギマギしてしまう。

「おまえ、どこ触ってヽ(#`Д´#)ノ……おまえは時の女神ウルズのガキ?」

「ガキじゃねえ、ロキだ!」

「ああ、そうだったな、ガキ」

「ガキ言うな!」

「怒んな。おまえの誕生をユグドラシル中に触れ回ったのはあたしだ……ちょ、離せ! まだ話、あるから」

「わ、わ、ごめん!」

「ラタトスクと言うのは種族の名前で、あたし個人の名前はナフタリンだ、まちがえんな!」

「ラタトスクは複数いるのか?」

「いまは、あたし一人」

「どういうことだ?」

「ユグドラシルが漂流し始めた瞬間、シナプスに居たのはあたし一人だったんで助かった」

「シナプス?」

 みんな、わけわからないので、タングリスさんが前に出た。

「八つの世界を繋ぐユグドラシルの回廊のようなものです。ラタトスクは、ユグドラシルが根なしになって漂流すると生きてはいけません、神経伝達物質のドーパミンやセロトニンみたいなものです

「そんなミンとかニンとかじゃねえ、ナフタリンだつってるだろ!」

「物の例えだ」

「そうだったのか、概念以上の知識が無いのでな。ゆるせ」

「ちょうどいい、ナフタリン、わたしたちをユグドラシルに案内してくれ」

「フン、ナフタリンは案内の為に来たんじゃないし」

「案内でなければ、だれかの伝言か?」

「ちがう、自分の意思で、自分の言葉を伝えにき……」

「ナフタリン!」

 意識を失いかけたナフタリンを再び抱きとめる。背中を支えた手がちょっと胸に触ってるんだけど、今度は憎まれ口もきかない。

「ロキ、みんなに伝えろ……ユグドラシルに来ちゃダメ……だ……」

 それだけ呟くと、ふたたび意識を失うナフタリン。

 オレの襟首を掴んだ手は意識を失っても、強く握られたままだった……。

 

☆ ステータス

 HP:20000 MP:300 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・300 マップ:12 金の針:60 福袋 所持金:450000ギル(リポ払い残高0ギル)

 装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 空蝉の術 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)  思念爆弾

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

 
 
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かの世界この世界:144『ユグドラシルを目指して・2』

2020-11-26 05:37:06 | 小説5

かの世界この世界:144

『ユグドラシルを目指して・2』タングリス      

 

 

 

 最後にユグドラシルが確認された海域を目指すことにした。

 

 巨大な世界樹ユグドラシルを目指しているとは言え、闇雲に海を突き進んでも見つけられる可能性は低い。

 いつ巡り合えるとも知れないユグドラシルを追っていては気持ちが萎える。

 まして、時間が停まってしまった世界で出くわすのはクリーチャーか精霊に属する者だけだ。人や自然に属する者は。ことごとくフリーズしている。夜がやってこないので熟睡することも難しく、このまま当てのない航海を続けていては身も心もボロボロになってしまうだろう。
 
 とにかく、行けば、痕跡なりと見つけられるかもしれない。
 
「ただの言い伝えだから、がっかりしないでくださいね💦」
 
 情報提供者であるユーリアは、顔を赤くしてワイパーのように手を振った。
 
「港のクィーンに選ばれた時に覚えさせられた詩の中に入っていたってだけですから」
 
 ヘルム港のクィーンに選ばれると、伝統的に決められた就任の挨拶をしなければならず、その中に――ヘルムの東2:10分より来たりし客人(まろうど)が――という一節があり、その客人というのはユグドラシルから来たということだった。
 
 それがヘルム暦三百年で、いまから五百年前の話。わたしたちが知っているのはさらに昔の神話時代の話だから、五百年前でも、ついこないだの感じなのだ。
 現実的にはロキが一番新しいのだが、戦災孤児として発見されたのがムヘンの地であり、それ以前の記憶は断片的で、所在に関するものではないので、ユーリアの詩の記憶に頼らざるを得ないのだ。
 
 しかし、方角は決められたが、距離が分からない。
 
「よし、行ってみよう」
 
 姫の決断には――四の五の言うな――という響きがあった。主神オーディンの姫としての矜持が言わせた決断だ。わたしは静かに頷いて舵輪を回したのだった。
 
「姫、当直を代わります」
「いいよ、まだまだ余裕だ」
「しかし、もう三十六時間になります」
「大丈夫、主神オーディンの娘にして堕天使の宿命を背負いし漆黒の姫騎士ブリュンヒルだぞ、見よ、我が頭頂のアホ毛を!」
「ん?」
 
 三十六時間にわたる当直で姫の髪はボサボサになっていて、頭頂の一房が、ゆらゆら揺れながらも一定の方角を指している。要は汗と潮風でゴワゴワになっているだけで、臣下たる身としては一刻も早くシャワーを浴びてお休みいただきたいのだが、神意の宿るアホ毛と言われては注目せざるを得ない。
 
「お、アホ毛が立ち上がりました!」
 アホ毛が何かを探知した!
「非常呼集!哨戒を厳となせ!」
 伝声管に向かって非常呼集をかける。みながラッタルを駆けあがってくる音がして、前方に目を据える。
 
 マーメイド号の前方二百メートルほどの海面……ピョンピョン跳ねるものが現れた。
 
 

☆ ステータス

 HP:20000 MP:300 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・300 マップ:12 金の針:60 福袋 所持金:450000ギル(リポ払い残高0ギル)

 装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 空蝉の術 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)  思念爆弾

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

 
 
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かの世界この世界:143『ユグドラシルを目指して・1』

2020-11-25 05:45:29 | 小説5
かの世界この世界:142
 
『ユグドラシルを目指して・1』タングリス          
 
 
 
 
 ロキの元気がない。
 
 船尾の手すりに寄り掛かってウェーキ(船の航跡)ばかり見ている。
 ウェーキと言っても時間が停まっているので、ほんの五十メートルほどしかないのだが、見ていればウェーキが伸びて、自分の記憶も戻るのではないかと祈っているようにも感じられる。
 
 トール元帥がパラノキアとクリーチャーを引き受けてくれたので、やっとユグドラシルを目指して進めるようになった。
 
 しかし、いざ目指すことになると、ユグドラシルについての知識が致命的に乏しいことに気づいた。四号の乗員の誰もユグドラシルには行ったことが無いのだ。
 島の中央には世界樹ユグドラシルが生えていて、その麓の泉には時を司る三姉妹の女神が住んでいる。
 
 過去を司る長女のウルズ  現在を司る次女のヴェルサンディ  未来を司るスクルド
 
 ヘルムの守護神ヤマタが力を失って、それを補うためにヴェルサンディだけは姿を現したが、ウルズ、スクルドは消息不明だ。
 
 だからロキに聞いてみた。
 
 ロキはウルズの子どもなのだ。この旅の目的の一つがロキを母親の元に帰すことだった。先の大戦で戦災孤児になったロキはシュタインドルフの孤児院に従弟妹のフレイ・フレイア共々預けられていた。狭い四号に三人は乗せられないので、とりあえずロキ一人を預かったのだ。
 
 しかし、ロキが母親とはぐれたのは、ほんの幼児のころだ。
 
「うん、ユグドラシルというのはね、大きな泉があって、お母さんや叔母さんが水を汲んではユグドラシルの樹にやるんだ。空気は澄んでて、小鳥たちは夜明けとともに囀りだして、俺たちに『早く遊びに出ておいで』って呼びかけるんだ。お母さんは長女だから、一番ユグドラシルの幹に近いところに住んでいて、ユグドラシルに水をあげたあとは、おれの事を抱っこして、ゆっくりユグドラシルの見回りをするんだ。所々に休憩するところがあって、遅れてやって来る叔母さんたちを待ち合わせ、その日一日の予定を話し合ったりしてね、ブルーベリ-とかストロベリーとかが実っていたりしたらジュースにして飲ませてくれたり……」
 
 楽し気に話してはくれるのだが、では、そこに行くにはどこを通ればいいのか?
 
 
「えと……えと、それはね……」 
 
 肝心なことを聞くと、ロキは答えられない。
 
 ヴァィゼンハオスで、フレイとフレイアと喋っているうちに故郷ユグドラシルの話が出来あがってしまったのではないだろうか。
 
 毎日話しているうちに、ほんとうにそうであったかのように思い込んでしまい。行き方や詳しい様子を聞いてみると詰まってしまって、なにも答えられなくなる。
 
 そして、自分は何も知らないことに気づいて、落ち込んで過ぎ去るウェーキばかり見ているというわけなんだ。
 
「でも、世界樹っていうくらい大きいんだったら、遠くからでも見えるんじゃない?」
 ケイトが気楽に言う。
 ちょっと唖然だ。
「ユグドラシルというのはよほど近くに寄らなければ目には見えないものなのだぞ」
「そうなの?」
「それに、ユグドラシルの島は世界樹ユグドラシルの根に絡まったもので出来ていて海に浮かんでいるだけのものだから、ヘルムの島のように一定のところには居ないのよ」
 ユーリアが補足してくれる。
 
 思い出した、ケイトとテルは異世界の住人なのだ。この数か月の旅で完全に仲間になってしまったのだが、この世界では微妙に常識が違うはずだ。
 
 はてさて、取りあえずはチームワークの醸成であろうか。
 
 気づくと、ポチが寄り添って元気づけてくれていた。
 日が暮れることのない航海だが、夕飯までには元気になってくれるだろう。
 
 

☆ ステータス

 HP:20000 MP:300 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・300 マップ:12 金の針:60 福袋 所持金:450000ギル(リポ払い残高0ギル)

 装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 空蝉の術 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)  思念爆弾

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

 
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かの世界この世界:142『トール元帥のミョルニルハンマー』

2020-11-24 05:53:58 | 小説5

かの世界この世界:142

『トール元帥のミョルニルハンマー』ブリュンヒルデ    

 

 

 身の丈三十メートルのトール元帥はムヘン駐留の一個連隊の親衛戦車部隊を引き連れている。

 

 親衛戦車部隊は空を飛べる。

 日ごろ、ムヘンの警備任務にあたっているのは国防軍で、国防軍の戦車は飛ぶことができない。

 我々が苦労して積み込んだことで分かる通り、我々の四号は国防軍仕様の四号だ。テルやケイトは羨ましそうな顔をしているが、空飛ぶ戦車は燃費が悪い。飛行していると満タンでもニ十分が限度。それが一個連隊の大編隊で飛べるのはトール元帥が飛行しながら補っているからだ。

 トール元帥の図体が大きいのも、その全身にエネルギーを貯めているからなのだ。

 かつて、父オーディンから辺境の討伐を命ぜられた時、元帥は父に言った。

「一年や一年半なら、存分に暴れまわって見せましょう。しかし、二年三年となっては、まったく目途が立ちません。それでもやれとおっしゃるなら、オーディンの歴史には書けない非常の手段を用いなければなりませんが。よろしいか?」

 父は、黙って頷いた。

 父はずるい。

 困ったときは、相手に喋らせ、自分は頷くだけだ。

 わたしの時も、そうであった。

 わたしは、そんな父が許せなくてヴァルハラを飛び出してしまった。父は、わたしの討伐を命じたが、トール元帥はムヘンの流刑地に押し込めるだけで済ませてしまった。それも、いずれは、わたしが抜け出し、独自に行動に出ることを見越していた……でなければ、こんな風に仲間を募ってヴァルハラを目指すことなどできなかったであろうからな……。

 トール元帥のエネルギーが尽きる時……耐えがたいことが起こる。

 クリーチャーの上空を旋回しながら攻撃のタイミングを見計らっているトール元帥。もう、そのことを覚悟したのだろうか。

 それとも一撃で敵を屠って、エネルギーをリチャージすることなく終わらせる奇策があるというのだろうか。

 

 元帥がミョルニル(聖なる大鉄槌、ミョルニルハンマー、以下ミョルニル)を振りかぶった!

 

 鬼神であろうとゴジラであろうと大魔神であろうと一撃で粉砕する聖なる大鉄槌ミョルニルが巡洋艦を取り込んだクリーチャーのど真ん中に振り下ろされる!

 グヮッシャーーーーーーン!!

 ミョルニルの炸裂にクリーチャーは粉々に粉砕! さすがはトール元帥!

 しかし、本体は粉砕されたものの、破片の多くが独立したクリーチャーになって四方八方に逃げ始めた。

 追え!

 元帥の一言で、一個連隊の戦車部隊がクリーチャーを追いかけ、三次元行進間射撃を加える。

 一つも残さず、地の果てまで追いかけてせん滅せよ!

 戦車たちは水平線の彼方までクリーチャーどもを追撃していった。

 

 元帥は、マーメイド号に並んで飛行しながら語り掛けてきた。

 

「姫、パラノキアとクリーチャーは、この元帥にお任せあれ。姫は、ひたすら障害を乗り越えつつヴァルハラを目指されよ」

「元帥!」

「大丈夫、時の女神がそろって目覚めるころには方がつきましょう」

「元帥、わたしもお供を!」

 タングリスが手を差し伸べる。分かっている、元帥が立ち上がったのだ、副官であるタングリスは付いていかざるを得ないだろう。過酷な任務と知りながらでも……でも、こういう時のタングリスって、わたしが見ても震えが出るほどに美しくなる。アンビバレンツな美しさを、わたしは正視出来ないぞ。

「おまえは、姫のお供をしろ。今度の出征にはタングニョーストが付いてくれている、心配するな」

「元帥……」

「テル、ケイト、ロキ、ユーリア、おまえたちにも苦労をかけるが、なにとぞよろしく頼むぞ」

「元帥、あたしにもお!」

「ポチ、この戦が終わって、姫の旅が成就したら、このトールが新しい名前をつけてやろう。それを楽しみにわたしも戦う。姫も皆も息災でな!」

 身体を捻り、二度旋回すると、元帥は西の水平線を目指して飛び去ってしまった。

 大丈夫だろうか……空飛ぶ戦車もミョルニルも恐ろしくエネルギーを消費するのだが……。

 

 

☆ ステータス

 HP:20000 MP:300 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・300 マップ:12 金の針:60 福袋 所持金:450000ギル(リポ払い残高0ギル)

 装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 空蝉の術 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)  思念爆弾

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

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かの世界この世界:141『絶体絶命!』

2020-11-23 06:21:14 | 小説5

かの世界この世界:141

『絶体絶命!』語り手:タングリス        

 

 

 マーメイド号の最高速度は十五ノットでしかない。

 

 パラノキアの巡洋艦と融合したクリーチャーは三十三ノットで迫って来る!

 三十三ノットは巡洋艦の最高速度だ。このままではすぐに追いつかれる。

 前回の戦いでは、かろうじて勝てたが。今度の本体はクリーチャー、乗っている船は一万トンを超えるシュネーヴィットヘンではなくて二百トンそこそこのフェリーボートのマーメイド号なのだ。

 まっすぐ突っ込まれてくると、全速力で逃げても相対速度十八ノット(時速三十二キロ)で追われることになる。サッカーのフォワードが全速で小学生を追い回すようなものだ。

 できることなら戦いたくないが、戦闘配置だけはとっておいた方がいいだろう。

「テル、戦闘配置だ!」

「もう完了している!」

 デッキの四号は、クリーチャーに向けて砲口を指向しているところだ。これまでの戦闘でみんな慣れてきたんだろう。戦闘配置をかけるまでもなく、自分で目的をもって行動できるようになったんだ。

 しかし、こんな小さな戦闘集団の技量が上がっても、目の前のクリーチャーに太刀打ちできるものではない。

「姫、逃げることを専一にします。緊急時以外は発砲しないでください!」

――分かってる。操舵は任せた、逃げ切ってくれ!――

 ブリッジのスピーカーに姫の声が響く。

 クリーチャーは我々を襲うよりも、どう変態していいかを試しているようだ。巡洋艦のパーツを様々に組んでは解していく、

 まるで巨大なナメクジがファッションに目覚めてしまったようで、見ようによってはユーモラスでさえある。マーメイドを追いかける方向も、かなりのブレがある。我々を敵だとは認識しきれていないのかもしれない。追ってくるのは、動物的というかクリーチャーの習性なのだろう。時間が停まった洋上では、動いているものは当のクリーチャーの他は、我々のマーメイド号だけなのだ。

 ニ十分ほどもすると、クリーチャーは空飛ぶクジラのような姿に固定され、ゆっくりと海面を離れ、それ以上変異することをやめた。

――タングリス、間合いを取ってくれ!――

 直ぐに姫が反応する。気持ちは分かる。空を飛ばれては四号の主砲を最大仰角でかけても狙えないのだ。

 しかし、十五ノットの速度ではいかんともしがたい!

 悪いことに、変態し終えたクリーチャーはマーメイド号の我々を指向し始めた。

 もう、出来ることは、奴の指向とタイミングを見計らって突っ込まれる寸前に舵を切るしかない。

 二度は躱したが、次は危ない……舵輪を握りなおす……今だ!

 奴の微妙な姿勢変化に進路予測をして、その反対方向に舵を切る!

 しまった!

 敵は右に回るフリをしたが、鼻づらを左に向けると、体をよじってきれいなカーブを描いて突っ込んでくる。

 奴に読まれていたのだ、尻尾を勢いよく振ってさらに進路を修正すると、真っ直ぐに迫ってきた!

 

 絶体絶命! 

 まるでモビーディックに迫られたキャッチャーボートだ。

 このままエイハブ船長のように海底に引きずり込まれるのか!?

 

 ザーーーーー!

 ドゴーーーン!

 

 一瞬黒い影が過り、砂を噛んだ時のような音が響いたかと思うと、マーメイド号の左舷に大きな水柱が立った!

 今のはなんだ!?

 首を巡らすと、四時の方角、高さ二百メートルのあたりに、抜剣した剣を緩やかに下段に構える姿があった!

 わたしの本来の上司にして、辺境軍総司令官トール元帥の雄々しき姿が!

 

☆ ステータス

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 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 空蝉の術 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)  思念爆弾

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

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 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

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かの世界この世界:140『パラノキアの幽霊船』

2020-11-22 06:41:37 | 小説5

かの世界この世界:140

『パラノキアの幽霊船』語り手:テル        

 

 

 体が夜を欲している。

 

 R18的な言い回しだが、そんな意味ではない。

 ヘルムの守護神ヤマタが活動を停止して地上から光が無くなった。

 そのピンチヒッターに世界樹ユグドラシルの三神の一人ヴェルサンディが現れたのだが、いかんせんヴェルサンディは現在の時間を司る女神。過去の時間を司るウルズ、未来の時間を司るスクルドの三神が揃わなければ時間は動かない。

 我々は世界樹の島ユグドラシルを目指して船出した。ウルズ、ヴェルサンディの二神を起こすためだ。

 当直を終えてキャビンに戻るのだが、なんせ二百トンのフェリーボート。駅の待合室ほどでしかないキャビンはカーテンを閉めても真っ暗にはならない。アイマスクなどもしてみるのだが、体が夜とは認識しないのだ。露出した手足だけではなく、服を通しても光は感じるようで、熟睡することができない。

 エンジンがうるさいから!

 ケイトは言う。たしかにマーメイド号のエンジンはうるさいし、振動もハンパではないが、四号のそれと比べるといい勝負だ。それでも四号の狭い車内で睡眠はとれた。

「おい、次の次の当直だろ、そろそろ起きておけよ」

 ケイトの方を揺さぶる。

 キャビンに戻ったら、次の次を起こすことになっている。起こしておかないと交代の時にブリッジが無人になる時間ができてしまうためだ。

 ……ところが、ケイトは起きない。

 あれほど「熟睡できない!」と文句を言っていたが、疲労のレベルが高くなると自然に眠れるのだろう。これが子どもの健康さだ。他の者を起こしてもまずい、時間になったら起こしてやればいい、どうせ微睡む程度の眠りしか得られないのだからな……。

 

 そろそろ起こそうかと体を起こすと、スピーカーからタングリスの声がした。

――テル、ちょっとブリッジまで来てくれ――

 わたしが眠れないでいるのはお見通しのようだ、ケイトをそのままにしてブリッジに向かった。

 

 ブリッジへのラッタルに足を掛けたところで気づいた。左舷十時の方角に見覚えのある船が見えるのだ。

 パラノキアの巡洋艦……

 シュネーヴィットヘンを襲ってきた巡洋艦……たしか撃沈させたはずなのに。

 一人では判断できない、一気にブリッジに向かった。

「同型艦か?」

「これで覗いてみろ」

 タングリスの双眼鏡で覗いてみる。あちこち傷だらけで、第二砲塔のあたりはハッキリと断裂の痕がある。そうだ、あの巡洋艦は艦首がぶっ千切れて、砲塔が吹き飛んでしまったはずだ。やはり、同型艦?

 いや……あきらかに五海里ほど彼方の海を白波を蹴立てて進んでいる。

 洋上を航行中だったら、時間が止まった時に静止してしまって動けないはずだ。

「おそらく、クリーチャーと融合してしまったんだ」

「クリーチャーと?」

「パラノキアは、クリーチャーとの共存を謳っている。沈没したところに時間が止まってしまって、クリーチャーに憑りつかれてしまったんだろう、クリーチャーは時間が停まっても活動できるからな。まだ憑りつかれて間が無いんだろう、修復と変態の真っ最中といったところだな」

「逃げを打つしか手が無いな」

「面舵三十度……逃げるぞ!」

 タングリスは、ソロリと舵輪を回した……。

☆ ステータス

 HP:20000 MP:300 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・300 マップ:12 金の針:60 福袋 所持金:450000ギル(リポ払い残高0ギル)

 装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 空蝉の術 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)  思念爆弾

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

 

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かの世界この世界:139『みんなで協力……なんだけど』

2020-11-21 04:41:44 | 小説5

かの世界この世界:139

『みんなで協力……なんだけど』タングリス        

 

 

 乾ドックに海水を満たし、マーメイド号のエンジンを始動した。

 

 二百トンのマーメイド号は一万トンのシュネーヴィットヘンとは比べ物のならないほど振動する。

 ア・ア・ア・ア・ア・ア・ア・ア・ア・ア・ア・アハハハ……

 ロキが振動で声を震わせて喜んでいる。ポチは甲板の振動をお尻で受けて煎り豆のように弾んで遊んでいる。

「もう、あんたたちは子どもなんだから・ら・ら・ら・ら・らららららら~🎵」

 二人に呆れたケイトも、語尾がトレモロになってくると、陽気に『ら』を転がして可笑しがっている。

「水位が海と同じになった」

 機械小屋のランプがグリーンになった。珍しモノ好きの姫がテルといっしょにポンプを操作しているのだ。

 ドックに水を満たし海面と同じ高さにしなければ、船を海に出せないのだ。

 

「マーメイドも準備OKです! ゲートを開けてください!」

 操舵室からメガホンで叫ぶ。数秒、ウィーンというモーターの音がしたが、ガクンという音がしてモーターは停まってしまった。機械小屋で、二人が焦っているのが分かる。二度三度と試してみるが、モーターは直ぐに停まってしまう。

「あれって、安全装置が働いているんじゃないかしら?」

 ユーリアが眉を寄せて推測する。

「どこかで負荷がかかり過ぎているのだろうか?」

 時間が止まってしまっているのだ、予期せぬ不具合が起こっているのかもしれない。ひょっとしたら、我々の船出を喜ばない者たちが妨害しているのかもしれないとまで思った。なんせ、ヘルムの守護神であるヤマタの力が消滅してしまったのだ。なにが起こるか知れたものではない。

 手分けしてドックの周囲を警戒してみよう……そう思った時、ポンとユーリアが手を打った。

「ゲートにも注水しなくっちゃ!」

 

 あ!?

 

 盲点だった。最大三千トンの船が入れるドックはゲートもいかつく、幅が二十メートル、高さが十メートル、厚みが一メートルもある。しかし、中はガランドウで、ドックに水を張れば浮力を持ってしまう。そのためゲートの回転部分に異常な力が加わって開かなくなってしまったのだ。

「ゲートの注排水ポンプはありますかーー!?」

 メガホンで聞くと姫が×印のサインを返してきた。

「タングリス、あれじゃないかなあ?」

 ケイトがゲートの横を指さすとロキがポチに指示を与えて調べさせに行かせた。

「なにか、スイッチがあるの~🎵」

「それだ!」

 機械小屋を飛び出した姫とテルがドックの縁を周って制御盤に取りついた。

 構造は簡単なようで、すぐにスイッチが入れられると、くぐもった音がしてゲート内部のタンクに海水が満たされていく。

 

 三十分後、満水になったゲートを開き、無事にマーメイドは海に乗り出した。

 

 これからは、なんでも、この六人とポチでやっていかなければならない。なんせ時間が停まって、動けるのは我々だけなのだ。協力しあわなければな。

 あらためて岸壁に着けて四号を載せて本格的に海に乗り出す。

「陽が落ちたら、交代でブリッジに立とう」

 日没から日の出までを五つに分けて当直を決める。それまでは、わたしが舵輪を握る。

 あと一時間ほどか……そう思ったが、いっこうに日は傾かない。

 

 そうだ……時間が停まっているのだから、日が暮れるわけがない……。

 ずっと太陽に照らされっぱなし、それが海面への照り返しと相まって光の強さは陸上の比ではない。目的地のある航海なので雲の陰ばかり拾って行くわけにもいかないだろう。なるべく短時日で着かなければならないし、小型船に不慣れな者たちばかりだ。

 あ、ああーーーーー

 ドッと疲労感が押し寄せてきた。

 

☆ ステータス

 HP:20000 MP:300 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・300 マップ:12 金の針:60 福袋 所持金:450000ギル(リポ払い残高0ギル)

 装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 空蝉の術 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)  思念爆弾

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

 

 

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かの世界この世界:138『動いていたものは動かせない』

2020-11-20 05:53:52 | 小説5

かの世界この世界:138

『動いていたものは動かせないブリュンヒルデ       

 

 

 わたし(車長)とケイト(装填手)の間にシートを付けた。

 

 シートと言ってもパイプ椅子の上半分をくっ付けたもので、横のハッチから出入りするときは折りたたむ。

 まあ、小柄なわたしとケイトの間なので、なんとか収まる。

「お客さんで乗っているのも申し訳ないですから、仕事を教えください」

 ユーリアの申し出ももっともなので、取りあえずはケイトと交代で装填手をやってもらうことにした。

 そして、日中はともかく、寝る時は窮屈すぎるので納屋の中からテントを出してゲペックカステン(砲塔後部の物入れ)に括り付けた。

 

 二時間ほどで準備を整えると出発だ。

 

 ユーリアは眠ったように時間の止まっている母のアグネスと兄のヤコブに別れを告げた。

「じゃ、行くよ、ユーリア」

「…………はい」

 ふっきるようにユーリアが乗り込むと、四号は、取りあえずの目的地であるヘルム港を目指した。

 乗って来たシュネーヴィットヘンはドックに入ったままだ。たとえ動いたとしても、この人数では一万トンを超える輸送船を動かすことは出来ない。なんとか四号を載せられて、外洋を航行できる船を見つけなくてはならない。むろん、四号の乗員だけで操縦できる小型の輸送船、あるいはフェリーボートだ。

「ヘルムには大小六つの小島があって連絡船が通っています。運が良ければ、出港前の船を掴まえられると思います」

 港に舫っている連絡船が居ることを願うばかりだ。

「あそこに居ます!」

 ゲートを潜って岸壁沿いに走り出したところでユーリアが指差した。一つ向こうの桟橋に二百トンあまりの連絡船が見えたのだ。舳先がはね橋式になっていて車が乗せられるタイプだ。

「……だめだ」

 連絡船は出港ししたばかりで、舳先のゲートは閉じられ、二メートルほど海に乗り出している。

「俺が飛び乗って停めてやる!」

「よせ!」

 ロキが飛び出し、砲塔の上からジャンプした。

「うわ!」

 勢いよく飛び移ったところまでは良かったが、舳先の上でバランスを崩して海に落ちてしまった。

 ポヨヨーン

 なんと、連絡船の周囲の海面はゼリー状に固まっている。ロキは、そのまま歩いて岸壁に上がってきた。

「動いているうちに時間が止まったものは固まってしまうんだろう、周囲の海面も影響を受けて固まっているんだ」

 そう言うと、タングリスは石ころを海に投げた。

 船の周囲は、ちょっと弾んで、石は海面に乗ってしまう。数メートル離れた所では、普通に石は沈んでいくのだ。

「時間が止まった時に動いていたものは動かせないんだ」

「しかし、停まっている連絡船はあるのか?」

「……そうだ、ドックに行けば!」

「シュネーヴィットヘンは動かせないよ」

「違うんです、小型船舶用のドック。きのう皆さんを出迎えた時にメンテナンスの終わった船があったんです!」

「行ってみよう!」

 

 港の外れのドックに向かうと、乾ドックにメンテナンスを終えたばかりの連絡船マーメイドが鎮座していた。

 

 

☆ ステータス

 HP:20000 MP:300 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・300 マップ:12 金の針:60 福袋 所持金:450000ギル(リポ払い残高0ギル)

 装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 空蝉の術 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)  思念爆弾

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

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かの世界この世界:137『時の女神ヴェルサンディ』

2020-11-19 05:50:38 | 小説5

かの世界この世界:137

『時の女神ヴェルサンディ語り手:ブリュンヒルデ    

 

 

 

 右も左も 上も下も 遠いも近いも 重いも軽いも 前も後も 表も裏も 明るいも暗いも 太いも細いも 短いも長いも

 

 全ての標(しるべ)がグチャグチャになった。

 全てのものが存在して目には見えるが秩序が無くなり、本来あるべき状態では認識できなくなってきている。

 目をつぶるしかなかった。

 目を開けていては、三半規管どころか全ての感覚がおかしくなって気が狂ってしまう。

 気が狂ったブリュンヒルデなんて、ムヘンの流刑地に生息していたヒルのようなもんだ。ヌメヌメとナメクジのようにイヤらしく、ポタリと落ちて来ては人や動物の血を吸っうしか能がない軟体動物。ト-ル元帥に、その名を教えられた時は――我が名からブリュンとデを取ればヒルになる――そんな自嘲的なギャグを思いついた時よりも鬱になる。

 しっかりしろ!

 何度か自分を叱り飛ばすと、それが功を奏したのか、ゆっくりと感覚が戻ってきた。

 

 右と左 上と下 遠近 軽重 前後 表裏 明暗 太細 長短 そして、さっきは意識さえしていなかった自他の区別がついてきた。

「姫、大丈夫ですか!?」

 真っ先にタングリスが飛んできた。

「ああ、他の者は?」

 見回すと、テルもケイトを抱き起し、ロキは自分の背中に乗っているのにも気づかず、キョロキョロとポチを探している。ポチは、まだ少しボケているようで、自分が乗っているのがロキの背中だとは気づかずにキョロキョロ、まあ、いつもの光景だ。

「どうも、動けるのはわたしたちだけのようです。ヘルムの住人は、まだフリーズしたままです」

「ポチ、ちょっと空を飛んで様子を見ろ」

「ラジャー!」

 飛び上がると、自分が乗っていたのがロキの背中であったことに気づいて「ロキ!」「ポチ!」と、二人でハグ。命じたことは瞬間で忘れている。まあ、ざっと見て四号の乗員以外は、ピクリともしない。呼吸している気配さえないが死んでいるのではない、わたしの直感が、そう言っている。直観? なぜだ、なぜ自分の直観を信じるんだ?

 考え続けられるほどには回復してはいない。

「姫、ユーリアが……」

 テーブルの横で伏せていたユーリアがゆっくりと身を起こした。身を起こすと、立った姿勢のまま薄っすらと光って地上一メートルほどの空中に浮きあがった。

「……わたしは、時を司るノルン三姉妹の次女ヴェルサンディです。ヘルムのヤマタから託されて時間を回復しました」

「ヴェルサンディ……ユーリアは時の女神がったのか?」

「いえ、ユーリアの体を借りているだけです。自分の姿を現すほどの力がありません……そう長く、こうもしていられません。要点だけになりますが聞いてください」

 穏やかな中にも凛とした響きがあるので、我々は居住まいを正した。

「時の女神は三人です。姉のウルズは過去の時間を司ります。わたしは現在の時を、妹のスクルドは未来の時間を司ります。姉と妹は眠っているので、回復できるのは、今の、この瞬間だけなのです」

「それで、他の人たちは……」

「過去も未来も止まったままなので、動くことはありません。姉と妹が眠っているのは世界樹の力が弱っているからです。ヤマタも力を失ったいま、完全な時の摂理を回復することはできません。そこで、あなたがたにお願いがあるのです。世界樹の勢いを取り戻すために、この閉じられた時間の中に湧きだすクリーチャーどもを退治してください。退治しつつ世界樹をを目指してください。それと……わたしが借りてしまったために、わたしが去ってもユーリアはあなたたち同様です」

「同様とは?」

「ユーリアは、この停止した現在に覚醒しています。ひとり、このヘルムに置いておくのは不憫です。姉と妹が目覚め、過去と未来が回復するまで行動を共にしてやってください、それから……ああ、もう戻らなければなりません……ユーリアを……世界樹をよろしく……」

 フッと力が抜けるようにヴェルサンディが消えると、地上一メートルのところから、ユーリアの体はドサリと落ちてしまった。

「あいた!」

 お尻から落ちたユーリアは、痛さのあまり口がきけない。

「大丈夫か!?」

 一番近くのロキが声をかけて、テルとケイトが介抱する。

 その間、わたしとタングリスは考えた。定員いっぱいに乗っている四号に、どうやってユーリアを乗せたらいいのかと……。

 

 

☆ ステータス

 HP:20000 MP:300 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・300 マップ:12 金の針:60 福袋 所持金:450000ギル(リポ払い残高0ギル)

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  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

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 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

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かの世界この世界:136『標(しるべ)』

2020-11-18 06:41:10 | 小説5

かの世界この世界:136

『標(しるべ)語り手:タングリス      

 

 

 ずっとヘルムを照らしてきましたが、ここまでです……

 

 ヘルム神の姿が薄くなってきた。

「あなたが消えると、この島は闇になるのか?」

「あなた方が思うところの闇ではありません、この世に光をあらしめているのは至高の神より託されたオーディンです。わたしは、オーディンがつつがなく役目を果たせるように、オーディンの世界の標(しるべ)の役割を果たしてきたのです。標を失った地上は闇よりもひどい世界になります……残り僅かの力を振り絞って、あなたたちをアグネスの家に戻します。家に戻れば、ユーリアの意識は戻ります。そこからは世界樹ユグドラシルの根元に住む時の女神ノルン姉妹が標の代わりをしてくれるでしょう……」

「標の代わりとは?」

「……もう時間が……オーディンの娘ブリュンヒルデ、姫に託します、この地上を……ヴァルハラを……」

 そこまでだった、ユーリアに似たヤマタの神は輪郭を失って無数の光の粒子となって我々を包んだ。光の粒子に包まれてホワイトアウトした我々は、次の瞬間、ユーリアとヤコブの母であるアグネスの庭に戻ってきた。

 街の住人が酔いつぶれて、あちこちで眠っている。半身を起こしてボーっとしているのは四号の四人の乗員たちだ。

「出発の朝に戻ったようです」

 ふらつきながらもタングリスが立ち上がって状況を確認している。テルも周囲を見渡しロキとケイトが無事なのを見て肩の力を抜いた。

「みなさーーん!」

 駆け寄ってきたのはユーリアだ。

「ユーリア、憶えているか?」

「はい、ヘルム神は『ユーリアを取り込んでも輝きを取り戻せるのは、ほんの僅かの時間だ。間もなくユーリアを取り戻そうとして仲間たちがやってくる。わたしは、その者たちに全てを託そうと思う、いっしょに帰るがいい』とおっしゃいました。どうやら、今朝の時間まで戻ったようです……時の女神ノルン姉妹に託したというのは、このことなんでしょうか?」

「いや……そうでもないようだ」

 目まいがした。いや、目まいがしたように感じたんだ。

 まるでVRゲームがバグったように空間が歪んでくる。遠近感がむちゃくちゃになり、雲がすぐ目の前に迫ったかと思うと、わたしの顔を覗き込んでいたユーリアの顔が数百メートルの彼方でゆらゆら揺れて、四号の車体がシュールにゆがんだり、風景そのものがバクテリアの鼓動に似た変形を繰り返す。

 気持ちが悪い……世界が標を失うということはこういうことなのか?

 

☆ ステータス

 HP:20000 MP:300 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・300 マップ:12 金の針:60 福袋 所持金:450000ギル(リポ払い残高0ギル)

 装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 空蝉の術 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)  思念爆弾

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

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