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ダニエル・ハーディング/新日本フィル: 中国四川省大地震 クリスマスチャリティコンサート

2008-12-28 | コンサートの感想
私にとって、今年最後となるコンサートを聴いてきました。
前回のブログでも書きましたが、幸運にもハーディングのチャリティコンサートのペアチケットをいただいたので、妻と一緒に東京芸術劇場へ出かけました。
中国四川省大地震へのチャリティということで、今回のコンサートは25日:横浜、27日:東京と2回行われています。

この日、オーケストラは両翼対抗配置。
大きな拍手に迎えられて登場したハーディングは、指揮棒を持たないスタイルでした。
マズアやブリュッヘン、アーノンクールといったマエストロは昔から指揮棒を使わないで指揮をしていましたが、最近は小澤さん、ラトルなどのビッグネームも指揮棒を持たないことが多いですし、ちょっとした流行なのかもしれません。

<日時>2008年12月27日(土) 14:00 開演
<会場>東京芸術劇場
<曲目>
■ドヴォルザーク:序曲「謝肉祭」op.92
■エルガー:「愛のあいさつ」 op.12
■ヴェルディ:歌劇「運命の力」序曲
■ドヴォルザーク:スラブ舞曲 op.72 第7番
■ドヴォルザーク:交響曲第9番ホ短調「新世界より」op.95
<演奏>
■指 揮:ダニエル・ハーディング
■管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団

プログラムの前半は、小品4曲。
ちょっと雑多な印象を受けますが、ひょっとすると、謝肉祭から運命の力までを3楽章構成のシンフォニー、スラブ舞曲をアンコールという感じに捉えたのかもしれません。
ハーディングをステージで聴いたのは初めてですが、オーケストラが実によく鳴ります。
全体の見通しがよく、躍動感にあふれた音楽は、やはり若き巨匠の風格十分。
「運命の力」序曲では、特徴的な3つの音を、速めのテンポで且つ少々無機的に鳴らします。他の部分が密度の濃い表現だったので、この違いは鮮明でした。
これは、「運命は避けられないもの。しかし、希望は捨てないで」というメッセージのようにも聞こえました。

後半は、メインの「新世界」。
第1楽章では、フルートとオーボエが吹く第2主題でアーティキュレーションの明確さを求め、それを頑固なまでに全体に徹底させていました。
第2楽章は、イングリッシュが素晴らしく美しい表情で吹ききった後、管楽器がやや危ない部分がありましたが、印象に残ったのは、ラスト近くで人数を絞った弦楽器が奏でる箇所。
あの名旋律が息も絶え絶えになりながら最弱音で奏でられ、やがて本当に止まってしまいます。しかし、目はしっかり明いている。
そして、再び絞り出すように静かに歌いだします。
実に感動的な瞬間でした。
また、フィナーレの最後も素晴らしかったなぁ。
クライマックスを築いたあと、ラストはテンポをぐんと落として、深い呼吸でエンディングを迎えました。
ハーディングは、きっと「今回の大地震は、本当に心が痛む大きな災害でした。しかし、慌てることはありません。目線を下げないで、ゆっくり、ゆっくり元気を取り戻してください。」とドヴォルザークの音楽を通して語ったに違いありません。
というよりも、エールを贈ったのだと思います。
音楽の持つ不思議な力を、強く感じたコンサートでした。

そんな貴重な経験をさせてもらった後、夜は桜桃ご夫妻と一年ぶりの忘年会。
飲むほどに、食するほどに、楽しい時間を過ごさせていただきました。
私にとっても、忘れられない一日になりました。

<最後にハーディングの言葉を・・・>
このコンサートを今年5月の四川大地震で被災された方々に捧げたいと思います。
大変な惨事をもたらした大地震の記憶は、世界中の人々の心に永遠に残ることでしょう。
私は今日のコンサートの音楽を地震の被災者に捧げ、その被災から立ち直られようとされる方々のお役に少しでも立てることを心から願っています。
(ダニエル・ハーディング)

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