昨日、神尾真由子さんがチィコフスキー国際コンクールで優勝したという記事が飛び込んできました。
いやー、本当に素晴らしいことです。
まさに天晴れ!
神尾さんのヴァイオリンは、一度実演で聴いたことがあります。
ちょうど5年前になりますが、2002年3月の読響マチネーで、曲目はブルッフのヴァイオリン協奏曲第1番でした。
真っ赤なドレスで登場した彼女の演奏は、とにかく非常に情熱的だったなぁ。
前日に、諏訪内晶子さんが日本フィルの定期でこの曲を演奏していましたので、私は2日続けて大好きなブルッフを堪能することが出来ました。
「凛とした諏訪内」、「情熱的な神尾」という好対照な演奏でしたが、奇しくもチャイコフスキーコンクールの覇者2人の競演を聴く幸運に恵まれたことになりますね。
今後、ますますの飛躍を期待しましょう。
さて、夏になると何故か聴きたくなるトリスタン。
今日は、1952年にカラヤンがバイロイト音楽祭で演奏したライヴ盤をご紹介します。
1952年といえば、フルトヴェングラーがベルリンフィルの常任指揮者に正式に復帰した年。
そして、フルトヴェングラーの悲願であった「トリスタンとイゾルデ」の全曲録音が行われたのも、ちょうどこの年の6月でした。
EMIの威信をかけ、フラグスタート、ズートハウス、フィッシャー=ディースカウという名歌手たちを擁して録音されたこのディスクは、今も永遠の名盤として語り継がれています。
また、このディスクは、当時不仲であったフルトヴェングラーと名プロデューサーのウォルター・レッグが組んだ最後の録音になりました。
一方、この年のバイロイト音楽祭でトリスタンを振ったのが、若きカラヤン。
「フルトヴェングラーのトリスタン」という世紀の名盤誕生から僅か1月後の、1952年7月のことです。
この年のバイロイトでは、ヴィーラント・ワーグナーの演出(=抽象的、簡素で、舞台に具体的な装置を置かないという例の演出)を巡って一騒動ありました。
中川右介さんの著書「フルトヴェングラーとカラヤン」によると、ヴィーラントの演出を嫌ったカラヤンはずっと機嫌が悪く、オーケストラの配置の入れ替えを求めたり、リハーサルで主演クラスの歌手をしめあげるなど、偉いのは自分だとアピールするかのごとくに、暴君ぶりを発揮したそうです。
そんな状況で行われたという、このトリスタン。
さぞかし、ぎすぎすした冷たい演奏になったかと思いきや、全く逆でした。
音楽そして演奏とは分からないものです。
このトリスタンは素晴らしい。
本当に素晴らしい。
第一幕の前奏曲から、既にただごとではない緊張感。浮いては沈むようなトリスタン独特のうねりを繰り返しながら、音楽はどんどん凄みを増していきます。
重量感を十分感じさせつつ、沈潜しすぎて音楽の弾力性が失われるというような状態に決して陥らないことも、この演奏の大きな魅力でしょう。
とくに、見事なのは第三幕。
重く深い前奏曲からラストのイゾルデの愛の死まで、あっという間の1時間強でした。
私は、タイムスリップして、まるで自分がバイロイトでこの上演に立ち会っているかのような錯覚を覚えました。
歌手では、ヴィナイの聴き手の心に深く訴えかけるようなトリスタン、圧倒的な存在感を示すホッターのクルヴェナールがとりわけ素晴らしかった。
そして、感情豊かにそしてストレートにイゾルデの心を表現するメードルも、まことに見事。
そして、このカラヤン盤で特筆すべきは、録音の良さ。
放送録音だと思いますが、この時期のライヴ録音としては、まずは申し分ない音質でしょう。
低音がときに出すぎているようにも感じますが、これがバイロイト独特の雰囲気を一層リアルに伝えることにも繫がっているように感じます。
濃密かつ深遠な表現で「神の世界」すら垣間見せてくれるフルトヴェングラー、一方、生身の人間の悩む姿を共感を持って鮮明に描くカラヤン、好対照ながらいずれも感動的な演奏でした。
ワーグナー:楽劇『トリスタンとイゾルデ』全曲
<配役>
■ラモン・ヴィナイ(トリスタン)
■マルタ・メードル(イゾルデ)
■ハンス・ホッター(クルヴェナール)
■イーラ・マラニウク(ブランゲーネ)
■ルートヴィヒ・ウェーバー(マルケ王)
<演奏>
■ヘルベルト・フォン・カラヤン 指揮
■バイロイト祝祭管弦楽団,合唱団
<録音>
■1952年7月23日 バイロイト祝祭劇場(ライヴ)
いやー、本当に素晴らしいことです。
まさに天晴れ!
神尾さんのヴァイオリンは、一度実演で聴いたことがあります。
ちょうど5年前になりますが、2002年3月の読響マチネーで、曲目はブルッフのヴァイオリン協奏曲第1番でした。
真っ赤なドレスで登場した彼女の演奏は、とにかく非常に情熱的だったなぁ。
前日に、諏訪内晶子さんが日本フィルの定期でこの曲を演奏していましたので、私は2日続けて大好きなブルッフを堪能することが出来ました。
「凛とした諏訪内」、「情熱的な神尾」という好対照な演奏でしたが、奇しくもチャイコフスキーコンクールの覇者2人の競演を聴く幸運に恵まれたことになりますね。
今後、ますますの飛躍を期待しましょう。
さて、夏になると何故か聴きたくなるトリスタン。
今日は、1952年にカラヤンがバイロイト音楽祭で演奏したライヴ盤をご紹介します。
1952年といえば、フルトヴェングラーがベルリンフィルの常任指揮者に正式に復帰した年。
そして、フルトヴェングラーの悲願であった「トリスタンとイゾルデ」の全曲録音が行われたのも、ちょうどこの年の6月でした。
EMIの威信をかけ、フラグスタート、ズートハウス、フィッシャー=ディースカウという名歌手たちを擁して録音されたこのディスクは、今も永遠の名盤として語り継がれています。
また、このディスクは、当時不仲であったフルトヴェングラーと名プロデューサーのウォルター・レッグが組んだ最後の録音になりました。
一方、この年のバイロイト音楽祭でトリスタンを振ったのが、若きカラヤン。
「フルトヴェングラーのトリスタン」という世紀の名盤誕生から僅か1月後の、1952年7月のことです。
この年のバイロイトでは、ヴィーラント・ワーグナーの演出(=抽象的、簡素で、舞台に具体的な装置を置かないという例の演出)を巡って一騒動ありました。
中川右介さんの著書「フルトヴェングラーとカラヤン」によると、ヴィーラントの演出を嫌ったカラヤンはずっと機嫌が悪く、オーケストラの配置の入れ替えを求めたり、リハーサルで主演クラスの歌手をしめあげるなど、偉いのは自分だとアピールするかのごとくに、暴君ぶりを発揮したそうです。
そんな状況で行われたという、このトリスタン。
さぞかし、ぎすぎすした冷たい演奏になったかと思いきや、全く逆でした。
音楽そして演奏とは分からないものです。
このトリスタンは素晴らしい。
本当に素晴らしい。
第一幕の前奏曲から、既にただごとではない緊張感。浮いては沈むようなトリスタン独特のうねりを繰り返しながら、音楽はどんどん凄みを増していきます。
重量感を十分感じさせつつ、沈潜しすぎて音楽の弾力性が失われるというような状態に決して陥らないことも、この演奏の大きな魅力でしょう。
とくに、見事なのは第三幕。
重く深い前奏曲からラストのイゾルデの愛の死まで、あっという間の1時間強でした。
私は、タイムスリップして、まるで自分がバイロイトでこの上演に立ち会っているかのような錯覚を覚えました。
歌手では、ヴィナイの聴き手の心に深く訴えかけるようなトリスタン、圧倒的な存在感を示すホッターのクルヴェナールがとりわけ素晴らしかった。
そして、感情豊かにそしてストレートにイゾルデの心を表現するメードルも、まことに見事。
そして、このカラヤン盤で特筆すべきは、録音の良さ。
放送録音だと思いますが、この時期のライヴ録音としては、まずは申し分ない音質でしょう。
低音がときに出すぎているようにも感じますが、これがバイロイト独特の雰囲気を一層リアルに伝えることにも繫がっているように感じます。
濃密かつ深遠な表現で「神の世界」すら垣間見せてくれるフルトヴェングラー、一方、生身の人間の悩む姿を共感を持って鮮明に描くカラヤン、好対照ながらいずれも感動的な演奏でした。
ワーグナー:楽劇『トリスタンとイゾルデ』全曲
<配役>
■ラモン・ヴィナイ(トリスタン)
■マルタ・メードル(イゾルデ)
■ハンス・ホッター(クルヴェナール)
■イーラ・マラニウク(ブランゲーネ)
■ルートヴィヒ・ウェーバー(マルケ王)
<演奏>
■ヘルベルト・フォン・カラヤン 指揮
■バイロイト祝祭管弦楽団,合唱団
<録音>
■1952年7月23日 バイロイト祝祭劇場(ライヴ)
どうもご無沙汰しております。
私も最近になって中川右介さんの著書「フルトヴェングラーとカラヤン」を読了しました。
この3人目のチェリビダッケという方の演奏をこれまでに聴いたことが無かったのでromani1988さんの記事を参考にCD等探して聴いてみたいと思います。まずはこの日本公演のディスクを探してみることにします。
こちらこそご無沙汰しており、申し訳ありません。
中川右介さんの著書、なかなか興味深いですよね。
チェリビダッケは、とにかく音に聞こえたアンチ・カラヤンで、カラヤンのやることの全て逆をやっていたような感じすらします。
だから、カラヤンとは正反対の「大の録音嫌い」でした。
生前本人が認めたディスクは、確か1~2枚だけだったように思います。
前回ご紹介したブラームスの4番の東京ライヴも、チェリだけに可能な名演だと思います。
あと、非正規盤になりますが、ブルックナーの8番(俗にリスボンライヴと呼ばれています)も圧倒的な演奏でした。機会があれば、お聴きになってみてください。比較的手に入りやすいと思います。
ありがとうございました。
いくつも集めてしまうトリスタンの中でも、一番、音楽の勢いを感じる旧カラヤン盤です。
私はオルフェオ盤を格安で購入したのですが、世評ではウォルホール盤と録音に大差はないみたいです。
歌手も含めてこういうワーグナー演奏ができる人々はもういないかもしれませんね。
昔にワープして実演を体験してみたいものです。
TBさせていただきました。
いつもありがとうございます。
このトリスタン、よく聴くとカラヤンの執念のようなものも感じるのですが、すべていい方向に向かってますよね。
実は若い頃アンチカラヤンの急先鋒だった時代があったのですが、このトリスタンのような演奏を聴いていれば、きっと考え方が変わったと思います。
加えて、この録音はモノラルながら、ほんとに音が良いですね。何より雰囲気があって気に入っています。
yokochanさまと同じ印象をもてて、なにやら嬉しいです。
ありがとうございました。