ETUDE

~美味しいお酒、香り高い珈琲、そして何よりも素敵な音楽。
これが、私(romani)の三種の神器です。~

セゴヴィアのシャコンヌ

2007-03-27 | CDの試聴記
今週は出張ウィーク。
昨日から今日にかけて、広島・大阪と転戦し?いったん帰宅。
明日からは、さらに名古屋・大阪へ行きます。
しかし、今週末は、読響の常任指揮者アルブレヒトの最後のステージがあるので、体調管理には十分注意しなくては・・・。
何といっても、マーラーの9番ですから。

さて、今回新幹線の車中とホテルでよく聴いたのが、ギターの神様セゴヴィアの演奏するシャコンヌ。
セゴヴィアは、バッハのシャコンヌを2回録音しています。
1954年にモノラル録音された新盤も、もちろんスケールの大きな素晴らしい名演ですが、私がとくに好きなのは、1944年にSP録音された旧盤です。

若きセゴヴィア(といっても40代ですが)が、満を持してパリのコンサートでこの曲を採りあげたとき、賞賛の声とともに「バッハに対する冒涜だ!」という中傷に近い批評も、少なからずあったそうです。
1935年6月のことでした。
それでもセゴヴィアはこの曲を弾きつづけました。
そして、第一回目の録音を行ったのが1944年。

この1944年に録音された、セゴヴィアのシャコンヌはとにかく熱い!
強烈なパッションをもつシャコンヌです。
「俺は愛するギターで、最高のシャコンヌを弾くんだ。」
というセゴヴィアの自信と気概が満ち溢れているように感じます。

冒頭のテーマからして既に熱い。
リズムにセゴヴィア独特の癖も感じられますが、確信をもった表現で次々と変奏の妙を描いて見せます。
そして、触ると大やけどしそうなエネルギーを持つ長大なスケールに続き、あのアルペッジョが現われます。
こんなうなりをあげて襲いかかってくるようなアルペッジョは、ヴァイオリンからもギターからもついぞ聴いたことがありません。
とくにクライマックス前後の息をのむような圧倒的な表現は、もう空前絶後でしょう。
「セゴヴィアが、セゴヴィア自身に対して、また聴き手に対して、そして何よりも大バッハに対して、真剣で真正面から勝負してきている」とすら感じます。

中間部の冒頭は、スル=ポンティチェロ(硬い音)でチェンバロのような効果を与えています。
(以来、何人のギタリストがこのセゴヴィアの表現を真似ていたことか・・・)
また中間部半ばで、A音のオスティナートが3つから4つに変わる箇所の雄弁な表現は、セゴヴィアの構成力の高さを示しているといえるでしょう。
そして、再びニ短調に戻ったあと、静かにしかも次第に高揚していく表情の見事さ。

やはりこのシャコンヌ、何度聴いても只者ではありません。
私は何種類かこのセゴヴィアのシャコンヌの旧盤を持っていますが、今日画像でご紹介したこの10枚組のアルバムが現在もっとも入手しやすいと思います。
そして、何と2000円を切る価格で販売されていますので、一度騙されたと思って聴いてみてください。
きっと驚かれると思います。

<曲目>バッハ作曲 シャコンヌニ短調(セゴヴィア編曲)
<演奏>A・セゴヴィア
<録音>1944年(SP)

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2 コメント

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バッハの無伴奏 (calaf)
2007-03-29 17:00:56
こんばんは。とうとうセゴヴィアのシャコンヌが出ましたね。このSP録音は昔EMIの青盤で出ていたように思います。ギターを弾くものにとっては、バッハのシャコンヌは聖典中の聖典だろうと思います。セゴヴィアのバッハへの批判は「バッハにサッカリン(人口甘味料)をいれた」という辛辣な言葉で代表されますが、セゴヴィアが音楽院で勉強しているころ、教授から「おまえの天分ならヴァイオリンをやれ」といわれたのを「ギターが私を必要としている」と答えたようにこのシャコンヌは「ギターがシャコンヌを必要としている」と言った観があります。熱い演奏は今までにたくさん聴いてきましたが、これほど熱い演奏は私の音楽経験の中でも皆無です。レパートリーの多い他の楽器では、ここまでの使命感を奏者は、果たして感じるでしょうか?ちなみ「シャコンヌはギターの方がよい」と言ったトスカニーニのこのエピソードはギターの好きな人なら誰でも知っています。そのぐらいセゴヴィアのシャコンヌのインパクトは大きかったのです。今でのシャコンヌは誰の演奏がお勧めですか?と問われれば編曲であることを忘れて、セゴヴィアと言います。
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>calafさま (romani)
2007-03-30 00:24:32
こんばんは。

何かとても嬉しいコメントです。
本当にありがとうございます。

54年のモノラル盤ももちろん素晴らしいのですが、このSP盤できくセゴヴィアはもう火傷しそうなくらい燃えていますよね。

>レパートリーの多い他の楽器では、ここまでの使命感を奏者は、果たして感じるでしょうか?
まさに同感です。そして、この燃え上がる情熱を、あますところなく実現してしまうテクニックの凄さ。
セゴヴィアという不世出のギタリストの至芸としかいいようがありません。

何度聴いても、気持ちが鼓舞されますよね。
いつかシャコンヌを何回かに分けて書こうと思いますが、そのときもきっとこの演奏のことに触れることになると思います。

でも、calafさまのこの演奏に対する思い、決してセゴヴィアに負けず劣らず強烈な「熱」を感じますよ。

あらためて、ありがとうございました。


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