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ニコラウ・デ・フィゲイレド&西山まりえ/チェンバロ・デュオ 『目白バ・ロック音楽祭2007』

2007-06-10 | コンサートの感想
金曜日の帰り道、目白へ行ってきました。
お目当ては、目白バ・ロック音楽祭。
昨年NHK教育テレビでこの音楽祭のことをとりあげていましたが、規模は小さいながらも、町ぐるみで優しく盛り上げているところが大いに気に入りました。
私の音楽祭初参加(もちろん聴衆としてです)は、チェンバロのデュオコンサートでした。

<日時>2007年6月8日(金)19:00 開演
<会場>自由学園明日館
<曲目>
■バッハ:ブランデンブルク協奏曲第6番
■モーツァルト:4手のためのソナタ ニ長調 K.381 
■ソレール:協奏曲第3番 ト長調 
■ソレール:協奏曲第2番 イ短調
■ボッケリーニ:ファンダンゴ
(アンコール)
■ブランデンブルク協奏曲第6番 第1楽章
■モーツァルト:4手のためのピアノソナタから
<演奏>
■ニコラウ・デ・フィゲイレド(チェンバロ)
■西山まりえ(チェンバロ)


この日は池袋から歩いていったのですが、心配していたとおり、道に迷ってしまいました。
ただ、行ったり来たりしながらも、幸い開演時刻の10分前に会場に着くことが出来たので、まずは良かった。(ほっ・・・)

この自由学園明日館(「みょうにちかん」と読みます)は、大正10年に自由学園の校舎として建てられたそうですが、平成9年に国の重要文化財の指定を受けています。
都心のコンサートホールとは一味違った、本当の意味での「木の香り」がします。
まさに手造り音楽祭には最適な会場でしょう。

開演時刻になり、フィゲイレドさんと西山まりえさんが登場。
照明は落ちているのですが、外はガラス窓なので、まだ薄暮の状態です。
こんな雰囲気もなかなか素敵ですね。

第1曲目はブランデンブルク協奏曲の第6番のチェンバロデュオ版。
軽い!
チェンバロの音って、こんなに軽かったんだ。
強奏部分も、音の響きは拡がりを持ってはいるけど、決して重くない。
弱音部もガラス細工のような繊細さというよりも、羽毛で撫ぜるような質感。
よく知っているつもりでしたが、改めて認識した次第です。
ただ、第1楽章の途中でどちらかが譜面を見失ったんじゃないかと思うのですが、ちょっと危ない状態に・・・。
何とか止まることだけは回避されたのですが、その後も二人の呼吸は微妙に合いません。
第3楽章の最後まで、このアクシデントを引きずってしまったようです。
大丈夫か・・・
一瞬不安が頭をよぎります。

バッハのあと、フィゲイレドさんが笑顔で解説をして、西山さんが通訳してくれました。
西山さんの「夫婦漫才ではないんですが・・・」と前置きして通訳してくれた姿がとても微笑ましく、会場全体がアットホームな雰囲気になっていきました。

そして、前半のメインは、私の大好きなモーツァルトの4手のためのソナタ。
第1音から、一転してまさに別世界の音楽でした。
今まで相当数のディスクを聴いてきましたが、こんなに楽しく生気に富んだ演奏は初めて。
第1楽章では今にもケルビーノがステージに登場して、踊りだしそうでした。
チェンバロ2台で、こんな素敵なモーツァルトになるんだ。
小さなチェンバロの椅子に二人が仲良くお尻を半分ずつ?腰掛けて弾くユーモラスな姿と相まって、もう最高のモーツァルトでした。
そして、外を見ると、すっかり日が落ちて真っ暗に・・・。

後半は、ソレールとボッケリーニ。
モーツァルトですっかり調子を取り戻した二人の名手が、素晴らしい妙技を聴かせてくれました。
ソレールの作品では、音の数がチェンバロにフィットしているように感じました。
比較するとバッハのブランデンブルクは、やはりチェンバロにしては少し音符の数が多かったのではないでしょうか。

ボッケリーニは、ギター5重奏曲からの編曲。
ギターを弾く者にとっては、ジュリアン・ブリームの編曲による「ギターとチェンバロのための序奏とファンダンゴ」として馴染み深い曲でもあります。
この日のトリを飾るに相応しい選曲であり演奏でした。
思わず身を揺らしてしまいそうな弾力性のあるリズム感が、とりわけ印象に残っています。
また、ブリーム編のラストとは異なり、どんどんテンポアップして一気にエンディングを迎えるアレンジ&演奏も心地よかった。

そして、大きな拍手に応えてアンコール。
2人が選んだのは、なんと冒頭弾いたブランデンブルクの6番。
失礼ながら、「大丈夫か」と思ったのは、私だけではないでしょう。
しかし、そんな不安をあざ笑うかのような素晴らしい演奏でした。
「こんなふうに表現したかったんですね」、思わず心の中で呟いてしまいました。
演奏を終えた2人が抱き合って喜んでいましたが、その気持ち、本当によく分かりますよ。
「よーし、ワンスモア チャレンジだ!」とばかりに、アンコール曲にわざわざ選んで弾いたお二人のプロ根性にも脱帽です。

自然で温かく、素晴らしい音楽祭でありコンサートでした。
来年もまた行きたいと思います。

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2 コメント

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Unknown (おさかな♪)
2007-06-12 23:02:34
自由学園明日館、良いですよね。。。
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>おさかな♪さん (romani)
2007-06-13 23:47:31
こんばんは。

明日館ご存知でしたか・・・。
私は初めて行きましたが、とてもいい雰囲気ですね。
チェンバロとか少人数の室内楽なんかは、まさに理想的かもしれません。
奏者と聴衆の距離も近く、この日はホールの全員が一体感を持って音楽を楽しんでいました。

また、本文にも書きましたが、窓から見える景色が、演奏開始時の薄暮の状態から、演奏が進むにしたがって暗くなっていき、最後には真っ暗になっていくのが、自然かつロマンティックで感激しました。


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