ETUDE

~美味しいお酒、香り高い珈琲、そして何よりも素敵な音楽。
これが、私(romani)の三種の神器です。~

アーノンクール&ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス ヘンデル:「メサイア」

2006-11-22 | コンサートの感想
「最高のメサイア」
昨日サントリーホールを埋めたすべての聴衆が、そう感じたに違いありません。
そのくらい、素晴らしかった!
オーケストラ、ソリスト、コーラス、そしてマエストロ、全てに対してブラヴォー。

<日時>2006年11月21日(火)19:00~
<会場>サントリーホール
<曲目>ヘンデル作曲 オラトリオ『メサイア』
<演奏>
■ニコラウス・アーノンクール指揮
■ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス
■ソプラノ:ユリア・クライター
■アルト:ベルナルダ・フィンク
■テノール:ヴェルナー・ギューラ
■バス:ルーベン・ドローレ
■アーノルト・シェーンベルク合唱団

      
    

これだけの大曲になると、どこかに穴や綻びがでるものです。
しかし、昨日のメサイアにはそれが全くなかった。
まさに奇跡のような演奏だったのです。
加えて聴衆も最高でした。
2時間半を超える大曲を聴いているにもかかわらず、凄い集中力。
最後のアーメンコーラスが終わった後も、物音ひとつしません。
アーノンクールが両腕の緊張を解いて脱力したあと、一拍おいて、いっせいに拍手が起こりました。
ホール全体がどれだけの一体感をもっていたか、これだけを採りあげても想像いただけると思います。
こんなメサイアを聴かせてもらって、もう「ありがとう」という言葉以外に、私は何も言葉が浮かびません。

実は最近風邪のせいだと思うのですが、ときどき耳が片方だけ少し塞がったような感じになるのです。
この日が、まさにそれでした。
よりによって、楽しみにしていたアーノンクールのメサイアの日にならなくてもと、体調をちょっぴり恨みましたが、かえって感覚を研ぎ澄まして聴くことができたのかもしれません。

さて、この日の席は大好きなP席ではありません。
大奮発して、プレオーダーでS席をとりました。(笑)
1階の14列目という声楽曲を聴くには理想的なロケーション。

ステージに登場したコンツェントゥス・ムジクスの雰囲気はアットホームな感じでいいですねぇ。
コンマス席には、元ウィーン響のコンサートマスターにしてモザイク・カルテットの第一ヴァイオリンもつとめるヘーバルト。
その隣にはマエストロの愛妻であるアリス・アーノンクールがにこやかな表情で座っています。
マエストロの指揮にあわせて最初のシンフォニーが始まりました。
なんて温かい音色。そして透明なんだろう。
まさに、私の理想とする響きです。

第1部では、第11曲の合唱が、純粋無垢な表現で、思わずにっこり。
中ほどの「Wonderful,Counsellor,・・・」という歌詞が鮮烈に響きます。
それにしても、このアーノルト・シェーンベルク合唱団の素晴らしさは、もう形容しようもないくらいです。まさに世界一。
そして、第16曲の「Rejoice Greatly」は私の最も好きなアリアです。
ソプラノのクライターはこの日初めて聴きましたが、これまた素晴らしいソプラノですね。
名盤の誉れ高いアーノンクールの新盤で歌ったクリスティーネ・シェーファーにも負けません。
これだけ透明で美しい声をもったソプラノも珍しいでしょう。
バーバラ・ボニーの声に近いかなぁ。
容姿にも恵まれているので、今後ますます人気が出ると思います。

第1部が終わり休憩に入りました。
せっかくだから、より晴れやかな気持ちに浸りたいと思って、私もスパークリング・ワインをいただきました。
周りを見渡すと、本当にみんな楽しそう!
「メサイア」という音楽がもたらす、独特の幸福感ゆえでしょうか。
そして、私にも幸運が訪れました。
メサイアのおかげかワインのおかげか分かりませんが、耳の不調が、うそのように消えたのです。

後半は、そんな幸運も手伝って、一層素晴らしい音楽を堪能することができました。
第20曲のアリアは名唱。
このフィンクというアルトは、アーノンクールのお気に入りの歌手ですが、やはり実力がありますねぇ。
そして第22曲の合唱は、どこかモーツァルトのレクイエムに似ています。
また、第36曲のバスのアリア「地上の王たち・・・」は、凄い迫力でした。
このアリアを歌ったドローレは、プログラムを見ると、1980年生まれの26歳だそうです。
若々しいはずですよね。
ちなみに1980年は、アーノンクールとウィーン・コンツェントゥス・ムジクスが初来日した年。そして、私が社会人になった年でもあります。
この年に生まれた歌手が、もうこうやって大活躍しているんですよね。
感慨深いものがありました。
そして、第2部を締めくくる第39曲「ハレルヤ」。
新盤のディスクでも最も印象に残った曲ですが、この日も素晴らしい演奏でした。
ひとことでいうと、眼差しが優しいんです。
アーノンクールは、いつの間にこんなに優しい音楽、包容力に溢れた音楽を聴かせてくれるようになったのでしょうか。
もう、聴いてる間中、ずっと幸福感に浸っていました。

続く第3部では、何といっても終曲が感動的でした。
あの長いフーガからアーメンコーラスへ至るまで、もう圧倒的な演奏。
この曲がこんなに立体的に感じたことはありません。
そして、終演後の素晴らしい聴衆の反応は、冒頭書いたとおりです。
素晴らしいホール、素晴らしい聴衆にも恵まれ、滅多に聴けないような「最高のメサイア」に出会うことができました。
このコンサートを聴けた幸運に感謝しなければ・・・。

今年に入ってから、4月にウィーンで観たムーティの「フィガロの結婚」、最近では、アバド&ルツェルンの「マーラーの6番」等、生涯決して忘れることのできない名演に実演で出会うことができました。
この日の「メサイア」も絶対忘れることの出来ない、特別のコンサートに入ると思います。


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10 コメント

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幸福感 (pfaelzerwein)
2006-11-24 06:34:35
この日本公演大変評判が良いですね。皆さん幸福そうで、一体感で心が温まった雰囲気。

昔から大阪では「素晴らしい聴衆にも恵まれ」現象は多かったのですが、それに比べ東京の聴衆は若い学生が多いせいか作為的な感応が強かった様に思います。ですからこうして伺うと「特別」と云う感が強いです。

スパークリングワインで耳の通りが良くなったなんてこれまた素晴らしい。
こんばんは (理恵子)
2006-11-24 15:12:40
ヘンデルのメサイアいいですね
私も「Rejoice Greatly」すきです。
出身大学の演奏会で歌いました。
むずかしかったです。
いまならもう少しましに歌えるかな?
地方でいるので、あまりよいコンサートにはいけません。
しかも2人の子育て中だし・・・
自分の活動だけで精一杯では
向上しませんね
このブログに刺激を受けて、もっと勉強したいと思います。
K419はとうとうあさって日曜に歌います。
また報告に来ますね
素敵なコンサート (おさかな♪)
2006-11-24 18:41:29
ROMANIさんの記事に感動・・・
Unknown (Sonnenfleck)
2006-11-24 22:11:56
ご無沙汰しております。京都公演のエントリからTBさせていただきました。
アーノンクールの再来日を待ち望んでいたファンとしては、今回の《メサイア》はまさに一生モノの超絶体験でした。。おっしゃるとおり「ありがとう」の言葉しか出ませんでしたね。。

ソプラノのクライターについては少し違う印象を持ったのですが(京都ではたまたま調子が悪かったのかもしれません)…、フィンク、ギューラ、ドローレにA.シェーンベルク合唱団と、繊細な「歌心」に満ち溢れた《メサイア》でした。
最近のアーノンクールがこういう演奏をするようになってきているのはCDからも感じていましたが、実際にあの響きの中に身を置いてみると、ある種の感慨深い気分に襲われました。アーノンクールはこの後どこに行くんだろう…と。一時の新譜ラッシュも一段落して、来シーズンからは活動を縮小するとの噂もありますが、これからもずっと、聴衆に思考させずにはおかない音楽を生み出していってほしいものです。
>pfaelzerweinさま (romani)
2006-11-25 23:22:07
こんばんは。

>幸福感・・・
ほんとにこの日の演奏を聴きながら、そして休憩時にワインを飲みながら、そう感じました。
ヘンデルにもアーノンクールたちにも心から感謝です。

長い曲なので、自宅で聴く時は一気には聴けませんが、こうやってコンサートで聴くと感動もひとしおです。
京都の公演では、ちょっとしたハプニングがあったようですが、この日の聴衆はほんとに素晴らしかったです。
アバドのマーラーもそうでしたが、最高のコンサートは、最高の演奏者と最高のホール、そして最高の聴衆によって作られるように思います。

ありがとうございました。
>理恵子さま (romani)
2006-11-25 23:29:48
こんばんは。

メサイアお好きでしたか。
何か嬉しいなあ。
理恵子さまは実際に歌われたのですね。
やっぱりそういう経験は貴重だと思います。

>K419はとうとうあさって日曜に歌います。
頑張ってくださいね。
きっとモーツァルトがやさしく力を貸してくれると思います。
コンサートの成功をお祈りしております。
>おさかな♪さん (romani)
2006-11-25 23:38:59
こんばんは。

いつもありがとうございます。
この日のメサイアは、ほんとに生涯忘れることの出来ない演奏でした。
これだけ透明感があって、かつ人間の温もりが感じられる演奏に仕上げるためには、キャスティングも含めて随分時間がかかったのではないでしょうか。
聴き終わって幸福感に浸れるコンサートって、そう多くはないと思いますので、その点からも本当にラッキーだったと思います。

しかし、アーノルト・シェーンベルク合唱団って、桁違いの実力をもった合唱団ですね。
今更ながら、思い知らされました。
このコーラスが参加していたことが最も大きかったかもしれません。

>Sonnenfleckさま (romani)
2006-11-25 23:55:12
こんばんは。

こちらこそご無沙汰しております。
コメントいただき、とても嬉しかったです。
Sonnenfleckさんも、京都の公演に行かれていたんですよね。

>今回の《メサイア》はまさに一生モノの超絶体験でした。
まったく、まったくです。

アーノンクールの指揮ぶりを、斜め後ろから見る感じだったのですが、かなり細かく表情をつけていました。
アクセントの入れ方もかなり強烈な仕草だったように思いますが、すべてを理解しているコンツェントゥス・ムジクスとアーノルト・シェーンベルク合唱団は、最上の反応で応えていました。

新盤のCDで聴いた時も、アーノンクールは変わったと驚きの念を禁じえませんでしたが、実演はさらに凄かったですね。

再びこのコンビの演奏を日本で聴くことはできるでしょうか・・・。
もし、叶えられたら、ほんと奇跡ですね。
奇跡が起きるように祈りましょう。

うらやましい・・・。 (zauber-ton)
2006-11-26 06:25:21
素敵なメサイア・・・。
しかもソリストまで素晴らしかったなんて・・・。
残念ながらウィーン公演ではソリストに恵まれず、ちょっとハラハラの場面があったりしたので・・・。
もちろんオケ&合唱は文句なしの素晴らしさでした。

でも海を越えてあの慈愛に満ちた音楽を分かち合えるってけっこう凄い奇跡ですよね・・・。
またの来日を祈るとともに、romaniさんとウィーンでお会いできる日も夢見てますね♪(笑)
>zauber-tonさま (romani)
2006-11-26 18:53:58
こんばんは。

5日たっても、ますます感動が深くなっていきます。
それだけ素晴らしいメサイアでした。

>でも海を越えてあの慈愛に満ちた音楽を分かち合えるってけっこう凄い奇跡ですよね・・・。
全く同感です。アーノンクールがウィーンの二つのオーケストラを率いて来日してくれるなんて、想像だにできませんでした。

そんな千載一遇の来日コンサートを、聴くことができて本当にラッキーだと思います。
「再来日の実現に向けての嘆願書」をマエストロに送りたい気持ちでいっぱいですが(笑)、これからこのコンビの演奏を聴くためには、ウィーンに行くしかないのでしょうね。

そのときには、是非よろしくお願い致します。

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