ETUDE

~美味しいお酒、香り高い珈琲、そして何よりも素敵な音楽。
これが、私(romani)の三種の神器です。~

シェリング&ティボー/ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲他

2008-01-05 | CDの試聴記
今年の初詣は、例年どおり氷川神社にお参りしました。

久しぶりに実家に帰省していたこともあり、3日に妻と2人で行ったのですが、それでも入場制限がかかるくらい多くの人がお参りに来ていました。
小一時間待たされた後、十数秒だけ許されたお参りを済ませ、破魔矢をいただき、おみくじを引きます。
妻が代表で引くと「第37番:吉」。
いつもはこれで終わるのですが、今年は少しばかり色気が出て?私も引いてみました。
驚いたことに、私もまったく同じ「第37番:吉」。
これは真剣に読まなきゃ。

「つらい苦労を乗り越え、りっぱに物事を果たし、名声を得る」兆だそうです。
ただし、「日によりては危うきことあるべし。」とも書かれていましたので、むしろこの方を心しないといけないのでしょうね。

さて、新年シェリング第2弾は、昨年リリースされたベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲です。

<曲目>ベートーヴェン作曲
■ヴァイオリン協奏曲ニ長調 op.61
■ヴァイオリン・ソナタ第5番ヘ長調 op.24『春』※
<演奏>
■ヘンリク・シェリング(ヴァイオリン)
■ジャック・ティボー(指揮)
■パリ音楽院管弦楽団
■ミシェル・オークレール(ヴァイオリン)※
■ジェネヴィーヴ・ジョワ(ピアノ)※
<録音>1950年(モノラル),1950年代(モノラル)※

シェリングのベートーヴェンのコンチェルトは、少なくとも5種類以上の音源が残されているはずですが、この1950年に録音されたディスクは最も若い時代の録音。
30代半ばにルビンシュタインとメキシコで運命的な出会いをしてから、シェリングの演奏スタイルはより強靭なものに変わっていきますが、この演奏はその前のものということになりますね。
硬い表情、いかめしい表情は、まったくありません。
ティボーの勧めでパリで学んだスタイルなのでしょうか、録音当時30代初めだったシェリングの瑞々しい感性が、眩しいくらい輝いています。
たとえば、第1楽章の再現部直前で独奏ヴァイオリンが奏でる箇所。
それは、和音の変化に合わせてデリケートに光と影が描写されていて、もう、ふるいつきたくなるような見事さです。
同じ理由で、第2楽章のラルゲットも実に素晴らしい。

それにしてもこのコンチェルト、第1楽章では、ティンパニの4つの音が最後まで重要なカギになっていますが、同じ4つの音が支配する「運命」となんと印象が違うことだろう。
ベートーヴェンが生涯たった1曲しか書かなかったこのヴァイオリン協奏曲は、交響曲第4番と同じ年に作曲されており、2年後に作曲された交響曲第5番「運命」とは、やはり一線を画しているのですね。

ところで、ここで指揮をしているティボー、決して副業とは言わせない力量を示しています。
このコンチェルトを知り尽くした強みと、愛弟子シェリングへの愛情も大きく影響しているのでしょう。主題はあくまでも明快に、そして歌わせるべき箇所は絶妙の歌いまわしで、一本筋のとおった見事な伴奏をつけています。
数多あるこのコンチェルトの名盤の中でも、十分存在意義を主張できる魅力的な1枚だと思います。

また、併録されているオークレールの「春」も、なかなか素敵な演奏です。
ただ、かなりしっかりした輪郭をもった演奏なので、華奢なイメージを持つと少々ショックを受けますが、アマゾネス的なイメージはまったくありませんので、ご安心を。
一点だけ気になったのは、コンチェルトが終わったあと3~4秒で、ベートーヴェンのソナタが始まってしまうこと。
オークレールの「春」のオープニングがきらきら輝くような鮮烈さをもっているだけに、もう少しコンチェルトの余韻に浸らしてくれた方が良かったかも・・・。

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4 コメント

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ご無沙汰してます。 (ユリアヌス)
2008-02-01 21:25:41
ご無沙汰しています。年末は再会でき楽しゅうございました。
さて、このディスク、私も購入して聴きました。シェリングの初々しくなんとのびやかな演奏でしょう。ティボーも好サポートですね。ただベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲は名盤が多く、この盤を決定盤とするか、というとちょっとためらいもします。私にとっては、シュナイダーハン=ケンペン(モノラル盤)、イダヘンデル=クーベリック、あたりを聴くと、やはりこれらのほうが上かなと思ってしまいます。
オークレールのスプリングは、彼女らしさが出た好演ですよね。この盤のオリジナルは状態の良いものでは6桁行く高額盤ゆえ(シェリング=ティボーもかなり高いですが)、このCDが出てまずこちらに興味が行きました。romaniさんのご指摘通り、協奏曲からソナタに移る間が、あまりに短すぎるというのは、まったく同感ですね。
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>ユリアヌスさま (romani)
2008-02-04 07:44:44
おはようございます。

お返事が遅くなり、本当に申し訳ありません。
年末は久しぶりにお目にかかれて、とても楽しいひとときを過ごさせていただきました。
シェリングの1950年代前半までの演奏は、その後メジャーになったあとと少し違っていて、興味深いですね。

>シュナイダーハン=ケンペン(モノラル盤)、イダヘンデル=クーベリック・・・
まだ、これらのディスクを聴いたことがないのですが、是非聴いてみたいと思います。とくにシュナイダーハン=ケンペンというのは、直感で「行ける!」感じがします。

オークレールのスプリングのオリジナルは、そんなに値が張るのですか・・。(驚)
誠実に復刻されたCDのありがたみを感じますね。
ありがとうございました。
返信する
Unknown (ユリアヌス)
2008-02-04 18:22:59
CD化されている盤か、わからないのにご紹介してしまい、すみません。気楽にお探しになってみてください。
イダヘンデル=クーベリックのは私はMYTHOSというマイナーレーベルがCD-Rにしているものを所有しています。シュナイダーハン=ケンペンはモノラルのアナログ盤で所有していますが、ご直感のとおり抜群だと自分では思っています。
アナログを聴ける環境でしたら、romaniさんならお貸ししてもよいと思いますので、ご希望でしたら、どうぞ遠慮なくおっしゃってください。
返信する
>ユリアヌスさま (romani)
2008-02-06 00:52:10
こんばんは。

>イダヘンデル=クーベリックのはMYTHOSというマイナーレーベルで・・・
MYTHOSでリリースされているのですか・・・。早速ゲットして聴いてみなきゃ。

シュナイダーハン=ケンペンのLPの件も、本当にありがとうございます。
アナログプレーヤーは所有しているのですが、最近ほとんど聴いていないので、今度じっくり調整してみようと思っています。
うまく聴けるようであれば、是非ご好意に甘えさせてください。
そのときは是非よろしくお願いいたします。

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