ETUDE

~美味しいお酒、香り高い珈琲、そして何よりも素敵な音楽。
これが、私(romani)の三種の神器です。~

ヘンデル : シャコンヌ ト長調 HWV435

2005-11-23 | CDの試聴記
シャコンヌといえば、無伴奏バイオリンパルティータ第2番を締め括るあのバッハの名曲を、誰でも思い浮べると思います。
実は私もブログの名前を決める時に、「シャコンヌ」という名前にしようか随分迷ったくらい、バッハのシャコンヌには強い思い入れがあるんです。
でも今日ご紹介するのは、バッハのそれではなくヘンデルのシャコンヌです。
ヘンデルのシャコンヌは8曲あるチェンバロ組曲のいわば番外編のような曲で、1730年代に作曲されました。
壮麗なテーマに基づく21の変奏で構成されていますが、第9変奏からはト短調に転じその後ふたたびト長調に戻りエンディングを迎えます。バッハのシャコンヌがニ短調⇒ニ長調⇒ニ短調と展開していきますから、ト長調⇒ト短調⇒ト長調と変化するヘンデルのシャコンヌはちょうど逆になっていますね。私にはいかにもヘンデルらしい気がします。

私はペライアのピアノで弾かれた爽快な演奏が好きでよく聴くのですが、ペライア盤と並んで皆様にぜひとも聴いていただきたいのが、今日ご紹介するイダ=プレスティとアレクサンドル=ラゴヤ夫妻によるギター2重奏盤です。
イダ=プレスティは少女時代から天才の誉れ高かった名ギタリストですが、1950年にパリでラゴヤと運命的な出会いをして、ギターデュオを結成することになりました。麻薬的といっても過言でない美音、高い演奏技術、常にウィットに富んだ表現で、いまなお史上最高のデュオと謳われています。
そんな彼らの代表的な名演奏のひとつが、このヘンデルのシャコンヌです。

<曲目>ヘンデル : シャコンヌ ト長調 HWV435(ラゴヤ編)
<演奏>I・プレスティ&A・ラゴヤ(ギター)
<録音>1965年6月

ギターってこんなに多彩な表現があったかと、ただただ驚くばかりです。
ピチカート、ハーモニックス、スル=タスト(柔らかい音)、スル=ポンティチェロ(硬い音)等ギターに用意された音のパレットをすべて使ったかのような素敵な表現。
まるで万華鏡のようです。
この2人の右手のタッチは通常のギタリストとは随分異なり、指の小指寄りを使って弦を弾いていたんですが、このあたりも麻薬的な音色の秘密かもしれません。
加えて、彼らが使用していたロベール・ブーシェ(フランスの稀代の銘工でありかつ画家)作の名器も、このデュオの素晴らしい芸術を後押ししたことは間違いありません。

こんな素晴らしい演奏を聴かせてくれたギターデュオも、イダ=プレスティの突然の死によってあっけなく終わってしまいました。
享年43歳。この録音からわずか2年後のことです。
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2 コメント

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プレスティ (calaf)
2005-11-23 22:31:34
ヘンデルのシャコンヌにギターデュオがあったのですね。私はハープシコードで聴くのが好きなのですが、ギターなら是非聴いてみたいですね。



もうずいぶん前のことですが、ファリャのスペイン舞曲をこの2人で聴いていて重奏しているのを忘れるくらいの一体感は感動を通り越して、不思議な感じがしました。

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プレスティ (romani)
2005-11-25 11:11:17
calafさま

いつもありがとうございます。

プレスティがもう少し存命ならば、きっと女性のギタリストの歴史が変わったでしょうね。昔LP時代に安い輸入盤(ノイズが大きかったです)で演奏を聴いたときに、本当に驚きました。ご紹介のファリャのはかなき人生の舞曲も、本当にすばらしかったし、そのほかでは、プティ等のしゃれた演奏が印象に残っています。
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