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心に映りゆくよしなしごと書きとめどころ

イヌワシ・沖縄・ソーキそばとOさん

2022-08-03 11:19:46 | 想い出を掘り起こす
 SNSで20年近く前からお付き合いがあるOさんが、旅の途次、名古屋で一泊されるとのことで、「逢いませんか」とのお誘いが。他ならぬOさんと逢えるのなら、親の葬式以外なら是非と思った。ということは、両親の葬式をとっくに済ませ、あとは自分の葬式だけという私にとっては絶対に外せないということだ。

 もう20年近いお付き合いの中で、彼女と逢うのはこれで三度目だ。
 一度目はもう10年ほど前、今回のような複数の目的地をもった旅の途次、伊吹山でしばしば目撃されるイヌワシを観たいとのことで、岐阜駅で待ち合わせて一路伊吹山へ向かった時だ。
 その折は天候は良かったが、次第に下り坂へ。伊吹山ドライブウェイに差し掛かった折には、下から迫る私たちと、上から迫る雲海とのせめぎあいに。う~ん、残念。イヌワシのビューポイントに到着した折にはすでに雲の波が。
 
 しばらく粘ったが、諦めて滋賀県側の長浜の古い町並みを散策し、もうその頃にはすっかり荒れ模様の琵琶湖を眺めて終わった。

        その折の伊吹山でのOさん 「熊出没」の物騒な警告も

 二度めは、コロナ禍前の2019年秋、三重県のやはりSNS上で20年以上の知り合いのご夫妻共々、沖縄を訪問した折だ 。 
 その折Oさんは、私たちの滞在期間三日間を通じて、アッシー君の役割を果たしてくれ、それまで沖縄観光旅行を拒み続けてきた私の、「行くなら、贖罪を含めた旅に」の要請を組み入れた極めて適切なコースを案内してくれた。もちろん、観光を否定したわけだはなく、それはそれでじゅうぶん楽しんだ。

        19年秋 国頭(くにがみ)村 安田(あだ)での朝の散策

 そして今回の三回目、名古屋にしては珍しく、気温は高いが湿度は低く、しかも適度な風が吹く快適な夏日和の夕刻、彼女と落ち合い、名古屋の中心部を案内した。とはいえ、刻々と変わりゆくこの街自体が私には疎遠であって、適切に案内できたかどうかはまったく自信がない。
 
 この旅の途次、彼女が出会った私以外のマイミクさんたちの歓待ぶりは相当豪華だったはずで、それと張り合おうとしたら私は、「月と兎」の話よろしく、燃え盛る炎のなかにわが身を投じるほかはなく、まあ、あれはあれで世間知らずの老人の精一杯のはからいであったとご容赦願いたい。
 とはいえ、彼女と過ごしたひとときは楽しかった。

 彼女と逢う前日、沖縄から荷物が届いた。彼女の手土産代わりのソーキそばなどの入った荷物だった。冷房嫌いの私は、この時期でもその使用は最小限にし、昼はもっぱら冷たい麺類で済ませているのだが、ソーキそばはそうは行かない。その日は、冷房をギンギンに効かせて、暖かいソーキそばを作った。
 美味しかった。沖縄の味がした。麺に、レトルトにされた豚肉の部位に、沖縄の味があった。

         Oさんからいただき私が再現したソーキそば  
 
 19年の秋の沖縄訪問時、確か、どこかから辺野古への移動の途中だったと思うが、街道筋のぽつんとした一軒家風のソーキそば店におりざさんが案内してくれたことを思い出した。小さな店で、きれいでもなんでもないありふれた田舎のそば屋といった風情だったが、そこの蕎麦が抜群にうまかった。
 今回、送ってもらったそれを私は必死になって再現したのだが、正直いうと、あの折のあのそば屋のものには及ばなかった。これは致し方ないだろう。その地、その地の食い物には、その地でしか味合えない地霊の味のようなものが染み付いているのだから。

 でも、ソーキそばを味わったおかげで、岐阜のムシムシする夏にいながら、沖縄のあのサンゴ礁の鮮やかな海を思い起こすことができた。
 そして、19年秋、沖縄を旅した折の風景や各種戦跡が走馬灯のように巡るのだった。
 Oさん、ありがとう。

 

コメント
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