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【矍鑠!】101歳現役の方と同席した研究会

2020-11-01 15:52:30 | よしなしごと

 誘われて、名古屋の河合塾本部で行われた河合文化教育研究所の公文宏和氏主宰の経済研究会、第150回のそれに参加した。この公文氏とはFaceBookで友人にしていただいている。
 なお、この研究会、「経済」の名を冠してはいるが、必ずしも経済学や経済の動向をめぐるものではなく、かなりフリーに運営されていて、ちなみに次回は、実際に演劇に携わっている人を招いて、「演劇論」についてとなっている。

           
 で、今回はカール・レンナー(1870-1950)についての勉強で、彼についての翻訳やオーストリアの近代史を研究していらっしゃる青山孝德氏を講師に招いてのそれであった。
 レンナーというのはオーストリアにおいて第一次世界大戦終了直後の共和国の初代首相と第二次世界大戦終了直後の共和国の臨時首相・初代大統領を務めた人で、その生涯の軌跡(良く言えば多彩にして多様、悪くいえば右往左往・右顧左眄)は変化に飛んでいる。

 だが、今回書きたいのは、その内容についてではない。カール・レンナーについて知りたい方は以下を参照されたい。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%83%8A%E3%83%BC

            
         千種 河合塾専用の横断歩道橋から今池方面を臨む
 
 で、書こうとすることはその参加者についてだ。この種の勉強会、最近参加する人たちは私自身がそうであるように、だいたい高齢者が多い。これから消えてゆく者が勉強するより、若い連中が頑張って欲しいという思いがあるが、それはさておき、この中でひときわ高齢の方を紹介したい。

            
         これは100歳の折 自著を手に 転ばれて頭に絆創膏が
 
 御年101歳の水田洋先生がその人である。80歳過ぎの私が、学生時代の折、水田さんは新進気鋭の経済学者として、すでにしてその名を轟かせていた。それから今日に至るまで、学界の第一線に立たれ、今なお、同人誌への寄稿や、乞われれば、学術書の序論などを書いていらっしゃる。
 冒頭の公文氏を介して最近入手した『資本主義の世界像』(オットー・バウアー 青山孝徳:訳 成文社)に寄せられた序論は、水田先生ならではの、幅の広い視野に立つものである。

            
            河合塾本部は、新しい建造物を建築中
 
 もっとも、私は、水田先生の教えを受けたこともなく、その門外漢にすぎないが、ある事情があって、20代後半に直接面談をさせていただいたほか、私が居酒屋稼業をしている間、ず~っとご贔屓にしていただいた。
 思い起こせば、居酒屋時代の後半、すでにして今の私と同じく傘寿を迎えていらっしゃったことになる。

 いささか驚いたのは、その先生が今なお、現役として冒頭の研究会に参加されるということもさることながら、会の後の懇親会にも参加されたこと、そしてそれらの過程を介助者や付添いなどに頼ることなく、自分の足で行動され、ご自宅との往復も、タクシーなどではなく、地下鉄をご利用されているということだった。

          
                 建築現場の塀に描かれたイラスト
 
 これから20年先、私があのようにあることができる補償などはまったくなく、逆に、この不摂生がやがてこの身を滅ぼすであろうことは必定だが、命がある限り、あのように、自分の足で歩き、関心のある対象にきちんとコミットメントしてゆけたらと改めて思った。

 懇親会が午後7時に終了したので、土曜日のみ営業している今池の「芦」に顔を出す。今池を根城にしている面々と久々に逢うことができたが、やがて、私の学生時代の同級生が現れ、旧交を温めることができた。
 十代の終わりから彼を知っているのだが、こうして久々に逢うと、その立ち居振る舞いや言葉つきに、どうしようもない老いを感じてしまう。しかしそれは、同時に、私自身を合わせ鏡でみることなのだ。
          
          
             研究会の建物から見下ろす中央線

 まあ、歳だけから考えたら、私は二周遅れで水田先生を追っかけているようなものだと思うのだが、今後も、水田先生が走っていらっしゃる地点にまで行き着けそうもないし、私が先にその競技場を去る可能性は十分あると自覚している。
 しかし、一世紀を超えて今なお矍鑠(かくしゃく)ってすごいなぁ。

 

コメント
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