六文錢の部屋へようこそ!

心に映りゆくよしなしごと書きとめどころ

戦争を知らない子どもたちと「大人たち」のために

2015-07-31 18:13:27 | 書評
 この本の前半は小学5年生の八木湧(わく)太郎君が、90歳のおじいちゃん、八木進さんから戦争の話を聞いたものですが、実際の夏の自由研究のスケッチ帳が元になっているため、自然体の会話がいいですね。
 以下は、湧太郎くんの「はじめに」からです。

          

 ・・・・僕が遊びに行くとおじいちゃんの声が家の中から聞こえてきます。おばあちゃんに大きな声で話しかけています。耳が遠くて大きな声を出さないと通じません。いつもみんなが言っていることが聞こえないので、「通訳しろ」とおばあちゃんに言っています。
 何事についてもうるさいおじいちゃんです。犬をかって大事にしています。
 ごはんの時は、「これも食べろ」「あれも食べろ」といわれて、どんどんぼくのお皿には、食べ物の山ができます。「そんなにいらないんだけど」、おじいちゃんに通じないので、がんばって食べます。
 いつも元気なおじいちゃんは90歳です。トヨタ自動車でずっと働いていました。車の運転が得意で今も車に乗っています。
 面白くて大好きなおじいちゃんですが、実は若いころ戦争に行っていたのです。大変なことがいっぱいあったようですが、今まで戦争の話をきちんと聞いたことがありませんでした。夏休みに遊びに行った時にお願いして話をじっくり聞きました。・・・・

        

 こうして二人の問答形式で話が進むのですが、そのうちにこの八木進さんの部隊は800人いたのですが、帰国できたのは6人だけだったことや、敗戦を知らず、11月まで戦っていたことなどが明らかになります。

 とりわけ説教めいたことは書かれていません。事実の推移が淡々と伝わってきます。

 この本の全体は2部に分かれていて、前半は二人の会話ですが、後半はそこに出てくる戦争全体の状況の説明と、「玉砕」などという難しい言葉の解説に当てられています。
 なお、文中の挿絵は、八木進さんとともに奇跡の生還を果たせた市古粛亮(いちこしゅくりょう)さんんが当時を思い出して描いたもので、食料補給を絶たれるなかで、当時の兵士が食べたものなど究極のサバイバルゲームの様相がくわしく描かれています。

       

 漢字にはルビが振ってありますから低学年から読めますが、子どもたちはもとより、子どもたちのご両親の世代にも読んでいただきたいと思います。
 安倍晋三くんにも読ませたいのですが、彼には湧太郎くんほどの理解力があるかどうかは疑問ですね。

 ご希望の方の入手方法は以下です。
 発行元 編集企画室 群 TEL 052-589-2771 FAX 052-589-2772
 また、以下のホームページからのメールでも問い合わせや注文ができます。
   http://www.pen-ginclub.com
 なお、このページにはお近くの取扱店も載っています。
 あ、定価は1,000円プラス税です。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする