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【六の仔バト日記・3】恋の終わりか。(たぶん最終編)

2013-09-02 11:52:50 | ラブレター
 第一編ではまさに生まれ巣立とうとする仔バトたちへの私の一方的な片思いを綴りました。
 第二編では、この間の変わりやすい天候にもめげず、彼らが順調に生育していることを書きました。

 この第二編を載せたのは8月31日の午後のことでした。
 その日、日暮れてからです。岐阜地方に竜巻・突風注意報が出されました。
 やがて怪しげな風がふき、木々がかなり揺れ始めました。
 竜巻や突風ではないのでしょうが、時折、風を伴った横殴りの雨が襲います。
 
 う~ん、これぐらいなら耐えることができるのではないか。
 以前にも同様な風雨があったが耐えています。
 しかし、その折はまだ小さくておそらく親鳥が保護していました。
 今は、かなり大きくなった仔バトたちだけです。
 しかも、その図体が大きくなっているだけに風あたりも強いはずです。

 とても心配ですが闇の中、確認することもできません。
 できたところで打つべき手はありません。
 ただオロオロするばかりです。
 激しかったのは小一時間でしょうか。
 急に止んだかと思うと、今度は虫のすだく音が聞こえます。
 スッカリ安心して自分の領域に戻りました。

 翌朝、9月1日です。
 昨夜の就眠が遅かったせいもあってスッカリ朝寝坊をしてしまいました。
 木の葉越しに巣の観察です。
 いません! 二羽ともにいないのです!

 慌てて巣の周辺を見て回りました。
 昨夜の風向からして飛ばされたとしたらこの辺りというところまで探索しました。
 いません。
 多分、落下はなかったと思いました。

 第二の可能性は、私が用心していたように、この辺りにうようよいるカラスに襲われたということです。
 巣の周辺を注意してみました。
 羽毛が散るなど狼藉の証拠がないかとチェックしました。
 しかし、そうした兆候はありません。
 巣の下の木々に、糞の跡を見つけました。
 こんな糞をするほど大きくなっていたんだなぁと改めて思いました。

 あとひとつの可能性は、私が寝ている朝に巣立ったということです。
 そういえば前日、親鳥が餌を運んできた折、羽ばたく雛を見て、おう、もうこんなに立派な羽がと思ったものでした。
 そうであってほしいと思いました。
 巣立ったとしてもそんなに遠くに行っていないはずだと、近くを見て回りました。
 それらしいハトは見かけませんでした。

 昼ごろです。
 うちの前の電線で、父親が何度も何度も鳴いています。
 やはり、キジバトの巣立ちを経験した人の記録に、巣立ってどこかへいった若鳥が父親の鳴くのに呼応して帰ってきたという記述がありましたので、それに期待しました。

 父親の呼び声が続くなか、それらしい影は現れません。
 やはりダメなのかと諦めていた午後、ノートをとりながら書を読んでいた私の部屋(二階)でなにやら気配を感じ、ふと顔を上げると、すぐ前の電線にとまっているキジバトを見つけました。
 まだ、父親が探しているのかとも思いましたが、もう一羽の影がかすめるのを目撃しました。それと同時に電線に止まっていた一羽も下降して私の視界から見えなくなりました。

 慌てて階下に降り、ハトが降りたあたりを見ました。
 そこに、二羽のハトがいました。
 自分たちが巣立った巣の下で、昨日の雨で出来た水たまりで水を飲んだり、その辺を歩きまわったりしていました。
 私が見たのは二羽のように思うのですが、家人は三羽いたといいます。
 もしそうなら、この二羽は確実に巣立った子どもたちです。

 あちこち動きまわり、この辺にいたのは数分に満たない時間でしたので、よく観察はできなかったのですが、昼ごろ、鳴いていた父親よりも一回り小さく華奢な感じがします。もちろん、私の鑑識眼には確信はもてません。
 明日以降、また遊びにきてくれたらいいのにと思います。

 疑念は、私がネットで調べたよりも巣立ちが早すぎるということです。
 孵化から十数日とのことですがまだ一〇日を経たかどうかなのです。
 ただしこれも、私がヒナを目視した8月22日以前にすでに孵化していたとしたら辻褄が合います。
 
 いずれにしても、ここで不孝な事実があったという痕跡は何ひとつないのですから、よりよい結果の方を信じたいと思います。
 それにしても、巣立ちの瞬間を見たかったのに果たせなかったことが残念です。

 かくのごとく、私たちが愛でる花鳥風月は、私たちの思惑を裏切ってその姿を見せるものであり、実は、それを楽しむことが花鳥風月に接することではないかと思った次第です。
 ようするに自然は常に私たちの思惑の外にある「他者」であり私たちは謙虚にそれに接するほかはないのです。

 なんだか少しあっけない幕切れになって肩透かしを食ったようですが、最後に、私のアイドルたちが去った今、毎夜のように現れるもうひとつのアイドルを紹介しておきましょう。ヤモリ君です。どうも数匹いるようなのですが、これは大きい部類です。

     
  モザイク模様のようで面白いでしょう。いわゆる型ガラスの向こうにはりついているのです。


コメント (3)
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