六文錢の部屋へようこそ!

心に映りゆくよしなしごと書きとめどころ

朗らかな決別のために・・・

2010-11-23 14:47:14 | 想い出を掘り起こす
 私が2、3度にわたって掲載してきたかつての岐阜県知事官舎ですが、県政資料館にもならず、レトロな雰囲気を利用しようとする飲食店などの買い手も付かず、ついに取り壊されたことは前回書きました。

          

 これは取り壊し後の状態です。その面影を何一つ残すことなく、いわゆる更地になりました。

 やがて、数年もすれば、ここに何があったかも人々の記憶から消え去ってゆくでしょう。そして10年もすれば、私も含め、ここに知事官舎があったことを知る人たちも死に絶えるでしょう。

         

 事実、私が写真を撮っていると、「ここはなにがあったとこじゃね」と尋ねる人があります。風体から見るにそんなに遠くから来たようには見受けられないのですが、私と同年代の人です。おそらく地元の人でも、途中からこの辺に来た人かも知れません。

     

 私は何が何でも古いものを残せという頑なな守旧派ではありません。むしろ古いものが淘汰されてゆくのは自然だろうと思っています。
 ただ、その時間の流れの中にある歴史性のようなものは失いたくありません。
 かつてどのような状況にあり、それがどのようないきさつで今日にいたり、かつ将来どうなってゆくのだろうかということへの興味です。

     

 それは同時に、時間軸に沿った私の座標をも示しています。
 ですから、去りゆくものをよく見つめ、来るべきものに目を凝らすということは、己の現状をも知ることのように思うのです。

     

 もやはこの土地についてはこれ以上触れません。
 子供の頃よく眺めた、玄関のポーチに黒塗りの車が厳かに横付けされていた光景を懐かしみながら、朗らかな決別を遂げたいと思います。
 
 サヨウナラ。


コメント (2)
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