イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

NHK『コントの日』 ~やることはどこまで?~

2018-11-10 22:40:14 | お笑い

 11月3日、文化の日というと、結構テレビで豪華特番が多くて、平成初期までは確かフジテレビで、日本IBMの一社提供で海外ロケもありの大型美術番組を放送していたものですが、バブル崩壊してしばらくすると、見事に無くなりました。

 今年も何もないのかなと思ったら、こんなのがありました。NHK総合『コントの日』(PM7:30~)、なんとニュースをはさんで二時間半枠でまるごとコントっていまどき贅沢じゃない?と、冒頭から見たんですが、コレ実に面白くなかった。

 “コント協会会長”役にビートたけしさんを筆頭に、東京03、サンドウィッチマン、ロッチ、ラバーガール、ロバート秋山・・と、ことコントに関しては鉄板の顔ぶれだと思ったんですが、呆れるくらい面白くなくて、ニュースをカットして正味2時間20分の再生の間、面白くないと思う自分がおかしいのかと何度か自問自答したくらい。

 何が面白くないって、まず一本一本が長い。8分から10分弱。コントってこんなものでしたっけ?もっとサクサクサクッといってポンと落とすか、ポッと投げ出すかしてパッと終わるのが、月河の中でのコントのイメージだったんですが。

 NHK総合で、SPでやるからこうなるのか。セットや美術もしっかりしているし、専業俳優さんの助演もきたろうさん、田中美奈子さん、風間トオルさん、山田裕貴さんなど豪華でしたが、そのせいでますますムダに濃厚になって、コントというより『世にも奇妙な物語』の短い版みたいノリなんですよ(『残留バブリスト』『何時だと思ってんだ』辺りは最初からそういう路線狙いのようでしたが)。

 ネタの中身も、不倫撲滅戦隊とかオタサーとかLGBTとか、ムダに特殊過ぎる。コントってもっと軽妙洒脱な芸で、なんてことない日常の平板な世界から何気なく切り取って展開した切り口を、サッと見せてスッと閉じてパッと撤収する、古典落語や漫才が中~長編小説だとしたら、俳句ぐらいまで語数を抑制してスリムに笑わせるのがコントの醍醐味だと思うのに。

 本ネタの合間の、劇団ひとりのCMパロディーがいちばん笑えたから皮肉なものです。パロディーですから、“似せて似せて作り込む”ほど、ねちっこくやるほど笑いのクォリティが上がっていく芸なので成功した。一連のこのパロにロッチコカドが「NHKで(CMネタやって)大丈夫なんですか?」と心配して見せ、たけしさんが「NHKは来年民放になるから」とムチャ返しした。そこらへんが番組的にピークでしたかね。

 この、スタジオで演者が一堂に会して、ネタVを見てツッコミ駄目拾いをしていくのも番組化するというスタイルも全体を冗長にした。ビートたけしさん来演ということでNHKがBSプレミアム不定期放送の『これがホントのニッポン芸能史』を意識したのかな。何十年も前の、すでに伝説になっている芸のVを肴にしていろいろ語るのならいいけれど、いまのいま、未公開の新ネタを、笑い取ったか取らないうちにスタジオで腑分けしちゃいかんでしょう。鮮度が落ちるに決まっている。採点して勝ち抜け決めるとかそういう番組でもないし。とにかくコントはサッと演って「あ、なに、いまの!可笑しくね!?」と思わせるうちにサッとハケてなんぼです。その“サッ”の間に美術や装置、カメラワークなどすべてを集中する。これこそ贅沢です。10分近く尺取るやつを何本も、長時間の枠でやるのがコントの贅沢ではないし、洗練でもない。ましてネタへの論評や演者たち同士のウラ話まで番組にするなら、後日の別枠でやらなきゃダメです。

 このなくもがなのスタジオトークで期せずしてわかったのですが、東京03豊本がたけしさんに「せっかくの(共演)機会ですから、我々メンバーをほめていただけませんか、今後頑張る励みにしたいんで」と水を向けたとき、たけし師匠、速攻「うまい!」とアゲたあとで、結構まじめに「03のDVD持ってるけど(←ここで三人最敬礼)、いまのテレビではあの面白さなかなか出ないじゃない。出て30秒で爆笑取るようなやり方してない、だから、それでいいんじゃないかな」と答えていた、まさにこのたけしさんの志向が直球で表れ過ぎた番組だったのかなと思います。

 もともと浅草の舞台芸人から1980年代の漫才ブームに乗り、テレビでブレイクしテレビで輝くと同時に、テレビで悩まされテレビで苦しんできたたけしさんにとっては、“テレビの何分何秒縛りに拘泥しない芸”というのが、芸の中で至高であるらしいのです。

 これ、超ベテランの言うことだけに正しいか正しくないか即決はできませんが、たけしさんの年代とお笑いキャリアを考えれば確かにそうなるだろうなぁとは思います。

 良くも悪しくも時代を感じます。番組の終盤近く、たけしさんが「コントの進化」という話をしていて、「笑わせる、落とすことに集中するのもいいけどそればっかりになっちゃって、“個人芸”がなくなってきてる」と言ってその個人芸の例に引いたのが、由利徹さんですから。昭和も昭和、昭和過ぎ。東京03やひとりクラスでも知ってるかどうか。しかもたけしさんが由利さんの得意芸について語ってる間ワイプで流れたVでの共演者が星セント・ルイスさん。この時点ですでに由利さんは伝説の大御所、つまりは過去の人だったのです。

 ビートたけしさんもこうして、芸能界サイクル的には何世代も後輩相手に、テレビであからさまに懐古トークをする人になった。当代有数のコント師、コントユニットのほやほやの新ネタを堪能しつつコント界のこれからを思うより、いろんな意味で時代と、時代の中で年を取る人たち、年を取る自分を思った文化の日の特番でした。

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