『仮面ライダーW(ダブル)』第29話・30話“眠り姫とナイトメアドーパント”はコスプレやりたい放題回でしたな。依頼者・姫香りん(麻生夏子さん)自体“人生コスプレ”みたいな子だったし、とにかく眠りに入って夢を見ないと対峙できないドーパントが相手ということで、全員コスるコスる。
いまだ家族の復讐を果たせぬ照井(木ノ本嶺浩さん)は亡き最愛の妹がお弁当を届けてくれる夢で、これはまぁ同情の余地がありますが、悪夢になってからはその妹が相手もあろうに刃野(なだぎ武さん)と結婚、刃野から「竜兄さん」と呼ばれる絶望のゴール。真倉くん(中川真吾さん)がちゃっかり牧師になってる始末。
前夜時代劇DVDの見すぎで眠れなかった翔太郎(桐山漣さん)は、思いっきり岡ッ引き左平次親分になり、おかげで亜樹子所長(山本ひかるさん)はおかみさんになって草履で引っぱたき、照井は同心の旦那に。フィリップ(菅田将暉さん)に至っては、下ッ引き“フィリッ八(ぱち)”になって「親分、てーへんだ!」と番所に飛び込んできたり、お奉行さまになって(←欄間に「検索一筋」と掲げてある)「この顔に見覚えがねぇたぁ言わせねえぜ」と片肌脱いだり、やりたい放題というよりやらされ放題。江戸時代なのでWに変身するときもメモリは木簡、“疾風”“切札”と筆字で書いてある。夢とは言え何もそこまでツジツマ合わせんでも。なんだか戦時中の敵性語排除みたい。
さしずめヒートは“灼熱”、メタルは“装甲”、トリガーは“引鉄”、ルナは……“幻想”でしょうかね。「マキシマムドライブ」は何て言うんだ。「極大駆動」か。横綱昇進受諾の口上のようでもあるな。不撓不屈。一意専心。不惜身命。
解決篇30話で亜樹子所長が夢に入ったら、こちらは浪花育ちらしくたこ焼きワールド。フィリップと照井も“ど大阪”なファッションで協賛してくれましたが、衣裳より亜樹子の背後で意味なくド突き合う小芝居が愉快でしたね。『剣(ブレイド)』のたい焼きアルティメットフォームと対決してほしかった。
今回は変身後Wのスーツアクター高岩成二さんの目くるめく体技ショーケースといった趣きもあり、左平次ヴァージョンの歌舞伎見得風変身にチャリ追跡、なにわの美少女探偵ヴァージョンでの、ゴム跳び風オンナ跳び蹴りなど、2話で10話分ぐらいおいしいカット満載。おまけに翔太郎が夜更かししてしまう劇中劇『風の左平次』の敵役が、斬られ役一代・福本清三さんできれいに海老反ってくれたり、日曜朝から東映太秦パワーを結集した怖いくらいのサービス満点ぶり。
井坂(檀臣幸さん)に施術されて以来四六時中笑い上戸の多幸症になっちゃった若菜姫(飛鳥凛さん)の、クローゼットの小物棚の中身ぶちまけた様な“イタ派手”ファッションもコスプレと言えばコスプレ。そもそも井坂先生自身が、年中季節感のかけらもない黒服に黒山高帽でルネ・マグリットの絵のキャラみたいだし、まったくもって平時からコスプレ指数の高い世界で、輪をかけてコスプレスペシャルやって何の違和感も、物語としての希薄化もテンションダウンもない。“夢”を切り口に、白雪姫コンプレックス、青い鳥症候群、ストーカーに関係妄想と、自己~他者間の距離を取りあぐねる若者たちの病理を掬い取りつつ、フィリップの意識と肉体を別次元に運ぶ謎の鳥型メモリをイントロデュース。本当に一筋縄で行かない『W』です。
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