イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

先生?先生…先生!

2010-10-10 15:50:33 | 再放送ドラマ

本放送中の昼帯から離れている間に、BSフジの昼ドラ名作選枠で1994年の『愛の天使』再放送が始まりました。4年ほど前に当地で地上波再放送された『誘惑の夏』の、ちょうど満1年後のクールで、同じ東海テレビ+東宝チームの作品です。

16年前かぁ。引っ張り上等なアバンタイトルがあり、テーマ曲をのせて象徴的なOP映像があり。やはり昼帯はこれがないとね。

キャストスタッフクレジットの文字も流れず、でーんと登場して、でーんと次と入れ替わる。しかも最近の作品の4倍くらいの大きさで読みやすいのなんの。視聴者にフレンドリーなつくりをしていましたな。

設計事務所を率いる気鋭の建築家・斉藤正樹(峰岸徹さん)の次男で、自分も建築を志す潤(渡部篤郎さん)は、デザインの才能はありますが数学が苦手で、工学部受験に二度失敗し浪人中。父は、大手ゼネコンに勤める長男・曜(米岡功樹さん)をやたら可愛がり、会社を辞めて設計事務所の後継者になってほしいとしきりに勧めていますが、潤には「デキの悪い息子」「建築に向いてない」と滅法冷たい。母親の頼子(上村香子さん)は兄弟分け隔てなく接して、冷遇される潤のことを心配していますが、どうも含むところがありげで、あるいは今後、“父親が違う”古典的展開もあるか。

そんな潤がデッサンの勉強に通う美術スクールに、イタリア留学帰りの新進建築デザイナー沙都美(野村真美さん)が講師として赴任。出会いの経緯がすごいよ。2人それぞれ都市建築ウォッチングに余念なく、潤はカメラ、沙都美はスケッチブックに夢中で、ガッチャンコ折り重なって転倒。「何よあれ、迷惑な人」と別れた直後、教室で「あーー、アナタさっきの」…

…もう、いまどきラブコメ漫画だって使わんわ、ってぐらいの純正混じりっけなしのベタさ。

…ってこれ、いまどきのドラマじゃないのでした。1994年。それにしてもね。すでにトレンディドラマの洗礼を受けて主婦になり、昼帯適齢期になったお客さんは、指さして笑って視聴していたでしょうね。クラシック、スタンダードな手口(手口って)を使って、大まじめに笑かす。これも昼帯になくてはならないスピリットのひとつです。

若くて美人でイタリア帰りの才気がはじける沙都美はたちまち生徒たちの人気者に。シャイで露悪的、軟派気取りだが根はピュアな潤は初対面から沙都美に興味を惹かれ、美的センスを褒められて「工学部より、美大の建築科を目指しては」とアドヴァイスもされ、次第に講師に寄せる尊敬以上の感情が育っていきます。

しかし、沙都美には驚愕の過去が。留学前の美大生時代に、沙都美は当時教授をしていた正樹と不倫関係で、奥さんの頼子に知られ咎められたことから、正樹に何も告げずに姿を消し単身イタリアに旅立ったのです。正樹は驚いて一時は捜し回ったらしいのですが、結局自らも教授職を辞して、振り切るように設計事務所に没頭してきました。

一方沙都美はイタリアで、アマチュア対象の設計デザインコンクールに優勝、画塾を開いた美大の先輩の招きで帰国し、いい設計事務所の就職先を紹介してもらう条件で、腰掛けのつもりで講師を引き受けたのです。

潤との偶然のラブコメ遭遇から間をおかず、建築業界のパーティーで正樹とも再会。「(浮気ではなく)本気だった」と言う正樹はヨリを戻したい気満々で、早速事務所で難航している受注先の設計プランを沙都美に依頼したり、マッハでキナ臭くなっていますよ。潤が沙都美を「親父の元愛人、現在も…」と知ったら一気にドロドロまっしぐらの予感。すでに頼子さんは、潤が塾で課題の石膏デッサンをばっくれて描いてきた沙都美の横顔のスケッチから“あのときのあの女性に似ている?”と懸念を持った様子です。

とにかく俳優さんたちが若いこと。放送当時26歳の渡部さんの大学2浪生は、如何にチャラ男くん演技が達者でもちょっときついのですが、演出が気つかって、塾生たちを微妙にヒネたのや年齢不詳なのばかりで固めてある。気のおけない同クラスの女友達ながらひそかに潤に想いがあるらしい由香を演じる奥貫薫さんは当時23歳ですが、服装はモノトーンシックで大人のスタイリストさんといったムードです。

29歳の野村真美さんのほうが、バブルの名残り的なビラビラ感のあるカタカナ職業ルック。美大を卒業して留学3年なら20代半ばか後半ということになりますが、回想シーンの沙都美教え子時代も、カチューシャつけたりしてお嬢さんぽく見せてはいるけど、結構オトナのムードなので、学部生ではなく院生か、兼・助手ぐらいの立場で正樹先生とわりない仲になったということかも。だったら3年経っての帰国後は、野村さんの当時の実年齢通りのアラサーでもいいわけです。

51歳峰岸さんがとてもいいですね。受賞歴もあり建築の才能は本物らしいし、仕事もできそうだけれど、教え子に手をつけ、奥さんは相手も知りながらキレもせずじっと耐えて見逃してくれているのに、3年ばかりで再会すると簡単に焼け棒杭になる最低の旦那。でもどこか、いいトシぶっこいているわりにやんちゃ青年っぽい含羞をとどめているんですよね。奥さんの立場だったらこのヤローだけど、こりゃモテてもしょうがねぇわという光線が出ている。

美的センスはあるが理数が苦手なばかりに工学部に合格できずにいる建築志望の生徒に、美大の建築科を勧めるのはアリだろうと思いますが、“建築”と“設計デザイン”との境界線ってどうなのかしら。結構深くて広い溝があるのではないかな。一級建築士の国家資格がないと設計事務所のトップにはもちろん、大きな仕事が請け負えないだろうし、美大出て二級で就職して、実務経験23年で一級受験するにしても、構造計算など理数はついて回るだろうし。

潤の「建築をやりたい」志望には、ゼネコンと組んで何十階ものでっかいビルやタワーを建てたいとか、設計事務所を事業拡大してブイブイ言わせたい的なベクトルはなく、ルネッサンスの教会建築か何かを理想に、小ぶりのオブジェみたいな外観の、レストランかコミュニティホールでも設計したいのではないでしょうか。

まぁ、資格とかキャリアとか、職能技能、各種業界事情のたぐいに関しては、良くも悪しくもざくざくにラフなのが昼帯のつね。こんな学歴、こんなポジションの人がこんな就職、転職、あるいは経営できるの?あり得なくない?と思ったら、脳内の“昼帯翻訳ソフト”を起動させればいいのです。当該業界に縁もゆかりもない無知蒙昧な一般ピープル視聴者が「だいたいこんなもんだろう」と想像する線基準なわけですから。言わば『ぷっすま』でときどきやってる、“ウロおぼえ絵心バトル”以下のリアリティと思って間違いない。

タイトル、あまーい主題曲(カルロス・トシキ改め鷹橋敏輝さん『Forever』)にOP映像のシークエンスが手ごろな助走となって、何となく自然に“ソフト起動”されて行く。ドラマ読解に際しての柔軟性、寛容性(と耐久性?)をブラッシュアップする意味でも、この時代の昼帯ドラマ、“名作”選とは言わず、怪作珍作も含めて、ときどき再放送してほしいものですね。

…いや、名作に越したことはないですけど。

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