イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

侘び寂び戦隊

2009-01-11 19:23:27 | 再放送ドラマ

これだけ戦隊ヒーロースキーな地合いで書いていながら、実は月河は元祖『秘密戦隊ゴレンジャー』を1話もリアルタイムで観たことがありません。

年齢サバ読んでないですってばよ。藤岡弘さんの『仮面ライダー』1号や、その兄弟作とも言える『人造人間キカイダー』はしっかり(全話ではないけれど)観ているんですけどね。

70年代は、小学生坊主も4年ぐらい以上になると、「特撮ヒーローやアニメなんか観て喜んでいるのは幼稚で、アタマ悪そうでなんか恥ずかしい」という向きが多数派だった。親や教師があからさまに目のカタキにし、クチやかましく遠ざけようとしていただけではなく、坊主たち自身が、「1コでも2コでも、年上っぽく振る舞い、お兄さんお姉さんぽく見られ評価されたい」という意識が強かったのです。

月河前後の年代、学年が、人口ピラミッド・出生数カーブ上、“弟妹は少なく兄姉が多い”ポジションであることも関係があるでしょうし、もちろん当時は、いまの麻生総理に代表されるような“青少年期から漫画やアニメが身近にすでにあり、親しんだまま成人”という親世代教師世代の大人が、日本にまだ存在しなかった。これがいちばん大きいと思う。

当時の大人にとっては、特撮もアニメも“大人の鑑賞にも耐える、カネも技術も高度なサブカルチャー”ではなく、ひたすら“昨日今日俄かに出てきた、いかがわしい子供だまし”“勉強や家業手伝いに専念させる上の邪魔もの”だったんですね。

元祖『ゴレンジャー』が、熱血・クール・大食い・少年・紅一点ピンクの構成で古典化していることも、実はずっと後になって、自分より年少の男子諸君と教室や職場を共にするようになってから、雑学として知った次第です。

前置きが長くなりましたが、今日(11日)の放送本編後のお楽しみコーナー、『ゴーオンジャーvs.ゲキレンジャー』劇場版公開告知で「ゲキレンジャー、カッコよすぎる」「けど、グリーンもブラックもいないんだね」「ゴールドもシルバーもいない!」としょげる軍平(海老澤健次さん)範人(碓井将大さん)、大翔(徳山秀典さん)&美羽(杉本有美さん)が「可愛すぎる」。

シンボルカラーとしての黒なら臨獣拳の理央様、緑ならメレさん、金ならロンがいるけど、一応、敵ですしね。

確かに、近年の戦隊、赤・青・黄は性別やキャラ分けに差はあれ不動だけれど、緑・黒・ピンクに白、金・銀などはシリーズによっていたりいなかったり、敵性を持って登場したり、その後追加戦士として戦列に加わったり、文字通り“いろいろ”でした。

昨年の『ゲキレン』は、なんとなく序盤嵌まりそびれて後半、公式サイトを覗いたら追加戦士としてゲキ“バイオレット”が加わっていたのには驚きました。『忍風戦隊ハリケンジャー』“深紅”の稲妻・角忍カブトライジャーが参戦したことはあり、色としては深紅と言うより、赤紫、葡萄色に近かったような気がしますが、バイオレット=すみれ色の戦士は史上初ではなかったかな。スターティングメンバーのゲキレッド、ゲキイエロー、ゲキブルーがそれぞれ虎・チーター・豹とネコ科の動物モチーフを持つ中、イヌ科の狼=ウルフ属性の戦士として登場したので、差別化をはかるため特異な色を充てたのかもしれません。

余談ですが、英米語のバイオレットvioletはすみれの花、及びその色を指す名詞・形容詞であると同時に、綴り字並びや発音がviolentviolenceに似ていることから、英語圏ではなぜか“暴力”“狂暴”のイメージを喚起する色であり言葉でもあるらしい。ちょっと前の英米の精神分析医学や深層心理学の臨床レポートには、幼時の虐待経験などからヒステリー症状や躁鬱傾向を呈する、特に成人女性患者が、苦痛を伴う夢や幻視のイメージにすみれの花や、その花の色を訴える症例が頻繁に出てきます。トラウマを持つ英語圏の人には、すみれの花がVIOLETという言葉を介して、violentな行為のもたらす痛みや、裏返しの被虐願望(概ね性行為。いわゆるMですな)と脳内で結びつくことがあるんですね。もちろん、英語ネイティヴではないヒスパニック系、アジア系の患者には1例も見られないそうです。

人間というのは、良くも悪しくも“言葉”に縛られた生き物なんだなと痛感させられる話です。日本で生まれ日本語教育を受け、日本語を話す社会で生きてきた人なら、すみれの花やすみれ色のものを見て、回り回って暴力を連想するなんてぇことは100%ないでしょう。

あったら宝塚歌劇団が存亡の危機に直面するし、ちびまる子ちゃんのお母さんも改名を迫られる。

血の赤のほうが、直球で“流血”をイメージさせるか。でも戦隊で常に“レッド”がリーダーであるように、赤は情熱、ヒューマニズムの色、開拓と創造のパワーの色でもありますしね。色と暴力が言葉で結びつく例って、日本語世界にあるかな。散り敷く花びらの桜色が、武士の切腹を連想させたりするかしら。

そうなると、寅さんの妹も、おじさん雑誌で人気のアイドル女子ゴルファーも改名の危機だ。

そう言えば『相棒』season47人の容疑者”で、撮影所爆破予告電話を端緒に連続怪事件の一環として「戦隊ヒーローの着ぐるみが盗まれた」ってのがありましたな。警備員役のでんでんさんが「ここに掛けてあった、デキレンジャーブラウン、と、デキレンジャーグレー」、亀山くん(寺脇康文さん)「ずいぶん渋い色のヒーローですね」…と倉庫で事情聴取途中で男の撲殺死体が出てきて、「ギャア~~!」と特撮ワイヤーで吊り飛ばされたみたいにのけぞるでんでんさん、なんていかにも東映&テレビ朝日チーム作らしい演出もあったっけ。

本放送は063月ですから、スーパーヒーロータイムは『ボウケンジャー』『カブト』が走り出し、市場に玩具が出回り始めた頃。次年度の戦隊として“ゲ”キレンジャーは草案されていたかな。

Season4のこのエピを再放送で初めて見たとき、デキレンジャー、最少でもあと3人は居るはずの他の色はどんなラインナップなのかなーと考えたこともありますね。

「泰然の大地、デキブラウン!」

「静寂の悟り、デキグレー!」

「円熟の風味、デキワイン!」

「豊潤の憩い、デキオリーブ!」

「深閑の瞑想、デキインディゴ!」

………誰も敵が襲来しないかもしれない(バカらしくて?)。

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