イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

見てんじゃねえよ

2009-03-02 00:02:24 | 夜ドラマ

『相棒 season7225日放送“髪を切られた女”、捜一トリオのヤング担当芹沢刑事(山中崇史さん)久々の活躍回。亀山くん(寺脇康文さん)が去る前から、台詞のない場面でもフレーム内映り込み小芝居で味出してましたが、漫画描くんだ。ノートの端っこの伊丹先輩(川原和久さん)。失笑。失笑しちゃ失礼か。

 大袈裟に言うと、O・ワイルド『サロメ』の挿絵その他でおなじみ、イギリス世紀末の挿絵画家オーブリー・ビアズリーの若描きの一時期の作品とタッチが似てた。“おもしろく描こう”“可愛く、キャラっぽくしてやろう”って愛がビタ一文無いのね。あまりにおもしろくないので、そこがかえって笑える。右京さん(水谷豊さん)は「どうかと言われれば、似てると思いますよ」と、珍しく義理褒めしてくれましたね。シリーズ初期の毒吐き右京さんなら、「絵としてうまいかどうかは別にして。」と余計な一言付け加えて芹ちゃんに「…やっぱり帰ります(泣)」と引かれてただろうな。

話が脇にそれますが、2009年のいまでも、授業中にノートの端に先生のデフォルメ似顔絵描いてる中学生、高校生って居るのでしょうか。月河の頃は、自分のノートで飽き足らず、授業前の休み時間に黒板一面にチョークフル色使って描いて、入ってきた先生の反応見て笑おうと目論むヤツが、クラスにもれなく1人はいた。んでまた「似顔絵描いてくれヨン(←元気田イクゾー@『ケータイ大喜利』か)」と全身でアピールしてるような、特徴炸裂な容姿、風体の先生も、毎学年もれなく1人はいたものです。なんか最近の中高生って、ちょっと空き時間があれば年中ゲームソフトか携帯いじっていて、鉛筆やペンで紙に戯れ絵描く様なアナログな真似しないし、そもそも似顔絵にしたいほどの興味を学校教師に持ってないイメージがあるんですが、まあRPGやアニメはまだまだ人気があるし、やっぱり描くのかな。

伊丹の肖像より、芹ちゃんが担当事件に関する新聞記事切り抜いて、それこそ手書きで矢印引っ張って疑問点書き込んだ“閻魔帳”みたいの作ってたことにちょっと感動しましたね。今season初期から、芹ちゃん、杉下警部殿の華麗なる推理力に“実は、かねてから感服しております!”“盗めるもんなら、無理だろうけど盗みたい”姿勢を隠さなくなっている。友人の婚約者の葬儀で献花しても、昔なら髪の毛が切り取られていることにも気がつかず、1年前の連続女性髪切り殺人事件を想起することもなかったでしょう。

自宅の浴槽での溺死事故として処理されていた芹沢友人の婚約者・奈津子は、溺死は溺死でも脚本印刷校正者の仕事で通いつめていた映画撮影所での事故で死んでいました。癌で余命僅かな監督(秋野太作さん)の畢生の作品が撮影中止になることを怖れて、女性助監督が撮影カメラマンと美術さんとともに遺体を彼女の自宅に運び、浴槽での事故死に偽装したのです。彼女はこの作品の初動時にエキストラ死亡事故を誘発して撮影中止に追い込んでしまったことを長く自責し、同作品を脚本改稿しての監督のリベンジとなった今回こそは完成をと切望していました。

犯罪になっても、何とか作品に傷をつけず日の目を見せたいと願うクリエイターは、season4“七人の容疑者”のドラマディレクター(大寶智子さん)、いまは過去の人だけれど、かつては映画史に残る数々の名作をものした老監督への、映画人たちのリスペクトという点ではseason5“殺人シネマ”をも思い出します。右京さんに言わせれば、人ひとりの命、人格を毀損してまでもリスペクトしなければならないものなど何も無いのに。

『相棒』ワールドで“映画界”が採り上げられるときはいつも不可侵の限りなきノスタルジアの世界で、その不可侵性に殉ずる先頭に立つのはこれまたいつもなぜか女性。ちょっと製作陣の偏愛が窺える構図ではありますが、今回は仕掛かりの作品がどうにか完成をみることができて良かった。監督は完パケ翌日にみまかってしまったけれど、全国公開には漕ぎつけたのかな。私淑していた監督の遺作に脚本としてクレジットされたことで、映画脚本家を志していた奈津子と残された婚約者に、せめてもの幾許の償いになればいいですね。脚本家の夢半ばで無駄に死んだ奈津子もなんとなく「完成の邪魔にならなくてよかった」と彼岸で胸を撫で下ろしているような気も…なんて言ったら右京さんに睨まれそうですがね。撮影期日の最後に晴天に恵まれラストシーンが撮れたのは、監督の作品を愛していた奈津子からのプレゼント&監督への“お迎え”だったのかも。

芹ちゃんフィーチャー回としては、season4“黒衣の花嫁”のほうが彼のキャラなりのカッコよさ、人間性の良さが出ていたと思います。“複数の友人たちに殺された友人の婚約者に、事件の真相を伝える”という二重三重の重責を背負って「やってみます」と請合った(先輩伊丹たちも「一緒に行こう」と助け舟出してくれた)前回に比べ、今回は“警部殿のお手伝いたいへんよくできました。”だけだったですからね。

でも、奈津子のマンション管理室の防犯カメラ映像再生シーンで右京さんが「芹沢くん」と呼んだときは、シリーズを通じて初というわけではないかもしれないけど、おーっと思いましたよ。「キミはブツブツ(=独り言)が多いですねぇ」にも「おぉ、“キミ”って呼んでもらえたじゃん」と芹ちゃんの彼女みたいな気分になった。んで彼女とはその後どうなってるんだ芹ちゃん。

スタッフの隠蔽工作を察知して、「照明、汚し(←美術)、両方知っていてできるのは私だけ」「ラストシーンを頼む」と監督自身が罪をかぶろうとした場面が良かったですね。女性助監督(渡辺真起子さん)の咄嗟の偽装アイディアは“ヘタな嘘”だったけれど、秋野太作さんの抑えた演技で今回はずいぶんグレードが上がった。

ただ、芹ちゃんの頑張りや映画賛歌など魅力要素を精一杯積み上げても後味の悪さが残るのは、そもそものきっかけになった“約1年前の連続女性髪切り殺人”がスルーのままだからだと思います。結局、奈津子の遺体を運ぶ前冷凍庫に隠しておいたときに生じた凍傷から警察が事件性を疑うかもしれないと、助監督が「連続殺人との関連に注目が行くようにすれば」とその場で髪切りを思いついただけの話だった。

いままでも二つ以上のseasonに跨って、“のちの事知りたや”な人物、事案につき複数の脚本家・監督さんを動員しても追尾してくれた『相棒』のことですから、視聴者に忘れられないうちに必ずフォローがあるとは思いますが、ラスト一つ前、芹ちゃんが上司の伊丹らとともに内村部長(片桐竜次さん)にお叱りを受けている場面辺りで、なんらかの橋架けがあったらもっとよかった。

猟奇シリアルキラーはseason4の“ウィンパティオル”村木重雄(小日向文世さん)で満腹の感もあり、どう料理し直して来るか興味もあります。もう3月、season7は残り話数も少ないので、今年の秋以降になるのかな。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする