イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

テクニシャン呼べ

2007-12-25 21:44:53 | テレビ番組

M1グランプリ、ファイナリストはトータルテンボスのほか、04年以来の挑戦キングコングと、敗者復活戦からの下剋上サンドウィッチマン

この顔ぶれや、そこへ行く前の決勝9組の点数順位を見ると、笑い飯千鳥ポイズンガールバンドといった“ヨソでは見ないけどM1でだけはなぜか常連”な組が目を覆う低得点かつネタ的にも低調で、そろそろ「常連組のパフォに客が倦んできている(常連と言えば…の一郭=麒麟も決勝前に敗退)」空気を、期せずしてお笑いプロである審査員陣が掬い上げたというところではないでしょうか。

 笑い飯は、昨年も思ったのですが、“Wボケ”を引っさげた“独特であること”が、すでに彼ら自身も重荷になってきている。逆に、普通の、誰でもやってる「ウィーン(←自動ドア)」で始まるようなコンビニファミレスコントなんかのほうが、いまの彼ら切実に演りたいんじゃないのかな。

 千鳥は、今回目ウロココメント連発のオール巨人さんが指摘した通り、クロージングの“三つ合わせて何かになる”は本当に要らなかったし、それも含めてネタ的に“考え過ぎ”“無駄に練り過ぎ”が目立った。

ポイズンガールバンドは、シュールさとテンポが万人向きでない以前に、不特定多数の人を笑かすということを、この人たち楽しんでないんじゃないかという気がして仕方がない。単純にファイナリスト3組のように、ネタ見せ後「演り切りました!」と言えるネタを、言える演り方で演ってみたらどうだろう。

以上3組は総じて“独特さ”に殉じた結果という気がする。

新参組ではダイアンがよくやったと思いますが、『爆笑オンエアバトル』で一度だけ見た、その一度と同じネタなのな(軽倒)。

「帰れと言われても何度でも来るよ、それがボクの仕事だからね。」の語尾の「ね。」「からね。」が途中からなくなったのが詰め甘いと思う。こういう、リフレインで増幅して行く仕掛けのネタを演るなら、天地が裂けても一字一句そっくりリフレインしていかないと。

ボケ西澤が左袖にいったんハケてからの登場のしかたがだんだんとんでもなくなっていくくだりのジェスチュアが小さくてわかりにくかったのは、M1決勝進出初めての緊張感もあるでしょうが、このコンビ、根本的なところでボケとツッコミの持ち味が噛み合ってない気がするんだがなぁ。少なくともツッコミ津田サイドからしたら、もっとベタい関西ノリの、古めかしいボケのほうが合うのではないかな。

 もうひと組『オンバト』でしか知らなかったザブングルは、以前「漫才じゃなく(ボケ加藤の)顔芸」と評されたことがよほど悔しかったようですが、「顔より話芸」を見せつけるってほどの強力ネタじゃなかった。

これまたときどき慧眼なラサール石井さんの指摘「いちばんおもしろいところがネタ本体じゃなく、ツッコむときの格好とかなんだよね」はまったく正鵠を射ているし、駄目押し「それほどおもしろい顔でもない」は、漫才じゃないと言われるほどの強烈な顔ではない”という意味ではなく、紹介VTRでのツッコミ松尾の「お笑いをやるために生まれてきた顔じゃないですか」にかかっていたように思います。

ぶっちゃけ、加藤の顔って、たとえば加藤茶さんや志村けんさん、古くは三波伸介さんや東八郎さん由利徹さんのような「そこに居るだけで笑える」顔じゃなく、どう見ても哀愁役者の顔だろうに。

おもしろい顔、笑いを催させる顔であるという基準だけで比べたら、今回出てないけど三拍子高倉や、流れ星ちゅうえい、遡ればハリガネロックのユウキロックのほうが、はるかに出てきて速攻笑える顔です。

とりあえず、当面は顔の強烈さに負けない話芸を披露しようとか、顔芸要素を封印しようとかいっさい考えないほうがいいと思う。でないとサブ司会小池栄子さんの言う通り「やっぱり顔に目が行っちゃいますね」に結局落ちてしまう。

 サンドウィッチマンが敗復から飛び込んでこなければファイナリストだった紅一点ハリセンボンは、バラエティタレントとしての活躍を月河がほとんど見ていないので、普通に若手コンビの漫才としておもしろかったと思うけど、ファイナリスト3組が15点差で鎬を削っているのに比べて、3位トータルテンボスに38点差つけられたのが物語る通り、いかにも爆発力不足だった。

極論だけど女性漫才は(いくよ・くるよ師匠の存在を承知の上であえて書きますが)、紹介VTRデブだのヤセだの冠せられているうちはM1チャンプの望みはないでしょう。

 やはりバラエティ色に染まった中からは、もうひと組キングコングが果敢にファイナリストの一郭に食い込みました。て言うか月河、この人たちもバラエティやラジオやってるところをまったく知らないので、むしろ色眼鏡なしにネタだけ見て素直に笑かしてもらいました。ガチネタ勝負がこれで久しぶりなら、えらいもったいない。もっともっと見せるべきだよ。典型的なコント漫才だけど、随所に昭和のコント55号的なスラップスティック感があって、中田カウスさん評「音楽で言えばヒップホップ」よりはアナクロで懐かしい感じがしました。

ちょっとズルいと思ったのは1 stネタ後のボケ梶原の10円ハゲ見せ。アレ、ホントにM1出場のプレッシャーでできたんか?なんか、梶原って昭和のギャグ漫画に出てくる記号的アホガキ顔なんで、「もとからあったんじゃね?」とか思っちゃうんだな。

 そう言や、一度『徹子の部屋』にキンコン出てたの高齢家族その1と病院の待合ロビーのTVで見たことがあるな。例によって音声が聞き取れないので絵だけ見て「濃い目の男前(西野)とマスコット系(梶原)の組合せで、売れるよこのコたち」とその1は評価していましたが、あそこまでバッチバチ音たててツッコむ芸風と知ったら、高齢者全般、ちょっと引くかもな。

最後にチャンピオン・サンドウィッチマンについて。『オンバト』でもほかのネタ番組でも一度も顔も名前も見たことのないまったくの初見で、04年の南海キャンディーズ05年のブラックマヨネーズと同じ地合いで観ました。

もちろんおもしろかった。おもしろかったけど、会場にも審査員席にもじんわりただよっていた“今年は(ラストチャンスの)トータルテンボスでいいんじゃないか”ムードを吹き飛ばしたのは、ネタのクオリティや意気込み・勢いより1st後の審査員コメント巨人さん(「もう一本こんなネタがあったら大変なことになりますよ」→「いまから…辞退したらどや」)と島田紳助さん(「絶対ないと思うわ」)と、今田耕司さんの「あったやんネター!準決勝でやったヤツー!見たもんオレー(机バン)!!」という遮二無二押しだと思う。月河がトタテン推しだからというわけではなく、あの1~2分の司会席←→審査員席のやりとりで会場の空気が目に見えて一変しました。

逆に言えば「(ファイナルでやる)ネタがないんですよね」「覚えてないんです」ととぼけ切ることでこの空気を醸成した、その嗅覚をもってサンドウィッチマン優勝を正当としてもいいかもしれない。

あと、M1恒例の、客席見切れだけでテロップですら紹介されない豪華ゲストの数々。サッカー日本代表中澤選手だけはネタ見せ開始前にきちんとマイク向けられてましたが、三倉マナカナちゃん、ギャル曽根に安部麻美さんと“歯出して笑ってるだけで絵として使える”メンツを微妙に選んだね。ピエール瀧さんの声がいちばん聞きたかったのに、二度ほど抜かれたのみ。思えば贅沢な番組です。

コメント
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